青山美智子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
寂れた公園に佇むカバのアニマルライドを接点とした5編の連作短編集。カバヒコと呼ばれるその遊具には、触れた箇所と同じ部分の不調を治してくれるという伝説があった。
各編では、主人公たちが治したい部分を触りながらカバヒコに語りかけることで、自分自身を見つめ直し、心を回復させていく。
もちろんカバと自問自答するだけでは癒しや回復は望めない。かつての顧客から届いた感謝の手紙や、とても小学4年生とは思えないスグルくんの達観した考え、さらに20歳以上年下の高岡さんの人生訓など、それぞれの登場人物が絶妙なタイミングで他者の言葉に触れることで、新たな気づきを得て前へ進んでいく。
少々都合が良すぎる展開に感じなくもないが、そもそも作者はそこに強いリアリティを求めていないのだと思う。青山作品を読むのは本作で4作目になるが、現実ではなかなか起こり得ないような優しい偶然や人とのつながりこそが、作品の魅力なのだろう。そして読者もまた、そうした温かな世界観を求めて青山作品を手に取っている気がする。
心が少し疲れたときに読みたい、癒やしに満ちた珠玉の短編集でした。
追記:
カバヒコの容姿を容易に心の中で描くことが出来るのも、本作の魅力の一つだと思うのですが、世代によって異なるかも。僕のカバヒコはコンクリート製でした。 -
Posted by ブクログ
元カレにまつわるショートストーリー✖️4作品。
青山美智子さん、町田その子さん、一木けいさん、山内マリコさんという贅沢な一冊。
どのストーリーも好きだけど、山内マリコさんの二つ年上…は着物の世界も知れて私の中では1番好きな作品かな。
新しいことに出会って、お客様のことや一緒に働く人の気持ちを考えるようになったからこそ元カレの気持ちを慮り、消化できた、昇華させられた過去。
前に進むためのプロセスをわかりやすく表現してくれている作品だと思った。
まぁこちとら、はるか昔の自分に重ねることすら困難でしたが…というより思い出せない。
本気で忘れている…元カレの名前…(悲しいかな歳月の流れ…)
ということで、無理に忘れようとしなくても時が解決してくれるよ!というのはあながち嘘じゃ無いということをお伝えしておきましょう。 -
Posted by ブクログ
読み終えてから少し経っており、うろ覚えと印象的だったことのみの記載となります。本作を手に取ったのは好きな作家さんが多かったことと、アンソロジーのタイトルが面白そうという理由からです。
本作を読み進めてみると、主題が元カレというだけあり、構成が少し似てしまう印象を受けました。というのも、元カレを描くには、元カレとの過去の出来事、それを語る現在の視点といった時間軸的な制約が多く短編として成立させるには物語構造が類似してしまうのかなと考察しました。
それもあり、本作の魅力としては、作家さんの豊かな表現力かなと思います。特に元カレとの関係性やエピソードを表す比喩は作家さんによって全然違う印象があったかなと感じました。個人的には一木さんの表現が好みだったかなと思います。