松岡圭祐のレビュー一覧
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この物語の結末はどうなるのだろう。
いったいどこに救いがあるというのだろう。
玲奈が歩んできた、そしてこれから歩いていかなければならない、あまりに過酷な運命に心が痛んだ。
究極の選択が玲奈にもたらしたものは、より一層過酷な道でしかない。
死神との対決だけが、いまの玲奈を支えているような気がする。
常に冷静に状況を把握し、己のルールに従って成すべきことを成す玲奈。
ときには冷酷に牙を剥き、ときには非情な行為も辞さない。
けれど、なぜかいつも危うさを感じる。
ハードな場面が続けば続くほど、玲奈が辛い状況に追い込まれれば追い込まれるほどに、小さな体を縮めてうずくまるガラス細工のような玲奈が浮かぶ。
新たな展開になる「探偵の探偵4」。
ここまでシリーズを読んできて読まないわけにはいかない。 -
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孤独だからよけいに温もりを求めるのか。
それとも温もりを求めるがゆえに孤独をよけいに実感するのか。
人はひとりでは生きられない。
生きていようと死んでいようと、心の奥底で自分を支えてくれる人が必要だ。
でも、死んでしまった相手とは話すことが出来ない。
触れることも笑いあうことも出来ない。
玲奈にとっての琴葉はもしかしたら代用品なのかもしれない。
けれど、それが代用品でなくなったときが怖い。
一度手にした温もりを手離すことは、きっと今以上に辛いことになるだろうから。
琴葉の姉、その夫、その友人たち。
事の是非なんて関係ない。
ただその場の優越感に浸りたいだけ。
誰かを虐げ面白がっているだけ。
いたぶることに快感を得ているような場面に気持ちが悪くなってしまった。
激しいアクションシーンも読みどころになっている物語。
ドラマになるようだけれど、原作に忠実に映像化したら悲惨すぎて直視できなくなりそうだ。 -
Posted by ブクログ
高校時代ずっと落ちこぼれだった莉子がどうやって万能鑑定士としてのスキルを身につけたのか。
その過程が描かれている物語である。
思考方法を変えるだけで莉子のように誰でもなれるとは思えない。
きっとある程度の素質がもともと備わっていたということだろう。
莉子が成長していくにつれ、瀬戸内は複雑な思いになる。
万能鑑定士として優秀になっていけばいくほど、これから起こそうとしている瀬戸内の目論見が失敗する確立が増えていくだけなのだ。
自分の手で対抗勢力を育てている・・・莉子のことは娘のように思っている。
だからこそ、瀬戸内は莉子の成長を喜びながらも暗い気分になるのを止めることができない。
社印をめぐって詐欺にあった美容室。
そこで知り合った朋李に莉子は淡い思いを抱く。
事件が解決し、日本での就職が難しいと感じた朋李は海外へと旅立っていく。
推理していく過程も面白かったけれど、小笠原の存在を知っている身としては微妙な感じもした。
雨森華蓮が始めて莉子の名前を知る場面も登場する。
ハイパーインフレ騒動を治めた人物を調べさせた結果、凛田莉子の名前があがってきたのだ。
そして、西園寺の騒動にも莉子が絡んでいることを知る。
最大のライバルは、こうして莉子の知らない間に「万能鑑定士」の名前を記憶することになったのか・・・と納得する思いがした。
「万能贋作者」に対抗しうる「万能鑑定士」の存在。
華蓮が気にかけないはずはない。
ラストに登場する朋李との再会場面。
髪を切ってもらう莉子に「彼氏ができた?」と尋ねる朋李。
うろたえながらも、「わかんない」と答える莉子。
けれど、その姿は落ち着いている。
安定した精神状態にあるのは、もしかしたら小笠原の存在が少しだけ関係しているのでは?とほほえましくなった。 -
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何手も先を読み、計算しつくされた犯罪を実行する。
それが雨森華蓮・・・莉子を唸らすほどの「贋作詐欺師」だった。
天才的な贋作者は同時に天才的な鑑定士でもある。
莉子に匹敵するほどの才能がありながら、華蓮は犯罪者として生きてきた。
それは彼女の人生観による。
天才的な嘘つきがいつまでたっても疑われることなく信じられてしまったら。
華蓮はそうやって、ずっと嘘をつきながら生きてきた。
詐欺師になったのは華蓮にとっては必然だったのだろうか。
誰かによって歯止めをかけられること。
これってすごく大切なことかもしれない。
悪いことは悪いと教えられて、ようやく人はことの善悪を知るようになる。
莉子はそう考えると出会った人たちがよかったのだと思う。
犯罪者にはなってしまったけれど、瀬戸内は根っからの悪人ではなかった。
きちんと莉子に教えるべきことを教え、もともと莉子が持っていた素直で真っ直ぐな心を大切にしてくれた。
人は出会う人によって大きく人生が変わってしまう。
華蓮には莉子にとっての瀬戸内のような人間がいなかったということだろう。
もっとも華蓮の性格からすれば、出会う人がみんな馬鹿に見えてしかたがないのかもしれないが。
莉子の幅広い知識には驚かされる。
読みやすさにくわえ、小笠原というちょっと間が抜けたキャラクターもいい。
もっとも小笠原は普通であって、莉子のそばにいると間が抜けて見えるというだけなのだが。
次はどんな知識を披露してくれるのか。
楽しみだ。 -
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高校時代にどうしようもないほど劣等生だった莉子。
担任だった喜屋武先生にとっては、5年経ったいまでもひとりでは何も出来ない心配な生徒のままだ。
何しろパスポートを持っているか、確認するために言ったのが
「赤い表紙の小冊子だぞ」
どれだけ莉子を子ども扱いしているのかよくわかるセリフだ。
フランスに行っても莉子の周りでは相変わらず事件が起きる。
ルーブル美術館で「モナ・リザ」に感じた違和感。
同級生が勤めているレストランで起きた急性中毒事件。
そして、幼児誘拐・・・。
不良食材を混入させたのは誰か?
莉子は喜屋武先生を伴い、友のために奔走する。
そして突き止めた真実は、犯人自身も動機を思い違いしているような哀しい事件だった。
謎を追っているうちに徐々に莉子の変化に気づいていく喜屋武先生。
何も出来ないと思っていたのに、自分が保護者となって守るつもりで一緒にパリまで来たのに、気づけば莉子はすっかり立派になっていた。
もう自分の保護はいらないのだと悟った喜屋武先生からの卒業証書にはまいった。
わざわざ毛筆で書かれていた卒業証書。
その心遣いがあたたかい。
きっと莉子の宝物になることだろう。
「モナ・リザ」に感じた違和感の正体も明かされ、すっきりとした終わり方にも好感が持てた。
海外編ということで、小笠原の出番がほとんど無かったことが残念といえば残念だった。 -
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序盤では「音」に絡んだ謎を莉子が解き明かしていく。
売上のいきなり落ちた人気ファッションショップ。
英語が苦手な女子高生が取った満点のヒアリング。
どちらも同じ人間が関わっていることがわかるのだが。
ラストで知ることになる犯人の心情。
過去の栄光にすがっていただけではない。
その頃の輝きを、輝いていた自分を、取り戻そうと必死にあがいていただけなのでは?と哀しい気持ちになった。
「可哀相な人」だけれど、彼を理解し、いつも支え続けてくれた人がいる。
音楽家としての未来はもうないかもしれない。
でも、今までとは違うかもしれないけれど、明るい未来があるような。
そんなふうに思える結末でよかった。
莉子の「えっ、こんなことまで?」と突っ込みたくなるような知識の深さには驚く。
けっして驕らずに、でも懸命に謎と向き合う莉子のキャラクターは、このシリーズの最大の魅力だと思う。 -
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ネタバレ上下巻読み通しての感想
ずっとこのシリーズを読んでいた者としては衝撃的な物語でした。
はっきりとではないけれど、何となくかすかに「何かあるのでは?」と感じていた部分もあったので、「これだったのか!」と納得する面もあった。
考えるよりも先に行動している。
そんな美由紀が、この物語ではいつもとは少し違った様相をみせる。
自分自身に対して不安を抱き始める場面では、「そんなに自分ひとりで背負おうとしなくても」と思いながらも、やっぱりその方が美由紀らしいと感じてしまった。
美由紀以外のお馴染みのメンバーに見せ場があり、それぞれの立場で美由紀を助けようとする。
伊吹をはじめ、藍や嵯峨、成瀬や蒲生までが登場する。
美由紀に施された処置は、あの時点での彼女なりの優しさだったのだろうか?
それとも、まったく別の意図があったのだろうか?
今となっては真実は知ることは出来ないけれど、無理やり捻じ曲げた記憶は、やがて歪んだ影響を美由紀に与えることまで彼女は予想していたのだろうか。
あまりにも衝撃的な内容に、「ん~…」となってしまった。
過去を知り苦悩した結果、さらに成長した美由紀の姿が見られるラストシーンがいい。
美由紀の最後の台詞が、よりいっそう物語の余韻を強くしていた。 -
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ネタバレ晴れやかな授賞式の舞台。
音楽教師としての実績を評価された響野由佳里は、文部科学省からその功績を称えられ表彰されることになった。
音楽に対して類稀なる才能を持つ由佳里は、演奏を聴くだけで演者の精神状態を見透かすことができた。
独自の信念に基づいた教育方針が認められたことで、由佳里にとってはまさに晴れ舞台となった授賞式だったのだが。
些細なことから父親と口論となった由佳里は、家族との会食の場を途中で抜け出してしまう。
別れた直後、家族が惨劇に遭うとも知らずに。
由佳里の家族を殺害した13歳の少年の態度には納得できないものがあったけれど、もしかしたらあんなものかもしれない…という気もどこかでしていた。
有り得ないことではないと、どこかで認めてしまっていた。
でも、少年の母親の言動にはどうにも我慢がならなかった。
「もしかして、この母親の方が頭がおかしいのでは?」と思ってしまった。
少年は日常的に母親の財布から現金を盗んでいた。
窃盗罪で捕まらないかと心配する母親に、「あんた何言ってんの!」と言いたくなる。
見知らぬ家族、子供も含め4人もの人間を殺害した息子なのに。
謝って済むことじゃないだろうと、この母親は馬鹿なのかと。
こんな親はいないだろうと思う反面、現実はこんなものかもしれないと思っている部分もある。
嵯峨のように対象者に寄りそうカウンセラーばかりではないとは思う。
自分では気付けない「歪み」は直しようがない。
自分はまともだと、正常だからカウンセラーは必要ないと、そう思っている人の中にもきっと「歪み」を抱えている人は多いはずだ。
ストレスを感じやすい社会だと思う。
人間関係の難しさや、理不尽な処遇に甘んじなければならない状況も、きっとたくさんある。
それでも、壊れていくのは嫌だ。
何かのきっかけで誰にでも起こり得ることなら、出来れば一生縁のない生活を送りたい。
カウンセリングの必要性を描きつつ、サスペンスとしての構成・展開、そして結末に至るまでが緊迫感にあふれていてハラハラしながら読み進んだ物語だった。