加藤かおりのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
2019年11冊目。
これは本当に多くの人に読んで欲しい。2018年ノーベル平和賞を受賞したコンゴ民主共和国の産婦人科医、デニ・ムクウェゲさんの自伝。
「世界最悪の紛争地」「第二次世界大戦以降540万人以上の人々が理不尽な理由で亡くなっている」...コンゴの状況は、いくつかの情報源からある程度知ってはいた。だけど、実際に現地で生まれ、現地に根付いて活動されている方の言葉から知る現状は、想像をはるかに超えるものだった。ここに言葉として書くのがはばかられるほど、性暴力の嵐の中にいる現地の女性たちの立場は厳しい。厳しいなんていうものじゃない。この世の沙汰とは思えない。
性暴力は、「安上がりで」 -
Posted by ブクログ
【魂を揺さぶる産婦人科医】
2018年ノーベル平和賞受賞者。コンゴ民主共和国東部で「女を修理する男」として活躍。医療のみならず、性暴力を撲滅するために、自らの命を危険に晒してまで圧倒的な行動力を持つ。
「性暴力」とは住民を脅すため、
軍人や警察官が、強姦し堕胎に至るだけではなく、膣に銃や刃物を入れ傷つける。膣に穴が開き尿や便が溜められず垂れ流しになってしまい、家族から辱めを受けたものとして追放されてしまう。
銃や砲弾より安上がりな「兵器」なのだ。
自ら手術をし心を癒すムクウェゲ医師からは、強烈なエナジーを感じる。ミッションを持つ人の輝きがある。
医療、福祉関係者には読まずにいられない一 -
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カリル・フェレ『マプチェの女』ハヤカワ文庫。
珍しいアルゼンチンを舞台にした冒険小説。全く期待はしていなかったのだが、まるで、アンデシュ・ルースルンドの『熊と踊れ』を彷彿とさせる非常に面白い作品だった。
その土地の匂いまでも感じるような小説には、なかなか出逢う機会は少ない。かつて、船戸与一という作家が居たが、彼は日本で唯一、砂漠の匂いを感じさせる小説を書いていた。本作は船戸与一が書いた砂漠の匂いをも感じさせる熱い小説だ。650ページに及ぶ大作なのだが、独特の荒々しい雰囲気と手に汗握るストーリーを最後の最後まで堪能出来た。
かつてアルゼンチンで起きたスペイン人入植期の原住民虐殺と1976年 -
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久しぶりにドップリ漬かる小説だった。近年はエンターテイメント・ミステリーと言えどもプロットの面白さだけでは成立せず、歴史や政治、恋愛、性風俗など様々な要素を重層的に積み重ねて、アクションあり、サスペンスあり、ラブロマンスありとサービスし放題にサービスしないとなかなか評価される作品には仕上がらない。
『マプチェの女』はまさにそのようにして成功した作品で、アルゼンチンを舞台にスペイン人入植期の原住民虐殺と、1976年の軍事クーデターから開始され1980年代まで続いた『国家再編成プロセス』(国家権力による左派勢力の大量誘拐、失踪)を背景に、マプチェ族の末裔ジャナと探偵ルベンが戦争犯罪者を暴くという -
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ネタバレ一部のラスト(180Pくらい!)までは苦痛だった。
物語がどこに向かうのか、ともかくわからない。
数ページごとにシーンが変わり、登場人物が変わり、それぞれの人物の物語もぶつ切り。わかりづらく、わからない。全体を通しての客観的すぎる文体も手伝い、「?」が続き、正直なところ2回くらい読むのやめよっかなと思ったりしました。
一部の最後、一つの異常な出来事にゾクゾクする。
そして二部。一部で出てきた人物たちの深掘りが進む。この出来事に一部のシーンがつながっていく。なんせ最初はわかりづらかったので、確認のために何度も一部のそれぞれのシーンを読み返してしまう。
個人的に好きな要素も出てきたりして、この -
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フランス発の不可思議小説。
11名の運命を描く。
何かを書くことが即ネタバレになりそうなので書けないが、はじめは読むのが面倒に感じるくらい緩慢だが、1/4を過ぎたあたりから事態は急展開を迎えて面白くなってくる。
ところどころ出てくるユーモアが基本的に風刺というか皮肉が効いているし、多少偏見かもしれないが、フランス人は本当に皮肉とタブーと不平・批判が好きなんだなあと本書を読むとしみじみと感じる。
現代においても我ら東洋の国々と西欧の文化や価値観の違いに如実に表れていて面白い。
そして後半ラストは我ら個々の人生に対するテーゼであり、熟慮できたのもよかった。 -
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ネタバレSFデカルト2.0
我々はプログラムにすぎないのだろうか。
仮に私たちがプログラムであるとして
私たちがゲームキャラクターを思い通りに操作できても自分達自身は自由に操作できない。
同様に私達が上位存在に操作されていたとしても彼らは彼ら自身を自由に操作できないのでは。
だからプログラムであろうがなかろうが完全に自由な存在などいないのだからその中でどうにか生きてゆかねばならない。
キャラクター同士のクロスオーバーが少なく「異常」にたいしてのオムニバス形式という感が強かった。故に読みやすいのだろうけど。
誰か1人でも読んでて刺さる人がいるかもしれない。
ラストの撃墜すると世界終焉エンドは気が利 -
Posted by ブクログ
ネタバレまず、シミュレーション仮説、世界線(人物)の分岐を扱ったエンターテインメントSFとして面白い。第一部の核心に触れるまでに不穏さが高まっていく感じがよかった。
後半に入り、何が起きたのかが明らかになってからはコピーが生まれてしまった人間たちそれぞれの自分との向き合い方に焦点が移る。複製との協力関係を選ぶものもいれば、隔離、あるいは抹殺という選択をするものもいる。この選択は自分の絶対性をいかに信じているかによるのかもしれない。ブレイク(おそらくサイコパス)は自分の絶対性を信じて疑わない。だから複製を抹殺した。アンドレは自分の過去の行いを悔いていた。だから複製にアドバイスを与え、同じ轍を踏まないよう