加藤かおりのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ過去の自分が今の時間軸にもう一人の自分として現れたらという思考実験的な内容であり、
登場する様々な人たちの生き方や選択をドラマチックに物語っていて、一冊の小説に収まっているとは思えないほど濃密な内容でめちゃくちゃ面白かった。
手に取ったときは分厚いと思ったけど実際には本の厚さ以上の内密さで、むしろ手に収まるサイズなのが異様。
物語の根幹をなす異常な事象について社会的なまたは科学的な、哲学的な、宗教的な観点でどのように見てその結果どうなっていくのかが思考実験としてすごくリアルで面白い。
それでいて読んでいく上で注目してしまうのはこの異常事態への対処法や解決法では無く、
視点人物となる人たち個々人の行き先についてを心中ずっとドキドキしながら追っていた。
性別も年齢も職業も多様な人物たちそれぞれの境遇や思考、感情を物語を通して知っていく中で、その誰かに偏ることもなく、本当に全員の身を案じていて読んでいる間中心休まることが無かった。
途中で最悪なペド野郎について発覚した場面はもう吐きそうな気持ちだった。
そして母親エイプリルがそれを知った場面の痛ましさがあまりに辛い。ちゃんと裁かれていて良かった。
時折、登場人物のリアルな心理描写が行き過ぎてグロテスクとも感じる程だった。
リアルさでいうと、今しがた自分が手に持ち読んでいる本と同じタイトルの本が入れ子構造式に作中にも登場して、それが物語とこちら側との境目を薄ーくしているようでゾクゾクする。
読んでいると著者の教養の高さと視点の多さに思わず驚嘆してしまう。と同時に、こんなにも異様で濃厚な作品を、こんなにも面白い形のまま翻訳してくれた翻訳者さんに最大の敬意と感謝の念を抱かずにはいられない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「知識や知性、さらには才気までをもつねに凌駕する見事なもの、それは無理解だ。」という私が考えていたことを最高な言い回しで表現された衝撃的だった言葉からスタートする第一部。
この世界はプログラムされているとして、けどそれが錯覚だとしたら?
もし私がダブルだったら、私が大切にする人全てダブルで存在するのであればそれはダブルが存在しないと同じ。けど私がダブルで大切な人がそうでない場合、私は孤独に耐えられるのだろうか
「足し算できる愛がある一方で、決して割り算できない愛がある。」
メメントモリではフレシノのlea saydouxを思い出し
そして私はブラックスワンを恐れている
久しぶりに面白い本に出会えた
海外文学は日本語訳がなんかしっくり来なくて、且つ言い回しが独特なので難しいと思っていたし、『香水』以来海外文庫避けてきたけど、海外文学も良いなと思えた作品だった。
文章量が想像以上に多くて、少し難しかったけどかなりお勧め。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「あなたについて」というタイトルが示すように、前半パートは語り手が謎のまま、エジプト人医師ターレクを主人公にして彼の物語が展開していきます。
序盤こそ訳書あるあるの読みづらさ(笑)と、かなり行間が詰まってる(改行がない)ことも影響し、紙面に圧倒されましたが、ターレクがアリーと出会い関係が深くなってくる頃にはすっかり物語の中に没入することができました。
学生時代から優秀で、父親のような医師になることを期待され、その期待を当然のことのように受け止め、真っ直ぐな道を歩んできたターレク。
貧しい家に育ち、性に奔放に生きる(ように見える)アリーに出会い、アリーの母との約束もあり、心も体もアリーに寄り添うようになります。
しかしターレクを襲った悲劇は、これ以上彼がエジプトで暮らすことを許してくれませんでした。
物語後半は語り手のメインが「僕」に移ります。
アリーとの一件で心に見えない傷を負ったターレクでしたが、悲劇が降り注いだのは彼だけではありませんでした。
悲劇は悲劇として心に焼き付いていくとは思うですが、背けていた事実にターレクは物語の最後でやっと向き合う覚悟します。
決して交わることのなかった「あなた」と「僕」。
やっと「あなた」と話せたことで「僕」はどんな答え合わせするのでしょう。
一点で交わっただけで終わらず、このまま寄り添って歩んで行けたらいいのかな。 -
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はじめは文学を読んでいるつもりでした.
静かで端正な文章が続き,人物が驚くほど丁寧に描かれていきます.
けれど,物語は思いもよらない方向へ進みます.
まるで短編SFにありそうなおとぎ話のような設定が現れます.
それを奇抜なアイデアとしてではなく,文学としての風格をもって描き切っているのが圧巻です.
不思議な設定に頼るのではなく,その中で生きる人たちの迷いや選択を丹念に積み重ねていきます.
だからこそ,読み終えたあとに残るのは設定の面白さだけではありません.
人間そのものを描いた物語を読んだという満足感です.
本が好きな人にこそ,ぜひ読んでほしい一冊です.
SFが好きだからではなく,文学が好きだからこそ,きっと心に残る作品だと思います. -
Posted by ブクログ
冷え切った気持ちを晴らすためヴァカンスに出かける夫婦。
最初からつまずく旅がはじまり、大雨のなか空港からホテルへレンタカーを運転中、車に何かぶつかった。
しかし、そのぶつかった正体を確認せずに目を背け、計画した楽しい旅行を実行しようとする。
不安がどんどん募りながら状況はさらに悪い方向へ展開していくストーリー。
結末に、なるほど、そうなっちゃうわけか。
と、ゾッとする感覚にスリラー?ミステリー?
となんとも不思議な読後感を覚えた。
主人公の夫の行動に苛立ちや失望感を感じつつ、妻の行動もなんとも理解しづらい。
これこそがこの作品の特徴で、行動や状況が淡々と進むなか、キャラクターの感情が詳細に描かれていないところが、読者の感情を物語の中に乗せたくなるのだと思う。
一般的な日本人の思想とは異なる部分が海外文学の面白さだと思っているが、作中の主人公の行動には、自分もそうしたくなるよね。と間違っていると頭ではわかっていても、逃避願望を理解できる部分もあり、より作品に引き込まれ楽しませてもらえたと感じる。 -
購入済み
面白かった! 最初は、取っつき難い作品ではないか、何か訳が分からないと思われます。やっぱり翻訳物は解り難いと思っていましたが、読み進めば、目が離せなくなります。私は、後半は一気読みでした。
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事前に何の情報もなく、シンプルにタイトルが気になって読んだのは久しぶりだった。こうやって出会えた本が面白かった時は、本好き冥利に尽きる。始めからずっと心つかまれた。子ども時代に私も漠然と抱いていた感慨を、やわらかく、しずかに、確かに描写されると、私の心にあった根雪が解けていくような感覚がある。
癒される感覚がずっとある小説だった。
内容がマイルドな訳では全くない。むしろ重たい。胸が張り裂けそうな出来事がいくつも起きる。でも傷ついた人に語りかけているこの語り口が切実で、優しい。優しい、はとても負荷のかかる作業だ。誰かの重荷を引き受けて、その人の悲しみを想像し、そっと抱き止めるという優しさは、無傷ではできない。たぶん、この語り手は傷だらけになってあなたを受け止めてくれた。
滅多に出会えない素晴らしい作品だと思う。
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Posted by ブクログ
嫌な気持ちになるが、面白い。
子どもを車で轢いてしまったかもしれないという事実から逃れるために、どんどん追い詰められ、また、同乗者である妻も絡め取られ、悪い方へと巻き込まれてゆく感じが、『イソップ童話』のようであり『笑うセールスマン』のようでもあった。そして、いろいろ画策したにも関わらず、結局、被害に遭わせたかもしれない子どもと、同じ身のうえになろうとしているところが皮肉だなと感じた。
大それたことをしたかもしれない時に、直面せず、かえって大変なことになるというシチュエーションは、日常どこにでもありそうだし、自分の身のうえにも起きそうで恐ろしい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ1830年のパリが舞台。7月革命?共和主義?まったく歴史に詳しくない私は、wikiに頼って何とか当時の社会情勢を理解しつつ読みきった。その手間がかかったにしてもとても面白かった。途中に挟まれる少年ダミアンの日記が悲しくて痛々しく、代議士の息子の死の真相を追いかける警部ヴァランタンとの話がどう結びつくのか。結構無茶な事をする主人公たちにハラハラしながらも、あぁそういう事だったのかと納得。ヴァランタンの孤立する性格、常に憂いをまとった雰囲気と対比するように、女優アグラエの明るさと勝ち気な性格が、彼を少しでも明るい未来へと導いてほしいなと思える結末でした。タイトルでもしやと思ったけどシリーズ1作目でしたか。2作目が無事に翻訳されますように。
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Posted by ブクログ
アフリカのコンゴで、想像を絶する凄惨な性暴力の被害を受けた女性たちの治療にあたり、現状を国際社会に訴え続けるムクウェゲ医師。その生き方や考え方を知れる一冊。
幼少期から紛争に巻き込まれた一市民としての経験がリアルに語られると共に、コンゴの歴史を垣間見ることができます。衝撃的なストーリーが次々に語られていくのですが、自分や家族を身の危険にさらしてでも活動を続ける、彼自身の行動と強い絆で結ばれた家族のあり方にリスペクトを感じずにはいられませんでした。
コンゴの問題や、難しい問題に立ち向かうムクウェゲ医師の生き方に興味のある方は是非読んでみてください。