★5 歌舞伎町の狂王と呼ばれた不破に焦点を当てた悪漢小説、もはやヤクザの大河ドラマ
■あらすじ
昭和45年の新宿は歌舞伎町、15歳の少年だった不破がある事務所を訪れる。そこは歌舞伎町を牛耳るブライトネスグループの事務所であり、自身の父親がグループ総帥であることを告げる。
その後彼は、父親やその家族に認められるために、極道の道を歩むことになる… 昭和から令和まで、歌舞伎町の狂王と呼ばれたヤクザの人生を描く。
■きっと読みたくなるレビュー
歌舞伎町の狂王と呼ばれた不破に焦点を当てた悪漢小説、もはやヤクザの大河ドラマです。
最初から最後まで、ひたすら遠慮なしに悪逆や野郎どもが描かれる。とてもじゃないけど体験したくない、でもちょっと悪の世界も覗いてみたいですよね。うんうん。
さて本作の物語は田舎者の少年が歌舞伎町に乗り込んでくるところから始まる。最初は相手にもされないんだけど、時代が進むごとにトラブルやら事件やらに巻き込まれながら、ヤクザとしての力量もあげていくのです。
ダークサイドで権力をつけていくと下品な感じになってしまうと思いきや、そうでもありません。むしろワイルドで、クールなんですよね~、男が男に惚れるようなカッコ良さなんです。
というのも、若かりし不破の面倒をみた近藤とその妻歩美の存在がでかいんですよね。こんな兄貴と姐さんにおせわになっちゃったら、尽くしたくもなるよ。どんな環境でも人との出会いってのは大切。
物語も中盤以降になると、さらに大きな抗争に巻き込まれ、いよいよドンパチが始まることになる。さらには暴対法や中国マフィアなど、現実の時代にそった裏社会の変遷がリアルに描かれるところもイイ。社会から敵視されていくヤクザの悲劇が、丁寧に丁寧に描かれていくのです。
多くの登場人物がでてきますが、それぞれの立場で必死に生きているだけなんです。不破や近藤をはじめ、王兄弟、極道幹部、警察―― でも幸せに包まれるようなシーンはなく、読み進めるほどに胸がざわざわしちゃうんすよ。一体あなたたちは何のために戦っているのか…
物語は終盤になると不破も出世し、抗争も極上級になる。終盤は凶悪すぎで見てられないんだけど、筋を貫き通す生き様にはすっかり引き込まれてしまいました。力強く強烈でピカレスクロマン、楽しませていただきました!
■ぜっさん推しポイント
本作で唯一ぬくもりを感じるのは近藤の妻、歩美だけ。夫は任侠の世界に生きてるのに、派手な生活にならず、しっかりと家庭を大切にしてる彼女にぞっこんです。
彼女はどんな人に対しても、バイアスかけずにまっすぐに向き合ってくれるんですね。男性にとって、包容力がある女性と一緒にいられるのは本当に幸せなんです。戦いにでる男を胸を張って送りだしてくれるから。いやー、カッコ良かった。