椰月美智子のレビュー一覧
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川辺に建つリバーサイドマンションの住人たちの不倫を描いた連作短編集。
テンポの良い文章であっという間に読んでしまいました。奥田英朗のような雰囲気。
「不倫」と言ってしまうと私たちが想像するものはワンパターンな気がしますが、カタカナ表記の「フリン」だといくらでも変形できそう。
フリンっていうのは結局ただの呼称でしかないような気がする。
配偶者も子供も何もかもを傷つける言語道断な不貞だけれど、それでもそういうかたちでしか成し得なかった恋愛というか。ついつい正当化してしまいたくなるような話ばかりだった。
だからこそと言うべきか、自分が不倫した因果からか夫が亡くなってしまう「シニガミ」と、妻の自由を許 -
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化粧品メーカーでファンデの開発をする箱理の祖母は白塗り肌。
自分の子供にさえ素顔を見せない祖母がなぜ白塗りになったかが、徐々にわかっていく様は面白かったかな。
でもちょっといろんな事が中途半端に終わっちゃった感じは否めない。
私はお化粧にあまり頓着しないところが箱理と同じなので、お化粧しないと女じゃないと思ってる人の事は理解できないけど、お化粧をする事によって自信が持てたりお化粧以上の輝きを保てるようになるなら、それもいいのかなぁと多少は思ってみたり。
内からも外からもバランス良くが大事。
あと、イメージしている事をちゃんと人に伝えるのって本当に必要なこと。ニュアンスだけじゃダメだ。汲み取って -
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17歳のまひるが主人公。落語家を目指す彼氏の亮司とクロノ、むっちゃん、夏海という親友たち。恋に友情に、あの頃のすべてが詰まった青春小説。
とは言ってみたが自分の高校生活には特筆すべきものはあまりなかったように思う。だからなのか、たまにこういったものを読みたくなる。
本作の登場人物たちはみんないい子。それでいて嫌味なところが全くない。高校生なりの迷いとか葛藤はあるものの、基本的にみんな真っ直ぐに未来を生きている。
後半、亮司が事故にあってしまうのだが、この辺りは読んでいて少し辛い。
彼らの年齢は、なにかきっかけさえあれば時として、一夜の間に親がはっとする程の成長を遂げることがあると思う。
その -
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8篇の物語が収められている。
今回の物語に特徴的なのは、「小説とは何か」という疑問だ。
「青と赤の物語」では、物語が禁止された世界を描いている。
物語があるから悪いことをする人がいる、そんな考えを持ったエライヒトたちが物語を禁じてしまったのだ。
全く因果関係はないのに、AだからBと決めつけてしまったのだ。
物語は、文学は、何の役にも立たない。
本当にそうだろうか。
物語は時に残酷なものも、悲しいものも、苦しいものもあり、そんな世界を目にするのは時には恐ろしい。
けれども、そんな世界があるから救われる人もいる。
物語に書いてあることは、どんな物語にせよ、誰かから、読者に、あなたに、向けたメッセ -
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タイトルの通り、小説にまつわるアンソロジー。
ラノベっぽい軽さのものが多くて中高生向けかな。
それでも小説の存在意義を説くような話が読めてなんだか嬉しかったです。
本を読んで驚いたり、感動したり、幸せな気持ちになったり、そういう純粋に読書を楽しんでいた頃の初々しさを思い出しました。
「青と赤の物語」 加藤千恵
「あかがね色の本」 千早 茜
「新刊小説の滅亡」 藤谷 治
この3つが好きです。
私の人生、何度小説に救われてきたんだろう。
探さなくてもいつだって必要なときは必ず寄り添ってくれてた。
その経験はその本とともに、何年経っても何が変容しても移ろわなくて、私にとって本当にかけがえのないも -
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音楽をテーマにしたアンソロジー。
好きな作家の加藤千恵さんが筆者の中に入っていたので手に取りました。
ラブソングとタイトルに入ってますが
それぞれの短編はラブソング以外の曲もテーマになっています。
実在する曲が使われていたり
架空の曲だったりもしたけど
加藤さんの『約束のまだ途中』と
あさのあつこさんの『雨宿りの歌』がよかったな。
加藤さんの作品は、結婚する親友(小学生からの仲良し)との思い出の曲を中心としたストーリー。
自分の状況と結構かぶるところがあり、かなり共感出来ました。
あさのあつこさんの作品は、少しミステリーっぽい側面もあるんだけど、小学生の時にある事件に遭遇し雨にトラウ -
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とある中学校の一クラスのなんでもない一日の模様を、順番にクラスメイトの一人称で繋げたオムニバスに近いストーリー。基本的に一人一回ずつしか一人称にならず、前後と強い繋がりがあるわけでもなくで、単に視点を変えていっただけに見えた。スクールカーストまではいかないものの、いじめや女子同士の確執、友人への嫉妬や過大した自意識など思春期らしいどろどろ煮詰まった感情が渦巻いている。違和感を感じなかったということは、私も中学生の頃、こんな感情を抱いていたんだろうか。前髪一つを過大に意識したり、男子に声をかけられて浮かれたせいで大事な試合を落としたり、テストの点数に一喜一憂したり、女子グループの水面下の攻防だっ