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1995年、地下鉄にサリンが撒かれ、教祖が逮捕される。だが、教団は公判直後に教祖を奪還、後の歴史は軋みながら軌道を変えた。「予言書」としてその筋書きを書いたのは、教団に拉致され姿を消した作家X。だがそこには、復讐というもう一つのシナリオが埋め込まれていた。魂が共鳴する、当代随一の琵琶法師的現代文学。
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Posted by ブクログ 2022年04月13日
読んですぐにこれはオウム真理教と一連の事件を念頭に置いた作品であることは分かる。しかし、それをどう感じるかは、人によってだいぶ違うだろう。当時、親しい人たちが入信したり、被害にあったり直接的な影響があった人たち、わたしのように、同時代に生きながら、半分笑ってたり、何もできなかった人間もいる。テレビで...続きを読む中継される事態に目を離せなかった人も多数いるはずだ。また、存在自体を過去のものとして、終わったものとして遠くに認識している人も多いだろう。 当時、わたしたちは少なからず傷付いたはずなのに、すでにそのこと自体も忘れて生活している。日々のことにかまけて普段思い出さないくらいならいいが、わたしたちはあまりにも簡単に忘却し、また同じ過ちを犯しがちなのだ。ああいう事態が起きた根本原因は解消しておらず、なあなあのまま時だけが経過している。風化しつつある。 古川日出男は、それではいけない、何度でも思い出し、考えるのだ、と呼びかけているのではないか。彼が初めて著したノンフィクション『エフゼロ』もまた同じ思いで書かれたのだろう。 物語は、拉致監禁され、否応なくではあるがカルト教団の芯を作り上げることになった60代の作家Xと当時彼が拉致し自分の子供として育てることにした教祖二世の啓(けい)、対する教団側は、啓の生みの親であり教母として教団を実質上取り仕切るYを此岸と彼岸として語らせている。そして、彼らを結果的に繋ぐDJX。小説から生まれたラジオ番組が彼らを繋ぎ、接近させる。物語の大半は離れたところから語られるが、後半になると速度は大幅に増し、転がり出す。それは、「細工は粒粒仕上げをご覧じる」といった趣で、しかし、思わぬ展開に最後は放心状態になった。 古川の文体はしばしば読みにくいと評されるが、それは彼の物語に入っていくためのイニシエーション的な側面があるのだろう。あくまでも現実の地続きの世界を描きながらも、フィクションとして屹立している。だから、設定もいちいち細かく精確で、決して輪郭を曖昧にはしない。それがフィクションを描く際の彼なりのけじめなのだと思う。 彼の作品は、その真摯な姿勢が印象的だが、そこに描かれることは大真面目であるからこその滑稽さがにじみ出ている、そのバランスがいいんだよな。ちなみに、著者による朗読で聞いた田沼意次(もちろん本物ではない)は福島弁のおっさん口調であった。
Posted by ブクログ 2023年07月29日
ちょうど今、ついったもXになって、なんか旬? それはそうと古川さんの本の中では読みやすいというか、難解な方ではなかった。
Posted by ブクログ 2022年05月26日
新興宗教、予言書、小説、ラジオ、そして父と子に纏わる長編小説。話の筋は割にあっさりしているけれど、いつもながらディティールと構成の妙に圧倒される。読後、カバー下の遊びにもにやりとさせられた。
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