加藤かおりのレビュー一覧
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カリル・フェレ『マプチェの女』ハヤカワ文庫。
珍しいアルゼンチンを舞台にした冒険小説。全く期待はしていなかったのだが、まるで、アンデシュ・ルースルンドの『熊と踊れ』を彷彿とさせる非常に面白い作品だった。
その土地の匂いまでも感じるような小説には、なかなか出逢う機会は少ない。かつて、船戸与一という作家が居たが、彼は日本で唯一、砂漠の匂いを感じさせる小説を書いていた。本作は船戸与一が書いた砂漠の匂いをも感じさせる熱い小説だ。650ページに及ぶ大作なのだが、独特の荒々しい雰囲気と手に汗握るストーリーを最後の最後まで堪能出来た。
かつてアルゼンチンで起きたスペイン人入植期の原住民虐殺と1976年 -
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久しぶりにドップリ漬かる小説だった。近年はエンターテイメント・ミステリーと言えどもプロットの面白さだけでは成立せず、歴史や政治、恋愛、性風俗など様々な要素を重層的に積み重ねて、アクションあり、サスペンスあり、ラブロマンスありとサービスし放題にサービスしないとなかなか評価される作品には仕上がらない。
『マプチェの女』はまさにそのようにして成功した作品で、アルゼンチンを舞台にスペイン人入植期の原住民虐殺と、1976年の軍事クーデターから開始され1980年代まで続いた『国家再編成プロセス』(国家権力による左派勢力の大量誘拐、失踪)を背景に、マプチェ族の末裔ジャナと探偵ルベンが戦争犯罪者を暴くという -
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ネタバレ一応SFなのかな、と思う。
エルヴェ・ル・テリエという作家、寡聞にして存ぜず。この度話題になったということで初めて手にした。
久しぶりの★4をつけたいと感じる作品。
同じ飛行機が時間を異にして現れ同じ人が現れるーいずれも本物、というアイデアはなんとなく他のSFにもありそうな気がするのだが、それが大勢で、その中の複数の人にフォーカスし彼らの人生や事態への対応法などで人間を描く、というアイデアがなんだか新しい。
そういう意味では、道具はSFだが、描かれているのは人間だ。
問題の現象が起きた理由については、「シミュレーション仮説」というものが物語内で推測されている。実際にそれが正しかったのかどうか -
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前からずっと気になっていた本。
文庫化して、やっと手に取る。
冒頭の章で早々と二回ほど挫折して、他の本へ浮気。
読み終わると、早く読んでおけば良かったと後悔。
途中、第二部あたりからどんどん面白くなり、思わず笑えるシーンもあり、前半部分の点々とした人物描写が後半に凄く活きてくる。
ミステリーともSFとも取れるし、神学論争やコメディ、恋愛、物語の中の入れ子状の物語など、登場人物の誰に心情移入するかによって多数の読み方もできる。
小ネタや様々な言葉遊びも多い。
ラストは驚きつつ、これは翻訳家泣かせだろうな、という視覚効果も。
積読のまま挫折するより、読んでみて良かった。 -
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ネタバレ品性のあるブラックミラー
3月に異常をきたした人々の、6月の群像劇
◯登場人物たち
殺し屋、カエル、作家、弁護士。
◯品の良い展開
派手なスペクタクル展開にもできるのに、
あくまで人物を軸にしたストーリー展開
◯ワードセンスたち
ジューンとマーチ。
プロトコル42。
◯構成
一部
3月に同じ飛行機に乗った人々の紹介
6月末の話。皆がラストに国家の陰謀がチラリ。
二部
3月飛行機と6月飛行機。
三部
それぞれのビフォーアフター。
◯リアル?な政治的軍事的な流れ
◯SF展開に対する多角的なアプローチ
宗教、倫理、政治、たち。
◯三部の恐ろしすぎる展開
●人物描写の少なさ
キャラが -
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ネタバレ一部のラスト(180Pくらい!)までは苦痛だった。
物語がどこに向かうのか、ともかくわからない。
数ページごとにシーンが変わり、登場人物が変わり、それぞれの人物の物語もぶつ切り。わかりづらく、わからない。全体を通しての客観的すぎる文体も手伝い、「?」が続き、正直なところ2回くらい読むのやめよっかなと思ったりしました。
一部の最後、一つの異常な出来事にゾクゾクする。
そして二部。一部で出てきた人物たちの深掘りが進む。この出来事に一部のシーンがつながっていく。なんせ最初はわかりづらかったので、確認のために何度も一部のそれぞれのシーンを読み返してしまう。
個人的に好きな要素も出てきたりして、この -
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フランス発の不可思議小説。
11名の運命を描く。
何かを書くことが即ネタバレになりそうなので書けないが、はじめは読むのが面倒に感じるくらい緩慢だが、1/4を過ぎたあたりから事態は急展開を迎えて面白くなってくる。
ところどころ出てくるユーモアが基本的に風刺というか皮肉が効いているし、多少偏見かもしれないが、フランス人は本当に皮肉とタブーと不平・批判が好きなんだなあと本書を読むとしみじみと感じる。
現代においても我ら東洋の国々と西欧の文化や価値観の違いに如実に表れていて面白い。
そして後半ラストは我ら個々の人生に対するテーゼであり、熟慮できたのもよかった。