あらすじ
あなたは僕を知らない。僕だって、あなたを知らない。
エジプト、カイロ。親に決められた既定路線の人生を歩む新婚の医師ターレクは、
ある日魅力的な青年アリーと出会い、その平穏な未来は一変した。
保守的な地域での同性愛と不倫は疑惑と波紋を呼び、そして物語は思わぬ方向へと転がり始める・・・。
喪失と欠落、そして家族の愛を描く珠玉の文芸作品。
カナダのフランス語圏の作家のデビュー作にしてフランスで大ヒット。フェミナ賞とルノードー賞の最終候補となり、「高校生が選ぶフェミナ賞」やリブレール賞(フランス版本屋大賞と呼ばれている)ほか様々な賞を受賞した、話題の一作。
[著者プロフィール]
エリック・シャクール
1983年カナダのケベック州モントリオール生まれ。エジプト人の両親を持つ。パリ・ドーフィンヌ大学を経てモントリオール大学で国際関係論の修士号を取得した。
金融業界で働く傍ら小説を執筆。第一作である本書は2023年カナダでの出版後フランスでも刊行されたちまち人気となり、同年度の「高校生が選ぶフェミナ賞」を受賞したほか、フェミナ賞とルノードー賞の最終候補に選ばれた。翌年にはリブレール賞、フランコフォニー五大陸賞などを受賞。
現在はモントリオール在住。
[訳者プロフィール]
加藤かおり(かとう・かおり)
フランス語翻訳家。国際基督教大学教養学部社会科学科卒業。訳書にガエル・ファイユ『ちいさな国で』、エルヴェ・ル・テリエ『異常【アノマリー】』、ダヴィド・ディオップ『夜、すべての血は黒い』、ブリジット・ジロー『生き急ぐ』(以上早川書房)、アントニオ・カルモナ『サヨナラは言わない』(小学館)、セシル・トリリ『ちぐはぐなディナー』(講談社)ほか多数。
[原題]
Ce que je sais de toi
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
どこをどう評価したら良いか分からないくらい最初から最後まで素晴らしかった。。
訳者のあとがきも素晴らしい。
いろんな感情が湧き上がるけど、とにかく切なさが一番大きい。でもやっぱりピッタリの言葉か見つからない!
自分の中でベスト3には確実に入った。
とにかく心にぶっ刺さったので星をさらに5個追加したい!
Posted by ブクログ
事前に何の情報もなく、シンプルにタイトルが気になって読んだのは久しぶりだった。こうやって出会えた本が面白かった時は、本好き冥利に尽きる。始めからずっと心つかまれた。子ども時代に私も漠然と抱いていた感慨を、やわらかく、しずかに、確かに描写されると、私の心にあった根雪が解けていくような感覚がある。
癒される感覚がずっとある小説だった。
内容がマイルドな訳では全くない。むしろ重たい。胸が張り裂けそうな出来事がいくつも起きる。でも傷ついた人に語りかけているこの語り口が切実で、優しい。優しい、はとても負荷のかかる作業だ。誰かの重荷を引き受けて、その人の悲しみを想像し、そっと抱き止めるという優しさは、無傷ではできない。たぶん、この語り手は傷だらけになってあなたを受け止めてくれた。
滅多に出会えない素晴らしい作品だと思う。