絲山秋子のレビュー一覧
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不思議な物語だった。
今小説に出てきた『恋はあせらず』という古いナンバーを聴いている。
ファンタジーは自分のそばにもいるのかもしれない。
「誰もが孤独なんだよ」とつぶやきながら、そっと傍に佇んでくれている気がする。
「孤独ってえのがそもそも、心の輪郭なんじゃないか?外との関係じゃなくて自分のあり方だよ。背負っていかなくちゃならない最低限の荷物だよ。」という片桐のセリフが胸に刺さる。彼女の自分に厳しい優しさは魅力的だ。
主人公のあくまで自分を大切にする姿勢もいい。そのことによって、結果的に人を傷つけることになったとしても。自分を曲げて、自分が壊れていくよりも。 -
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ネタバレ本筋とずれるが、自分もうつ病で仕事を休んでいるので、伊藤さんの独白が特に印象的だった。
「うつ病というのは、完璧主義の罰としていちばんきついものを集めたものだと思う」というくだりは本当に共感だった。
そんな彼女が、のちのちに仕事に復帰して、きつそうながらもまた働いている様子は希望に見えた。
また、別の人の話で、「うつは心の甘え」みたいなことを言ってるくだりもあって堪えたが、この本の中でたくさんの人の独白が出てくる中で、みんな考えてることや価値観が違っていて、「そう思う人もいるし思わない人もいるし、いちいちショックを受けることないな」と思った。
ぜんぜん別件だが、正義感が強く人の平等性を大切 -
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静かに風が吹くような読み心地。
登場人物みんなしっかりとした価値観をもつ成熟した人たち。
どっしりと構えて、多少のことでは揺らがない芯を感じ、好ましく思う。
ファンタジーという神様のようなものの名前が秀逸。孤独と寄り添うような、夢を見せるような名前だが、実態はないという。
実際に神様に出会ったら縋ってしまいそうなものだが、割とみんな淡白な付き合いをする。
最後の方は怒涛の展開で驚いたが、淡々とかかれているため、そうなの…?と思いつつ受け止めてしまった。雷の伏線はそういうことなのかと。
宝くじに当たるなんてついているんだけど、ついていないところもあり。贅沢はせず、トラウマを抱える主人公と、優 -
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黒蟹県という架空の都市を舞台にした、そこに住む人々の短編集。
なんとなく想像はできつつもつまるところ絵を結ばないが雰囲気だけは想像できる世界。架空と現実とがいい具合に混ざっているので、全く存在しないことであってもすんなりと読めてしまう。話の終わりに用意された黒蟹辞典でそれが架空が実際かを判断して、架空であれば頷き実際であって驚く。いかに自分がよくわからいものでも想像で補完して読み進めているのだと実感する。
神という立ち位置はその地に存在し生活をしながら、そこで実際に生きる人とは指先で触れ合うような関わりをする。神にとっては薄い紙越しに見る世界なのかもしれない。だから関わって仕舞えばそれは誰かの -
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“黒蟹県”なる架空の微妙な県を舞台に、普通の人々と半知半能の神が普通に関わったり関わらなかったりする八編からなる短編集。各編で登場人物が変わったり、神が主人公になったり、前の編の主人公が後の主人公と関わったりして、黒蟹県のリアリティが補強されていき、架空と現実が混じり合って、なんとも不可思議な黒蟹ワールドを構築している。
植物とか鉱石とか機械とかの名前がサラッと出てくるけど、それが架空だったり、実物だったりして、各編の最後に辞書索引みたく、文中の単語が引かれていて、架空か実物かを解説しているのもクスリとさせられる。なんとも不思議な本だなと思ったら、作者さんの過去作には神が出てくるのが多いらしく