絲山秋子のレビュー一覧

  • 夢も見ずに眠った。
    物語の雰囲気は現実感に満ち溢れていて、日本のどこかの夫婦の生活を切り取ったようでした。夫婦の2人は日本各地を訪れていますが、私が生まれ育った街が出てきた時はテンション上がりました。物語の中の人と同じ空気を感じられるのはいいですね。

    私はまだ20代で、大人の生き方はわからないけれど、この物語の夫婦の...続きを読む
  • 逃亡くそたわけ
    ロードムービーみたいな小説。2人の逃避行。
    劇的な「救い」は訪れないし、2人ともこれからどうするんだろう的空気が読み終わっても胸に残るのだが、不思議と好きだった。雰囲気が、としか言えない。ロマンチックもカタルシスもない。けれど読んでいるあいだ心が凪になれる。

    虚しさと目的地のないどん詰まり感がある...続きを読む
  • エスケイプ/アブセント
    これもよかったな~。京都へ少しの間逃亡する、元・活動家の男の語り。どうしてこんなにどこの方言も自然なんだろう?
    祈りの描写が良かった。手紙みたいな、もっと言えばメールみたいな。
  • ばかもの
    群馬(高崎・前橋)の話で、また方言がとてもリアルで驚き。これもよかったなあ。
    アル中の焦燥感ってこんな感じなんだろうな、というのがよくわかる。
  • 沖で待つ
    自分が、新入社員だったころのことを、思い出しました
    仕事が上手くできず、上司との関係が悪化して苦しみ、生きるのをやめようと思って、下を向いて働いていた時に、気づいたら隣にいて、笑ってくれた同期がいました
    勝たなくていい、負けないでいこうや
    そんな気持ちが伝わった気がします

    仕事の同期は、友達とは、...続きを読む
  • 沖で待つ
    会話分が抜群に心地よい。物語の筋に関わるわけでもない、どうでもいい会話が、自然で楽しく読める。
    芥川賞受賞作「沖で待つ」もだけど、「勤労感謝の日」が特に良かった。この女性主人公がとても身近で好感が持てる。主人公の周囲への毒づきが楽しい。
  • イッツ・オンリー・トーク
    イッツオンリートークは様々なだめんず達が出てくるけど、みんなそれぞれに人間臭いどころがあって、絶妙に心を揺さぶられました。
    第七障害も良かった。涙を誘われました。
    登場人物が下手に飾られてなくて、すごく現実味がある感じが好きです。
  • まっとうな人生
    待ってましたから。

    里のそばになるので。
    聞き慣れた地名や国道その俗称等
    懐かしさも含め包まれている感覚

    表紙のごっちゃ感もイイのだけど、いろいろ思い出す。
    そして、最初のイラスト風地図も何度も見直すし。
    目次が年月なのでコロナの足音を(それぞれの感覚ですが)感じます。

    富山弁、博多弁。
    花ち...続きを読む
  • 夢も見ずに眠った。
     どっちかと言えば俺が旅、だよなあ。俺が旅に出てしまったようなものだよなあ。旅先でもばらばらだったけれど、あとで落ち合うのは楽しかったな。
     岡山の夜をかれは思い出していた。(220p)

    総てが、旅人視点からの物語だった。1998年から2022年までの大学同級生の男女の話ではあるが、まるで旅人のよ...続きを読む
  • 沖で待つ
    人の本質的なものを書くのが上手だなと感じた。

    文面自体も読みやすくもっと読んでいたいと思う物語であった。ジェネレーションギャップを感じる部分はあったが今の時代にもいるような登場人物に共感する部分が多く気にならなかった。もっと絲山秋子の作品を読みたいと思った。
  • まっとうな人生
    やっぱり絲山秋子先生のロードムービー的小説世界が好き。
    ぐぐるまっぷでルートをたどりながら読んでしまう。
  • 逃亡くそたわけ
    精神病院=プリズンからの逃亡
    博多生まれの花ちゃんと、名古屋生まれのなごやん。

    書き出しの〜亜麻布二十エレは上衣一着に値する〜も、最高によくって‼︎

    九州の北
    博多から、耶馬溪、磨崖仏でヒル、別府、阿蘇いきなり団子、椎葉村で川になごやん流され(よく助けた花ちゃん)、宮崎でエアコンのガス漏れ直し、...続きを読む
  • 沖で待つ
    いやー、好きっす!
    短篇で、サクサク読み終わるが、もっと読んでいたいと思わせてくれる作品でした。そして、表題作ではなく、収録されていた
    もうひとつの作品の勤労感謝の日。こちらがまた、面白かった。どちらの作品も共通して良かったのが、主人公女性のモノローグ。だよねー、って共感してしまいます!
    好きだった...続きを読む
  • 逃亡くそたわけ
    あなたは、『ね、一緒に逃げよう』と言われたらどうするでしょうか?

    いや、どうするも何もそれはその時のシチュエーションによるでしょう。何らかの命の危険が迫っているというような状況であったなら、躊躇などする余地なく誰もが逃げるべきでしょう。

    しかし、『逃げる』という場面はそういった緊迫した場面ばかり...続きを読む
  • 末裔
    あなたは、家に帰って『鍵穴はどこにもなかった』と玄関扉の前に立ち尽くすことになったらどうするでしょうか?

    いや、どうするも何もないですよね。仕事で疲れて家に帰ってきたというあなた、一刻も早くシャワーを浴びたい、晩御飯を食べたい、そして疲れたので早く寝てしまいたいと思っているのに玄関扉が開かない。そ...続きを読む
  • 沖で待つ
    あなたが結婚されている場合、それは『お見合い』結婚だったでしょうか?

    二人が出会い、関係を深めていく先に行き着くところ、それが結婚です。そんな結婚に至る過程には大きく分けて『お見合い』と『恋愛』があります。とは言え、『お見合い』結婚という言葉を聞くことは昨今ほとんどなくなりました。1940年頃には...続きを読む
  • 夢も見ずに眠った。
    単行本で読んで大好きになったので、文庫も買って読みました。あぁ、タイトルのセンスからして素晴らしいし、読んでいて文章がじわーっと体に沁みてくるというか、佐和子と高さんの会話が味わい深く、夫婦のなんともいえない関係が見事に描かれていて好きです。
  • 夢も見ずに眠った。
    高之を許せないと思った一章目から次を読むのに時間がかかってしまった。でもちゃんと最後まで読んでよかった。絲山作品、いつもなんでか寂しくてたまらない気持ちになる。今作も寂しかったほんとうに。
  • 小松とうさちゃん
    非常勤講師の小松と飲み友達のサラリーマン宇佐美ことうさちゃんの話。
    新幹線で隣り合わせたみどりと恋に落ちる小松。
    2人のピンチを正義の味方のように助けるうさちゃん。
    何でもないような普通の生活の中でまったく普通の2人のおっちゃんたちの話です。
    でもなんだかとてもいい感じな2人でした。
  • まっとうな人生
    ページを捲ると真っ先に目に飛び込んで来るのは富山県地図。
    テンション爆上がり。

    本作は、富山のガイドブックと言っても過言ではない。

    立山連峰に黒四ダム、称名滝、大和にファボーレ、サスの昆布締めに完璧過ぎる富山弁。
    我が地元・富山の全てが懐かしく、歓喜の雄叫びを上げそうになる。

    物語は双極性障害...続きを読む