須賀しのぶのレビュー一覧
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ショパンの革命のエチュード、実は苦手だった。聞いているとなぜだか怖くなるから。
でもこの本を読みながら、何度か革命のエチュードを聞いた。
ポーランドの大使館で働く書記生の慎から見た第二次世界大戦の幕開け。
読むのが本当に苦しくなった。知っている単語や事実が出てくる度に、結末を知っている身として心を痛めながら読んだ。
辛いけど目を逸らしてはいけない物語だった。
戦争は罪のない人が1番犠牲になる。人が人でいられなくなる。
自由を求めて、祖国のために、人としての誇りを持って死ぬために戦った人々は素晴らしいと思うけど、
二度と起きてはならないことだと強く思った。
今日の日本も今一度、戦争とは何かを思い出して、政治に目を向けるべき。
ちなみに1番好きな登場人物はヤンだった。
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少し前に読んだが、ベルリンの壁崩壊事件とクラシック界での競争がバランスよく描かれており楽しめた。ドレスデンの情景が思い浮かぶような繊細な描写が素晴らしい。そこで作中に出てくるバッハのクラシック音楽を聴きながら読むことで、よりドイツらしさを感じられた。登場人物についても、色んな国から留学生として来ていることもあり、良い奴もいれば何だかんだ憎めないライバルなど、個性的で面白かった。
ベルリンの壁崩壊においても、実際現地で見届けたような臨場感があり、差し迫るものがあった。しかしながらその勢いに負けないくらい、クラシック・コンクールに向けての熱量も凄まじかった。本書を通じて、未知なる世界の体験を同時並行に味わえて、満足感が高かった。
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ネタバレ登場人物一人一人に矜恃や葛藤があり、キャラの作り込みが深いので、歴史が苦手な人もこの作品を楽しめると断言できる。むしろ、歴史に疎い人にこそ読んでほしい作品。
マジェナやハーニャなど芯の強い女性に何度も胸を打たれた。
そして、ヤンとレイとマコトが最後に別れる場面は何度思い出しでも辛い。3人で仲良く桜をみる夢が叶って欲しかった。
何度も戦場に戻ろうとする3人に対して、「戦わないで安全な場所に隠れて」と願ってしまった。だけど、もし自分が彼らの立場なら同じことをしないと言えるだろうか。
第二次世界大戦のドイツといえば、ユダヤ人迫害のイメージが強すぎて、ポーランドの悲惨な状況はほとんど知らなかった。なので、他の国の都合で何度もも凄惨な目に遭っていたことに驚愕した。
第二次世界大戦を色んな本で様々な立場の視点で読んできた。そして、読むほどに戦争は参加している者より、参加させられている者が圧倒的に多く、加害者はほとんど存在しないと感じさせられる。今もまだウクライナなど、世界のどこかでは辛い思いをしている人が沢山いると思うと、胸が痛い。
須賀しのぶさんの「革命前夜」が素晴らしすぎて、「また、桜の国で」も絶対に読もうと決めていた。今回と前作の高い期待を裏切らない作品で、作者がますます気になった。 -
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「キル・ゾーン」シリーズ6冊目
クアラルンプール基地に戻ったキャッスルたちだが、ラファエルを戦死させた傷は、思ったよりもキャッスルたちの心に深く残っていた。
一方、アクラで義足の手術を受けていたエイゼンの背後にいたキャッスルの父の思惑が徐々に明らかになる。
コタキナバル奪還をかけた空中戦が予測される中、敵であるレジスタンスも、冷血マックスの指揮のもと、着々と攻勢の準備を進めていた。
いよいよ戦いが始まったその時、キャッスルたちは意外な人物に遭遇して――。
これまでの背景が、一つ一つ解き明かされてゆく巻。
エイゼン。
ラファエル。
マックス。
そして戦況。
単なる敵と思っていたマックスにも、彼なりの事情があるようで。
軍事小説を読む時の、状況が明かされ、理解できていくことに対する快感がきちんとあるので、少女小説の中でも骨太な作品だな、と読むたびに思う。
キャッスルも、もう少し精神的に強くてもいいかなと思うのだが、ラスト近くではしっかりと自分を立て直しているのが嬉しい。
それにしても、エイゼンもラファエルも、そして敵の雄ふたり……マックスもサリエルも、いい男だな。
そして、私は意外とシドーのロマンスも応援したい。
簡単な感想で、あまり役には立たないが、今日はこれで。 -
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「キル・ゾーン」シリーズ 5冊目。
やっとのことでボルネオ島を脱出したキャッスルたち。
かろうじて維持している基地で、次の作戦に備えるが、上層部は再びボルネオ島に戻って、人質の救出に当たれと命じた。しかし、その任務からキャッスルは外されてしまう。
一方、脱出のために自らの義足を売ったエイゼンは、ある秘密を抱えていた。治療のため、彼はクアラルンプールへ。
キャッスルは一番近しいエイゼンとも離れ、どうするのか……。部下であるラファエルもまた、キャッスルを案じていた……。
私が同僚なら、「ひどい作戦ね。……行くけどさ」と、キャッスルに言うだろう。
このお話、レジスタンス側についている、火星都市の思惑も、キャッスルたち月面都市を背後に持つ政府軍も、別にどちらが正しいわけではない。戦争はクソだ、という事実があるだけで、やめる気にならなけりゃいつまででも続く。どちらの味方もするわけではないが、どうしてもキャッスルたちの側に立って読む。
だから、コタキナバルに戻るのが、薄ら怖いしキツイ。
今回は、エイゼンとも離れ、ラファエルも……いや。
いろいろあるのだ。
キャッスルは、ある意味、自分の実力で生きて戻るしかない。そういう巻である。
タイトルの『嘘』については、書かない。
読む意味がなくなるので。
良い小説ほど、言葉を奪う。
さあ、食事をしてこよう。
2時半だというのに昼食もまだだ。
これを書いて、目が回るほど空腹だと気がつく。
次の『赤と黒』は、その後だ。 -
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「キル・ゾーン」シリーズ 第4巻
今回からは紙の書籍である。
レジスタンスの覇権拡大により、敵に前線の重要基地を奪われ、中核基地であるコタキナバルにも戻れなくなったキャッスルたち。エイゼンや脱出に一役買ったラファエルらも生きている。一行は、ひとまず中立地帯のクチンを目指すことになった、
ジャングルを這うような逃避行はつらい。負傷した人員が、次々命を落とす中、敵のスナイパーから標的にされてしまう。恐怖をわざと煽るような襲撃。
彼らは無事に密林を抜けることが出来るのか?
あいかわらずシビアな展開が続く。
ジャングルに潜み、視えない敵を警戒する。
尽きた食料の代わりに、蛇を食べる。
それは確かに怖いし、つらい。
しかし、本当に怖いものは別にある。
「こいつさえいなければ、もっと楽に行軍できる」
その、気持ち。
これだけ書けば、その言い分は、確かに身勝手なエゴに溢れているように見えるけれど。
味方を切り捨ててでも生き延びたい気持ちを、誰が笑えよう。この、重いが、ありそうな感情との対決。
そして、視えない狙撃手とエイゼンの対決が、本巻の白眉である。
エイゼンが、タバコを消すシーン……としか、今は書けないのだが、そのシーンのタバコの火の赤が、ずっと目の裏で残って消えない。
内側にある、さまざまな思いの火。
消えゆく時の、命の残り火。
どちらにも見えて。
そう長い話ではないのに、読むのに時間がかかった。
まるで行軍そのものに、かかった時間のように。
冷たい水を飲んで、息を吐く。
このまま一旦、読み進めよう。 -
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2016年第18回 大藪春彦賞受賞作
1989年の東ドイツという、とても特殊な地域と時代を、日本人ピアニストの視点から描いた希少な小説でした。
中高生の頃、教科書で見たベルリンの壁の写真。その壁がどれほど人々を抑圧し、自由を奪う存在だったのかは、当時の私には具体的に想像することができませんでした。
日本では昭和から平成へと時代が移り、やがてバブル経済は崩壊し、「失われた30年」と呼ばれる時代へ入っていきます。その頃、東ヨーロッパの若者たちは何を求め、何を願って生きていたのか。
芸術を学ぶために留学した学生でさえ監視の対象となる厳しい統制社会。その中で、音楽を西側への希望や自由への足がかりとしようとする東側の学生たちの姿も描かれます。
そこに、東ドイツゆかりのヨハン・ゼバスティアン・バッハの楽曲が織り込まれ、青春群像劇としての趣も加えられています。
私は音楽の素養がないため、作中で引用される楽曲から十分なイメージを膨らませることができなかったのは少し残念でしたが、クラシック音楽に親しんでいる方であれば、当時の東ドイツの空気をより深く味わえる作品ではないかと思います。
一方で、ピアノ、歴史、青春群像劇という三つの要素が並行して描かれるため、やや焦点が揺らぎ題材の魅力が大きいだけに、もう少し軸を絞って描かれていれば、さらに物語に没入できたようにも思います。 -
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1945年夏、敗戦翌日
昨日まで信じてきた教育が一夜にして否定され、日本全体が敗戦の現実に染まっていく。すべてを失った今だからこそ、未来を担う若者たちの心に希望を取り戻したい―戦争によって途絶えていた「高校野球大会」を復活させようと、かつての甲子園球児である新聞記者が奔走する物語です。
私は高校野球の歴史には詳しくありませんが、巻末の参考文献を見ると、新聞記事や当時の記録など、さまざまな資料をもとに高校野球復興の歩みが描かれており、史実に寄り添った小説なのだと感じました。
タイトルの「夏空白花(なつぞらはっか)」は既存の熟語ではなく、須賀しのぶさんによる詩的な造語のようです。
夏空の下、球児たちが白い花のように球場へ咲く。これからの少年たちへの希望であり、戦争によって希望を断たれた少年たちへの鎮魂でもあるようでした。
高校野球という題材を通して、敗戦から人が前を向く力を描き切った、須賀さんの高校野球への深い思い入れが伝わってくる熱い一作でした。