佐藤究のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
虚構と現実の狭間に投げ出されてしまう主人公の不安感を追体験しつつ、クライマックスに向けて洪水のように流れ込んでくる情報の量と血の量に溺れそうになりながら結末まで読み進む。プロローグを再読し、本を閉じた後も、クラクラとする眩暈に似た余韻がしばらく残り続けた。
理解しきれないほど深淵なことが語られているようでもあり、実はとんでもなく軽薄な内容だったのではないか?とも疑えてしまうような、ちょっとレアな読後感だった。
解説の中で「ドグラ・マグラ」が言及されていて、確かに類似性が見出せるかもと思ったり。
江戸川乱歩賞の受賞も納得。人間の内に潜む暴力性や異常性を分析し、それを分析すること自体の暴力性と異常性まで描き出してしまった怪作。一発で著者のファンになってしまった。 -
Posted by ブクログ
チンパンジーが絡んでくる話というのは当然知った上で読んでいた。前半の類人猿の説明がとても緻密で確実に読後の自分は少し賢くなった。
ただ、その説明パートもスルスルと頭に入ってきてページを捲る手は遅くならない。導入が長すぎるとダレてしまうことも多々あったが『Ank』は違う。
SFなのだが設定がリアルで現実にも起きうる惨劇に感じられ(もちろんありえないのだが)、他のパニック小説よりも恐怖感が生々しい。
類人猿と人間の違いに対する描写もおもしろかった。
自分は環境破壊の話などを見聞きすると常々「人間の行動も他の動物然り自然の一部ではないのか?人間の行動だけ特別視するのは自然に対しておこがましくはないか?」などと考えてしまう質なので考えさせられることも人より多かったかもしれない。
この読後の妙な納得感はあまり感じたことがないし多くの人に経験してもらいたい。 -
Posted by ブクログ
「幽玄F」(佐藤究)を読んだ。
〈三島由紀夫作品をモチーフに〉とあったので、私の中での食わず嫌いのビッグネームの筆頭が三島由紀夫であることを鑑みればなかなか手が出ないのも宜なるかな。なのである。
まあ最後まで一気に読んだので面白いのかと問われれば面白いって答える。
三島由紀夫思想が前面に出て鼻につくということは全くなくてというか私は気づかないまま戦闘機の描写に驚いているうちにラストを迎えていた。
まあ主人公は何かしらの矜持を貫いたとなと頷く。
物語の舞台がバングラデシュに移ってからの展開がマジか!?と唸る。
やっぱり感想としては〈面白い!〉でいいんだろうと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ戦闘機の速さに魅入られた男、易永透。最初は天才パイロットの成功小説かと思っていたが、そこは佐藤究氏。そんなもので終わるはずがない。舞台は日本、タイ、バングラデシュへと移り、不思議な物語へと誘われていく。
三島由紀夫の豊饒の海シリーズ、「暁の寺」「天人五衰」がモチーフになっている。昔、通読した際に、ちんぷんかんぷんで空気感だけは味わった記憶が蘇ってきた。
輪廻転生、ウロボロスの蛇、真言宗の経文、死と生の境界線、空の青…。
ラストがいい。
狂っている。でも透が本望を遂げて光になったその先は…。おそらく昇華し生まれ変わったに違いない。悲しみは無く、達成感に包まれるむしろ幸福を感じる読後感となった。