佐藤究のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
『テスカトリポカ』を読み終えてまず感じたのは、これは単なるクライム小説ではないということだった。メキシコの麻薬カルテル、日本の臓器売買、少年兵、宗教、移民問題といった現代的なテーマを扱いながら、その奥ではずっと「神話」が流れている。
タイトルにもなっている“テスカトリポカ”は、アステカ神話における破壊と運命の神だ。つまり本作は、現代犯罪を描きながら、同時に“生贄の歴史”を描いている。
この視点が非常に異様だった。
カルテルの暴力も、臓器売買も、人間を消費するシステムも、単なる現代社会の歪みとして描かれているわけではない。むしろ、「人類が昔から繰り返してきた構造」として描かれている。
昔 -
Posted by ブクログ
地球上に我々しか現生しない人類。人類がいかにして人類になったのか、その鍵を握るのは鏡。本書の終わりには多数の科学論文等の参考文献が掲載されており、主人公鈴木望の立てる仮説がどこまで真実味があって、どこまでが完全なフィクションなのかが分かりません。いや、読み終わった後も彼の仮説を信じて疑わない自分がいます。自分の姿を知ったのはいつか、鏡や水面に映る自分はなぜ自分と言えるのか。毎日当たり前に見ている鏡を見るたびに、太古の祖先に思いを馳せるようになってしまいました。進化論について全く明るくありませんが、私の起源を学んでみたいと思わされます。動物園のあの柵の向こうからホモ・サピエンスを見つめるチンパン
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Posted by ブクログ
ネタバレ「人は誰かの肉を裂き、血を飲まずにはいられない。そこから逃げられない。けっして。その現実ゆえに、集まってパンを引き裂くのさ。そして分け合って食べるのさ。〜
俺は、パン裂きのようには、生きてこなかった。〜
いいか、よく聞きなさい。血と肉に飢える時があったら、今のように、パンを引き裂け。たとえ分かち合う相手がいなくとも、おまえがパンを引き裂けば、そこに誰かが現れるだろう」
テスカトリポカ以来の佐藤究作品
家族全員殺人鬼というぶっとんだ設定から
主人公の認識と現実との差分から少しずつ歪みが生まれて中盤にかけて種明かしかがされていく。
戸籍謄本を閲覧できないところから話が大きくなっていくと -
Posted by ブクログ
ネタバレ直木賞受賞のノワール文学。タイトルと表紙を一眼見た時から只者ではない魅力を感じ、常に読む機会を伺っていましたが一気に読破。本作者やジャンルには初めて手を伸ばしましたが、その価値があるパワフルな作品でした。特筆すべきは裏社会を描く圧倒的なリアリティ(っぽさ)とゴア表現、そして物語の根幹となるアステカの狂めいた神秘描写でしょう。麻薬が支配するメキシコから逃げ出し、日本に新天地を求めたルシアによって物語は始まりますが、愛着を持ったのも束の間ブラックマーケットの仕組みの一部として破滅して行く様子は面食らいました。ここで読者は本作の大方の雰囲気を掴んだことと思います。私は覚悟しました。
時は進み、最大級 -
Posted by ブクログ
ネタバレ猟奇殺人犯一家の長女、市野 亜李亜。
母は撲殺。兄は喉元に噛みつき失血死させる。そして父は、相手の自由を奪い、抜血により命を奪う。亜李亜自身もスタッグナイフで殺人を犯す。
人目に触れないように暮らしてきた一家だが、ある日、兄が惨殺され、母が行方不明となる。そして、兄の死体も消えてしまう。
猟奇殺人犯一家の惨たらしい殺人と現場。それを亜李亜が女子高生の目線で語りだす。
女子高生らしく、「煩わしい家族だ」と言わんばかりに。いや、家族に対して、どこか誇らしく愛情を持って。
不思議な関係性とグロテスクさに、グイグイ引き込まれた。
そして、兄の死と母の失踪。謎を追う亜李亜と不可解な記憶。
真実が分か -
Posted by ブクログ
これはフィクションだけど、実際に人間の脳って自己(自我?)を守るためならどんな狂った設定でも産み出して飲み込んでしまうんだろうなと、ありえない話なのに妙な説得力を覚えてしまった。
お兄ちゃんが殺されたうんぬん辺りから「これってもしかして」という予想は立ってしまうんだけど、それでも最後までスピーディーな展開で面白かった。
特に主人公が論理的でドライなところがとても好感度高
いです。
ちょうどFBIのプロファイリングの成り立ちを書いた本を併読していたので、殺人者の分類の話周りは、知ってる内容が出てきたのがちょっと嬉しかった(笑)
終わり方が「信じるか信じないかはあなた次第」風で、それはそれでしっ