佐藤究のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレアナーキー!
佐藤究さんの作品の割には、暴力が暴力を呼ぶような描写は出てこないな……と思いましたが、やってることはどこまでも純粋なのに、本当に周囲も世界も自身の願い以外どうなってもよい、という突き抜け方は半端なかったです。
漫画とかではありそうな話ですが、それらより世界観がリアルなので、余計に戦争とか貧困とか、ピリついた国同士の事情など影の部分が見えてきて、主人公の行動がどんな結果を招くかということが、否応にも意識させられます。
だけど、本当に自由に空を駆けていくときの瑞々しく澄み切った描写、果ては撃ち落とされた時の神々しさすら感じられる描写によって、一種の爽やかさすら感じました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ小さな頃から飛行機に憧れて、ついには戦闘機のパイロットとなった易永透(やすながとおる)は、しかし、訓練中に超音速で呼吸困難を起こして、戦闘機パイロットから外された。透は自衛隊を辞めた。自分が乗れない戦闘機を見たくなかった。
透はタイへ行く、さらにはバングラデシュへ。
バングラデシュの貧しい孤児ショフィクルに懐かれ、やがて打ち明けられた彼の友だちのメルドンドの話に、透は衝撃を受ける。
間に挟まれた伏線が回収されるにつれ、どんどん引き込まれて行く。
賢いショフィクルらしいエピローグに救われた。
精神的な事や仏教の教えが僧侶である透の祖父を通して描かれる。
孔雀のお経が蛇から身を守るものとして授けられるのが興味深かった。
蛇とは何を表すのか、最初は悪いものとして出てくるが、聖蛇ナーガは崇める対象、最後は透自身が蛇の化身のようになる。
結果はどうであれ、夢中になれるものがある人は羨ましいと思う。 -
Posted by ブクログ
段々と文学的に奥深くなっていく佐藤究の渾身作。
主人公・易永透は2000年生まれの青年。
幼少期から空に強く惹かれ、航空機への執着は夢というより呪いに近いものだった。
やがて航空宇宙自衛隊に入隊し、最新鋭戦闘機F-35Bを
操る天才パイロットとして名を馳せるが、
不慮の出来事で自衛隊を離れることになる。
その後、透は空を求めてタイやバングラデシュへと流浪し続ける。
そんな空に取り憑かれた男の一生を描く物語。
まさに読んでいて狂気という言葉以外思い浮かばなかった。
派手なドッグファイトなどの戦闘描写はなく、
飛べなくなった時間の重みや、空への欲望の哲学的探求に重きを置いている。
三島由紀夫の思想と文学へのオマージュということだが、
自分的には佐藤究独自の哲学が込められていたように感じた。
カタルシスをこれでもかと描いた作品ではないだろうか。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ佐藤究のデビュー作。
あまり有名ではない?し評価も高くなかったので正直あまり期待していなかった。
が、他の作品同様かなり読み応えのある作品で佐藤究作品の狂気が溢れている。
主人公が賭博にのめり込み、どんどんと狂気にまみれていくわけだが、読んでいるこちらまで頭がおかしくなるような読むドラッグのような作品。
特に後半、薬師寺やスキンヘッドの男との会話のシーンは殴られてるかのようなヘビーさとテンポ感で中弛みすることなく世界観にのめり込んだ。
特にこの作品から何かを学んだりすることは少ないかもしれない。
ただ、エンタメという観点で言えば最高にエキサイティングでスリリングなエンタメ作品だ。 -
購入済み
初めてこの作者の本を読みました
初めてこの作者の本を読みましたが面白かったです!
人間と猿の決定的な違いが言語であると同時にその差が言語でしかないということ。
それを証明するように人間の記憶に刻まれた本能。
それが物語を加速させ引き込まれてしまいました
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Posted by ブクログ
ネタバレ不思議な本だった。
中盤以降の怒涛の展開は、それまで自分が認識していた世界ががらりと変わるようで、どんでん返し特有の心地よい驚きがあった。
一方で、読み終わって最も心に残っているのは、父の娘に対する思い。
国家的な諜報員であり、殺人を研究する立場にあった父。自らの思想にそぐわない実の娘を殺したほどの人物が、研究対象として育ててきた偽の娘には情を抱き、最終的には彼女がまっとうな人生を歩むことを願って自ら命を絶つ。
もっと冷徹で、研究者としての目的に忠実な人物だと思っていた。実の娘は殺したのに、偽の娘には生きてほしいと願う。その矛盾がどうにも不思議。
哲学的でもあり、人間の不可解さを感じる作品だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ最初の導入はわかりやすいが、ギャンブルが主人公に及ぼす影響による酩酊が進んでいくと純文学らしく「よくわからない」感じになっていく。
やはり特徴的なのは文体かな、と思う。後の作品の気配を感じさせる、短く暗い、内に閉じて表情が読みづらい文体。でも、最初の方の、ギャンブルにのめり込んでいくまでのパートは、ストーリーが進んでいないゆえに、基本平凡な日常の気配が残っているのだが、そこでの文体、というか主人公と仙崎の会話の違和感とかは結構ある。会話の描写が上手い下手とかじゃなくて、文体としてまだ本気じゃないような感じ。話が進んでいき雲行きが怪しくなってくるとどんどん佐藤究的になってくる、という印象。
それでも、のちの作品、特に『テスカトリポカ』なんかは、ストーリーはエンタメ的でありつつ、文体の抑制と統一感はずっと洗練されている感じがするように思う。とても興味深いなあ。
人におすすめする本ではないが、個人的な佐藤究研究として面白かった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ始めは登場人物が多くそれぞれのバックグラウンドやメキシコ、アステカ文化などのエピソードが、視点を変えつつ語られていくのでなかなか話に乗っていけずにいました。
でも、それぞれの登場人物が、関わり始めてからはまあ面白い!!
この為に丁寧に一人ひとり書いてくれてたんですねって感じでした。
その中でも望んでいないのに才能があったためにどんどん巻き込まれていくパブロ。
本当に不憫でした。
自分の信じる正しさに背く行為を受け入れてしまった弱い部分、汚い部分を、コシモに知られたくなかったのでしょうが、そうこうしていくうちにそれ以上の恐ろしい行いをさせられるようになったコシモに対して、カヌーの上で聞かせた聖書の一節。
宗教ってこう言うふうにどうしようもなくなった時に支えになるものなんでしょうね。
まあ宗教観は人それぞれですが、生贄にはされたくないな。
アステカの人々は神への捧げ物として喜んで生贄になったのかな。生きたまま心臓を抜かれて首を切り落とされるって相当怖いです。
私は末永の裏切りやコシモが順太と話して感じたバロミアへの不信感やパブロの言葉がなかったら、コシモはバロミアにテスカトリポカとして大事にされた後、見えもさわれもしない存在に返さなければ、ということで殺されたんじゃないかと勝手に想像していました。
コシモには明るい未来は来ないとは思いますが、順太も含めどうかたくさんの幸せを感じる瞬間があって欲しいと願います。