絲山秋子のレビュー一覧

  • 忘れられたワルツ

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    ネタバレ

    絲山秋子の本は何冊か読んだ。いずれも少し不思議な感じがある世界なのだが、本書はかなり幻想的な特色を持つ。
    意味のわからない話やメタファーもあるが、意味を探りたくなる深みがある。
    東日本大震災の後に書かれた短編集と知り、なるほどと意味を了解した部分もある。
    不穏さ、もの悲しさに浸るような作品も、どこかユーモラスでそれがシュールに思えるのがこの作者の持ち味だろう。
    描写は極端に省略され、それでも情景が浮かぶ。上手い。
    読書会の課題だったのだが
    ・忘れられたワルツ
    ・ニイタカヤマノボレ
    ・神と増田喜十郎
    この三編がとても気に入った。

    0
    2022年01月28日
  • 袋小路の男

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    究極の片想いの話。

    二人称のあなたで語られる事で、読者それぞれのあなたに重ねて物語を読むことができる。

    小田切が入院して弱っている時、包み込んで抱きしめてあげたいけど、それは「してあげること」だから許されない。限りなく似ているのに、違うことだから...
    彼女にしか許されないことをしてあげたいのに、今の関係が壊れることを恐れてできないもどかしさがうかがえた。

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    2022年01月21日
  • 袋小路の男

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    プラトニックながら心は差し出す。
    ただ期待したような反応がないだけ。
    恋愛って大部分がそういうもんじゃなかろうか。
    差し出したものと同等のものが感じられる恋愛は、
    相当の観察と場慣れの成果だと思ってる。私は。
    (少数派なのかも。わからない。。)
    それでもどちらかの熱量が大きくて、その比重のデタラメさをもろともしない恋愛が、これなんだろう。
    何度も傷を作って、泣いて、不貞腐れたり、腹を立てたり。そして落ち着いてホームと言うべきこの場所へまた戻る。そんな長くて辛い恋愛。
    その大きな気持ちを受け取る男は、女のことを適当にしているわけではなかった。
    《饒舌で自分の思うところはもちろん、関係のない仕事の

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    2021年09月17日
  • 海の仙人

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    リアルと不思議に浸った本。
    ちゃんと自分を律する大人たちの、安らぎと悲しみと愛情。
    とても丁寧な思いやりと、心地よい距離。
    素敵な風景が豊かな表現でいつまでも読み続けたい気持ちになりました。

    もっと分厚いページにしてほしかった。
    せめて、あと1ページほしい。
    それもファンタジーということか。

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    2021年08月21日
  • 海の仙人

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    恋愛、結婚、友情、生活、出世、家族、人間って色々な悩みや楽しみの中にも沢山の孤独を背負って生きているんだなって深く感じさせられた一冊でした。

    東京でサラリーマンをしている主人公は宝くじが当たって福井の敦賀で自由で孤独な仙人の様な暮しを続けていたある日に"ファンタジー"と言う不思議な神様が出現し主人公の家に居候する様になる。"ファンタジー"はその存在を感じられる人とそうでない人に分かれる。

     そんな不思議同居人との田舎暮らしの夏に海岸で仕事中毒なOLと知り合い付き合い始める。

    遠距離恋愛を重ね年月が過ぎたある日に彼女が末期ガンと知らされる。


     彼

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    2021年04月18日
  • ばかもの

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     平凡な生活を過ごす大学生のヒデはバイト先の年上女性の額子に誘われ初めて女性の身体を経験し付き合い始めるが何事も経験豊富な額子に始終リードされっぱなしのヒデだが、どんどん額子のクールで不思議な性格に引き込まれて行くが付き合って2年目に夜中の公園の立木に下半身を曝されて縛られたままで結婚が決まったから別れると一方的に宣言され額子は去って行く。

     額子が居なくなった後、ヒデは就職や新たな恋人と付き合いながらも充足されない心をアルコールで満たす様になって行き親友の加藤や恋人翔子の忠告も無視しアルコールに依存する生活が続いて行く。

     家族・友人・恋人・職場・身体の全てをアルコール依存症のヒデは失っ

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    2021年04月18日
  • 離陸

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    2020末に橙書店にて購入。
    大人な感じの物語。
    タイムスリップなのか、ミステリなのか、全てが曖昧なままだけど、私にしては珍しく、受け止められた。
    前半、八木沢、東京、四日市、フランスの場面から
    後半は熊本、人吉、八代、唐津、福岡、馴染みのある場所が出てきて、入りやすかったのかもしれない。
    人吉の豪雨で流失した球磨川第一橋梁や219号線を思うと残念でならない。
    そして3.11の震災も消えることなく事実として残り続けるのだな、と。
    離陸した人々を想いまた何年か後にゆっくり読みたい。

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    2021年02月18日
  • 海の仙人

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    とても美しい小説

    男性と女性は身体だけではなく、心で繋がれる。
    主人公と交際している女性の深い結びつきに、心が切なくなりました。

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    2021年01月26日
  • 忘れられたワルツ

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    短編集。
    震災が共通項となっているが、正面からそれを描いているわけではない。
    どの物語にもどこかにあの3.11の影が現れる。
    しかし、タイトルの「忘れられたワルツ」は、よくわからなかった。妹は精神的におかしくなってしまっているのだろうか。姉と母はもういないのだろうか。
    そうだとするととても悲しい話だったが、一番印象に残った。

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    2020年10月30日
  • 袋小路の男

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    「袋小路の男」「小田切孝の言い分」
    今までこういう話はやきもきしたりじれったいなあと思いながら読んで、最後は(軽い言い方になるけど)こういう恋愛にいい意味で酔って終わることが多かったけどこの作品だとなぜか穏やかな見守るような気持ちで見れたし、爽やかさすら感じる読後感だった
    かっこいい小田切からかっこ悪い小田切への変化が全然嫌じゃなく、まさに「嫌いも含めて好き」というやつだった
    「アーリオ オーリオ」も素敵だった

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    2020年10月19日
  • 海の仙人

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    ―ファンタジーがやって来たのは春の終わりだった。

    冒頭の一文にいきなりグッと引き寄せられた。な、なんだ?
    いるだけでいい、というのはこういうヤツ(失礼!)のことをいうんじゃないだろうか。こんな居候ならぜひうちにもきてほしい。
    相手をそのまま自然に受け入れるような、人々の関わり方も心地いい。
    性別も時間も関係なく、ベースとなるものは静かにあり続けているように思った。

    片桐のファンタジーとの会話が楽しい。同性ながら惚れた。

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    2020年09月22日
  • 逃亡くそたわけ

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    きつい躁の女とゆったり鬱の男の逃避行。
    多分メンヘラは皆分かる、逃げたいという絶対的な衝動。それに反してどこかあっけらかんとした二人の旅は、病への諦めに似た気持ちの果てにある。二人は価値観も育ちも全然違う人間なんだけど、精神病によって世間から隔離される存在だというところでゆるやかにつながっている仲間だ。
    どこからも逃げられないじゃないかよってなごやんが叫んだとき、逃げることはできても逃げ切るなんてしきらんよって返す花ちゃんの言葉がすべてなのだと思う。でもそれは逃げて逃げて、行き詰まってみないとちゃんとは分からないことだ。ああもう駄目だ、どこにも行けないと分かってなぜか少しだけ安らぐ。花ちゃんの

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    2020年08月18日
  • イッツ・オンリー・トーク

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    ネタバレ

    この人の小説はラストが好きだ。淡々とした文章が続いてゆっくり降り積もったもののエッセンスが、最後にすこしだけ滴って落ちる感じ。
    「イッツ・オンリー・トーク」の優子の「なんかさ、みんないなくなっちゃって」も、「第七障害」の篤が順子の頬にそっと触れた余韻も本当にいい。ぐっと心をつかまれてゆっくり離されて、余韻がじんわり広がっていく。

    私は「第七障害」の方が好みだった。前の話でダメ男たちを見てきたせいか篤くんの一途さと素直さの好感度がガンガン上がる。かわいい。解説によると痴漢さんはすごく人気あるらしいけど、どうしてなんだ…?点の優しさより、べったりした面の優しさの方が好みなのかも。そして男たちより

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    2020年08月14日
  • 袋小路の男

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    ネタバレ

    淡々とした文章だけど、降り積もって味わいが出てくる感じですごくよかった。
    日向子は「かっこいい」の額縁を作って抱えてそれ越しに小田切を見ている感じ。一途と言えば一途だけど思い込みもあるし流されやすいし、平気で人んちの物パクったりする人間性。小田切は小田切でそんなかっこよくない、日向子以上にいい加減なダメ人間ではある。
    あくまで日向子の額縁が前提で、額縁越しの関係だから続いてる関係なのは、二人とも薄々分かってる。日向子はあんなにしたがってるのに、そんな魔法が解けるようなことはお互い絶対しないという……。

    長い年月を経て額縁が透明になってしまっても、それを掲げ続ける日向子の覚悟が好き。本当はかっ

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    2020年07月24日
  • 海の仙人

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    しみじみと、いいなぁ…と思いました。
    登場人物たちに起こることは過酷な事もあるのですが、とても静か。
    登場人物たちが皆さん大人なのが、静けさだったのかなと思います。自分の気持ちだけで突っ走らないところが落ち着きます。
    ファンタジーは何だったんだろう、と思いましたが、神ってこういうものなのかも。側にいるとなんだかいいな…となるけど、実際に何かをしてくれるものではない。
    敦賀、行ってみたくなります。
    絲山さんの本は初めて読みました。文章が朗らかだけれど温度が高過ぎなくて好みです。他の作品も読みます。

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    2020年07月12日
  • ばかもの

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    これ嫌な人は嫌かもしれない。いきなりエロエロで始まるし、主人公の男は超絶馬鹿で同情の余地もないし。
    10代の頃に出会った年上の女性にドロドロにはまった挙句捨てられて、それ以降の彼の人生を追ってそのどうしようもなさを追体験出来る本です。
    転落っぷりが妙にリアルでエロから始まった本のはずなのに、段々苦しい気持ちになって来て、中盤まで読んだときにはこの馬鹿男の友達になったような気分になっていました。
    男女の情愛を書いた本ですが、これをどういう風に読むのかは人それぞれという気がします。でも私にとっては非常に刺さる本でありました。私はこの男のような要素はどちらというと無く、無難な生き方をする人間なのです

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    2020年04月17日
  • 薄情

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    もっさりヘラヘラした主人公だけど、「あーあるある、こういう感情!」という場面が多々描かれてるから嫌な主人公という印象にならなかった。もっさりしてるけど。

    「当たり前」のように毎日同じ生活してて、ふと全然違う行動したくなる衝動とか、夜の田舎道を運転する何とも言えない孤独感?ワクワク感、スリルみたいなものを思い出す。ここではないどこかに行きたい気持ち。

    歳をとると薄情が当たり前になってたけど、人間同士の感情の複雑さを嫌な部分も含めて明るみにしてくれた感。

    あとは、田舎道ドライブしたくなる。さすが絲山秋子。BGMはくるりのハイウェイとかいいな。

    映画化したらどうなるんだろう、と妄想したけどど

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    2020年02月26日
  • 薄情

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    なんか、ずっとざわざわしてたの。

    景色や光の描写もストンと入ってこなくて何度も戻った。

    「宇田川、おまえ大変だな。」
    って、彼の状況ではなく思考に対して感じていたせいか。


    そしてそして、堀江敏幸さんの解説を読んで、何度も、
    「はっ!」
    ってなる。

    ダメだなーオレは。


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    2020年02月02日
  • 小松とうさちゃん

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    ごくありふれた普通のおじさん2人の日常に起こった小さなアクシデントだが、別々に語られていった先に思わぬ形で交わる。著者にとってこの2人のおじさんキャラは特別というか、作者の手元を離れて意思を持っているかのような存在らしい。ものを作る人が「降りてくる」と言いますが、そんな感じなんでしょうか。この2人のキャラクターがまたいつか違う形で再登場する日がくるのかな?ちょっと楽しみです。
    また、全体的に平和な空気が漂っているけど、八重樫という登場人物により底知れない不気味さが醸し出されています。著者の世界の深さをそこに感じました。

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    2020年01月31日
  • 絲的サバイバル

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    1人キャンプエッセイに取り組む絲山さんのなりふり構わぬ姿勢に感心した。
    辛い状況でも楽しんで、かつ楽しいエッセイに仕上げる能力も素晴らしい。

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    2019年12月16日