加藤かおりのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
事前に何の情報もなく、シンプルにタイトルが気になって読んだのは久しぶりだった。こうやって出会えた本が面白かった時は、本好き冥利に尽きる。始めからずっと心つかまれた。子ども時代に私も漠然と抱いていた感慨を、やわらかく、しずかに、確かに描写されると、私の心にあった根雪が解けていくような感覚がある。
癒される感覚がずっとある小説だった。
内容がマイルドな訳では全くない。むしろ重たい。胸が張り裂けそうな出来事がいくつも起きる。でも傷ついた人に語りかけているこの語り口が切実で、優しい。優しい、はとても負荷のかかる作業だ。誰かの重荷を引き受けて、その人の悲しみを想像し、そっと抱き止めるという優しさは、無傷 -
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ネタバレ検索を厳禁な小説です うっかり目につかないように、手早く読み進めようとしたのですが、物語は各人に迫って、短めに追っては次に移っていくので、垣間見える異常への関心を抱いても、前のアイツに興味があっても、ソイツには興味ないんだなぁという気持ちが湧いて、読み終えるまで、季節が移ろう程の時間がかかりました
作品として描かれている中で、フランスの小説の中での紋切型なアメリカや中国への印象が興味深かったです、日本についてもチラっと出てきて、こっちが花の都パリの豊かなライフスタイルしか想像しないのと同様に、向こうも浅く日本を切り取って、たまにニュースと関連付けて思い出すぐらいの関係なのだろうなぁと思 -
Posted by ブクログ
嫌な気持ちになるが、面白い。
子どもを車で轢いてしまったかもしれないという事実から逃れるために、どんどん追い詰められ、また、同乗者である妻も絡め取られ、悪い方へと巻き込まれてゆく感じが、『イソップ童話』のようであり『笑うセールスマン』のようでもあった。そして、いろいろ画策したにも関わらず、結局、被害に遭わせたかもしれない子どもと、同じ身のうえになろうとしているところが皮肉だなと感じた。
大それたことをしたかもしれない時に、直面せず、かえって大変なことになるというシチュエーションは、日常どこにでもありそうだし、自分の身のうえにも起きそうで恐ろしい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ1830年のパリが舞台。7月革命?共和主義?まったく歴史に詳しくない私は、wikiに頼って何とか当時の社会情勢を理解しつつ読みきった。その手間がかかったにしてもとても面白かった。途中に挟まれる少年ダミアンの日記が悲しくて痛々しく、代議士の息子の死の真相を追いかける警部ヴァランタンとの話がどう結びつくのか。結構無茶な事をする主人公たちにハラハラしながらも、あぁそういう事だったのかと納得。ヴァランタンの孤立する性格、常に憂いをまとった雰囲気と対比するように、女優アグラエの明るさと勝ち気な性格が、彼を少しでも明るい未来へと導いてほしいなと思える結末でした。タイトルでもしやと思ったけどシリーズ1作目で
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Posted by ブクログ
アフリカのコンゴで、想像を絶する凄惨な性暴力の被害を受けた女性たちの治療にあたり、現状を国際社会に訴え続けるムクウェゲ医師。その生き方や考え方を知れる一冊。
幼少期から紛争に巻き込まれた一市民としての経験がリアルに語られると共に、コンゴの歴史を垣間見ることができます。衝撃的なストーリーが次々に語られていくのですが、自分や家族を身の危険にさらしてでも活動を続ける、彼自身の行動と強い絆で結ばれた家族のあり方にリスペクトを感じずにはいられませんでした。
コンゴの問題や、難しい問題に立ち向かうムクウェゲ医師の生き方に興味のある方は是非読んでみてください。 -
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Posted by ブクログ
宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』。堀辰雄の『風立ちぬ』。夏目漱石の『夢十夜』。連城三紀彦の『戻り川心中』等々。
文章の美しさが印象的な作品はいくつかあるのですが、この『小さな国で』の文章も、それらの名作と同じくらい印象に残ります。
本編である少年時代の回想に入る前に、語られるギャビーの追憶。自身と似た境遇の難民へ抱いた想い。故国を逃れたことによる居場所の無さ。
その文章の詩的な儚さと美しさに魅せられると共に、その語りの奥に秘められた哀しさが、自分の中の琴線に静かに触れてくるような、そんな感覚を覚えます。
『ちいさな国で』の著者、ガエル・ファイユはブルンジ共和国出身。ブルンジという国はこの小説を読 -