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架空の県を舞台にした連作小説集
「黒蟹とはまた、微妙ですね」
微妙、などと言われてしまう地味な県は全国にたくさんあって、黒蟹県もそのひとつだ。
県のシンボルのようにそびえたつのは黒蟹山、その肩に目立つ北斎が描いた波のようにギザギザの岩は、地元では「黒蟹の鋏」と呼ばれ親しまれている。県庁や裁判所を有し、新幹線も停まる県のビジネス拠点としての役割を担う紫苑市と、かつての中心地で歴史的町並みや重要文化財である黒蟹城を擁する灯籠寺市とは、案の定、昔からの遺恨で仲が悪い。空港と見まごうほどの巨大な敷地を持つショッピングモールの先には延々と荒れ地や牧草地が続き、廃業して解体されてしまって今はもう跡地すらどこだかわからない百貨店に由来する「デパート通り」はいつまで経っても改称されず、同じ姓を持つ住民ばかりの暮らす村がある。
つまり、わたしたち皆に馴染みのある、日本のどこにでもある「微妙」な県なのだ。
この土地に生まれ暮らす者、他県から赴任してきた者、地元テレビ出演のために訪れた者、いちどは故郷を捨てるもひっそり戻ってきた者、しばしば降臨する神(ただし、全知全能ならぬ半知半能の)。そういった様々な者たちのささやかでなんてことないが、ときに少しの神秘を帯びる営みを、土地を描くことに定評のある著者が巧みに浮かび上がらせる。
Posted by ブクログ 2024年04月21日
初めて絲山秋子さんを読みましたが、不思議な読書体験でした。
読み始めは馴染みのない田舎文化に入り込めず、期待外れかと思っていたのに、読み終わってみれば、なんだか懐かしさまで感じるほど親しんでいた。
ふとした場面にはっとする言葉が散りばめられていて、油断ならない。
こういうのが癖になるんだろうなと...続きを読む
Posted by ブクログ 2024年04月20日
黒蟹県(架空)を舞台にした短編8話。
独立した話ではなく、登場人物やお店の名前などは共通する。そして異彩を放つのは、所々に現れる神。
神も神だが、登場する人たちも総じて緩い。
読んでて楽しいとはこのことかな。
しかし一方で、教訓的なことや人生訓を想起させるような含蓄のある話もあり、飽きない内容だった...続きを読む
Posted by ブクログ 2024年03月02日
⚫︎受け取ったメッセージ
神視点で「人々」を愛することを教えてくれるお話
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
「黒蟹とはまた、微妙ですね」
微妙、などと言われてしまう地味な県は全国にたくさんあって、黒蟹県もそのひとつだ。
県のシンボルのようにそびえたつのは黒蟹山、その肩に目立つ北斎が描いた波のようにギ...続きを読む
Posted by ブクログ 2024年01月29日
読み始めて
これ書くの楽しかっただろうな〜
と思った。
架空の県の架空の街。架空の会社と物。架空だけど異世界ファンタジーじゃなくて現実世界に実際にあるかのような地方都市。
そこで生きる普通の人々と、人間の姿で生きる神の話。
取り立てて何か起きるわけでもなく、日常の暮らしや独白。エッセイのような読みや...続きを読む
Posted by ブクログ 2024年04月20日
“黒蟹県”なる架空の微妙な県を舞台に、普通の人々と半知半能の神が普通に関わったり関わらなかったりする八編からなる短編集。各編で登場人物が変わったり、神が主人公になったり、前の編の主人公か後の主人公と関わったりして、黒蟹県のリアリティが補強されていき、架空と現実が混じり合って、なんとも不可思議な黒蟹ワ...続きを読む
Posted by ブクログ 2024年03月14日
架空の黒蟹県を舞台にした連作短編集。
最初の『黒蟹営業所』を読んだときは「これ面白いのかなぁ」と、ちょっと思った。
でも次の『忸怩たる神』から、じわじわと面白くなる。個人的に好きなのは『なんかわからん木』
あと黒蟹辞典も好き。本文を読みながら「これ絶対、架空のものだろー」と思ったものが実在したり、逆...続きを読む
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