あらすじ
少年は、空を夢見、空へ羽ばたく――空を支配するG(重力)に取り憑かれ、Fを操る航空宇宙自衛隊員・易永透。日本・タイ・バングラデシュを舞台に「護国」を問う、圧巻の直木賞受賞第一作。
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Posted by ブクログ
側からみたら転落人生かもしれないけど、空を飛ぶことを追い求め、追い求められた人生で幸せなのかなと思った。
あとどんな人間が周りにいるかって大事。
展開が読めなくてすごくおもしろいし、蛇のところとか、修行僧のところとか理解しきれず2回目も読みたくなる本。
Posted by ブクログ
プロローグ
運行管理者より「スクランブル」がかかった
第5世代戦闘機F-35A通称ライトニングⅡは、一流の整備士の調整によっていつでも翔べる状態にある
8は颯爽とコックピットに乗り込むとキャノピーを閉じた
因みにコックピットの語源は文字通り“闘鶏場”だ
密閉された空間に束の間緊張感が走る
息を整えた8は、スロットルレバーを押してアフターバーナーを点火させた
雲一つない青緑(シアン)の空を一目するやいなや
強烈なGが8を襲うと同時にライトニングⅡは大空へと羽ばたいた
幽玄を纏った飛行機雲を一筋残したライトニングⅡは、数秒後には、青緑(シアン)の空に消えていた!
本章 おびさんご推奨
『幽玄F』宝物の★Super8
『Ank:』に続いてのSuper8君登場!!!
因みに、この、今回の評価は超個人的な評価だ!
これは、なんというか全てにおいて好きだ
まず装丁
青空を模した青緑(シアン)カラーに
間延びした幽玄Fの文字が!
飛行機雲に擬えてなのか、その色は真っ白だ
プロパガンダ風極上のアート作品
そして、カバーを取ると本体には真っ赤に描かれたバイパー(マムシ)が!
凄い仕掛けだ
本作の内容とも完全一致だ
生涯最高の装丁!!!
主人公、透の戦闘機に傾倒した執拗なまでの愚直さと無意識な天才、そしてラストの選択に胸が痛む
保存版として単行本のサイン本を探そう!
そう思った!!!
エピローグ
8が操縦するライトニングのⅡは、亜音速から遷音速、そして超音速へと到達した
音速を超えると衝撃波が生まれ、周囲の空をソニックブームが揺るがした!
機体の限界値と人間が耐えうる最大G
9Gへ突入し
視界が狭まりブラックアウトまであともう半歩
意識が遠のく間際、そっとある一節が耳朶を打った
“ふるまひをやさしく。 幽玄に心をとめよ。”
本文からの一節だ
戦闘機に乗るために生き、
そして、散るために生きた
果たして、彼の一生とあの選択は正しかったのか!?
今後の人生において再読を重ね検証したい
そう思った!!!!
そしてそれこそが、我が“幽玄の宝物”!!!
そうも思った!
完
Posted by ブクログ
戦闘機に全く関心が持てない人間だが、面白く読んだ。
空への憧れを捨てられない主人公の変人(天才)ぶりが読んでて痛快だった。護国とは何か、もっともらしい答えはなかったが、水平と垂直の概念的考察は面白かった。
三島由紀夫へのオマージュ作品とのことで、男性的な潔癖さが潔い作品だな、という感想。
Posted by ブクログ
面白い!
三島由紀夫をモチーフに執筆されたという作品。
純文学のように内省的で、かつしっかり中身はエンタメしているところが唯一無二な作品だと思った。
主人公の易永透は『豊穣の海』に出てくる人物「安永透」のオマージュらしい。自分は『豊穣の海』未読で、三島作品とのつながりを満足に把握できていなかったと思うが、それでも佐藤究特有の危険な熱によって最後まで夢中で読まされた。
「護国」というワードを真に腹落ちせず、最終的には初期衝動のまま実に身勝手に死んでいった主人公には不思議な魅力がある。その頑固で一本気な姿勢をなんとなく三島由紀夫と重ねた。
Posted by ブクログ
圧巻の⭐︎5。最初は一体何を読まされてるのかわからないまま読み進めていくうちに、その不穏な湿気を感じる世界にどっぷりはまってしまう。話の展開は終わってみればまるでファンタジーなんだけど、終盤まで突飛なことは全然起ころうとしないし、主人公は無愛想で会話もおもしろくないし、途中で飽きてもおかしくないはずなのに、どんどん読むのが止まらなくなる不思議な読書体験をさせてもらった。感謝。
Posted by ブクログ
本棚登録忘れてたやつ
主人公が一貫して空を飛ぶことが好きなところがよかった
最後はバッドエンドかもしれないけど主人公的には救われた感じもあって個人的には好き
Posted by ブクログ
最初は飛行機が好きでパイロットに憧れる主人公の青春物語かと思った
だから半分もいかないうちの怒涛の展開であまりのスピード感に
主人公の透のマッハな生き方を感じた。
Posted by ブクログ
うわっ!安易に、トップガン的な感じかと思ったけど、ちゃうわ〜
難しい…
そうか…
三島由紀夫さん絡んでるしな…
オマージュみたい。
ず〜っと、空に魅せられ、飛行機、戦闘機に魅せられ、F35パイロットになった透。
彼には、戦闘機パイロットやけど、護国とかそういう想いはないんやろな。
ひたすら、青い空、超音速、その世界と一体になりたかったのか…
ただ、想いとは違い、その世界から落ちて、目的もなく彷徨う…
やっと見つけた希望!
でも、それが叶う!
その世界と一体(一休ではない!w)になるのか。青く…
それは…
空の青が死の補色というのが出て来てたけど、そういうことなんかな…
科学(航空機F型戦闘機)と仏教(孔雀明王)を融合させた物語みたいやけど、
真言宗の孔雀王咒経とか出て来ても、あっ!孔雀王や!としか思えず、理解不足…
ちなみに、最高速度
F35 マッハ1.6
ウルトラマン マッハ5 (^_^)v
(一休さんのレビューから)
勝った!www
Posted by ブクログ
傑作
戦闘機に魅入られて自衛隊に入隊した主人公透。透は自衛隊に入隊し、あれほど夢見た戦闘機を操縦することになるが、音速飛行における原因不明の窒息に悩まされる。
自衛隊を辞職し、観光用フライトのパイロットに転職した透。なぜ戦闘機に心を奪われたのかと改めて自問する。透は重力や地上のしがらみの束縛を断ち切り、血の補色である空を切り裂く力が欲しかった。領土の奪い合い(戦争)が水平的であれば、それを脱してはじめて垂直的。それが少年期に夢見た自由な飛翔。あの窒息は地上(水平)のしがらみにまみれた「護国の空」の息苦しさからくるものであった。フライトがただの仕事と割り切れるほどに、自分を見失っていた透は、バングラデシュで様々な人物に出会ったことで、とある転機が訪れる。結末は…まさにこれ以外ない!!!
純文学寄りのアクション系エンターテイメント作品として逸品。三島由紀夫が好きな人や戦闘機に詳しい人は更に楽しめると思われる。私は知らなくても楽しめた。
Posted by ブクログ
テスカトリポカ、Ankに続き佐藤究作品にハマってます。
戦闘機の操縦に関する主観描写が凄く緻密で引き込まれる。
超音速の世界から振り落とされ、一度は戦闘機から離れた戦闘機狂の主人公が、どうやってまた超音速の世界と交わるのか、展開を楽しみながら読めました。
知性と狂気のどちらも感じられる、佐藤究らしさ満載の作品でした。
Posted by ブクログ
前作『テスカトリポカ』とはまた違った雰囲気。戦闘機乗りの話だし、『スカイクロラ』とか『迷宮百年の睡魔』とかの森博嗣のイメージで読んでたら、三島由紀夫がテーマだったらしい。
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易永透が最終的にバングラデシュで墜落したSTOVL機 F-35Bを修理して再度飛行する話だが、航空自衛隊での技術習得、バングラデシュで出会った様々な人物との交流のなかで、透のバイタリティーが素晴らしいと感じた.当初透の資金調達力を疑問視していたが、F-35Bに搭載してあったミサイルを売却したとあり、彼の目の付け所に感心した.ショフィクルとの出会い、ニューランズの技術力への信頼など、様々なエピソードをうまく配置して読者を引き付ける手法に感心した.面白かった.
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佐藤究さんの作品はいつも興味深い。
今回は飛行機に関する話で、それが真言宗や三島由紀夫の話と結びついたりして面白かった。
洋書を読むような感覚で、純文学のようにも感じられた。
Posted by ブクログ
戦闘機について詳しくはないが
非常に興味深く、飛行シーンを
追体験できる感じがした。
さらに、私の稚拙な終演予測はできた
かもしれないが
シーン展開の豊富さには圧倒された。
Posted by ブクログ
戦闘機または音速、それとも"ナニカ"に取り憑かれてしまった天才パイロットのトップガンマーヴェリックとは真逆を攻める波瀾万丈にも程がある狂気的な物語の着地に考察が捗る。
圧倒的な情報量とディテール、あらゆる価値観にカルチャーが混沌する世界観は安定の佐藤究スタイルで読み応えは抜群。
突き抜ける美学を感じる。格好良き!
Posted by ブクログ
「幽玄F」(佐藤究)を読んだ。
〈三島由紀夫作品をモチーフに〉とあったので、私の中での食わず嫌いのビッグネームの筆頭が三島由紀夫であることを鑑みればなかなか手が出ないのも宜なるかな。なのである。
まあ最後まで一気に読んだので面白いのかと問われれば面白いって答える。
三島由紀夫思想が前面に出て鼻につくということは全くなくてというか私は気づかないまま戦闘機の描写に驚いているうちにラストを迎えていた。
まあ主人公は何かしらの矜持を貫いたとなと頷く。
物語の舞台がバングラデシュに移ってからの展開がマジか!?と唸る。
やっぱり感想としては〈面白い!〉でいいんだろうと思う。
Posted by ブクログ
戦闘機の速さに魅入られた男、易永透。最初は天才パイロットの成功小説かと思っていたが、そこは佐藤究氏。そんなもので終わるはずがない。舞台は日本、タイ、バングラデシュへと移り、不思議な物語へと誘われていく。
三島由紀夫の豊饒の海シリーズ、「暁の寺」「天人五衰」がモチーフになっている。昔、通読した際に、ちんぷんかんぷんで空気感だけは味わった記憶が蘇ってきた。
輪廻転生、ウロボロスの蛇、真言宗の経文、死と生の境界線、空の青…。
ラストがいい。
狂っている。でも透が本望を遂げて光になったその先は…。おそらく昇華し生まれ変わったに違いない。悲しみは無く、達成感に包まれるむしろ幸福を感じる読後感となった。
Posted by ブクログ
アナーキー!
佐藤究さんの作品の割には、暴力が暴力を呼ぶような描写は出てこないな……と思いましたが、やってることはどこまでも純粋なのに、本当に周囲も世界も自身の願い以外どうなってもよい、という突き抜け方は半端なかったです。
漫画とかではありそうな話ですが、それらより世界観がリアルなので、余計に戦争とか貧困とか、ピリついた国同士の事情など影の部分が見えてきて、主人公の行動がどんな結果を招くかということが、否応にも意識させられます。
だけど、本当に自由に空を駆けていくときの瑞々しく澄み切った描写、果ては撃ち落とされた時の神々しさすら感じられる描写によって、一種の爽やかさすら感じました。
Posted by ブクログ
小さな頃から飛行機に憧れて、ついには戦闘機のパイロットとなった易永透(やすながとおる)は、しかし、訓練中に超音速で呼吸困難を起こして、戦闘機パイロットから外された。透は自衛隊を辞めた。自分が乗れない戦闘機を見たくなかった。
透はタイへ行く、さらにはバングラデシュへ。
バングラデシュの貧しい孤児ショフィクルに懐かれ、やがて打ち明けられた彼の友だちのメルドンドの話に、透は衝撃を受ける。
間に挟まれた伏線が回収されるにつれ、どんどん引き込まれて行く。
賢いショフィクルらしいエピローグに救われた。
精神的な事や仏教の教えが僧侶である透の祖父を通して描かれる。
孔雀のお経が蛇から身を守るものとして授けられるのが興味深かった。
蛇とは何を表すのか、最初は悪いものとして出てくるが、聖蛇ナーガは崇める対象、最後は透自身が蛇の化身のようになる。
結果はどうであれ、夢中になれるものがある人は羨ましいと思う。
Posted by ブクログ
感想
主人公は求道者のように見える。その行く末は。作者が書きたかった三島由紀夫の世界観や仏教の世界観、音速を追い求める主人公。三島由紀夫に関する知識がないのでそこまで理解はできなかったが、ある道を追い求めての死という点では共通するのかもしれない。
あらすじ
易永透は、子供の頃から飛行機が大好きだった。高校までは旅客機のパイロットになるために勉強を頑張っていた。高校で溝口という航空機マニアに出会い、三沢基地で戦闘機を見てから、戦闘機のパイロットになりたいと願い、航空学校へ入学する。
航空学校を修了し、実機訓練でトップの成績を収め、F35乗りとなった。アメリカでの訓練で酸素不足になった経験から、透は超音速の領域で呼吸困難を起こすようになり、それが原因で空自を辞める。
空自を辞めた後は、タイ、バングラデシュと渡り、観光機のパイロットを務める。バングラデシュで出会った少年からジャングルにUFOがあると聞き、調べにいくとそれは昔、オーストラリア空軍から亡命しようとして行方不明になったF35-B機だった。仲間の助けとゲリラから資金を得て、透はもう一度音速の世界を体験する。
Posted by ブクログ
音速に取り憑かれた男がたどる数奇な人生。
護国、青、蛇、空などのワードとともに、仏教感を漂わせる物語になっている。
男の運命は、果たして輪廻から解脱するのか。そんなことを考えてしまう内容だった。
映画でのエンドロールに入るようなエピローグは、この物語の磁場から開放される爽やかさと哀愁とを持ち合わせた、いい結末だった。
モチーフとなった「豊饒の海」も読んでみねばなるまい。
Posted by ブクログ
幽霊の話?と思ってたら全然違いました。
『金閣寺』そしてなぜか『カモメのジョナサン』が思い出されます。
戦闘機への偏愛と、護国。
水平と、垂直。
そして蛇を食らう鳥、孔雀…。
難しい話は一旦おいといて
一読目はひたすらカッコいい空を飛ぶシーンに浸るのがいいかなと思います。
――――――――――――――
Fー35Bは亜音速に至り、遷音速に至り、ついには音速の壁をつらぬいた。ソニック・ブームで空気をゆるがしながら、なおも加速した。マッハ1.0、マッハ1.1、マッハ1.2。
――――――――――(p305)
主人公と一緒に9Gの加速を体感しましょう。
ただし、くれぐれも空間識失調(バーティゴ)にはご注意を。
Posted by ブクログ
段々と文学的に奥深くなっていく佐藤究の渾身作。
主人公・易永透は2000年生まれの青年。
幼少期から空に強く惹かれ、航空機への執着は夢というより呪いに近いものだった。
やがて航空宇宙自衛隊に入隊し、最新鋭戦闘機F-35Bを
操る天才パイロットとして名を馳せるが、
不慮の出来事で自衛隊を離れることになる。
その後、透は空を求めてタイやバングラデシュへと流浪し続ける。
そんな空に取り憑かれた男の一生を描く物語。
まさに読んでいて狂気という言葉以外思い浮かばなかった。
派手なドッグファイトなどの戦闘描写はなく、
飛べなくなった時間の重みや、空への欲望の哲学的探求に重きを置いている。
三島由紀夫の思想と文学へのオマージュということだが、
自分的には佐藤究独自の哲学が込められていたように感じた。
カタルシスをこれでもかと描いた作品ではないだろうか。
Posted by ブクログ
戦闘機に魅せられた主人公の話。
読み手に考えさせる内容で、最終的に何かあっと驚く結末がある話ではなかったが、面白く読めた。
作者の他の作品に比べて、内容が大人しい印象だった。
Posted by ブクログ
飛行機、特に音速を超える戦闘機に取り憑かれた男の話。前半は透の幼少期から、航空自衛隊のパイロットになる話。後半からは、自衛隊を辞めて、タイ、バングラデシュでの生活を描く。
一度は諦めた音速の世界を、透はやはり諦めきれず、取り憑かれたのか引き寄せられたのか、戦闘機へと導かれ、幽玄の空へと飛び立つ。
Posted by ブクログ
近未来の戦闘機乗りの物語。
物語自体は難しくないのだが、登場人物の心情を読み解くのが難しかったです。
文学的には仏教や護国思想が単純に戦闘機で空を飛びたいという主人公の心理と絡まっているように描かれています。
重要なアイテムとなる蛇は仏教や護国といった思想で、戦闘機(F-35B)は思想からの開放アイテムではないかと感じました。
三島由紀夫の「豊饒の海」がモチーフとのことですが、読んでいないのでわかりませんでした。
Posted by ブクログ
飛ぶことに取り憑かれた天才パイロットの数奇な人生を描く。それだけ言えば、大空を駆け巡る浪漫あふれる激熱ストーリーを想像するだろうが、本作はちょっと違う。確かに急上昇、急展開はあるものの、そこは佐藤究さん得意のアンダーグラウンドな世界に飲み込まれるようなパートも有り、らしさが感じられて良かった。
総評として、主人公の性格が掴みにくいのか、そもそも読み込みが浅いからか、作品が伝えたいことがなかなか汲み取れず、感想をうまくまとめることができないまま、書いては消してを繰り返している。
積読作品が、それなりに溜まってきたので、落ち着いたら頃にもう一度読み、改めることにする。 ★3.0