加藤かおりのレビュー一覧

  • 異常【アノマリー】

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    ネタバレ

    本筋のSF部分は言うまでもなく大変面白い。
    一方で、それを差し置いても心理描写がとにかく多彩で、ヒューマンドラマ小説としても十分に楽しめた。

    多様な比喩表現で登場人物たちの心の機微をありありと伝えてくれた。
    例えば、粗雑な性格をした夫を持つ女性の話などは特に沁みた。
    若かりし頃、夫が自分のために詠んでくれた詩が、実はただの引用だと知った時の虚しさ。
    かつて心優しかった夫は今や乱暴な男性へと成り果てた。
    そんな夫を受け入れるために、自分の中で気持ちの落とし所を探る、苦痛で愛の無い作業を繰り返す。

    この手の描写を多様な比喩を用いて、懇切丁寧に人物を描いている。
    そのため、ヒューマンドラマ群像劇

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    2025年07月27日
  • 異常【アノマリー】

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    目的も理由も何もない絶対的な“異常”がある。
    そんな物語はラストも“異常”

    当然、感想もまともには書けないので、作中の文章を引用することに……
    「運命という言葉は好きではありません。それは、矢が突き刺さった場所に、あとから的を描き足すようなものだから」

    ジャンルにこだわらずに読むこと。

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    2025年07月23日
  • 夜、すべての血は黒い

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    狂気に染まることが美徳とされる戦場で、周囲からも畏怖されるほど人間味を失った行為を繰り返す主人公は、果たして死神なのか、狂人なのか、殉教者なのか、あるいは……。

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    2025年06月13日
  • 異常【アノマリー】

    ネタバレ 購入済み

    想像を裏切られる

    「第一部のラストで思わず本を落とした」という小島監督などの帯コメントにひかれて購入。
    SF読みなので一部のラストでめちゃくちゃ驚いたかというとそうでもなかったけど、その後の展開がすばらしい。
    私を含む多くの読者が(なんで? どうしてこうなったの?)と期待するタネ明かしが本筋ではなく、(巻末解説にもあったが)それにどう立ち向かうかを作者は描きたかったのだ。そこが目ウロコでおもしろかった。そういう物語でもいいよね。
    多岐にわたるジャンルへの作家の博識もすばらしいが、訳者のなめらかな翻訳がさらにすばらしい。
    おかげで様々な文体ジャンルを含む物語をすらすらと読めた。
    (アンドレの日常だけ、興味が持てな

    #カッコいい #切ない #エモい

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    2025年06月02日
  • サヨナラは言わない

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    母を亡くした娘と父。
    父は心に蓋をしてしまう。父の心の状態を気にしながら生きていかなくてはならない娘に、いろんな出来事、人がズカズカ入って来て、生活が変わっていく。
    心温まる物語。

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    2025年05月02日
  • 生き急ぐ

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    無意識と意識の鬩ぎ合いの中で人生を連ね、何かが起こったとき、無意識が途端に意味を持つ何かへと、かわっていることに気付く。
    核心への怯えが伝播するように、じっくりと向き合う一冊でした。

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    2025年03月09日
  • ちいさな国で

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    ネタバレ

    ガエル・ファイユの自伝的小説のようであり、デビュー作のようである。
    「ぼくは、ぼくの子ども時代を追われたのだ」この言葉がこの話の本質を得ているのではないかと思う。
    主人公は子どもから大人に変わる時期をはく奪され、両親も友達も近所の仲間も多くを失った。またその失った原因は外的要因である民族間の問題である。
    父が政治に興味を抱かせなかったのも、政治に関わることで民族というフィルターが貼られることを想ってであり、そのフィルターがなかったために、主人公はある意味では自然的に、ある意味では周囲の状況を理解できなかったのだと思う。
    また、主人公は何度も恐怖と怒りの天秤に関わるところは、民族間の争いが起こっ

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    2025年02月21日
  • 生き急ぐ

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    20年前に最愛の夫クロードをバイク事故で喪ったブリジット。2人で手を入れながら住む予定で購入した家に引っ越す直前の事故だった。事故に至るまでの様々な分岐点を振り返りながら、「もしも」を問い掛ける。
    SFやファンタジーならばタイムリープものになるのだろうが、本作では後悔と諦念の繰り返しになる。重い。つらい。だが、人生とはそうしたものだ。“運命”という言葉は使いたくないが、どれか1つでも違っていれば、結果もまた異なったのかもしれない。
    訳者あとがきを読んで、本作が著者の実体験に基づいたものだと知って激しい衝撃を受けた。

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    2024年12月07日
  • すべては救済のために

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    読んでいるだけで辛くなるような酷いことが、実際に起こっているのが恐ろしい。
    文字通り命がけで女性たちを救うムクウェゲ医師だが、その背景には、生まれて間もない自身の命が神によって助けられたという思いがあるようだ。
    無宗教の自分には、どうしてもなんとなく宗教アレルギーのようなものがあるが、信仰はここまで人を支えてくれるものなのかと感銘を受けた。

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    2024年02月06日
  • ちいさな国で

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    フランスの高校生はすごい。
    高校生が選ぶゴンクール賞を受賞した本作は、「ある秘密」同様、戦争のやるせなさと、痛いほどの悲しみを描く。これは、こういうのを読まないと本当に戦争に反対できないなと、そう思った。

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    2023年12月15日
  • すべては救済のために

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    2018年ノーベル平和賞を受賞したデニ・ムクウェゲ氏の自伝。
    ノーベル平和賞受賞者が常に危険と隣り合わせなことは、それだけ治安が悪い地域で活動されているということ。志があっても、命をかけてまで、行動に移せることではない。
    ムクウェゲ氏の功績ばかりに目が行きがちだが、本書は彼の人生が書かれていて、興味深い。
    信仰が悪い方へ働くのではなく、活動の支えとなっていることに救いを感じた。
    彼が言うように、指導者の意識が変わり、安心して暮らせる世の中になることを願う。

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    2023年08月21日
  • すべては救済のために

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    ネタバレ

    この著者のDVD「女を修理する男」を見てこの本にたどり着いた。
    このDVDに興味を持ったのは、「性暴力が兵器として利用されている」という衝撃的なニュースを読んだから。
    DVDよりもより詳しく著者の経歴やコンゴの歴史に触れているから、この本を読んでからDVDを見た方が分かりやすかったかも。

    コンゴに限らずアフリカの悲劇はなぜなくならないのか。
    国連は、アメリカは、先進国たちは一体何をしているのか不思議だっが、この本を読んで少しだけ理解できた気がする。

    資源が豊富なアフリカでは先進諸国を含むあらゆる利権が絡んでおり、アフリカの内戦の裏には先進諸国の影がちらついている。
    その情勢は複雑で、どちら

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    2022年07月03日
  • ちいさな国で

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    アフリカのブルンジ、おそらく初めて思いを馳せた国だと思う。
    ルワンダの虐殺だけではなく、隣国ブルンジでもツチとフツの争いが起きていたことに驚いた。
    人と人が争うことの醜さ。愛する人を失うことの受け入れ難さ。戦争が現実となった今、読まれるべき本だと心から思う。

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    2022年06月24日
  • マプチェの女

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    侵略者による先住民の大虐殺および軍事独裁政権による反体制派の弾圧(誘拐・拷問・殺害)というアルゼンチンの負の歴史が正面から扱われていることに伴って暴力描写も凄惨を極めており、恐ろしくはあったが大変勉強になった。「女装のゲイ」という翻訳は妥当なのか、原語でどのような言葉で表現されているのか気になる。

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    2022年02月24日
  • すべては救済のために

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    コンゴ民の歴史がリアルに表現されていてすごい。北欧のキリスト教慈善団体のコンゴ東部での活動がよくわかる。その中で現地人医師たちの考え方と行動、それを支える北欧慈善団体もスバラシイ。厳しい現実にもひるまず、住民目線の活動を継続するパワーは驚くばかり。海外からの支援から現地民による自立への移行も学ぶことができた。ドキュメンタリー「女を修理する男」をぜひ観たい。

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    2021年12月29日
  • ちいさな国で

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    舞台のブルンジは初めて名前をきく国だった。ホテル・ルワンダも映像としての衝撃があったけど、この小説は、特にお母さんの言動を通じて当事者としての体験が生生しく感じられる。
    中立に、平和主義で、事なかれ主義でいたい性格の主人公が、殺伐としていく状況から逃げたいけどどうしようもなく紛争に絡め取られていく様子が丁寧に描かれてた。少年時代とその喪失、家族の問題、特権階級として存在する白人たち、そして民族対立の憎悪と狂気と悲しみ。色んな要素がぐるぐると混ざり合う。主人公と同じく読者も、それらに翻弄されながら受け止めるしかない。できることとして、遠い異国の痛ましい話に関心を寄せ、心を寄せ、支援できることがあ

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    2021年11月04日
  • ちいさな国で

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    ブルンジ共和国でフランス人の父とルワンダ難民のツチ族の母の間に生まれた少年ギャビーの日常とそれを襲ったルワンダ大虐殺と内戦を描いた作品。そもそも無知すぎて作品背景についての知識があまりなかったので勉強になった。
    第二次世界大戦下イギリスの少年の日常を描いたロバート・ウェストールの『機関銃要塞の少年たち』を思い出したけど、大人から独立してドイツ兵を匿う子どもたちとは違って、自ら内戦に飲み込まれて子ども時代を奪われていく子どもたちの描写が苦しかった。その描写が瑞々しくあればあるほど。

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    2021年08月18日
  • すべては救済のために

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    この人は本当に素晴らしい。この強靭な精神力と信念を曲げない強さはどう培ったものなのか...宗教教育の賜物なのか、いずれにしても普通のお医者さんではなし得ないことをしていると思う。
    沢山の人に読んでほしい。

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    2021年04月22日
  • 念入りに殺された男

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    ネタバレ

    フランスのミステリー。新聞の書評で知り読みました。主人公が犯人。強姦されそうになり相手を殺害。自首すれば自分も家族も不幸なると考え、被害者が当然別の場所で殺され、死体が出てこないのも世間が納得する状況を何とか作り出そうとする。強姦しようとした被害者は著名な作家で、SNSをやっていたので、作家が生きているかのように、Twitterに投稿し、電子メールを親しい人に送る。主人公は小説家の秘書になりすまし、小説家に親しい人に接近する。
    人は周囲からどのように見られるかについて気になるが、別人格になりすます事で主人公が殻を破っていく過程がこの本の醍醐味です!地味な女性が異性を引きつける女性に変身するとい

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    2021年03月15日
  • 念入りに殺された男

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    かなりな周到さで、アレックスもれっきとしたソシオパスですね。どうなるんだろうと思いましたが、うまくいくもんなんですね。本当のレオが現れたら一気に崩れ落ちるような気はするのですが。

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    2020年07月29日