佐藤究のレビュー一覧

  • テスカトリポカ

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    暴力描写は言うほどキツくありませんでした。そんなことより、佐藤究さんの文体が美しいというか、歯ごたえがあるというか、物語もかなり面白いのですが、文体が読ませます。こんなに分厚い本を最後まで面白く読めて楽しかった。あ、ただ、子供の臓器売買の話が出てくるのでそこはちょっと辛かったです。

    0
    2026年10月04日
  • テスカトリポカ

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    これはすごい小説だね。600ページ以上あるけど、ここまであっという間に読み終えたのは久々かもしれない。

    全体的な物語としてはそこまで難しいものではなく、最初の方でその後に起こりうる展開を予想することも比較的できた。たとえば、闇医師と麻薬密売人の結託ははじめから根本的に矛盾を抱えていたこと。それとは、お互いの目的が全く異なること。かたや復讐、かたや外科医への復帰。

    また、物語が進む中で抱く大きな疑問も小説を読む楽しさを喚起してくれる。たとえば、そもそもテスカトリポカとは何なのか。あるいは、バルミロはいったい何様なのか、言葉を換えていうと、バルミロは心臓密売のビジネス組織=家族を作り出したわけで、各構成員にアステカの世界観を重ね合わせながら役割を与えたわけだが、バルミロ本人はいったいどういう位置付けになるのか。

    状況の描写もすごく丹念になされていて、参考文献を読み込んだからこそ、アステカの世界をここまで文字に表現できたのだと思う。その素晴らしさは、小川哲『地図と拳』と同様の素晴らしさがあった。

    最後に、ちょっとした感想。
    最後の矢鈴は情けないね。警察署には行けないし、コカインの作用からかコシモが考えついた策をまるで自分が考えついたかのように錯覚して「私はコカインをやめられる」なんて思ってしまうのだから。あれだと、順太は助かっても、矢鈴はどうしようもないだろうね。まぁ、そんな調子だから、心臓密売に関わってることに作品の最後まで気づきもしなかったんだろうけどね。

    最後の短い2つの物語は、矢鈴の後味の悪さを少しでも軽減してくれる効果を持ってたし、アステカの世界観を最後まで残してくれてた気がする。

    0
    2026年10月02日
  • テスカトリポカ

    Posted by ブクログ

    めちゃくちゃ面白かった。エンターテイメント小説として、最後まで一気に読んでしまった。終盤になるにつれて、「もう終わってほしくない」と思うくらい、物語に引き込まれた。

    この作品のオリジナリティを作っているのが、バルミロのルーツでもあるアステカ文明の風習。前半にはアステカ文明について説明される部分があり、ここは少し読みづらく感じた。ただ、後半の物語につながっていく重要な部分なので、ここは少し我慢してでも読んでほしい。ここを通り抜けると、本当に面白くなってくる。

    そして、僕が一番印象に残ったのが、復讐相手の心臓と左腕を冷凍庫に保存しておく場面。

    一年後、テスカトリポカの祝祭のためにそれを冷凍庫から取り出し、心臓を常温解凍する。そして左腕を、食べやすいようにハンマーで細かく砕いていく。

    かなりグロテスクな場面なのだけど、ここでなぜか少し笑ってしまった。

    というのも、僕は筋トレのために鶏むね肉を大量に買って、小分けにして冷凍している。食べるときは冷凍庫から出して解凍する。

    「心臓を常温解凍して、左腕をハンマーで食べやすいように砕く」という描写を読んでいて、なぜか普段の鶏むね肉の扱いを思い出してしまった。

    この作品には印象的な場面がたくさんあるけれど、僕の中ではなぜかこの場面が一番記憶に残っている。

    0
    2026年10月01日
  • Ank : a mirroring ape

    Posted by ブクログ

    実際には起こらないであろうことなのに、強烈に映像が頭に流れ込んでくる。
    恐るべき知見と描写力で圧倒される。佐藤究凄すぎる。

    0
    2026年09月30日
  • テスカトリポカ

    Posted by ブクログ

    アステカについて、ドラッグ、人身売買、ナルコ、ヤクザなど現代の闇を通じて壮大に描かれた読み応えのある物語

    0
    2026年09月27日
  • テスカトリポカ

    Posted by ブクログ

    悪い奴らがヤバいビジネスを始めて家族になる話。
    普段選ばないジャンルの小説で、内容難しそうだし理解できるか不安だったけど、お、おもしろー!!!主要人物みんな特徴的なあだ名を持っていて、視点もコロコロ変わるので其々の心情が理解できて読みやすかった。そんな悪たちが運命の悪戯で数珠繋ぎに繋がって…。目を背けたくなるような暴力のオンパレードでありながら、まるで上質な海外ドラマを見てるような全く先の読めない展開が続き、緊張と高揚感が止まらない。序盤から中盤、そして終盤から結末に至るまで、余すことなく面白かった。
    情報量が多いとは思ってたけど、今まで読んだ中でぶっちぎりの参考資料の量にびっくりしたし納得した。汗と血の結晶だし作者さんには脱帽しかない。正しく怪作。出会えて良かった。

    0
    2026年09月23日
  • 爆発物処理班の遭遇したスピン

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    表題でもある『爆発物処理班の遭遇したスピン』、量子力学が出てきて「うわー量子力学だー量子もつれだー」と興奮しているうちに話が終わってしまった。これは私が悪い。超が付くほどのド文系のくせに、物理学、特に量子力学が好きすぎて(好きであることと理解していることは全く相関しない)、ちょっとはしゃいだ。
    短編集であるが、全編とも何とも言えない恐怖を感じさせる。
    『ジェリーウォーカー』は最高に良い。余韻までも怖い。長編とか映像とか…見たい気がするけど冗長になるのかな。
    『九三式』は現実か幻覚か曖昧になる。『猿人マグラ』も同じだ。どちらであっても救われない。救われなさの軽重はあるかもしれないけど。
    『スマイルヘッズ』『ボイルド・オクトパス』、狂気的・猟奇的で好きだ。いいよなあ…。
    『シヴィル・ライツ』『くぎ』もまあ暴力的。手と足がぞわぞわする。
    『テスカトリポカ』を読んだときにも思ったが、佐藤究さんの文体が私はすごく好きらしい。

    0
    2026年09月21日
  • テスカトリポカ

    Posted by ブクログ

    大規模すぎて一言で表せない。
    めちゃくちゃ面白かった
    アステカ文明、臓器売買、無戸籍児童、麻薬密売人、暴力
    メンバーがどんどん増えていくのが読んでてワクワクする。
    アステカ文明をなぞらえて現代に落とし込んで家族へ。リベルタが語る昔話が面白くて、あんなの子供時代に聞いたら信じてしまうな
    ソモス・ファミリア

    0
    2026年09月17日
  • テスカトリポカ

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    メキシコの麻薬密売人のバルミロ・カサソラは、ジャカルタで日本人の臓器ブローカーと出会う。二人は、新たな臓器ビジネスを実現させるために日本へ。壮大な臓器ビジネス、麻薬密売…世界中で工作する運命に翻弄される人々の背後には、アステカの神の陰がちらつく。第165回直木賞受賞作。

    異国情緒半端ない。
    湿気てむしむしした空気、かと思えば砂丘の焼け付くような太陽、スラムはちょっと陰っていて麻薬中毒者が座り込んでいたり…文章の端々にメキシコの風が揺蕩っていて、気分はアナザースカイ…にしてはちょっと治安悪すぎか。ラテンアメリカな雰囲気が新鮮で、たくさん本を読んできたのにまだ触れたことのない世界があるなあと感心しきり。

    「バタフライエフェクト」という言葉を強烈に思い出した。
    蝶の羽ばたきが遠くの竜巻を起こすかというあの有名なやつ。メキシコで起きた麻薬カルテルの抗争が、ジャカルタでバルミロと末永を出会わせ、バルミロとコシモを出会わせた。彼らを引き合わせるきっかけとなる教えは、カサソラ兄妹の祖母・リベルタから齎され…みたいに長い長いドミノがパタパタと倒れていく。その最初の一押しを思い返すと日本から一万キロも離れたメキシコにある。スケールのでっかさに大の字で倒れちゃいそう。でっかい。

    小児臓器売買計画の破綻があっけなかった。
    よくできたシステムだったのに、内部の裏切りで一気に駄目になっちゃうとは…。バルミロの物語から段々コシモの物語になっていったことで、物語の神性、善性が高まって、バルミロがはじき出されたような感覚。リベルタからの教えでテスカトリポカに憧憬の念を抱いたバルミロと、テスカトリポカに融合していくように見えたコシモ。観念的で上手く表現することが難しいが、バルミロの失墜は何か大きな意志の元に…と考えると何となく納得してしまうところであった。

    感想書くのが難しい作品。
    そのものが出てこないのに、終始テスカトリポカに見つめられているような居心地の悪さを感じた。物語の最後に、リベルタがカサソラ四兄妹に講義するシーンが綴られるが、私は余韻を破壊されたような気がしたので、文中に入れて欲しかったと思った。

    0
    2026年09月16日
  • QJKJQ

    Posted by ブクログ

    佐藤究さんの作品は、やっぱり好きだ。

    『テスカトリポカ』も読んでいてすごく面白かったが、今回はそれを超えるくらい良かった。

    ある出来事をきっかけに、そこから怒涛の展開が次々と繰り広げられていく。張り巡らされた伏線が見事に回収されていく展開には、「こんな小説を書けるなんて、天才だ」と思わされた。

    著者は他の作品でもそうだが、作品のテーマについてものすごく勉強し、徹底的に調べていることが伝わってくる。そのため、一見するとありえないような設定であっても、どこか違和感なく物の世界に入り込むことができる。

    まるで別世界へ連れていってもらうような感覚だ。

    難しいテーマや設定を扱っているにもかかわらず、文章は読みやすく、どんどん先へ進んでしまう。この「圧倒的な知識量」と「読みやすさ」を両立させているところも、佐藤究さんのすごさだと思う。

    次は『幽玄F』を読もう。

    0
    2026年09月11日
  • Ank : a mirroring ape

    Posted by ブクログ

    感想がまとまらない。フィクションなのだが、リアルなのかと疑ってしまう。この世界観の説得力。緻密に描かれた都市伝説の様なストーリー。人類の進化の謎。はたまた、B級ホラー映画ばりの血みどろな暴動シーン。何をどうしてコレだけの情報を1冊の小説として紡ぎ出せるのかが、一番の謎。佐藤究先生は構図の取り方と編集構成が本当に上手い。

    0
    2026年09月09日
  • テスカトリポカ

    Posted by ブクログ

    この本を面白いと言ってていのかすら分からない。ひたすらに凄惨で、1文字1文字から血の匂いがしているのではないかと思うほど、本当に物凄い作品だった。

    裏社会、信仰、資本主義、全ての恐ろしさを詰め込んでいるのに、この本の登場人物達の狂気じみた純粋さも感じられるので、彼らの行く末を見たくなる…吐きそうになりながらもページを捲る手が止まらない…そんな事を思ってしまう自分も怖くなる

    グロテスクな描写も「どうだ〜!グロいだろ〜!?」みたいな書き方ではなく、日常的に行われる普通のこと、みたいなサラッとした書き方をしているので(とはいえグロい)、その部分よりも、犯罪の背景や、神への信仰、呪い、それらがもたらす圧倒的暴力への正当化、そういったものへの恐ろしさを感じる本。

    コシモがパブロの工房でナイフ職人として大人になっていたら…と思ってしまう

    0
    2026年09月01日
  • テスカトリポカ

    Posted by ブクログ

    アステカの神テスカトリポカへの信仰を軸に、スリリングな物語が展開され気づいたらあっという間に読み終えていた。
    展開が気になりテンポ良く読めるためとてもおすすめ

    0
    2026年08月28日
  • Ank : a mirroring ape

    Posted by ブクログ

    いやー、面白い!ひさしぶりに656Pの長編小説を一気読み。時系列をバラバラにされたような章立てやバイオレンス表現のドキドキハラハラ感、スピード感、それぞれキャラクターの個性に魅了されて、ページを捲る手を止められませんでした。

    0
    2026年08月23日
  • Ank : a mirroring ape

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    『QJKJQ』『Ank』『テスカトリポカ』
    佐藤究さんの「鏡三部作」を読み終えた。
    世界中に、鏡と神秘や権力が結びついた文化が数多く存在する。「人類は鏡からうまれた」という発想を軸に、人間と鏡の切っても切れない関係に最も深く切り込んでいるように感じたのが、本作『Ank』だった。

    「われわれはどこから来たのか、われわれは何ものか、われわれはどこへ行くのか」

    「チンパンジーやゴリラには『StSat反復』というDNA配列があるが、ヒトにはない」という土台の部分は、実在する研究に基づいているようだ。そこから言語や意識、人類の進化へと壮大な因果関係を展開していく。どこまでが本当なのかわからなくなるほどの説得力があり、科学とSFの境界が曖昧になるようなロマンがあった。

    類人猿に人間の言葉を教えるのは、我々ができることを教えるということ。そうではなく、順番を逆にして考える。類人猿との違いからそもそも何が我々に意識を獲得させたのかを探る。
    人類の進化の過程での意識の芽生えを、AIの自我の芽生えへと接続していく視点が面白かったのと同時に、人間が生み出したものに自我が芽生える可能性には、何ともいえない不気味さを感じた。

    そして「京都暴動」というとんでもない響き。
    ゾンビ映画やパニック映画のようなエンタメに振り切ったワクワク感がありながら、「われわれは何ものなのか」という深淵を覗く、本気の佐藤究ワールドを堪能できた。

    0
    2026年08月16日
  • テスカトリポカ

    Posted by ブクログ

    圧倒的な情報量と知識量、そして容赦無い暴力描写が詰まりに詰まった圧巻の560ページ。
    その重量は正に鈍器。

    アングラな世界で暗躍する人間達の群像劇。
    こんな事が日本で起こるわけないでしょ!?というフィクション性も、ページをめくる度に説得力が垣間見えてゾワゾワ。

    こうしてスマホを弄ってる今現在も、どこかで本書のような事が行われている可能性は0ではない。正義の反対は別の正義。

    読み応え抜群で疲労困憊ですorz

    補足
    メキシコ麻薬戦争を読むと更に興味深く読める。とか言っとく。

    0
    2026年08月16日
  • テスカトリポカ

    Posted by ブクログ

    我々の多くは「テスカトリポカ」を知らないし、心臓の輝きを実際に目にすることもない。それでも、見ることのないものを想像することはできる。未知の感覚を読者の内側へ強制的にインストールし、死をも超えて神話を生き延びさせる作品として。

    0
    2026年08月15日
  • テスカトリポカ

    Posted by ブクログ

     メキシコの麻薬密売人と日本人の臓器ブローカーの邂逅、並外れた肉体を持つ少年・土方コシモ、倫理観皆無の臓器ビジネス、古代アステカ王国で信じられた恐るべき神々に交錯する数奇な運命など常軌を逸した暴力描写と各々が抱える欲望が凄まじく思わず飲み込まれるような迫力が詰まった作品だった。

    0
    2026年08月11日
  • テスカトリポカ

    Posted by ブクログ

    読んでいる間中 最初から最後まで 地鳴りのような、海鳴りのような、あるいは都会に暮らしていると夜更けに四方から聞こえてくる 低周波音のようなゴーーという音が聞こえてくる気がする。この小説に登場する、あるいは描かれる 私たちの日常からはあまりにもかけ離れた 強欲、暴力、そして不条理が ひしめき合う音なのだろう。 けれども 誰かの利益のために誰かを犠牲にする、という不条理 ないし暴力は 私の身の回りにもあふれている。知らず知らずのうちに 私もきっと 臓器売買者になったりそのブローカーになったり あるいは受益したりしているに違いないのだ。

    0
    2026年08月08日
  • 爆発物処理班の遭遇したスピン

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    どのお話も(主人公にとって)未知の存在に相対するので顛末が予想できず、短編でありながら一つ一つの作品の読み応えが重厚。

    水族館や動物園でみる身近な生物がこんな悍ましいピースになるのか、とゾッとする作品が多い。先んじて『Ank:』を読んでいたこともあり、人外生物は佐藤氏のアイデアを掻き立てる重要なモティーフの一つなのかな、と感じた。

    0
    2026年07月20日