すごくすごく良かった。
全体的に「わかるなぁ〜」って感じで、ここ数年の2019〜2022年を舞台にしていて身近な感じも珍しくて良かった。コラムみたいな感じ。
あと、福岡出身の主人公が富山で暮らすという地方感も良かった。富山が識れて面白かった。
『まっとうな人生』は『逃亡くそたわけ』の続編で、実際に
...続きを読む主人公の時間が経過して今現在という設定になっている。
『逃亡くそたわけ』の内容はすっかり忘れたけど、問題なく読める。
大事なのは時間の経過ということであって、内容ではない。
『逃亡くそたわけ』から『まっとうな人生』までの時間経過はそのまま私を含む全ての人に経過した時間で、
だから『逃亡くそたわけ』を読んだ時の私が若いゆえに共感し、月日を経て年をとった私が年をとったからこそ『まっとうな人生』に共感する。
その事実が、すごいなと思う。
特にp64〜73の(5) が良かった。
全文引用して紹介したいくらい、共感した。
「そうなんだよ」ってなった。
そして、それは、やっぱり時間が経って私も老いたから分かるんだとも思った。
昔の自分を思い出した。
20代の頃、私は家族や親しい人の死を体験したくないから誰よりも先に死にたいとしょっちゅう考えていて、そんな時に父が「若いと感度が高いからな、怖いよな。でも俺もお母さんもまだまだ死なないし、まぁもうちょっと待てば今度はお前が年をとる。そうすると良くも悪くも感度は鈍くなるんだよ。他人の死なんて大した事じゃなくなる。それでそうやってどんどん鈍くなって自分の死を迎えるんだよ。人間はそういう風にできてるんだ。だから今死ぬ必要はない。大丈夫」って。私は「鈍感になるなんて耐えられない!」ってなったけど、結局父の言う通り鈍感になった。
人生ってすごいなとしみじみ思う。