絲山秋子のレビュー一覧

  • 御社のチャラ男

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    先の尖った革靴を履き、中身が薄っぺらいビジネス用語を並べ、いつも言うことがコロコロ変わる男、通称”チャラ男”こと三芳。
    彼の周りの同僚達視点で会社の実情、他の同僚について思うこと、世の中のこと、プライベートなことetc…色んなことが語られていきます。
    年齢、性格バラバラな人物達が沢山出てきますので、強そうに見えて実は結構気にしてるんだ!とか、こういう人って実はこんなこと考えてるんだ!とか新たな発見が読んでいる間ずっとありました。
    こういう人いるよな〜って思うキャラクターがどんどんでてくるので、自分の周りにいる存在する人を当てはめてみて読んでみると、とても楽しめました。
    この作品を読むと、今まで

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    2025年12月08日
  • 細長い場所

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    絲山秋子さんらしく、また、絲山秋子さんらしからず……ファンとしてうれしい作品だし、ここちのよいさびしさを味わえる

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    2025年11月30日
  • 離陸

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    喪失にどう接するか、をテーマだと感じた。乃緒を失った複数の人々がどこかで接点を持ち、影響を与えあう。ブツゾウに視点をおいた作品も描いて欲しいと思った。

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    2025年10月30日
  • 薄情

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    ザラっとした気持ちをかかえながら、もどかしい日常を歩く人間たちに「べつにいい」と寄り添いながら必要な酸素を送りこむポンプみたいな小説。暗くもなく明るくもなく、数値を明らかにされない周波数の光に照らされた「薄情」という言葉を胸に、私たちはそれぞれの未来へ歩き続けるのだと思いました。

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    2025年07月24日
  • 御社のチャラ男

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    最初の数章で鮮やかに核心をつかれ、会社員の気持ちをテキパキ言語化されて、度肝を抜かれた。
    これが絲山秋子さんか。相当前に『袋小路の男』を読んで、その時は若すぎたのかピンとこず、以来読んでこなかった作家さんなのだが、これは凄まじいぞ。解説で木内昇さんも触れているように、思わぬ角度の比喩もしっくりきて絶品。
    わたしは自分の年齢に近い二十〜三十代の登場人物に特に共感できたけれど、四十〜六十の世代の人にも、同世代が共感できるのだろうか。だとしたらすごい通り越してもはや恐ろしい。
    もう少し年を重ねてまた読み返してみたい。

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    2025年06月18日
  • 袋小路の男

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    ネタバレ

    登場人物の立ち位置や距離感、禁欲的でありながら他者を拒絶していないところに好感がもてる。だからといって自己卑下もなくて、人づき合いに疲れている時に読みたくなる本。

    てらいないように書かれているけど、きっとこんな作品を書くのは大変なスキルとセンスが要るのだろうと思う。

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    2025年04月17日
  • 逃亡くそたわけ

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    自殺未遂して精神病院に入院した「あたし」は「なごやん」を道連れに病院から脱走。九州横断の旅が始まる。名古屋出身なのに頑なに標準語のなごやんと博多弁のあたしの会話が絶妙に面白く凸凹コンビっぷりが良い。梅崎春生の『幻化』の影響はあるが悲壮感は全くない。

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    2025年04月13日
  • 神と黒蟹県

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    全国ネットのテレビ番組や全国紙で報道されるのは、多くが48都道府県あるうちのほんの一部の都府県から見える景色。
    でも、そうでない所から見える景色や、そうでない所で繰り広げられていることは確かにある。
    それを大々的に可視化する必要はないかもしれないけど、ないことにしてはいけないなと思った。
    と、たいそうなことを言いつつ、単純に面白かった。
    神がお弁当の審査員になる話が一番好き。

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    2024年11月28日
  • 逃亡くそたわけ

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    ⚫︎感想
    精神病院から抜け出した男女2人が九州を駆け巡る。方言がとてもいい味を出している。
    絲山秋子作品ふ3冊目。男女の友情というか、人間同士の繋がりを気持ちよい読後感をくれるところが絲山作品に通底するところだ。こちらの作品は、九州を必死で駆け巡る2人の珍道中といったところ。ちょっと切なくて、ちょっと笑えて、ちょっといい話。一気読み。

    ⚫︎本概要より転載
    21歳の夏は一度しか来ない。あたしは逃げ出すことにした。
    軽い気持ちの自殺未遂がばれて、入院させられた病院から。
    逃げるのに思いつきで顔見知りを誘った。24歳の茶髪で気弱な会社員。
    すぐに「帰ろう」と主張する彼を脅してすかして車を出させた。

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    2024年11月22日
  • 神と黒蟹県

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    おもしろかった。
    現実にちょっぴりのファンタジーという設定が好きだから刺さった。
    神様出てくるし。

    読み始めの話の主人公は赴任してきたばかりだったけれど、読んでいくうちに黒蟹県に親しみを持つようになってきた。

    キャラクターにも親しみを持った。
    映像で見てみたい気もする。

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    2024年10月11日
  • 沖で待つ

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    良い。大好き。さらっと読めるのに全部が詰まってる。
    死んだ太っちゃんが当たり前のように喋る世界。時系列が戻っていって回想のような話で進むけど、途中で、あっ、そういえば死んでいたんだった、って、死ぬシーンで思い出す。
    人々の描写が、手触りがやわらかい。極限まで削ぎ落とされた優しい文章。みんな頑張って働いてて、いろんなことを考えていて、その全てが愛おしい。太っちゃんのポエムで安直にも泣きかけてしまった。

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    2024年07月19日
  • 神と黒蟹県

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    初めて絲山秋子さんを読みましたが、不思議な読書体験でした。

    読み始めは馴染みのない田舎文化に入り込めず、期待外れかと思っていたのに、読み終わってみれば、なんだか懐かしさまで感じるほど親しんでいた。

    ふとした場面にはっとする言葉が散りばめられていて、油断ならない。
    こういうのが癖になるんだろうなと思います。

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    2024年04月21日
  • 神と黒蟹県

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    黒蟹県(架空)を舞台にした短編8話。
    独立した話ではなく、登場人物やお店の名前などは共通する。そして異彩を放つのは、所々に現れる神。
    神も神だが、登場する人たちも総じて緩い。
    読んでて楽しいとはこのことかな。
    しかし一方で、教訓的なことや人生訓を想起させるような含蓄のある話もあり、飽きない内容だった。

    本文より、

    世のおばちゃん方がなぜ飴を持ち歩き、人にくれたがるのか、やっとわかった。唾液の分泌が不安定でふとした弾みに口のなかがカラカラになっていることに気づくのだ。だから飴を持ち歩く。人にあげるということは自分でも舐めていいということだ。不調を隠しつつ愛嬌を前面に出して恩を売る。さっと差し

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    2024年04月20日
  • 薄情

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    田舎者を経験した者であれば、ものすごく引き込まれる小説だと思う。
    漫然とやり過ごす毎日の中にも喜怒哀楽があり、それを穏やかにキープするための田舎ならではの処世術。その肌感覚で知ってるものが言語化される事にハッとなる。

    主人公の宇田川。
    ニヤつく癖が抜けなければ、この先仕事を継いだ後も小さな陰口に息が詰まる思いを抱えて行くのだろう。その弱さと強さが容易に想像できる程に人物描写が絶妙で良かった。
    読み終えて表題が改めて沁みる。
    薄情。
    あぁ、そうだな。ほんとうに。

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    2024年04月15日
  • 沖で待つ

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    ネタバレ

    ⚫︎感想「沖で待つ」
    初めての絲山さんの作品は「神と黒蟹県」(2024.4時点で最新作)だったが、15年以上前に書かれた芥川賞受賞作である「沖で待つ」にすでに絲山ワールドが完成されていたのだ…といった感想をもった。男女がベタつかない軽やかさや、全体に広がるユーモアと優しさ、少しの寂しさ、少し現実離れした不思議ワールドを感じられた。

    二人はお互い先に死んだ時は残った者がハードディスクを壊し合うという約束を交わす。
    「沖で待つ」は太っちゃんが妻に残したとされる詩のフレーズ。強い信頼を互いにもてて、ピンチの時は助けに行くし助けてくれる、必ず待っていてくれると思える安心感。

    こちらの作品では、同期

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    2024年04月10日
  • 海の仙人

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    作者が描く風景とメッセージが胸に流れ込んできて、いい読み心地でした。絲山秋子さんの物語はどっしり背中を預けて読めます。

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    2024年03月18日
  • 沖で待つ

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    3編ともおもしろいが、やはり表題作『沖で待つ』が特に良かった。登場人物、彼らの会話がおもしろく魅力的。会社の中での「同僚」という人間関係。時に共に喜んだり時には互いの失敗をフォローしたり、日々仕事の中で同じ体験を共有しており、飲むと学生時代の友人以上に話がはずんだり…。読んでいると、その人間関係がリアルで、自分の若かりし頃を思い返して懐かしい気持ちになる。
    主人公と太っちゃんの、恋愛にはならないけど、ただの友人よりも深い、運命共同体のような同士のような関係性は、読んでいると憧れてしまう。現実味があるかといえば無いような気もするが、それ以上に二人の描写が自然で魅力的で、気にならない。

    絲山秋子

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    2024年03月10日
  • 神と黒蟹県

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    ⚫︎受け取ったメッセージ
    神視点で「人々」を愛することを教えてくれるお話

    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    「黒蟹とはまた、微妙ですね」
    微妙、などと言われてしまう地味な県は全国にたくさんあって、黒蟹県もそのひとつだ。
    県のシンボルのようにそびえたつのは黒蟹山、その肩に目立つ北斎が描いた波のようにギザギザの岩は、地元では「黒蟹の鋏」と呼ばれ親しまれている。県庁や裁判所を有し、新幹線も停まる県のビジネス拠点としての役割を担う紫苑市と、かつての中心地で歴史的町並みや重要文化財である黒蟹城を擁する灯籠寺市とは、案の定、昔からの遺恨で仲が悪い。空港と見まごうほどの巨大な敷地を持つショッピングモールの先

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    2024年03月02日
  • 袋小路の男

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    こういう、どうしようもない、抗えない、恋かどうかすら分からないけれど離れられないって話、すごく好きです。同時収録の話も大好き。

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    2023年10月20日
  • 沖で待つ

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    ネタバレ

    女と男の友情・・・。

    成立するのかしないのか、周りで議論されるのを何度か聞いたことがあるが、もう一つ、20年前に早逝した友人の葬儀で、彼の親友が、「エッチなビデオ一式を生前の約束通り全部処分してやった」と言っていた。

    そんな僕個人の思い出が込み上げる標題作②は秀作。

    ③は全文ひらがなとカタカナのみ。そんな小説は、筒井康隆の「心狸学・社怪学」で目にして以来。(絵本や宮沢賢治作品ならありそうだが)

    ちょっと蓮っ葉で物足りなさを感じた①だったが、「オマエ、書いてよ」と絲山先輩に命令されて書いた夏川けい子さんの解説で、その、もの足らない部分がガチン!と音を立ててハマる快感。

    解説まで堪能でき

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    2023年09月03日