古川日出男のレビュー一覧
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紫式部本人による紫式部日記、ということで、所々補足があって理解しやすい作りになっている。
紫式部が小式部内侍のことがとても好きなこともしみじみ伝わってくるし、清少納言に対する苛立ちも現代的で面白い。
けれども使っている言葉が「ワイフ」「グルーミィ」など、度々普段自分は使わないものに置き換えられていて気が散ってしまった。
具体的にいうと、90ページの「大晦日の夜には鬼やらいがある」のところなんて、原文が「うちとけゐたるに」(くつろいでいたところに)が「いずれにしても、いつもはどこか冷めているわたしは、けれどもこの瞬間は、ただの冷静(チル)な物腰よりもチル・アウトをもとめていた。そう、くつろぎ。 -
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湯浅監督のアニメ「犬王」がこれまた傑作だったので、原作も気になり手を取ってみました。どうしても、アニメーションと比べると映像がない分、臨場感に欠ける印象はあるのですが、それでも口承のていで展開する短い文章が連続する構成は非常にテンポがよく、まるで能を見ているような気持ちよさがありとても新鮮でとても楽しめました。
あくまで個人的な感想なのですが、映画は友魚と犬王の友情がかなり濃密に(時に湿っぽく)描かれていたのが印象的で、かつそこが一番好きな点でもあったので、そのあたりが結構あっさりとしていたのは少し残念でした。(ただ、ラストの展開は小説版も負けず劣らず良かったです) -
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まさに古川日出男さんのノンフィクション。
歩く。考える。問う。語る。
福島が、イチエフを代名詞とする前、ゼロエフには一体何があるのだろう。
筆者の側を歩くように読む。
読みにくさはある。
歩きながら、見たり、聞いたり、考えたり、考えたことから思い出したり、するからかもしれない。
でも、そのテンポが、嫌いではない。
「残さないと駄目なんです。残さないと消える。もしかしたら消される。それを避けたい。だからね、慰霊碑はね、石です」
「想定外という言葉は許せない。あっちゃならない」
「いま、たとえば、(世間は)石炭を叩きます。原子力を叩きます。しかし、完全にー化石燃料を、原子力をーなしとしてし -
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ネタバレ映画を観た後に読みました。
呪いや演目についてなど、分からなかった点を知ることができました。
なので、作品そのものを楽しみという読み方ではなかったかも。
文体は平家物語にふさわしく、短く、時に繰り返しを用いたリズムのあるもの。
登場人物の心情などは細かくは描かれておらず、文章の余白やセリフから想像させるものになっています。
映画とは描写やシーンが異なる点もありました。
ただ、映画がなかったらこの作品を楽しんで読めたかというとわからないです。
これは平家を謡う犬王の物語であり、その犬王を謡う友魚・友一・友有の物語なのだということはわかりました。だから犬王の巻なのだと。
平家物語の予備知識が -
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古川さんの本は、「犬王」に続いて2冊目。あの小説のテイストが、そのままノンフィクション本に反映されている。人によって好みは別れそうだが(なお、私は少しだけ苦労した)、文体そのものがアインデンティティとなっている方がいるからこそ、本を探す楽しみ、ざらっとした触覚を堪能する楽しみがあるとも思っっている。
ゼロエフは、古川さんの内側にとってもとっても入り込む、というより引き摺り込まれる本で、それでいてその内側から福島という大きな存在を語る本だ。
とても私的な言葉と感情が、(ここであえて恐れずに使う言葉だが)手前から押し寄せる波のように読み手の行手を阻んだりも、また、引き波のように進行方向にむけて読 -
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2020年に開催されるはずだったオリンピック。
「復興五輪」を謳ったオリンピック。
その期間中に東日本大震災の被災地である福島県内を歩いて、オリンピックが歓迎されているのか、復興に貢献しているのかといったことを見て確かめようとした著者。
実際に2020年のオリンピックはコロナウイルスのパンデミックにより、延期になった。
だが著者は歩いた。
震災による原発事故で、大打撃を受けた福島。
椎茸栽培をする家に生まれた著者。
被災地に住まず、被災していない著者。
けれど、それは被災に限りなく近いと思う。
著者の心情を考えると切なくなる。
読み始めて一番最初に感じたのは、なんと勿体ぶった文章を書く人なのだ