新津きよみのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
女は怖い。
男はどうしょーもない。
この本で起きる事件は、大体が、男の自業自得である。
女の方とて、それなりにブーメランを喰らうのだが、女が怖いのは、ブーメランを恐れないからだ。
男は保身をする、ずるい生き物。
女は刺し違えてもいいと思っている。
女は弱いから、自分に逆らわないと思い込んでいてはいけない。
自分が女の上に君臨していると思い上がってはいけない。
しかし、出てくる女性が皆、ちょっと狂気。
なぜそこまで固執してしまう?
なぜ尾行してしまう?
全てに「やられた!」と思うオチが付いていて、それでもまだ何かが始まりそうな不穏さを孕んでいる。
『夫が邪魔』
趣味の良い邸宅に住まう、人気小説家・朝倉夕子。
彼女の小説が売れ始めると共に、夫が執筆をさせまいと完璧な家事を強要してくるようになった。
ある日、熱狂的なファンと名乗る、片山京子から、家事をお手伝いさせて欲しい、という手紙が届く。
「夫が邪魔」は、「朝倉夕子」とともに脈々と受け継がれていくのか。
『マタニティー・メニュー』
元彼と結婚した女の妊娠を知る。
女性特有の病気で子宮をとってしまった柿沼よしみは、子宮のある女に嫉妬する。
『二十五時の箱』
妻のいる男の子供を孕ってしまった、小倉香陽子(おぐら かよこ)が羽田空港のコインロッカーに入れたものとは?
『左手の記憶』
スキーに行って右手を骨折した作家・佐伯郁弥(さえき いくや)はワープロを打つにも苦労する。
生まれつきでは左利きだったのだが・・・
口述筆記のために雇った女性の正体とは?
『捕えられた声』
あなたの声が好きなんです。
気持ちの悪い電話。
『永遠に恋敵(ライバル)』
怖い女たちだが、どこかコミカル。
彼女たちの見栄の張り合いと負けず嫌いのために事件が起きたようなものだが、男の人生が壊れても、それは終わったもの、と切り捨てられるのがすごい。
『殺意が見える女』
由美は、喫茶店で離婚届を凝視している女を見て、激しく興味を引かれた。
自分と似ている。
「夫が邪魔」と構造が似ているかもしれない。 -
Posted by ブクログ
死んだ人が見えるとか写真に写るというような話は、夏になってくるとテレビを中心に増えてくる。怪談や超常現象というのは夏の風物詩のようなものだが、子どもの頃にはそれが怖くて怖くて、だったら見なければ良いのに好奇心で見てしまい、それが元で夜怖くて寝られないという訳の分からない状態に陥っていた。
今考えてみると、子どもだけに「死」というものを漠然と捉えていて、「死」イコール「怖いこと」だと考えていたからだろう。また、身内親戚を含めて人の死にそれほど遭遇しているわけでは無いので、 「死んだ人」イコール「怖い存在」だという気持ちを持って当然だろう。
それが年齢を重ねるに連れていろいろな「死」に出会わざるを得なくなり、徐々に死ぬことに関しての怖さが薄れてくる。もちろん死ぬことはいまだに怖いし幽霊も怖いのだが、例えば亡くなった両親が姿を現すとすれば、怖いと思うよりもまずは懐かしいと思うのではないだろうか。私は今でも亡くなった父や母が夢に出てくることがあるが、目が覚めた時には夢に出てきてくれたことを感謝してしまう。それだけ自分が亡くなった両親の年齢に近づいているということだろうし、人として覚悟のようなものが生まれてきたということかもしれない。
新津きよみさんが書かれた「 彼女の時効 (光文社文庫)」という一冊は、交通事故で亡くなった夫の命日に交通事故で亡くなった女性の幽霊と出会うという場面から始まる物語だ。
「夫をひき逃げで失った浅井久子。夫の命日に事故現場を訪れた彼女の前に現れたのは、交通事故がきっかけで殺された内海政子の幽霊だった。奇妙な幽霊との同居が始まり、次第にわかってきた政子の過去。久子は政子が気になっている娘探しを始めるが、2人の奇妙な接点から事件の真相が明らかに。(ブックスデータベースから)」
交通事故で夫を亡くした久子は、子どもの頃から「亡くなった人」が見えてしまうという特別な力を持っていた。久子は亡き夫の命日に夫が交通事故に遭った場所に出向いたところ、ふらふらと行ったり来たりしている女性を目にして声をかけるのだが、それが交通事故で殺された政子との出会いだった。政子は亡くなった当時の記憶を失っていたが、久子の家で生活するうちに徐々に記憶を取り戻し、あとに遺した娘を探したり自分を殺した犯人の手がかりを探したりするようになる。一方で久子も夫をひき逃げした犯人探しを行うなかで、政子の娘に関係する新聞記者から新たな情報を得るなど、時効が過ぎてしまった事件ながら手がかりを掴んでいく。
幽霊との同居という摩訶不思議な設定ながら、それを不自然だと感じさせないのは著者の文才があってこそだろう。また、2件の轢き逃げ事件の犯人を追いかけながらも、「時効撤廃」という社会的な流れを物語の中に織り込んでいるのは、社会派ミステリーの旗手ならではのストーリー展開だなと感じた。
ミステリーながら、読後に胸が暖かくなる素敵な物語だった。