松岡圭祐のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
柴五郎の言葉が心に突き刺さってくる。
個人の基礎能力の育て方により、人間性を形成してゆき、瞬時の行動を作り出す。
基礎能力の育成は育った生活環境であったり、指導であったりする。それは、基礎能力による読み書き、計算など当然に備わっている能力があり。親切で真面目で勤勉で信頼ができ気配りがきいていることにつながる。
ラブロフがつぶやいた。「お前らとは戦争したくない」
「俺もだよ」桜井は震える声でいった。「そんな馬鹿なことになるはずがない。そう信じている」
「お前をどう憎めばいいかわからん。親切で、真面目で、勤勉で、信頼できて、気配りができて、低姿勢だ。ロシア人はひとつもない」
「そんなことはない」
「いや。お前らは立派だよ。ほかの誰よりも」
君らは何が正しくて何が間違っているか、客観的に取捨選択ができる。なにごともきちんと取り決め実行に移す。君たちの本質は正道にあると思う。
きみに学ぶ素質あったからだ。学ぶ素質があったのは、日本人だからだ。 -
Posted by ブクログ
黄砂の籠城のB面
腕っ節の強い飲んだくれの元船乗りの張徳成の成り上がりストーリー!
物事の理解力と自分の言葉への置換、そして瞬時の判断力と周囲の思惑により、義和団の天下第一壇大師へと祭り上げられて行く。
一方、清国の中枢と天津の情勢などにより何故宣戦布告へと向かっていったのかが描かれている。
それと某宗教団体の大航海時代以降の布教活動への問題点も間接的に提起されている。
何れにしても本作品は黄砂の籠城とついになる物語であり〜籠城を読んでいるか?読んでいないか?では面白みが全く異なる!!!
張徳成は農民一人一人が学を身に付ければ世の中が良くなると本作で語っていたが、確かに現在の日本を見れば貧困や不条理な死は少ないと思われる。しかし学問だけに慢心し国民の全てが優れた道徳を身に付けなければ、新たな格差や不条理が産まれてくるという事を忘れてはいけない。
本作の舞台となっているあの国の古代の思想家達から学べるものは少なくないと私は思う。 -
Posted by ブクログ
千里眼のように読みやすいと思ったのに・・・
漢字とカタカナが多く、出てくる名前も外人が多い。
読みづらい!!
が、しかし・・・
面白い、面白い・・・
日本人の心がつまった行動・・・
日本人の謙虚であり勇気ある行動が認められるところは心がすーと、する。
私だけだろうか、ビジネスの精神に通じるところがあると思うのは。
「三十年と少し前、日本は武士の国だった。家には夫の帰りを待つ妻がいた。それが今では、夫がスーツを着て会社へ通い、妻も暇を見つけて工場で働く。私たちが数百年かけて獲得した近代的な社会制度から科学技術までを、日本人は一代もかからず学びとった。」
「勤勉で勤労、集団を重んじ、貧しい生活にも耐える。まるで国民全員が軍人だ。」
「武士道を受け継ぎながら現代社会に適応している。それが日本人の特質なんだろう。」
「敵と己れ以外を知るために最前線にでる。でなければいかに地図を精密に描こうとも、作戦は机上の空論にすぎん。」 -
購入済み
日中戦争までの流れ
日本が近代国家になる過程で、末期の清王朝と北京で列強と共に戦った、日本がある程度列強に認められた戦いであり、将来の日中戦争につながる籠城戦と思います。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ〇 評価
サプライズ ★★★★☆
熱中度 ★★★★☆
インパクト ★★☆☆☆
キャラクター ★★★☆☆
読後感 ★★★★★
希少価値 ★☆☆☆☆
総合評価 ★★★★☆
浜宮絵梨子による社内でのいじめと鮫島親子による恋愛工作の2つのエピソードがメイン。それ以外にもラテラル・シンキングについてのエピソードやちょっとした雑学がちりばめられている。αシリーズの最終巻として読者サービスがびっしりという印象。熱中度は高く、最後まで楽しく読める。
鮫島親子の企みがコミカルに描かれており、ラストの作品としては謎がやや小粒かな…と思っていると最後にひっくり返される。鮫島基成は単なるバカ息子ではなく、恋愛工作の全てが暴力団から鮫島俊学が愛想をつかされるためにやっていた行為だったとは…。これは全く予想できず。サプライズ感は十分。
とはいえ、それでもやや小粒という印象はぬぐえない。そもそもαシリーズ全般がQシリーズより「人の死なないミステリ」として軽めの要素が強い印象。そのため、インパクトは弱い。キャラクターも、絢奈、能登厦人といった主要キャラクターこそ十分に生き生きしているが、壱条那沖はイマイチ活躍できず。鮫島親子や浜宮絵梨子はそこまで魅力的に描かれていない。
総合的に見るとギリギリ★4というところ。さて、これで松岡圭佑の「人の死なないミステリ」シリーズは全て読破。しばらくは松岡圭佑から離れる予定。
〇 メモ
プロローグは浅倉絢奈のラテラル・シンキングの冴えの紹介のため、能登厦人の指導シーン。それから武蔵小杉での自動車泥棒事件。絢奈はラテラル・シンキングにより、寒い日にキーをつけっぱなしにしているクルマを狙うという犯行方法を看過。鋭い観察眼でキーの隠し場所を見付け、自動車泥棒事件を解決する。
自動車泥棒事件は、塚本組という暴力団のシノギの一つだった。ここから暴力団のシンジケートの話へ。暴力団のシンジケートのボス鮫島俊学は、息子の基成から絢奈と交際できるような工作をするように頼まれる。俊学は塚本組に依頼し、塚本組の幹部である芹沢は、絢奈のツアー中にツアー客の財布がすられるという事件を起こし、これを基成に解決させることで出会いのきっかけを作ろうと計画する。絢奈はラテラル・シンキングにより犯行方法を見抜き、すられた財布の在りかも見つけ出す(犯行方法→リバーシブルのセーターを使ったトリック。財布の隠し場所→窓の開かない特急の中から、連結部のジャバラを切り裂き、車外に財布を出した。共犯者が拾いに行く)。
絢奈は口紅をしていたことから車内にいたシスターが共犯者であることを見抜く。シスターの携帯のメールから黒幕が駿河湾の船上にいることを暴く。絢奈は見事にすられた財布を取り戻した。
絢奈が勤務する派遣会社クオンタムで、エース的存在である浜宮絵梨子は、絢奈が社内でいじめの標的になるように工作を行う。
基成と絢奈を交際させるという計画。昇竜会の最高顧問である磯島の計画も失敗する。クオンタムの職場における絢奈のいじめもエスカレート。基成と絢奈を結びつけるというシンジケートの計画は更に失敗。鮫島俊学自身が乗り込みも失敗する。
絢奈が新人と仲良くなったことなどをきっかけに、浜宮絵梨子の絢奈に対するいじめは失敗に終わる。浜宮は絢奈を泥棒に仕立て上げようとするが失敗。絢奈は浜宮を許す。
シンジケートを構成する各組は鮫島に基成と絢奈の交際に関与することからは手を引くと明言する。
白昼の街中で絢奈は鮫島親子にさらわれる。誘拐され監禁されている場所で絢奈は意外な事実を口にする。「鮫島親子は警察に逮捕されたがっている」と。真相は、基成は絢奈と結婚したいわけではなかった。これらの行為は、鮫島親子がシンジケートを抜けるため、各組に愛想をつかされるためにやっていた行為だった。結婚を目的とする誘拐で逮捕され、前科者になり執行猶予を得る。そうすることでシンジケートを抜けることを計画していた。絢奈はそのことを見抜く。浜宮もラテラル・シンキングで直観的に警察への通報を辞めた。壱条那沖と浜宮が現れる。那沖は、鮫島に、これまでのシンジケートの構成員と悪事をすべて警察にぶちまけるように進言する。そうすることで事実上の司法取引が可能ではないかと伝える。鮫島親子はその選択を決断する。
全国の指定暴力団のうち4分の3が一斉に逮捕されるというニュースが流れる。絢奈と那沖は新居で同居を始める。
エピローグは絢奈の機転でツアー先で窃盗犯を逮捕するというもの。「出会った人を正しい行き先に導くのが、添乗員の仕事だもん。閃きの小悪魔に引退なし」 -
Posted by ブクログ
陸軍士官学校第3期の柴の同期には、秋山好古大将がいる。
1899年(明治32年)10月の陸軍中佐進級。1900年(明治33年)3月、清国公使館附を命ぜられる。同5月、義和団の乱。1907年(明治40年)11月、陸軍少将に進級。1912年(大正元年)9月、重砲兵第1旅団長。翌1913年(大正2年)8月陸軍中将に進級。1914年(大正3年)5月、第12師団長に昇進。1919年(大正8年)8月、陸軍大将に進級する。同年11月、台湾軍司令官に進み、1921年(大正10年)5月の軍事参議官を経て1922年(大正11年)11月より待命、翌年3月に予備役被仰付となり、1930年(昭和5年)4月に退役。1945年(昭和20年)、太平洋戦争敗戦後に身辺の整理を始め9月15日に自決を図る。墓所は会津若松市・恵倫寺。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ〇 評価
サプライズ ★★★★☆
熱中度 ★★★★☆
インパクト ★★★☆☆
キャラクター ★★★☆☆
読後感 ★★★★★
希少価値 ★☆☆☆☆
総合評価 ★★★★☆
壱条那沖が壱条凌真の子どもではなく、壱条真尋がタイで浮気をして生まれた私生児である…というスキャンダルが報道され、那沖と絢奈が騒動に巻き込まれるというストーリー。実際に、真尋が一人でタイを訪れ、DNA鑑定まで受けていたという事実があり、真尋が黙秘を貫くため、疑惑が深まる。黒幕の企みにより、凌真と那沖が親子ではないというDNA結果まで報道される。なぜ真尋が黙秘を貫くのかという点がポイントとなる。真相は、不妊治療をしていたというものであった。さすがにこれはリアリティがない。不妊治療は隠したいことではあろうが、ここまで壱条家が追い込まれていれば、証言をすればよいだけのこと。ここはもう少し説得力がある理由がほしかった。事件の真の黒幕は、凌真と同僚の議員であり、盟友でもあった柴原陽太。比例代表で次点となっている息子を当選させるために、比例代表で当選していた凌真を失脚させようとしていた。私生児騒ぎのスキャンダルは、資料を保管している象山荘に赴き、不正な資料を発見するという段取りだった。絢奈は事前にこの企みに気付き、ブラックライトを利用したトリックなどで犯行を明るみにする。黒幕の意外性は十分。消去法で当てることはできるが、盲点となる存在である。動機の伏線もあって意外性は高い。最後は槙島龍生が海外旅行に行ったことがないということをラテラル・シンキングを駆使して暴く。意外性、熱中度は高い。最後まで一気に読める「よくできたエンターテイメント」。絢奈のキャラクターもこれまで以上に魅力的に描かれている。シリーズ3作目にして最高傑作といっていいデキ。★4で。
〇 メモ
プロローグ。JTWのエリート添乗員である清藤遥香がトルコのパムッカレで失態を見せ、浅倉絢奈はラテラル・シンキングを発揮して失敗を回避した姿が描かれる。その後、絢奈は遥香が持っていた絵ハガキの切手に細工がされていることを見抜く。絢奈は、この一件でJTWの管理職である弓削治朗と知り合う。
絢奈がJTW主催の飛騨大鍾乳洞のポスターの写真が反転していることを見抜く。
こういった経緯を踏まえ、絢奈にJTWに正社員として引き抜きの話が来る。そんな最中、壱条那沖が母、壱条真尋がバンコクでルクーワン・ウォーランという人物と浮気をして生まれた子であるというスキャンダルの報道がされる。
壱条真尋がバンコクでDNA鑑定をしていたことは事実だった。そして、那沖の父凌真と那沖の間のDNA鑑定の結果は、双方は親子でないというものだった。
那沖のスキャンダルが原因となり、絢奈のJTWへの引き抜きの話は白紙になる。結果として、業務提携も無くなり、絢奈が務めるクオンタムは大きな打撃を受ける。絢奈は、能登厦人のアドバイスを受け、那沖とともに真実を見付けるための捜査を始める。
週刊誌にスキャンダル記事を書いた槙島龍生というフリーライターについて調査を行う。槙島龍生は那沖のDNA鑑定を行った病院のすぐ近くにいたことが分かった。正面玄関と裏口、それぞれでDNAサンプルのやり取りが行われ、すり替えがされていることが分かった。
絢奈は今回の騒動の黒幕が政敵なのであれば、その真意はスキャンダルとは別のところにあると考える。凌真とその盟友が記録保管庫用の書庫である象山荘に記録を確認しに行くときに、小細工をし、信用を失墜させようとしているのではないかと考える。那沖と絢奈は、この企みを阻止すべく岡山県湯原温泉郷にある象山荘に向かう。
象山荘に、凌真と柴原陽太議員、峰村蓮議員が来る。そして、調査の結果、「日本年金機構への要望書」たる文書が見つかる。これは年金問題を解き明かす上での最重要文書であり、これが象山荘で見つかることは大きなスキャンダルだった。
しかし、絢奈が真相を解き明かす。全ての黒幕は柴原議員だった。柴原の息子は比例ブロックで次点。凌真が失脚すれば当選が可能。絢奈はブラックライトを利用したトリックで柴原が象山荘に忍び込んだ証拠を突きつける。
DNA鑑定の結果、凌真と那沖が実の親子だったことが証明される。しかし、事実が報道されても最初のDNA鑑定のこともあって真相はグレーのまま。そこで絢奈はラテラル・シンキングをフル活用し、槙島を欺き、パスポートの数値を発行回数だと偽り、槙島からバンコクには行ったことがないという発言を引き出し、報道することに成功した。
最後に那沖の母、真尋が黙秘を貫いていた原因が分かる。それは不妊治療だった。絢奈と那沖が那沖の誕生日を祝うためのディナーに向かうシーンで終わる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ〇 評価
サプライズ ★★☆☆☆
熱中度 ★★★★☆
インパクト ★★★☆☆
キャラクター★★★☆☆
読後感 ★★★★★
希少価値 ★☆☆☆☆
総合評価 ★★★★☆
万能鑑定士Qシリーズの最後の作品。「クジラ」と称する男にムンクの叫びが盗まれる。ムンクの叫びは4つに破かれている。奇蹟の修復家と呼ばれる植村寛雄が,ムンクの叫びを修復するには,120時間以内に全ての断片を集める必要がある。ムンクの叫びの断片を回収するために,凜田莉子は,クジラから出題される問題に挑む…というのが大まかなストーリー。
万能鑑定士Qシリーズによくあるリアリティはあまりない設定。莉子に,スリリングな知的ゲームをさせるためにかなり無茶なストーリー展開になっている。万能鑑定士Qの推理劇1の「宝石鑑定トーナメント」や,万能鑑定士Qの推理劇3の「海外芸術能力鑑定ツアー」に近いノリの作品になっている。
ムンクの叫びの断片の回収のための知的ゲームというメインのストーリーに,凜田莉子と小笠原悠斗の関係がどうなるかという恋愛要素が絡められる。あと,万能鑑定士Qの推理劇2のラストでわだかまりを残した漢那和希
と息子の颯太との関係がどうなるかという点も絡む。
漢那和希と颯太との関係は,万能鑑定士Qの推理劇2のラストでこのシリーズでは珍しくハッピーエンドにならなかった。その二人を再開させたところはほっこりする。そもそも,漢那和希や颯太はこの作品に登場する必要性がない。それをわざわざ登場させているのは,ファンサービスの一環だろう。この点は読後感をよくしている。
メインのムンクの叫びに関する謎解きは,論理パズルやちょっとした勘違いを利用した人探しなど。この部分は,万能鑑定士Qの事件簿8の台湾での捜査に似ている。正直,シリーズ最後の作品の謎解きとしては物足りない。真犯人が植村寛雄だという点も,ほかに犯人になり得る人物がいないので,あまりサプライズがない。「アンリ・ベイレンドルクって誰?」,「モレキュラー・ボンドなんて空絵事」と言って謎解きを進める莉子の推理は面白い。しかし,いくらなんでも,2枚同じ絵を描かせ,オークションで9億円で落札し,修復をしたと偽装するということが成功するとは思い難い。この点から目をそらすために,コピアに依頼してムンクの叫びの贋作を作らせ,ムンクの叫びを修復するという動機が…うまくいくとは思えない。さすがにリアリティがない。メインとなる謎には不満がある。
小笠原と莉子の関係がハッピーエンドで終わるという点は感慨深い。ものすごい時間を掛けて仲を深めてきて,一回心が離れたという展開からのハッピーエンド。それも,小笠原の思いに莉子が気付くという展開に,雨森花蓮,漢那和希,コピア,紗崎玲奈,三木本沙彩といった面々から助言を受けてよりを戻すという展開。長いシリーズだからこそできる話の持って行き方。純粋にほっこりできた。
シリーズ最後の作品にふさわしく,わだかまりのあるエピソードにケリを付けた上で,主要なキャラクターを総登場させている。メインの謎がしょぼかった点だけが不満。評価としては,ちょっとおまけの★4で。
〇 メモ
プロローグで,これまでのあらすじとして,凜田莉子のライバルであるコピア(弧比類巻黎弥)の存在,凜田莉子と小笠原悠斗の関係,小笠原が幼馴染である三木本沙彩と仲を深めていることなどが紹介される。
エドヴァルド・ムンクの「叫び」が10年周期で盗まれていることが紹介される。そして,南青山の画廊で保管されていた「叫び」が盗まれた。
莉子は,ノルウェー大使館のエミル・ヨハンセンから秘密裡に協力を依頼されていた。しかし,チープグッズへの就職を選び,経営の立て直しに成功したら協力すると返事をしていた。
チープグッズに奇蹟の修復家と呼ばれている植村寛雄がやってくる。かつて,ベルギーのアンリ・ベイレンドルクの「湖畔の花壇」を修復したという。莉子に,メンフィスC62という時計の鑑定を依頼する。莉子は出張鑑定に向かう。莉子が何者かに尾行されていることを見た瀬戸内楓は,警察に協力を依頼するが断れる。
楓は小笠原に協力を依頼する。小笠原はグランドウエルの面々のテストを受けていた。楓から莉子がさらわれたかもしれないという相談を受け、調査を始める。
莉子は美術品コレクターの森岡健一郎宅でメンフィスC62を鑑定する。莉子は本物と鑑定するが,その存在に疑問を持つ。鑑定を終えた後,小笠原達と合流する。
瀬戸内陸は,府中刑務所の釈放準備指導の一環として,漢那和希と対話する。漢那は蔦暮亜芽里とも面会する。
後日,莉子はロシア系マフィアの一員に連れていかれる。コピアが作った「信楽茶碗・相恩寺大忠伝」の贋作を鑑定するように依頼される。しかし,そこにいたのはコピアの兄である小比類巻修。当然,贋作は作れない。莉子に,なんとかごまかせないか相談する。莉子と修はなんとか窮地を脱出。警察が踏み込む。
ここで,ノルウェー大使館と凜田莉子が正式に接触する。しかし,事態は変わり,莉子への依頼は取り下げる。また,莉子は植村寛雄を呼ぶ。植村はメンフィスC62のレプリカを作り,販売しようとしていた。しかし,メンフィスC62はコピアが作った贋作だった。植村は,多額の負債を負う可能性があったが,莉子に救われる。
ノルウェー大使館は,ムンクの叫びが盗難の際に破かれていた事実を知る。
瀬戸内陸が出所する。同時に漢那和希も出所する。瀬戸内は出所のパーティに漢那を誘う。出所パーティに,宇賀神警部とノルウェー大使館がやってくる。ムンクの叫びは窃盗というよりテロ。クジラと名乗るテロリストからの犯行声明があったという。警察と大使館は,莉子に,植村に破られた「叫び」の修復の依頼の仲介をしてほしいと頼まれる。
莉子は植村に,叫びの修復の依頼を取り付ける。警察,「クジラ」からの挑戦となる問題のサイトの情報をマスコミを使って公表する。
雨森花蓮から莉子に連絡がある。花蓮は,莉子に,警察が叫びの修復に失敗したときは,コピアに叫びの贋作作らせようとしているとの情報を提供する。莉子は警察抗議するが受け入れられない。花蓮は,莉子に自分のしあわせを見付けてと言い残して,莉子の前から姿を消す。
莉子は,サイトの問題に「ムンクはイエスですかと聞いたら,あなたはイエスと答えますか」という答えを入力し,正解する。「東京都杉並区阿佐谷南1-49-7」という住所が示される。
莉子,小笠原,漢那の3人は示された住所に行く。レバーを使った金庫があった。莉子はなんとかその金庫を開ける。中には4つに裂かれた叫びのうちの1つの断片あった。
クジラからの次の指令は,昨日ディーラーで車の購入を成約させた「柳場秀介」に面会しろというもの。柳場秀介は15歳の少年だった。柳場から手紙をもらう。「奈良市念仏寺,明暦二年来の風情ある鐘,耳をすませば」と書かれた紙を受け取る。
莉子は昭和34年に念仏寺の鐘が移された品川のグランドプリンスホテルの庭園に向かう。温度を入力するなどの問題を解き,叫びの二つ目の断片を見付ける。
次の問題が入力されたSDカードが見つかる。問題は「浪越隆二課長」の職場を訪ねろというもの。浪越は潜入捜査をしている刑事だった。よってその職場は警視庁。彼のもとに届いた封筒に,叫びの三つ目の断片が入っていた。
最後の問題,フェイズ4は,ルジャンドル予想。数学史上最大の難問だった。
漢那は,莉子の調査に同行し,考えを改める。莉子に対し,颯人に会おうと思っていると告げる。漢那と颯人は再会する。
小笠原は,独自にヨセミテ銀行の取締役を調査する。
三木本沙彩は,紗崎玲奈に小笠原の調査を依頼していた。三木本は小笠原に,玲奈が見抜いた小笠原の本心を告げる。
ルジャンドル予想は解くことができず,「クジラ」から最後の手紙とムンクの叫びの最後の断片が送付される。120時間を経過しており,植村は修復を試みなかった。
莉子による真相の推理。最も利益を得た植村が怪しいと推理するが,リスクと利益が見合っていない。莉子は水鏡瑞樹に相談する。
莉子は植村と対峙する。モレキュラー・ボンドという修復法は空絵事だと告げる。莉子は,植村が無名の画家2枚同じ絵を描かせ,オークションで9億円で落札し,修復をしたと偽装したと告げる。
植村の秘書である荒川が全てを告白する。荒川は植村の息子だった。植村は,技術者を求心するために,過去の犯行を行った。そして,疑問を呈し,検証を求める団体から強請られ,今回の犯行を行っていた。
コピアから情報を得ていた警察は植村を逮捕しようとしたが,植村は自ら犯行を告白する。
莉子はコピアと対峙し,10年前,ムンクの叫びを盗んだのがコピアであり,そもそも,本物として飾られていたのがコピアによる贋作だったという推理を告げる。コピアは莉子に物証を求める。そこに小笠原が登場する。ヨセミテ銀行の取締役を計算で説得し,証拠を得ていた。「弧比類巻黎弥」は,「孤比類巻黎弥」という名を使って口座を作っていた。
雨森花蓮,漢那和希,三木本沙彩を通じた紗崎玲奈,コピアなど,数々の人の言葉を踏まえ,莉子は小笠原との仲をもとに戻す。本物のムンクの叫びが見つかる。
莉子はUNEAPの誘いを正式に断る。万能鑑定士Qの事務所には美容室レティシアに戻っていた。
莉子と小笠原はフィジーで結婚式をする。添乗員として浅倉絢奈が同行していた。
エピローグ。莉子はチープグッズで働き,桜という娘がいる。莉子は,桜の弟を妊娠している。鑑定にまつわる謎は,人の死なないうちに探偵となった小笠原悠斗が解決する。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ〇 評価
サプライズ ★☆☆☆☆
熱中度 ★★★★☆
インパクト ★★★☆☆
キャラクター★★★★★
読後感 ★★★☆☆
希少価値 ★☆☆☆☆
総合評価 ★★★★☆
実質的には,「探偵の鑑定」の上巻・下巻の下巻。探偵の探偵シリーズの最終巻でもあり,万能鑑定士Q最後の事件への橋渡し的な存在
サプライズ的な要素はなし。この作品の実質的な主人公である須磨と桐嶋が中心的な立ち回りをし,二人の古巣である獅靭会と対立する。
凜田莉子は,獅靭会に捕らわれ,緩い拷問をされるなど,そこそこひどい目にあう。最後の最後で,蔦暮亜芽里を信じ,改心させるという見せ場があるが,その程度
紗崎玲奈も,獅靭会の№2である釜瀧を倒すが,完全な脇役。あまり活躍しない。
浅倉絢奈や水鏡瑞樹も登場し,それなりの存在感を示す。須磨と桐嶋の二人が中心で,ヒロイン的な存在が4人いるわけで,キャラクター性は十分。あまりにタレントが多すぎて,全員,そこそこしか活躍しないのが難点か。
話の展開は平凡というか,王道というか…。まっすぐな話となっている。ぐいぐい引き込まれるほどのストーリー展開ではないが,まさにお約束という感じで安定感がある。
莉子と小笠原が分かれるラストはややインパクトがある。とはいえ,なんとなく分かれが予想される展開なのでサプライズはない。この部分以外にはインパクトはない。トリックらしいトリックはないし,プロットは平凡
サスペンスも希薄。これは,凜田莉子,浅倉絢奈,水鏡瑞樹といった「人の死なないミステリ世界」の住人が多すぎるからだろう。どうせ人は死なないという安心感が根底にあるので,サスペンス感は低い。
かといって面白くないかというとそういうわけではない。キャラクターはそろっている。そのキャラクターが自分らしく動いている。玲奈があまり活躍せず,琴葉に至っては全くの空気。しかし,王道のストーリー展開の中,莉子と小笠原の別れや「探偵の探偵」シリーズの終焉というちょっと寂しい雰囲気が,いいスパイスになっている。この作品単品だとそこまで高い評価は付けられないが,万能鑑定士Qシリーズと探偵の探偵シリーズを読んできた者にとっては,お約束として見てもよい作品だと思う。水鏡探偵や特等添乗員シリーズを読んでいれば,もっと面白かっただろう。
この本の位置付けが,単品の評価ではなく,シリーズ作品としての評価につながる。そういう位置付けとして★4としたい。
〇 メモ
凜田莉子は,獅靭会に誘拐される。探偵の鑑定1におけるトランプのカードを探しは,莉子に対する獅靭会の入社試験だった。獅靭会は姥妙のトリニティ構想に資金援助をしており,広い情報網を持っていた。須磨は,カードに示された情報が偽情報であると警察に伝える。しかし,警察を動かすことは難しい。須磨は佐伯に本当はどの港に入港するか,調べさせる。新潟県に近い船があることを見付ける。須磨達は新潟の港に行くが,獅靭会はチンピラしかいなかった。小笠原がへまをし,須磨がケガを負う。新潟も陽動だった。須磨は警察の信頼を失う。
獅靭会は,偽の海水淡水化施設を建設し,八重島に組員を送り込む。八重島の住人を人質にする。栗城という莉子の先輩に当たる鑑定係が,失態を演じ,莉子の前で暴力を受ける。
須磨は,福島県に行き,元妻である笙子に会う。右手の治療をする。
莉子は,栗城親子とともに,獅靭会からの脱出を図る。栗城親子は脱出に成功するが,莉子は亜芽里に捕まる。そして,亜芽里から水責めの拷問を受ける。更に,八重島の住人の殺害をほのめかされ,獅靭会の雇用契約書にサインをする。
玲奈は,万能鑑定士Qの事務所に残されたスワジランドの記念コインから,浅倉絢奈に辿り着く。絢奈から,エンジニア用の位置情報特定アプリの情報を聞き出す。
莉子は,獅靭会での初仕事として,岩淵紘志という元チンピラが幹部の妻からネックレスを盗み出したことを暴く。
栗城親子は株式会社スマ・リサーチにコンタクトを取り,須磨に会う。須磨は栗城親子から獅靭会の情報を聞き出す。
霞が関の文部科学省にある不正行為・研究費の不正使用に関するタスクフォースがある。そのタスクフォースに所属する水鏡瑞樹という事務官は,八重島の海水淡水化装置の設置を怪しむ。瑞樹達一行は調査のために,波照間島に向かう。
莉子は,亜芽里の地方回りに同行する。新幹線の中で,スマホを起動することに成功する。玲奈のスマホの位置情報特定アプリが起動する。絢奈の助言で,莉子が新幹線で移動していることを知る。
玲奈は東京駅で,亜芽里の前に立ちふさがる。栗城と佐伯から情報を得た,須磨と桐嶋も東京駅に着き,獅靭会と銃撃戦をする。
莉子は亜芽里が祖父や組織の後ろ盾がないと何もできないと見抜き,一人でも傷ついたら協力しないと強気な反抗を見せる。
警察は獅靭会への捜査を中断する。
須磨は自分が逮捕されたときのために,土井を社長とする新会社「グランドウェル」を設立する。
小笠原は,元同僚の宮牧から「警視庁のトップが,獅靭会に弱みを握られている」という情報を得る。警視庁は,新潟で,令状なしに強制捜査を無理強いした。獅靭会系列の会社が訴えると言ってきたところ,獅靭会と警視庁が裏取引をしたという。
亜芽里は絢奈に接触する。絢奈は機転により事実を告げることで亜芽里を騙す。
須磨と桐嶋は,栗城や佐伯の助けを受け,獅靭会に立ち向かう準備を進める。玲奈と琴葉も,最後に一度だけ莉子を助けるために探偵活動を行うことを決意する。
瑞樹は,波照間島での調査を行う。やくざの勤務の日などから,何かがあるとすれば月曜日だと見抜く。
渋谷の貸会議室に須磨,桐嶋達があつまる。須磨の元妻の笙子や,スマ・リサーチの土井達,玲奈と琴葉もやってくる。瑞樹から,鴨井という探偵を通じ,日程が月曜であるという情報がもたらされる。絢奈から観光庁の壱条から得た情報から,入港は千葉県の阿賀詞港だと考える。
玲奈は警察に連絡し,月曜日と阿賀詞港の情報を与える。
阿賀詞港で,獅靭会を須磨達が襲撃する。莉子は鑑定しないと抵抗する。混乱の中,亜芽里は釜瀧に狙われる。玲奈は釜瀧を倒す。莉子は亜芽里を信じる。
須磨と桐嶋は蔦暮会長と対峙する。幹部と対立しているように見せかけ,なにも知らないお山の大将を演じていた蔦暮が黒幕だった。須磨は蔦暮蹴り,失神させる。
須磨と桐嶋は亜芽里を含む,玲奈達を拘束する。須磨と桐嶋は自ら逮捕される。
小笠原は株式会社グランドウェルに就職。探偵になる。
莉子は万能鑑定士Qの事務所を閉める。
莉子は小笠原との別れを選択する。玲奈は父親と仲直りをする。
莉子はUNEAP(故宮博物院と大英博物館の鑑定をも担う最高権威を誇るNGO)に迎えたいという誘いを受ける。
波照間島の海水淡水化装置の事業は,政府のほか,カンツォネッタ・グループ・ホールディングス,ベランジェール,音韻寺,ソランジュほか多数の企業が寄付を申し出ており,事業が継続されるという。
莉子はムンクの叫びについての依頼を受ける。コピアが絡む事件だという。
最後は玲奈と琴葉の別れのシーン