いとうせいこうのレビュー一覧
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では、本当にここで音楽を。コリーヌベイリーレイで、「あの日の海」。想像してください。
むしろ僕は彼もまた、死者の声を聴こうとして、そのことばっかり考えているんじゃないかと思った。で、聴こえないでいる。実際に聴こえてくるのは陽気さを装った言葉ばっかりだよ。テレビからもラジオからも新聞からも、街の中からも。死者を弔って遠ざけてそれを猛スピードで忘れようとしているし、そのやり方が社会を前進させる唯一の道みたいになってる。
読むのにかなり時間かかったなー。でも、なんというか、よくわからんけど感じるところのある小説やった。読む人が読めば色々思うんやろうな。色々聞きたい曲が載ってた。ボブマーリーのリデン -
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東日本大震災で亡くなった人と生きて残された人をテーマにした一冊。
東日本大震災から今年で10年が経った。
自分自身、亡くなった人への想像力を働かせることができなっていると感じている。それを自分の近しい人で東日本大震災で被害を受けた人がいても、亡くなってしまった人はいないからかもしれないと思っていた。つまり、死者に近しい人しかその死を悼むことができないのではないかと。
しかし、この話を読んで、それは違うのではないかと感じだ。
この話のなかで、東京大空襲や広島・長崎の原爆投下による死者を悼む人が描かれているところがある。それらに直接的に関わっていたわけではない人が、年長者からの伝聞や感受性が豊か -
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ネタバレすごい小説だった。
これを書ききった勇気。
東日本大震災というあまりに大きな出来事を、どのように受け止めるか。それをどう表現し、生きている人たちに伝えるか。小説の題材にしていいのか。葛藤と悲しみと無力感に苛まれながら書いたのだろうな、と想像する。
しかし作家であるならば、書かない選択肢は取れないのかもしれない。どれだけ書きたくなくても、それは自分がどう生きるかということと同じだから。
第二章で、震災のボランティアをしている男性たちの会話が展開される。彼らは、人を助けたいとか、助けたいと思うこと自体が不遜なのではとか、死者をどのように悼むべきかとか、関わりのない他者の死とその死者の思いを想 -
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純文学的な小説かと思いきや前衛的。小説を書くって、誰かになることなんだと再認識した一冊だった。いとうせいこうさんの才能ほとばしる三扁が収録されている。
「今井さん」は、ちょっと暗いトーンがありつつも妙に落ち着くしっかりとした土台があって、不思議な魅力があった。
「鼻に挟み撃ち」は、時間と空間を超えた妄想というか社会派というか、本当にアミダクジ的に進んでいくお話。とはいえ、「小説って誰かになることなんだよ、そうなんだよ」と、私のどこかに共鳴してきた。今まで感じたことのない読後感。
「フラッシュ」は、いちばん好きなお話。
どれも文体が違って独自性があって、いとうせいこうさんって、なんて才能のある人 -
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興味本位、軽い気持ちで手に取った。
本書の狙い通りだと思うが、漠然と抱いていた四角いイメージ、聖人君子の集まりによる、我々のような凡庸な人間とは一生関わりのない遠い世界の出来事、といった偏見は即座に吹き飛んだ。
気高い人達・理念・活動方針であることは間違いないが、人を救いたいと思う動機の根本は自分にも理解できるし、単純に共感し助力になりたいと思わせ、その上でどうやったら協力できるかという方法までご丁寧に示してもらった。
以下は自分の日記。
個人的にはやらない善よりやる偽善だと思っているので、読み終えてすぐ5000円寄付した。ここに堂々と投稿するにしては少額で恥ずかしいような気もするが気にしな -
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2017年から始まった、笑いに関する公開対談。
お笑いを分析する本も好きだなあ。
「真剣になりすぎてうっかりなやつ」
「スポーツに匹敵する笑い」
「芸人が舞台で演じると、何も匂わせずスルー出来ない」
「最新機材の照明は、笑える消え方ができない」
「面白いことを言った人ではなく、反応をこそ撮る」
「ケンイ・コスギ」
etc.
ギャップであるとか、真剣さの面白さとか、慣れにならず忘れることの大事さとか
当たり前のような要素も、いろいろ事例や具体例とともに話すと
そこに至るまでの説得力が出てきて面白い。
対談の中で当時の時代背景や人間関係も分かって、
アタマで考えた話だけになっていないのもいい。
バ -
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信仰の対象ではなく、仏像を見る旅。そのスタンスに共感する。室生寺、薬師寺、新薬師寺、東大寺戒壇院、唐招提寺、興福寺、浄瑠璃寺、神護寺、平等院、広隆寺…行ったことあるところが結構重なって、思い出しながら読むとまた見に行きたくなる。
東北の仏像は、京都で見た仏像を記憶で再現するときに、下から見上げて拝んだ記憶で再現しているから遠近法的に頭が小さくなってしまっているんじゃないかとか、仏像をすっかり取り込んで自国の文化のようにしておきながら廃仏毀釈で放り出そうとするあたり、結局日本という国は外からの物を本当に受け入れる気はないんじゃないかとか、考察が結構鋭かった。
仏像に感じるエキゾティシズムとエロテ -
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こういう雑談が延々とできる相手っていいよな〜と思ったところで、まず妹の顔が浮かんできた。
趣味を語り、得た知識を無駄に駆使し、妄想し、幾度も本題から外れ、ボケてはツッコみツッコんではボケて…。
妹との会話も終始こんな感じ。
お互い謎の習性やこだわり、奇行もクセも変態もそのままにしておける余裕と寛大さがある。
親しき中にも礼儀と配慮はあるが、遠慮はあんまりない。
これが可能な相手ってそうそういないのかもしれない。
小学時代からの友人もそんな感じ。
読みながら、「大学はみんなマトモでつまんない。お前みたいな変なのがいない。やっぱ落ち着く」と言われたのを思い出した。
私もそう思うことがある。
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おじさん二人が森羅万象について雑談するだけなのに、実に面白い。こんなに語り合える人がいれば恋人も配偶者もいなくてもよいのでなかかろうか。
いとう「ジョン・アーヴィングが原作の『ホテル・ニューハンプシャー』って映画見てない?実のお姉さんを好きになっちゃった弟が、あえてものすごい時間お姉さんとセックスしちゃんうんだよね。で、した挙句、お姉さんへの執着が解けるんだよ。それに似てない?愛しすぎるものから離すためには、大量に与えればいいんだっていう」
みうら「一度、嫌いになるほど満ち足りたほうがいいのかもね」
二人が語る「見仏記」も読みたくなった。 -
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いとうせいこう氏による「国境なき医師団(MSF)」の取材からまとめられたルポルタージュ。失礼ながら思っていたよりもずっと真面目に向き合って取材された本で関心したし、ほとんど偶然のような想起から寄付先として出会ったことやそこから取材に至るまでの経緯、そして何よりMSFについての現地ルポが本作で2作目となることを考えるとその姿勢は真摯なものと感じる。
本作では「誰でも国境なき医師団になりうること」を主要なメッセージとして、各国の活動地や日本で活動する多くのスタッフへの取材が進んでいく。「国境なき医師団」という団体名からも、医師を始めとした医療従事者が中心となった団体というイメージが強いが、実は全 -
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いとうせいこう(1961年~)は、タレント、小説家、作詞家、音楽家として幅広く活動するクリエイター。『ボタニカル・ライフ 植物生活』で講談社エッセイ賞を受賞(1999年)したほか、野間文芸新人賞を受賞している(2013年)。
本書は、1999年にノーベル平和賞を受賞した「国境なき医師団(MSF)」について、2016年から取材を続ける著者が、その組織、現場(ハイチ、ギリシャ、フィリピン、ウガンダ、南スーダン)の活動の様子、日本人スタッフへのインタビューをまとめたものである。
読み終えて、組織の面で目を引いた主な点は以下である。
◆MSFは、赤十字から分派してできた組織である。1967~70年にナ