絲山秋子のレビュー一覧
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久々の絲山秋子さん!
花ちゃんの博多弁丸出しの会話に伴う疾走感がたまらない。引きずられアッという間に読み終えた。
主人公・花田こと花ちゃんは「亜麻色二十エレは上衣一着に値する」が幻聴で聴こえ出すと自分ではどうすることもできなくなってくる。『資本論』の一節だそうだが、時折り何度も出てくるこのフレーズは不可解だがテンポ感があり効果的に使われていた。
「どうしようどうしよう夏が終わってしまう」軽い気持ちの自殺未遂がばれ、入院させられた花ちゃんは、退屈な精神病院からの脱走を決意する。名古屋出身の「なごやん」を誘い出し、彼のぼろぼろの車での逃亡劇。なごやんと衝突しながらも、車は福岡から、阿蘇、さらに南へとの九州縦断ロードムービーさながらだ。(映画化もされているらしい)
こんなに一緒にいるんだから一回ぐらいセックスしてもいいよ、と言った花ちゃんになごやんが答える。「いかんがあ」「恋人じゃない人としたらいかんて。俺じゃなくても、誰とでもそうだからね」。いいなぁ、なごやん! ここでそんな関係になったら本作の魅力は半減しただろう。
今春出版された、続編『まっとうな人生』を早く読みたい! -
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オーロラを運ぶ女と遭遇する「葬式とオーロラ」、見ず知らずの駅に降り立ってしまう「NR」が面白かったです。え、いつの間に非現実に入り込んだのだろうという不思議な世界観でした。一風変わった人たちの人生の一場面を垣間見るストーリー。少し辛い過去を抱える登場人物の不穏な空気の中にも、ふと笑える会話もありで、そうか、そうだったと、所々共感してしまう。ヤンキーとチャラ男の違い、ブリーフとトランクス論。
ほんのり震災の要素が絡まっている。過去と今とは違う、もうふつうなんてなくなった。5年後のふつうなんて想像できない。そうだな・・。
直接的ではないのに、後でふわりと響く独特な雰囲気でした。今日の地元紙、日曜の本の紹介の頁に著者の紹介が載っていた。なんという偶然。 -
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読書開始日:2022年6月14日
読書終了日:2022年6月17日
所感
【小松とうさちゃん】
話が出来すぎてる気がする。
もう少し自然な方が好み。
みどりも小松もうさちゃんも、もう少し人柄を知りたかった。
結末ありきだったのかな。
【ネクトンについて考えても意味がない】
優しい作品だった。
心和らぐ大好き。
ネクトンについて考えても本当に意味がない。
影響があるのは生死に関わる時だけ
ある日スーッと心がおりてきただけ
漂う漂流者でもいい
南雲咲子が羨んだように、つまるところはクラゲのように清く漂いたい
【小松とうさちゃん】
細く長くを主眼に置くと、楽しさは薄れる
【ネクトンについて考えても意味がない】
ネクトン=自力で泳げるやつ
クラゲ=プランクトン
ベニクラゲは死なない
【飛車と騾馬】 -
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読書開始日:2022年3月19日
読書終了日:2022年3月22日
所感
北関東、東京へ行こうと思えば行けるくらいの立ち位置。
この立ち位置も、宇田川のうだつのあがらなさを助長させていたのだろう。
行動すればなにかが変わることも、
行動できない理由なんか一つもないことも、
心のどこかで自覚しながら、日々を怠惰に過ごす。
自分と対極の鹿谷の自由生活に触れ、その人生の疑似体験を行うも、
どこかで鹿谷の失敗を望んでいた。
自分のしがみついた安定が間違っていないことを、実感したかった。
みずから実感を掴みに行くのではなく、その実感が来るのを待っていた。
ここにも、宇田川の弱さが出る。
鹿谷がいざ失敗をすることで、気づけば自分は毒に侵されていると知る。
自覚があったからこそ、横須賀の見舞いできっかけを得、ヒッチハイカーを拾ってあての無い遠出をするという行動に出れた。
なにに対しても無気力で、自分の生活、凝り固まった思考にしがみついた、薄情な宇田川が色づいた。
過去が過去になっていくのを感じる。これはいい文だなと思った。
瑞穂に対して「勝手な投影」と言い非難した宇田川がすぐさま自分もみずほに対して「勝手な投影」をしていたことにに気付いたシーンは、
かなりきつかった。
こうなると折り合いをつけるしかなくなる。
欠落してるからこそわからぬ俺の欠落。
W田中の鏡の話が思い起こされる。
さくい
ヘルパーツバメ
〇〇ではどこに日が沈む、どこから日が登る
ミレイちゃんのお父さんお母さんに会いに来たわけではなかった。俺は粟井という人間に会いに来た
あまりものを言わずに暮らしていると客観性を失う。自分の都合で考える癖がつく。
鏡、見えないものを大事にしていれば大丈夫。
子供と大人は見えているものが違う。興味ベース
怜悧
似合う、そういうのが夫婦だ
お相伴
宇田川=密度
欅は八年くるい続ける???
自己憐憫で腫れ上がった彼女の目
投影=宇田川も=鏡
欠落してるからこそわからぬ俺の欠落
ショックで寝込むなんて全部終わってからにしろよ
いつからおれは裁いてんだ
俺を選べばこんな間違いはおきなかった。でもそういうのはえらべない
ルームミラーに移した自分の顔は笑っていた
鹿谷さんのアトリエに通うものはみな、弱い毒が蓄積していた。それは自分自身を認められないことによる、狭く濁った視野からくる毒。鹿谷さんと過ごす時間によって、自分が広い視野を持つ擬似体験をするが、結局は擬似。どこかで弱い毒が、仕方に失敗しろ、地元にしがみつく安心こそが正義と叫ぶ。
安定は求めるものでしがみつくものではない。弱い毒が蓄積する。
過去が、たしかに過去になっていくのを感じた -
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ネタバレ絲山秋子の本は何冊か読んだ。いずれも少し不思議な感じがある世界なのだが、本書はかなり幻想的な特色を持つ。
意味のわからない話やメタファーもあるが、意味を探りたくなる深みがある。
東日本大震災の後に書かれた短編集と知り、なるほどと意味を了解した部分もある。
不穏さ、もの悲しさに浸るような作品も、どこかユーモラスでそれがシュールに思えるのがこの作者の持ち味だろう。
描写は極端に省略され、それでも情景が浮かぶ。上手い。
読書会の課題だったのだが
・忘れられたワルツ
・ニイタカヤマノボレ
・神と増田喜十郎
この三編がとても気に入った。 -
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プラトニックながら心は差し出す。
ただ期待したような反応がないだけ。
恋愛って大部分がそういうもんじゃなかろうか。
差し出したものと同等のものが感じられる恋愛は、
相当の観察と場慣れの成果だと思ってる。私は。
(少数派なのかも。わからない。。)
それでもどちらかの熱量が大きくて、その比重のデタラメさをもろともしない恋愛が、これなんだろう。
何度も傷を作って、泣いて、不貞腐れたり、腹を立てたり。そして落ち着いてホームと言うべきこの場所へまた戻る。そんな長くて辛い恋愛。
その大きな気持ちを受け取る男は、女のことを適当にしているわけではなかった。
《饒舌で自分の思うところはもちろん、関係のない仕事の話や友達の話までもしたがる。概して彼は聞き役に回ることを不快に思わなかった》
から解るように、一方通行と思われた恋愛にちゃんと応えていた。ただ、女が気づかなかった。空回り。
騒がしく空回りしながらも離れない2人を微笑ましく読みました。
小田切孝の言い分 を読んでから読み返すと全然違った話になって、再読おすすめです。 -
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恋愛、結婚、友情、生活、出世、家族、人間って色々な悩みや楽しみの中にも沢山の孤独を背負って生きているんだなって深く感じさせられた一冊でした。
東京でサラリーマンをしている主人公は宝くじが当たって福井の敦賀で自由で孤独な仙人の様な暮しを続けていたある日に"ファンタジー"と言う不思議な神様が出現し主人公の家に居候する様になる。"ファンタジー"はその存在を感じられる人とそうでない人に分かれる。
そんな不思議同居人との田舎暮らしの夏に海岸で仕事中毒なOLと知り合い付き合い始める。
遠距離恋愛を重ね年月が過ぎたある日に彼女が末期ガンと知らされる。
彼女を失った主人公は元の孤独な仙人生活に戻るが元同僚である女性が思い出の貝殻をきっかけに8年間途絶えていた主人公に遭いに行く。
不思議で柔らかな感じで爽やかな青春物かと思いましたが深いです。流石ですね絲山秋子さん、、最後のシーンで視力を失った主人公とファンタジーの会話と8年を経て遭いに来た彼女・・・泣きそうになりました。
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平凡な生活を過ごす大学生のヒデはバイト先の年上女性の額子に誘われ初めて女性の身体を経験し付き合い始めるが何事も経験豊富な額子に始終リードされっぱなしのヒデだが、どんどん額子のクールで不思議な性格に引き込まれて行くが付き合って2年目に夜中の公園の立木に下半身を曝されて縛られたままで結婚が決まったから別れると一方的に宣言され額子は去って行く。
額子が居なくなった後、ヒデは就職や新たな恋人と付き合いながらも充足されない心をアルコールで満たす様になって行き親友の加藤や恋人翔子の忠告も無視しアルコールに依存する生活が続いて行く。
家族・友人・恋人・職場・身体の全てをアルコール依存症のヒデは失ってしまいどん底の中で飲酒運転で事故を起こしてしまい断酒する事を決意しささやかで素朴な人生を取り戻して行き額子と再開するが変わり果てた彼女との結末は。。。
この小説は短いですが可笑しさ・せつなさ・絶望・愛がぎゅっと凝縮されとても深く心に浸みます。冒頭では額子とヒデの過激な性描写に驚き、額子に別れを宣言される公園でのシーンには変態的なプレーとその状況は思わず笑ってしまいます。大学時代の友人ネユキが宗教団体に入信、親友加藤は大人としての基盤を築いている、依存症のヒデが自分を取り戻し本当の気持ちを大切にして、お互いに素直になれるのだろうか、 -
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きつい躁の女とゆったり鬱の男の逃避行。
多分メンヘラは皆分かる、逃げたいという絶対的な衝動。それに反してどこかあっけらかんとした二人の旅は、病への諦めに似た気持ちの果てにある。二人は価値観も育ちも全然違う人間なんだけど、精神病によって世間から隔離される存在だというところでゆるやかにつながっている仲間だ。
どこからも逃げられないじゃないかよってなごやんが叫んだとき、逃げることはできても逃げ切るなんてしきらんよって返す花ちゃんの言葉がすべてなのだと思う。でもそれは逃げて逃げて、行き詰まってみないとちゃんとは分からないことだ。ああもう駄目だ、どこにも行けないと分かってなぜか少しだけ安らぐ。花ちゃんの言うボラのように痛みを感じながら、このために逃げたのだとやっと分かる。
砂州の道が消えて、もう逃げる道がないという時に、二人の追い求めた安らぎのラベンダーの香りが少しだけするのって、この気持ちなんだろう、とすっと頭に入った。
最後の「くそたわけ」って、たぶん名古屋弁だと思うけど、逃避の末になごやんもやっと自分の一部を形作っている名古屋を受け入れることができたのだ。花ちゃんの脳内の声も消える。花ちゃんも花ちゃんで、「気が触れても彼女と歩いてた」で、自分の中のみんなとずっとずっと歩いて、ちょっと諦めがついたのだろう。二人はやけっぱちでずっと「彼女と歩いて」いかなくてはならなくて、にじんでいるのは悲しさよりも優しさだ。だってもう逃げられないんだから一緒に歩いていく他ない。逃げ疲れてやっとそれを選び取れる。
優しい話だったと思う。 -
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ネタバレこの人の小説はラストが好きだ。淡々とした文章が続いてゆっくり降り積もったもののエッセンスが、最後にすこしだけ滴って落ちる感じ。
「イッツ・オンリー・トーク」の優子の「なんかさ、みんないなくなっちゃって」も、「第七障害」の篤が順子の頬にそっと触れた余韻も本当にいい。ぐっと心をつかまれてゆっくり離されて、余韻がじんわり広がっていく。
私は「第七障害」の方が好みだった。前の話でダメ男たちを見てきたせいか篤くんの一途さと素直さの好感度がガンガン上がる。かわいい。解説によると痴漢さんはすごく人気あるらしいけど、どうしてなんだ…?点の優しさより、べったりした面の優しさの方が好みなのかも。そして男たちより美緒が魅力的だった、こんな人と友達になりたい。かるーいふわふわしたノリで、いつでも歌を歌ってる人。あこがれるなあ。
光に向かっていくお話だけど、あくまで淡々とした姿勢は崩さず、ゆっくりゆっくり氷が溶けていく様子を見守る感じで、ほんのり温かいから安心して寄り添える。何回も読みたくなる。