絲山秋子のレビュー一覧

  • 逃亡くそたわけ
    語り手花ちゃんと、たまたまの道連れなごやんの、博多弁と標準語の遣り取りが軽妙で面白い。
    花ちゃんが感覚的であればあるほど、なごやんの理屈っぽさが滑稽に見えてくる。それがユーモラスでいとおしい。それも人を傷つけない、優しいユーモアだ。
    極度の躁病および幻覚と、軽い鬱病。
    ロードムービーならぬロードノベ...続きを読む
  • イッツ・オンリー・トーク
    「沖で待つ」に続いて読んだ作者の作品。現代の市井のなんか冴えない人を書くのがうまい。私も含めこうパッとしない毎日だけど、何とかみんなやってるんだよな。希望と言えるのかもわからないものだけど、そんな小さな光を示してくれる作品だった。
  • 末裔
    家に入ろうとしたら、鍵穴が無くなっていた。入れない。 その瞬間から、不思議な場所、人達との出会いが始まる。
    放浪の末に、手に入れるもの、気づくこと。
    深い。
  • 海の仙人
    正直、冒頭の唐突さに面食らってしまい、話に入り込めるまでは、いつ本を閉じようかと考えながら読んでいました。慣れてきたら驚くほどにするすると入る言葉と映像の渦に、興奮気味に読み終えた海の仙人。結びにかけての、まるで詩のように研ぎ澄まされた文体は、さすがです。きっと、再読時には初めから入り込めるでしょう...続きを読む
  • 海の仙人
    よかったぁ。しみましたぁ。

    海が見たい‼︎敦賀の浦底行かねば‼︎

    宝くじ当選、ファンタジー登場って
    なに⁉︎この現実からの距離感…⁉︎

    でも、河野の日常と。かりん、片桐とのかかわりって。
    しっかり、じっくり、しっとり伝わる。
    心がじんわりと、あったまったかしら。

    ファンタジー登場の海〜諦めた...続きを読む
  • 海の仙人
     登場人物みんながそれぞれに孤独を抱えているし、相手が孤独を抱えていることにも気付いていて、だからこそ適切な距離感をもって相手を尊重してあげられるのだと思う。土足で踏み込むわけでもなく突き放すわけでもない彼らの支え合いは、少しの切なさもあるけど尊く温かだった。孤独を感じてどうしようもなく嫌になること...続きを読む
  • ばかもの
     主人公ヒデの言葉通り、人の人生は「容易じゃねえなあ」というのが一番の感想。儘ならないことばっかりで、人を傷つけ人に傷つき、それでも存在し続けなければならない過酷さ。だけど、そんな日々の中で何かを失った経験をした後のヒデと額子は、きっとお互いを思いやって大事にし合えるのだと思えるラストはとても温かか...続きを読む
  • 妻の超然
    超然という意味を知らずに、ばかものがおもしろかったので読みました。
    それぞれの超然とする様はみっとも無いような、意地っ張りのような居心地の悪さがとても読みやすかったです。

    伝わるとすればせいぜいそれは愛想だろう。
  • イッツ・オンリー・トーク
    とりあえず寝る女の、男の選択基準の話。短編2編収載で、あといっこは乗馬の話。あまり感じるものはなかったです。
  • 逃亡くそたわけ
    精神病院から脱走した二人組が九州を逃げ回る、まるでロードムービーのような小説。
    九州を知る人だったら、彼らが行く道の風景が浮かんだりして、より楽しめるんじゃないかと思います。
    タイトルの名古屋弁が表すように、登場人物の一人「なごやん」と言う名前。なごやんを知る者にとっては親しみがわくネーミングです!...続きを読む
  • 海の仙人
    絲山秋子作品。宝くじに当たったサラリーマンが会社を辞めて海の美しい敦賀に引っ越した。そこへ神様の遠縁のファンタジーが表れてというお話。ファンタジーが神様っぽくなく俗っぽい。途中で悲しい過去やら厳しい現実を経験して・・・敦賀の海が美しいので尚更哀しみが深くなりますが敦賀の海を感じたくなりました。
  • 忘れられたワルツ
    久しぶりの絲山作品。

    なんだか不思議な後味の短編ばかり。
    でも、はっとするフレーズがどれにもあって、
    色んな名前のない気持ちを起こさせる。
    とても好みの短編集だった。
  • 忘れられたワルツ
    どれもよかったけど、
    最後のやつ、特によかったなぁ。
    どれもこれも絲山秋子らしさがよく出ていて、
    静かでも激しく人間らしさで満たされているような作品ばかりだった。
  • ばかもの
    酒に溺れる駄目男と
    自由奔放な年上の女

    であって別れて、再び出あって

    最後はちょっと希望が見えて。

    この人の文章は好きだなぁ
  • 忘れられたワルツ
    絲山さんにしてはファンタジー色が強かった気がした。現代をうまく取り入れて話がかかれてるから、絲山さんの文は読みやすいー。私は絲山作品は短編より長編好みだな、と思った。
  • 絲的炊事記 豚キムチにジンクスはあるのか
    【本の内容】
    真冬に冷やし中華に挑戦して惨敗し、締切と格闘しながら、満腹になれる丼を五連発で作る。

    さらにはあまり食べないエスニック料理の食材を集めて悪戦苦闘、そしてオリジナルの豚キムチに舌鼓を打つ。

    群馬県高崎市在住、一人暮らしの著者による試作に試作を重ねた毎日。

    時に切なく時に笑える傑作料...続きを読む
  • イッツ・オンリー・トーク
    【本の内容】
    引っ越しの朝、男に振られた。

    やってきた蒲田の街で名前を呼ばれた。

    EDの議員、鬱病のヤクザ、痴漢、いとこの居候―遠い点と点とが形づくる星座のような関係。

    ひと夏の出会いと別れを、キング・クリムゾンに乗せて「ムダ話さ」と歌いとばすデビュー作。

    高崎での乗馬仲間との再会を描く「第...続きを読む
  • 忘れられたワルツ
    やばいやつ。帯で伊坂さんが、天才のふりじゃなくて本物って言ってたのに、おーっと思ったけど、それ以上に1頁めをひらいて惹かれた。
    透明なひとだと思った。棒読みじゃないけど、淡々としている。恋愛で話が始まるのに、最後は地震や災害の話だった。他のも最後は地震。あのあとに書いたからだとは思う。
    すごかった。...続きを読む
  • 妻の超然
    小説のような、絲山氏の主張を込めたエッセイのような、とにかく言いたい放題の作品でした。
    絲山氏らしくて良いです。
  • 妻の超然
    超然、とは。超然とはなにかなんて、普段は全く思い至りもしないのだけれど。あえて超然を選び、超然であるということについてとことん追求するということ。その前衛性の素敵さにくらくらとする。3つの超然がててくるが、表題の妻の超然は実験的な手法もあり、はっとさせられるような鋭さがあり、これこそがわたしの愛する...続きを読む