松岡圭祐のレビュー一覧
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この物語の結末はどうなるのだろう。
いったいどこに救いがあるというのだろう。
玲奈が歩んできた、そしてこれから歩いていかなければならない、あまりに過酷な運命に心が痛んだ。
究極の選択が玲奈にもたらしたものは、より一層過酷な道でしかない。
死神との対決だけが、いまの玲奈を支えているような気がする。
常に冷静に状況を把握し、己のルールに従って成すべきことを成す玲奈。
ときには冷酷に牙を剥き、ときには非情な行為も辞さない。
けれど、なぜかいつも危うさを感じる。
ハードな場面が続けば続くほど、玲奈が辛い状況に追い込まれれば追い込まれるほどに、小さな体を縮めてうずくまるガラス細工のような玲奈が浮かぶ。
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Posted by ブクログ
孤独だからよけいに温もりを求めるのか。
それとも温もりを求めるがゆえに孤独をよけいに実感するのか。
人はひとりでは生きられない。
生きていようと死んでいようと、心の奥底で自分を支えてくれる人が必要だ。
でも、死んでしまった相手とは話すことが出来ない。
触れることも笑いあうことも出来ない。
玲奈にとっての琴葉はもしかしたら代用品なのかもしれない。
けれど、それが代用品でなくなったときが怖い。
一度手にした温もりを手離すことは、きっと今以上に辛いことになるだろうから。
琴葉の姉、その夫、その友人たち。
事の是非なんて関係ない。
ただその場の優越感に浸りたいだけ。
誰かを虐げ面白がっているだけ。
い -
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高校時代ずっと落ちこぼれだった莉子がどうやって万能鑑定士としてのスキルを身につけたのか。
その過程が描かれている物語である。
思考方法を変えるだけで莉子のように誰でもなれるとは思えない。
きっとある程度の素質がもともと備わっていたということだろう。
莉子が成長していくにつれ、瀬戸内は複雑な思いになる。
万能鑑定士として優秀になっていけばいくほど、これから起こそうとしている瀬戸内の目論見が失敗する確立が増えていくだけなのだ。
自分の手で対抗勢力を育てている・・・莉子のことは娘のように思っている。
だからこそ、瀬戸内は莉子の成長を喜びながらも暗い気分になるのを止めることができない。
社印をめぐって -
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何手も先を読み、計算しつくされた犯罪を実行する。
それが雨森華蓮・・・莉子を唸らすほどの「贋作詐欺師」だった。
天才的な贋作者は同時に天才的な鑑定士でもある。
莉子に匹敵するほどの才能がありながら、華蓮は犯罪者として生きてきた。
それは彼女の人生観による。
天才的な嘘つきがいつまでたっても疑われることなく信じられてしまったら。
華蓮はそうやって、ずっと嘘をつきながら生きてきた。
詐欺師になったのは華蓮にとっては必然だったのだろうか。
誰かによって歯止めをかけられること。
これってすごく大切なことかもしれない。
悪いことは悪いと教えられて、ようやく人はことの善悪を知るようになる。
莉子はそう考え -
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高校時代にどうしようもないほど劣等生だった莉子。
担任だった喜屋武先生にとっては、5年経ったいまでもひとりでは何も出来ない心配な生徒のままだ。
何しろパスポートを持っているか、確認するために言ったのが
「赤い表紙の小冊子だぞ」
どれだけ莉子を子ども扱いしているのかよくわかるセリフだ。
フランスに行っても莉子の周りでは相変わらず事件が起きる。
ルーブル美術館で「モナ・リザ」に感じた違和感。
同級生が勤めているレストランで起きた急性中毒事件。
そして、幼児誘拐・・・。
不良食材を混入させたのは誰か?
莉子は喜屋武先生を伴い、友のために奔走する。
そして突き止めた真実は、犯人自身も動機を思い違いして -
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序盤では「音」に絡んだ謎を莉子が解き明かしていく。
売上のいきなり落ちた人気ファッションショップ。
英語が苦手な女子高生が取った満点のヒアリング。
どちらも同じ人間が関わっていることがわかるのだが。
ラストで知ることになる犯人の心情。
過去の栄光にすがっていただけではない。
その頃の輝きを、輝いていた自分を、取り戻そうと必死にあがいていただけなのでは?と哀しい気持ちになった。
「可哀相な人」だけれど、彼を理解し、いつも支え続けてくれた人がいる。
音楽家としての未来はもうないかもしれない。
でも、今までとは違うかもしれないけれど、明るい未来があるような。
そんなふうに思える結末でよかった。
莉子 -
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ネタバレ上下巻読み通しての感想
ずっとこのシリーズを読んでいた者としては衝撃的な物語でした。
はっきりとではないけれど、何となくかすかに「何かあるのでは?」と感じていた部分もあったので、「これだったのか!」と納得する面もあった。
考えるよりも先に行動している。
そんな美由紀が、この物語ではいつもとは少し違った様相をみせる。
自分自身に対して不安を抱き始める場面では、「そんなに自分ひとりで背負おうとしなくても」と思いながらも、やっぱりその方が美由紀らしいと感じてしまった。
美由紀以外のお馴染みのメンバーに見せ場があり、それぞれの立場で美由紀を助けようとする。
伊吹をはじめ、藍や嵯峨、成瀬や蒲生までが登場 -
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ネタバレ晴れやかな授賞式の舞台。
音楽教師としての実績を評価された響野由佳里は、文部科学省からその功績を称えられ表彰されることになった。
音楽に対して類稀なる才能を持つ由佳里は、演奏を聴くだけで演者の精神状態を見透かすことができた。
独自の信念に基づいた教育方針が認められたことで、由佳里にとってはまさに晴れ舞台となった授賞式だったのだが。
些細なことから父親と口論となった由佳里は、家族との会食の場を途中で抜け出してしまう。
別れた直後、家族が惨劇に遭うとも知らずに。
由佳里の家族を殺害した13歳の少年の態度には納得できないものがあったけれど、もしかしたらあんなものかもしれない…という気もどこかでしてい