佐藤究のレビュー一覧
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ネタバレ 購入済み
凄い!
凄い小説です。とてつもないロマンを感じます。
眼を覆いたくなるような残虐なシーンの一つ一つにも、意味がありました。
途中の暗号のようなやりとりや、実験の本当の目的。ロスト・エイプが絶滅してしまった理由。等々、最後まで読めば分かります。いや、ちゃんとは理解できていないのかもしれませんが、分かった気分になって興奮します。それくらい、丁寧に説明してくれるので、置いてきぼりにならずについていくことができました。
壮絶な展開、悲しい最後ですが、エピローグまで丁寧に書かれているので読後感がとても良いです。そして、類人猿に前よりずっと興味が沸きました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「細部に神が宿る」とはまさにこのこと。本筋だけを辿ればごくシンプルな話だが、あらゆる場所あらゆる時代のあらゆる人々の思想や哲学や歴史が異常性を感じるほど丁寧に積み上がってゆく。神話が秘めた暴力性とアンダーグラウンドの奥底の世界が響き合い、生み出されるとてつもないリアリティを帯びた虚構。それらが混じり合い、現代日本で激流となる姿が美しかった。
この物語には、巨大ビジネスを動かす天賦の才に恵まれた人間が数々登場する。彼らは隅々まで理性的に動き、落ち度や抜け道をゼロにして事を運ぶ。その行程は計算し尽くされた美しさすら湛えている。
だが、彼らの常識の外側から小さな異質分子たちがそこに溶け込む。彼らも感知し得なかった異質分子はやがて非常に人間味のある綻びをもたらし、途方もない時間をかけて計算尽くで築き上げられた物事は、突如として予想だにしない崩壊を迎える。この崩壊もまた美しい。
最終的に、人間らしさを失わなかった者が残した言葉や生きた証は、未来へと確かに刻み付けられ手渡される。物語の激流のはじまりに立っていた者たちの感情を排した苦闘の日々は、どこにも繋がらずに無関心の世界へ打ち捨てられる。この対比が、血と暴力と死が積み重なってきた物語に一筋の光をもたらしているように感じた。
しかし、すべてのはじまりとなった神話が再び突如として語られる。あれだけの血と暴力と死を積み重ねても、人智の及ばない力を起点とした混沌を前に一度は退避しても、人々が紡ぎ出した神話は再び後世の人々を飲み込み、再び世界を覆い尽くし、再び現実世界に影を落とし続ける。その繰り返しの中でみずから希望を手にする尊さを知った時、この物語は虚構を超えて現実世界に届く。まさに神話のように。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ第165回直木賞と第34回山本周五郎賞のダブル受賞作。やっとの事で読み終わった。
メキシコで麻薬密売組織の抗争があり、組織を牛耳るカサソラ四兄弟のうち三人は殺された。生き残った三男のバルミロは、追手から逃れて海を渡りインドネシアのジャカルタに潜伏、その地の裏社会で麻薬により身を持ち崩した日本人医師・末永と出会う。バルミロと末永は日本に渡り、川崎でならず者たちを集めて「心臓密売」ビジネスを立ち上げる。一方、麻薬組織から逃れて日本にやってきたメキシコ人の母と日本人の父の間に生まれた少年コシモは公的な教育をほとんど受けないまま育ち、重大事件を起こして少年院へと送られる。やがて、アステカの神々に導かれるように、バルミロとコシモは邂逅する…。
序盤の祖母編?あたりはなかなか読書スピードが上がらず、「本当にこれは面白くなるのだろうか?」と疑念を持ちながら読んでいた。なにせ当方、メキシコに全く縁もゆかりも馴染みもない。アステカの神々の名は読み難く、文庫本のフリガナは目がぼやける(年齢からくるもの)。
それでも読み進め、インドネシアで末永が登場し、大掛かりな裏のビジネスが立ち上がる頃から面白さを感じるようになった。
物語自体は一言では表現できないほどの濃厚なクライムサスペンス、とでも言えばいいのか。
基本は犯罪。麻薬取引と臓器売買をベースに、闇取引のオンパレード。そこにアステカの怪しげ(?)な空気が混ざり、小説は謎の魅力を増していく。
そしてコシモ。この無垢であり最強(最凶?)の存在が小説の空気を浄化するようにも思える。
描写はグロい。血飛沫は当たり前。人はあっさりと命を失い、斬首された人の頭はそのへんにゴロゴロと転がる。生きたまま心臓を抉られる。
そのへんの耐性が無い人にはオススメできない。
この小説を読み進めると、コカインって川崎あたりじゃ簡単に入手できてみんなやってそうな気がしてくるがフィクションだ。気を付けよう。
ラスト近く、テスカトリポカの真実(?)に気付いてからのコシモは暴走しすぎな感もあるが、物語の決着を付けるにはこういう流れにせざるを得ないだろう。
正直読むのに疲れた。が、面白かった。 -
Posted by ブクログ
実にアクの強い、でも奇妙な爽快感が脳裏を掠めていくような純文学だなぁ……と感心してしまった。これぞ佐藤究節というか。何作か読んでいて、文末が「〜た」「だった」の短い一文で淡々と事象を挙げていく傾向があるなと気付き、普通は単調に感じてしまいそうなものだけれど佐藤先生の場合はむしろそれが読み手を引き込んでいく独特のリズムを生み出しているのかな?と思ったりしている。解説でも「科学の感触があり、詩の響きがある」と評されており、言い得て妙。
『カネは変化するものだ。車、工場、ミサイル、心臓、胎児、DNA――』これ、後の作品に繋がってる?(思い当たるものでミサイル→幽玄F、心臓→テスカトリポカ、DNA→Ank)
あらゆる意味で始まりの一冊なのだと感じた。
‘‘自身の狂気と真っ向から向かい合う人間’’ってこう描写するんだ……という一つの解を得た気がする。読んで良かった。やっぱりわたしはこの人の作品が好きだ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ3.7
グロテスクな描写はあまり好きではないので、前半はやや敬遠していたが、中盤の兄の死後から、ミステリー要素が強くなったかと思えば、後半は殺人一家のミステリー問題から普遍化され、殺人とは何か、社会に切り込んでいった
主人公のアリアは統合失調症のように思えるが、作中で明言されるシーンはなく、それは特殊な経験をしたアリアだから幻覚や幻聴があったと言うわけでなく、本当に自分たちの見ている世界は正しく見えているか、と読者に投げかけているように見えた
Ca→abの存在など、都市伝説的な要素が物語に盛り込まれるのは好きなので、終盤はワクワクしながら読めつつも、誰が正しくて何を信じれば良いのか分からないという特殊な読書体験ができた