佐藤究のレビュー一覧
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猿と霊長類の差は自己認識能力の有無によるものなんじゃないの?という観点で人間の言語の源流を研究する、という趣旨の話。
水面に映る自分を自分として認識しつつ、虚像であることも理解する、というハードルを越えることで自他、前後左右という概念が生まれてそれが言語につながったのではという説。自分では思いつくはずのない考え方でかなり面白い。ロジックの土台がしっかりしていて明確なので、専門外でも楽しく読める。
SFもので昔と今と未来が繋がって視認できる系の描写、毎回よくわからなくて置いてけぼりになってしまう。ノーラン映画でよく考えていた。そんなこと本当にあり得る…?
京都の人間が暴徒化して見境なく殺し合 -
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「幽玄F」(佐藤究)を読んだ。
〈三島由紀夫作品をモチーフに〉とあったので、私の中での食わず嫌いのビッグネームの筆頭が三島由紀夫であることを鑑みればなかなか手が出ないのも宜なるかな。なのである。
まあ最後まで一気に読んだので面白いのかと問われれば面白いって答える。
三島由紀夫思想が前面に出て鼻につくということは全くなくてというか私は気づかないまま戦闘機の描写に驚いているうちにラストを迎えていた。
まあ主人公は何かしらの矜持を貫いたとなと頷く。
物語の舞台がバングラデシュに移ってからの展開がマジか!?と唸る。
やっぱり感想としては〈面白い!〉でいいんだろうと思う。 -
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ネタバレ戦闘機の速さに魅入られた男、易永透。最初は天才パイロットの成功小説かと思っていたが、そこは佐藤究氏。そんなもので終わるはずがない。舞台は日本、タイ、バングラデシュへと移り、不思議な物語へと誘われていく。
三島由紀夫の豊饒の海シリーズ、「暁の寺」「天人五衰」がモチーフになっている。昔、通読した際に、ちんぷんかんぷんで空気感だけは味わった記憶が蘇ってきた。
輪廻転生、ウロボロスの蛇、真言宗の経文、死と生の境界線、空の青…。
ラストがいい。
狂っている。でも透が本望を遂げて光になったその先は…。おそらく昇華し生まれ変わったに違いない。悲しみは無く、達成感に包まれるむしろ幸福を感じる読後感となった。 -
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ネタバレアナーキー!
佐藤究さんの作品の割には、暴力が暴力を呼ぶような描写は出てこないな……と思いましたが、やってることはどこまでも純粋なのに、本当に周囲も世界も自身の願い以外どうなってもよい、という突き抜け方は半端なかったです。
漫画とかではありそうな話ですが、それらより世界観がリアルなので、余計に戦争とか貧困とか、ピリついた国同士の事情など影の部分が見えてきて、主人公の行動がどんな結果を招くかということが、否応にも意識させられます。
だけど、本当に自由に空を駆けていくときの瑞々しく澄み切った描写、果ては撃ち落とされた時の神々しさすら感じられる描写によって、一種の爽やかさすら感じました。 -
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ネタバレ小さな頃から飛行機に憧れて、ついには戦闘機のパイロットとなった易永透(やすながとおる)は、しかし、訓練中に超音速で呼吸困難を起こして、戦闘機パイロットから外された。透は自衛隊を辞めた。自分が乗れない戦闘機を見たくなかった。
透はタイへ行く、さらにはバングラデシュへ。
バングラデシュの貧しい孤児ショフィクルに懐かれ、やがて打ち明けられた彼の友だちのメルドンドの話に、透は衝撃を受ける。
間に挟まれた伏線が回収されるにつれ、どんどん引き込まれて行く。
賢いショフィクルらしいエピローグに救われた。
精神的な事や仏教の教えが僧侶である透の祖父を通して描かれる。
孔雀のお経が蛇から身を守るものとして授けら -
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あり得ない殺人ファミリーぶりに、はじめは面食らったが、そのリアルさが逆に脳内では「これアダムズファミリーね」みたいな無理な転換作業が働き、札幌の猟奇殺人じゃないし、エンタメ、エンタメと自分を納得させる読み始めだった。
しかし途中からアダムズファミリーではない、リアルなサスペンスが色濃くなってきて、ぐいぐい引っ張られ、現実逃避から生じる幻影が、現実とない混ぜになりながら、答え合わせが進んでいく。
何が現実で、何が脳内で形成されたものなのか?
我々が現実と思っている世の中は、多かれ少なかれ、この作品の通りなのかもしれない。
先日見たTVで「人間の脳は、錯覚を常に生み出し補完している。現実と思っ -
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ネタバレ感想
主人公は求道者のように見える。その行く末は。作者が書きたかった三島由紀夫の世界観や仏教の世界観、音速を追い求める主人公。三島由紀夫に関する知識がないのでそこまで理解はできなかったが、ある道を追い求めての死という点では共通するのかもしれない。
あらすじ
易永透は、子供の頃から飛行機が大好きだった。高校までは旅客機のパイロットになるために勉強を頑張っていた。高校で溝口という航空機マニアに出会い、三沢基地で戦闘機を見てから、戦闘機のパイロットになりたいと願い、航空学校へ入学する。
航空学校を修了し、実機訓練でトップの成績を収め、F35乗りとなった。アメリカでの訓練で酸素不足になった経験から -
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幽霊の話?と思ってたら全然違いました。
『金閣寺』そしてなぜか『カモメのジョナサン』が思い出されます。
戦闘機への偏愛と、護国。
水平と、垂直。
そして蛇を食らう鳥、孔雀…。
難しい話は一旦おいといて
一読目はひたすらカッコいい空を飛ぶシーンに浸るのがいいかなと思います。
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Fー35Bは亜音速に至り、遷音速に至り、ついには音速の壁をつらぬいた。ソニック・ブームで空気をゆるがしながら、なおも加速した。マッハ1.0、マッハ1.1、マッハ1.2。
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主人公と一緒に9Gの加速を体感しましょう。
ただし、くれぐれも空間識失調(バーティゴ)