榎田ユウリのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
榎田ユウリさん初読みです。2000年に本作でデビュー、主にライトノベルで活躍、榎田尤利名義でも活動、BL作品多数などと紹介されています。本書を手にしたのは、BLよりタイトルに惹かれてです、連日猛暑だけに‥。
榎田さんには人気シリーズが多くあり、本作は「魚住くん」シリーズ(現在5作品)の第1作です。かつて「耽美」などと呼ばれ、BLの呼称がなかった時代の作品で、伝説的な価値があるとのことです。
物語は、不思議な美貌の魅力により、男女問わず虜にしてしまう魚住と、その周辺人物たちの群像劇です。魚住には重い過去の背景があり、味覚障害や栄養失調などの他、感情表現が上手くできず、何事にも無頓着な態度の描かれ方です。
魚住をなぜか見捨てられず、罵倒しながらも同居を始め、寛大さ、包容力をもって関わる久留米の存在が間違いなく大きいようです。久留米のみならず、周囲の面々の寛容性もあって、魚住の変容・再生を観ていく形となります。
ただ、魚住に魅力を感じるか、共感できるか、優しさを持てるか、と問われれば、私には厳しいものがあります。
むしろ、久留米の方に感心してしまいます。さり気なく、魚住に感情・心の機微を取り戻させようと苦心する姿は、唯一無二でしょう。そして、2人の感情の揺れ動きが読みどころなのでしょう。
日常に隣り合わせとしてある生と死が見え隠れするその先に、悲しみと喜びを表出させている、とも読み取れるかもしれません。
木原音瀬さんの『箱の中』の様な、ヒリヒリする狂おしい作品とまた違う、おかしみを含めた本作の魅力は、読書の幅を広げたい方にもってこいかもしれません。ただし、知られざる新たな性癖が覚醒しても、自己責任ということで‥。 -
Posted by ブクログ
死 ― 誰にでも訪れるが、誰もがその訪れを自覚して迎えるとは限らない。そして自分が死んだことに気づかないでいる者は、肉体が崩れ去るまでルーティンどおりの行動をとるという。
そんな「生ける屍」状態の者を放置しておくと日常社会に支障を来たしてしまう。そこで登場するのが死神だ。
死んだことを説明して納得させ、死を受け入れる契約書にサインさせる。そんな奇妙な営業活動を明るくこなす死神を描くオカルトファンタジー。
◇
うたた寝から目覚めた俺はノロノロと起き上がった。そのまま洗面所に行き顔を洗う。今朝はなぜか水の冷たさをさほど感じない。まだ2月とは言え、どうやら今日はあまり寒くないようだ。
鏡を見る。映っているのは陰気な顔。重そうなひと重瞼にボサボサの眉。笑顔とは無縁の暗い表情。
人を不快にするだけのその顔は、30歳になった今でも「死神」という中学時代の渾名そのものだ。
時計を見る。午前7時35分。昼夜逆転生活をする引きこもりの俺にとり、朝は1日の終わりを意味する。
今日も何もしなかった。クリエイターになりたいと思ってはいるが、そのための努力をしていない。浪費した時間だけがどんどん過ぎていくばかりだ。
父親も愛想が尽きたのか、先月から仕送り額を減らしてきた。ため息をつき、俺は出かける用意をした。
目指すは喫茶ニルヴァーナ。ワンコインでモーニングが食べられるし、何よりマスターが無口なのがいい。
店に入るといつものように奥のテーブルにつきアメリカンモーニングを注文する。
ぼんやり座って待っていると、うしろのテーブルから若い男の声が聞こえた。
「苦しまずに、楽に死ねればいいのに、と思うでしょう? ねっ、斎藤さん」
立て板に水のごとく話し続ける男の明るい口調とは裏腹に、その内容はあまりに物騒だった。
気になった俺はそっと振り返り、観葉植物の陰に隠れて様子を窺うことにした。そうすると……。 ( 第1話 )
※全5話とエピローグからなる。
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軽いながら、人生の指針となる内容を盛り込んだファンタジーらしい作品でした。つい読んでしまうのは、設定や構成のうまさがあるからでしょう。
まず死神。なかなか新鮮でした。
大鎌を手に持ち人の生命を奪いに来るような禍々しいイメージの死神ではなく、自分の死を自覚していない人の前に現れて死を認め受け入れるよう説得し、書類にサインをもらうという営業マンのような死神です。
明るくポジティブな性格や、マンガ家志望の梶真琴の蔵書を速読して楽しむところなども親しみが湧きます。
次に主人公の梶真琴。
死神とは対照的な、暗くてネガティブな性格。そして、どんなことでも、先にできない言い訳を探して動かない自分を正当化するという、脳みそにカビでも生えているのかと思うほど鬱陶しい男です。
物語は、喫茶ニルヴァーナで知り合った死神と梶が行動を共にすることで進んでいきます。
死神の仕事を梶が手伝うことになるのですが、すでに死んでいることを告げられた人たちの反応や死に様を目の当たりにするうちに梶が成長していくといった構成になっています。
終盤に死神が淡々と梶に告げるセリフ。
「人間ってのはね、いつか自分が死ぬことを知っている唯一の生物だよ。」のくだりは十分な重みがあり、思わず人生に対する自分のスタンスを見直してしまいました。
また、本編最後にちょっとした仕掛けがあり、ラノベながら印象深い作品に仕上がっています。
そして、エピローグは第2部と言ってもいいような内容で、死神の存在感を際立たせるエンディングでした。
感動巨編ではありませんが、重い作品のあとの箸休めに適しているのではないでしょうか。 -
Posted by ブクログ
現代の東京にて 若き武士×英国ジェントルマン
榎田さん、デビュー20周年記念作品
単行本の装画は、萩尾望都さん
文庫本の装画は、丹地陽子さん
どちらも素敵
萩尾さんが平成ぽくって、丹地さんが令和っぽいかも
現代の武士と言っても、地域社会への貢献といった高度ボランティア活動的納得の設定
ただし、主人公の武士くんは生粋の武士気質
そこへ英国から金髪碧眼美貌のジェントルマンがやてきて同居生活が始まる
設定に捻りがあるけれど、ストーリーは現在の社会問題を柔らかく描いています
時折、武士語と英語を掛け合わせたようなハイソなギャグがひかります
二人の優しさが溢れてます
ラストはユウリさんらしく、ほんのりブロマンス -
Posted by ブクログ
ネタバレ40歳。公認会計士。理性的。高圧的。
全然良いところがない、はずなのにどうしてか嫌いになれない。たぶん、杏樹のことを一途にただ好きだったのが感じられたからだと思う。子供のまま大人になった不器用な人間。可哀想な人。
最後に杏樹と対面するシーンが苦しくて仕方なかった。
「好きという気持ちが曇ってしまった」というやるせなさに胸が痛くて、涙が止まらなかった。
全体を通じてりっちゃんがようやく大人になろうとしていく姿が見られたけれど、遺言や貸金庫、神鳴の日記のあたりのストーリーもちゃんと面白くて好きだった。
信じられないほど読みやすくするする入ってくる文章に驚き。