佐藤究のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
段々と文学的に奥深くなっていく佐藤究の渾身作。
主人公・易永透は2000年生まれの青年。
幼少期から空に強く惹かれ、航空機への執着は夢というより呪いに近いものだった。
やがて航空宇宙自衛隊に入隊し、最新鋭戦闘機F-35Bを
操る天才パイロットとして名を馳せるが、
不慮の出来事で自衛隊を離れることになる。
その後、透は空を求めてタイやバングラデシュへと流浪し続ける。
そんな空に取り憑かれた男の一生を描く物語。
まさに読んでいて狂気という言葉以外思い浮かばなかった。
派手なドッグファイトなどの戦闘描写はなく、
飛べなくなった時間の重みや、空への欲望の哲学的探求に重きを置いている。
三島由紀夫 -
Posted by ブクログ
ネタバレ佐藤究のデビュー作。
あまり有名ではない?し評価も高くなかったので正直あまり期待していなかった。
が、他の作品同様かなり読み応えのある作品で佐藤究作品の狂気が溢れている。
主人公が賭博にのめり込み、どんどんと狂気にまみれていくわけだが、読んでいるこちらまで頭がおかしくなるような読むドラッグのような作品。
特に後半、薬師寺やスキンヘッドの男との会話のシーンは殴られてるかのようなヘビーさとテンポ感で中弛みすることなく世界観にのめり込んだ。
特にこの作品から何かを学んだりすることは少ないかもしれない。
ただ、エンタメという観点で言えば最高にエキサイティングでスリリングなエンタメ作品だ。 -
購入済み
初めてこの作者の本を読みました
初めてこの作者の本を読みましたが面白かったです!
人間と猿の決定的な違いが言語であると同時にその差が言語でしかないということ。
それを証明するように人間の記憶に刻まれた本能。
それが物語を加速させ引き込まれてしまいました
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Posted by ブクログ
なぜ、作者はここで三葉虫を選んだのだろうか。
カバーの白い部分は三葉虫の形状。
カフカ『変身』の先“あの虫”の形状を思い描いたとき、作者のイメージに近いものが三葉虫だったのではないか?そんな想像をしてしまう。
カフカ『変身』は、お好きなようで作中でも
語られています。
舞台は、アメリカのハイスクール。依然としてカースト制度が根強く残っているという。私はその種の物語をあまり読まないため詳しくはないが、本作ではカースト下位に置かれた生徒が、日々、上位の生徒からの嫌がらせに耐える姿が描かれる。
そしてある日、彼は自ら“三葉虫的な形状”を具現化し、いわばカフカ的な「変身」を遂げる。
だが興味深いの -
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Posted by ブクログ
直木賞受賞の壮大な犯罪小説。かなり絶賛の声は目にしていていつか読んでやろうと思っていた作品のひとつ。そんなに話題なら、そのうち映像化しそうだし早めに読まなきゃ…なんて思っていたが、読み終わった今は思う、これは映像化無理だろ…人が次々と残酷な殺され方で葬られてゆく描写が続く。レベチのノンストップクライムノベル。
私にはちょっとハードボイルドすぎ、暴力的すぎということで私にしては珍しく星3つ。だけど星3つにするのを躊躇するくらい、この壮大なストーリーを組み上げ、重厚な設定を作り込み、読者を飽きさせずに語りきった作者の力量には舌を巻く。心躍らなかったくせに、なんだかんだ文庫で700ページ近い物語を -
Posted by ブクログ
純文学で勝負した『サージウスの死神』にはなかったエンタメ性・ミステリ要素が付与されて、それでもミエミエな展開なのはハナから織り込み済みか、最後はやはり純文学に終わる。どうもこの作者の作品には薬物中毒者のような世界観が広がっていて、読んでいると誇張抜きで頭痛や眩暈に襲われているような感覚になる。いや、たまたま体調不良だっただけか?ともかく、楽しい読書ではない…が…今まで読んできた優等生の権化のような江戸川乱歩賞作品とは一線を画す。ミステリの賞を与えるべきかどうかはともかく、この作者が新人離れした(当然か)とんでもない作家であることは間違いなさそう。