絲山秋子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
語り手花ちゃんと、たまたまの道連れなごやんの、博多弁と標準語の遣り取りが軽妙で面白い。
花ちゃんが感覚的であればあるほど、なごやんの理屈っぽさが滑稽に見えてくる。それがユーモラスでいとおしい。それも人を傷つけない、優しいユーモアだ。
極度の躁病および幻覚と、軽い鬱病。
ロードムービーならぬロードノベル。
私が仕事を通じて触れた九州の一部を、ことごとく外す形で九州を南下していく。
旅を通じて、快癒、治癒、自己の回復、故郷との和解、などなど、先の見えない旅にも係らずどこかしらが癒えていく。
その最終局面が、たわけ=たぁけ=名古屋弁、という、回帰。ほんのりと感動。
これは恋愛でも友情でもない、人と人 -
Posted by ブクログ
【本の内容】
真冬に冷やし中華に挑戦して惨敗し、締切と格闘しながら、満腹になれる丼を五連発で作る。
さらにはあまり食べないエスニック料理の食材を集めて悪戦苦闘、そしてオリジナルの豚キムチに舌鼓を打つ。
群馬県高崎市在住、一人暮らしの著者による試作に試作を重ねた毎日。
時に切なく時に笑える傑作料理エッセイ。
[ 目次 ]
力パスタ
冬の冷やし中華
大根一本勝負
すき焼き実況中継
GoGoお買い物
丼五連発
蕎麦屋で飲む酒
デパ地下チャーハン
豚キムチにジンクスはあるのか
春の日記〔ほか〕
[ POP ]
気に入ったものを食べ続ける、インスタント食品にひと手間かける、オリジナルメニューに -
Posted by ブクログ
【本の内容】
引っ越しの朝、男に振られた。
やってきた蒲田の街で名前を呼ばれた。
EDの議員、鬱病のヤクザ、痴漢、いとこの居候―遠い点と点とが形づくる星座のような関係。
ひと夏の出会いと別れを、キング・クリムゾンに乗せて「ムダ話さ」と歌いとばすデビュー作。
高崎での乗馬仲間との再会を描く「第七障害」併録。
[ 目次 ]
[ POP ]
人と人との関わり方を、あくまでも正直にまっすぐ描いた作品。
パンをトーストするのと同じくらい単純に、理由もなく何も残らないセックスをすると主人公は述べる、その表現がリアルだ。
飾りをすべて剥ぎ取ってしまえば、あとに残るのは無味無臭の、無駄話にも -
Posted by ブクログ
長らく積んだ。想ったより数倍ロマンチックな恋愛小説。文章にリズムがあるからかするすると読めるのだけど、今回は少しずつ。読み終わるのが惜しくて、とかではないけれど。
ヒデが駄目な奴かどうかはともかく、こういう男(便宜上ダメ男)を書かせたら作者は人後に落ちない。
最初から既に、道を踏み外し転落しそうなオーラに満ちた男と、いかにもな危うさを持った女。何かしらの意味で「壊れてしまった」人たち。
酒におぼれたり友人が宗教にはまったり。嘘やん、と思うくらい坂道を転がるような展開は、いかにも社会の不条理を表しているようで一種の寂寥感を覚えはするけれど、語り口がユーモラスだから服無きまま木に括り付けられた主人