絲山秋子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ絲山秋子の本は何冊か読んだ。いずれも少し不思議な感じがある世界なのだが、本書はかなり幻想的な特色を持つ。
意味のわからない話やメタファーもあるが、意味を探りたくなる深みがある。
東日本大震災の後に書かれた短編集と知り、なるほどと意味を了解した部分もある。
不穏さ、もの悲しさに浸るような作品も、どこかユーモラスでそれがシュールに思えるのがこの作者の持ち味だろう。
描写は極端に省略され、それでも情景が浮かぶ。上手い。
読書会の課題だったのだが
・忘れられたワルツ
・ニイタカヤマノボレ
・神と増田喜十郎
この三編がとても気に入った。 -
Posted by ブクログ
プラトニックながら心は差し出す。
ただ期待したような反応がないだけ。
恋愛って大部分がそういうもんじゃなかろうか。
差し出したものと同等のものが感じられる恋愛は、
相当の観察と場慣れの成果だと思ってる。私は。
(少数派なのかも。わからない。。)
それでもどちらかの熱量が大きくて、その比重のデタラメさをもろともしない恋愛が、これなんだろう。
何度も傷を作って、泣いて、不貞腐れたり、腹を立てたり。そして落ち着いてホームと言うべきこの場所へまた戻る。そんな長くて辛い恋愛。
その大きな気持ちを受け取る男は、女のことを適当にしているわけではなかった。
《饒舌で自分の思うところはもちろん、関係のない仕事の -
Posted by ブクログ
恋愛、結婚、友情、生活、出世、家族、人間って色々な悩みや楽しみの中にも沢山の孤独を背負って生きているんだなって深く感じさせられた一冊でした。
東京でサラリーマンをしている主人公は宝くじが当たって福井の敦賀で自由で孤独な仙人の様な暮しを続けていたある日に"ファンタジー"と言う不思議な神様が出現し主人公の家に居候する様になる。"ファンタジー"はその存在を感じられる人とそうでない人に分かれる。
そんな不思議同居人との田舎暮らしの夏に海岸で仕事中毒なOLと知り合い付き合い始める。
遠距離恋愛を重ね年月が過ぎたある日に彼女が末期ガンと知らされる。
彼 -
Posted by ブクログ
平凡な生活を過ごす大学生のヒデはバイト先の年上女性の額子に誘われ初めて女性の身体を経験し付き合い始めるが何事も経験豊富な額子に始終リードされっぱなしのヒデだが、どんどん額子のクールで不思議な性格に引き込まれて行くが付き合って2年目に夜中の公園の立木に下半身を曝されて縛られたままで結婚が決まったから別れると一方的に宣言され額子は去って行く。
額子が居なくなった後、ヒデは就職や新たな恋人と付き合いながらも充足されない心をアルコールで満たす様になって行き親友の加藤や恋人翔子の忠告も無視しアルコールに依存する生活が続いて行く。
家族・友人・恋人・職場・身体の全てをアルコール依存症のヒデは失っ -
Posted by ブクログ
きつい躁の女とゆったり鬱の男の逃避行。
多分メンヘラは皆分かる、逃げたいという絶対的な衝動。それに反してどこかあっけらかんとした二人の旅は、病への諦めに似た気持ちの果てにある。二人は価値観も育ちも全然違う人間なんだけど、精神病によって世間から隔離される存在だというところでゆるやかにつながっている仲間だ。
どこからも逃げられないじゃないかよってなごやんが叫んだとき、逃げることはできても逃げ切るなんてしきらんよって返す花ちゃんの言葉がすべてなのだと思う。でもそれは逃げて逃げて、行き詰まってみないとちゃんとは分からないことだ。ああもう駄目だ、どこにも行けないと分かってなぜか少しだけ安らぐ。花ちゃんの -
Posted by ブクログ
ネタバレこの人の小説はラストが好きだ。淡々とした文章が続いてゆっくり降り積もったもののエッセンスが、最後にすこしだけ滴って落ちる感じ。
「イッツ・オンリー・トーク」の優子の「なんかさ、みんないなくなっちゃって」も、「第七障害」の篤が順子の頬にそっと触れた余韻も本当にいい。ぐっと心をつかまれてゆっくり離されて、余韻がじんわり広がっていく。
私は「第七障害」の方が好みだった。前の話でダメ男たちを見てきたせいか篤くんの一途さと素直さの好感度がガンガン上がる。かわいい。解説によると痴漢さんはすごく人気あるらしいけど、どうしてなんだ…?点の優しさより、べったりした面の優しさの方が好みなのかも。そして男たちより -
Posted by ブクログ
ネタバレ淡々とした文章だけど、降り積もって味わいが出てくる感じですごくよかった。
日向子は「かっこいい」の額縁を作って抱えてそれ越しに小田切を見ている感じ。一途と言えば一途だけど思い込みもあるし流されやすいし、平気で人んちの物パクったりする人間性。小田切は小田切でそんなかっこよくない、日向子以上にいい加減なダメ人間ではある。
あくまで日向子の額縁が前提で、額縁越しの関係だから続いてる関係なのは、二人とも薄々分かってる。日向子はあんなにしたがってるのに、そんな魔法が解けるようなことはお互い絶対しないという……。
長い年月を経て額縁が透明になってしまっても、それを掲げ続ける日向子の覚悟が好き。本当はかっ -
Posted by ブクログ
これ嫌な人は嫌かもしれない。いきなりエロエロで始まるし、主人公の男は超絶馬鹿で同情の余地もないし。
10代の頃に出会った年上の女性にドロドロにはまった挙句捨てられて、それ以降の彼の人生を追ってそのどうしようもなさを追体験出来る本です。
転落っぷりが妙にリアルでエロから始まった本のはずなのに、段々苦しい気持ちになって来て、中盤まで読んだときにはこの馬鹿男の友達になったような気分になっていました。
男女の情愛を書いた本ですが、これをどういう風に読むのかは人それぞれという気がします。でも私にとっては非常に刺さる本でありました。私はこの男のような要素はどちらというと無く、無難な生き方をする人間なのです -
Posted by ブクログ
もっさりヘラヘラした主人公だけど、「あーあるある、こういう感情!」という場面が多々描かれてるから嫌な主人公という印象にならなかった。もっさりしてるけど。
「当たり前」のように毎日同じ生活してて、ふと全然違う行動したくなる衝動とか、夜の田舎道を運転する何とも言えない孤独感?ワクワク感、スリルみたいなものを思い出す。ここではないどこかに行きたい気持ち。
歳をとると薄情が当たり前になってたけど、人間同士の感情の複雑さを嫌な部分も含めて明るみにしてくれた感。
あとは、田舎道ドライブしたくなる。さすが絲山秋子。BGMはくるりのハイウェイとかいいな。
映画化したらどうなるんだろう、と妄想したけどど