絲山秋子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
おそらく私はこの本を何度も読み返すことになるんだと思う。自分がどのような状況下に置かれていようとも孤独であること。その孤独に浸りたいときに、読み返すと思う。
河野が持っている独特の他者との距離感や、不意に生活圏に表れてきたファンタジーという出来損ないの神。そこに侵入する片桐。そしてかりん。
解説にも書かれているけど、男女関係の物語に、ここ最近性描写がセットになっていて、性描写と愛がイコールになっているものが多くて辟易としていたが、この本はもっと違う何かでつながっている。それぞれが孤独であることを意識しながら、うまく距離を測っている。そんな対人関係の微妙な距離感がすごく好き。
私も比較的孤独をよく認識しているつもりだ。いつかファンタジーに会えるのかなと、読んで少し期待した。 -
Posted by ブクログ
数年前に購入して、何度も読んでる本。
特にレシピを作ってみたりするわけではないのに、気がつくと読み返している。
絲山さんはたぶん料理がうまい人なんだと思う。だけど、作中において絲山さんが自分のためだけに作る自炊料理にはなんとも言えないリアルなテキトーさがあって、そこが面白い。
ぶっきらぼうで時に繊細さのかけらもない言葉遣いのなかに、連載のために真冬に毎食そうめんを食べ続ける生真面目さや、トラバタって(好きな人ができて)食事が全く喉を通らない、挙句好きなひとにもらった卵を食べまくり絶賛する女子高生みたいな可愛らしさに作者の人柄が見えてくるような気がして、絲山ファンとして大変楽しめる一冊。 -
Posted by ブクログ
アルコールに依存して完全に駄目になり孤立した男が、それからまた誰かとともに生きようと再生するお話。主人公は普通より数倍どうしようもない人間だけど、そのどうしようもなさは等身大でありとても共感できる。なぜ等身大であるかというと、主人公の生まれや環境に特別な不幸や不自由がないからだと思う。学生時代の彼女とセックスの後に缶ビールを飲む習慣が別れた後もなんとなく残り、次第に飲む量が増え、いつのまにか依存症になっていた。それだけなのである。私もこの主人公となんら変わらない。多くの一般的な人の生活と近い延長線上にある。だからこの小説は広く共感を呼ぶ力があるのではないかと思う。
読んだ方はわかる通り、主人公が断酒する決定的なきっかけになったのは結局交通事故なんだよね。これを読んで人が自力で変わるのは本当に難しいということを改めて考えていた。意志の力がすべて虚しいというのではなく、それほどの強い意志を持つというのは現実的にはとても困難だということだ。人は外部に頼らないと生きていけない。だからこそ限りある出会いを大切にしなきゃいけないんだなと気づいた。酒や交通事故に頼ってしまうことにならないように。
最後に、この作品から受けた感銘をこれ以上ない的確な言葉で綴った一文が解説にあったので引用します。
ーーたがいに自己でありながら他者でもあるという経験をし、けっして完全な自己などありえないということを知って結ばれるふたりの関係は、思いやりと気遣いに満ちていて美しいーー。
お勧めできる作品です。
(ついでに言うと、この解説がなかなか興味深くて、歴史を背景にした文学史におけるこの作品の位置づけと新しさが簡潔にまとめられている。山田詠美『ぼくは勉強ができない』との比較も面白い。) -
Posted by ブクログ
ネタバレ「ニート」収録作「あいなんていらねー」で語り手を翻弄するスカトロ男がいたが、彼のその後。
不思議な題名が気になるが、表紙にはカミュ「異邦人」(すなわちよそもの)、裏表紙には乱歩「芋虫」が刻印されているらしい。
そして絲山秋子ならでは、不在の人物こそが登場人物を操っていると、あるタイミングでふと気づかされる。
本書では弟だが、実は書き出しすぐに言及されていた。
ただしそれを初読時に感じさせることないほどにふらっと現れた語り手。
本が開かれたから現れたといえるほどに。
(まあ成田さんと別れてしばらくヒモ暮らしをしていたみたいだけと)
流れるように新潟に行き、好きになった女と結婚するが、「不愉快な本」(性)を預けきれない。
なぜなら彼にとって生は孤独で、性は孤独を際立たせる苦痛に他ならないからだ。
ちなみにいつも怒っているところにキュートを感じるというところ、とても「いい」。
相手の浮気を知り富山へ。
ここでジャコメッティに感動。芸術ってやつはお互いの魂が飛び出しちまうことなのか。言葉を捨てることの快さ。
たまったま再開した同級生が空き巣趣味に狂っていることを知り、衝動的に美術館から盗み出したジャコメッティをあげて、逃亡。広島は呉へ。
弟の死を知り、時間が止まる。
そして本の中へ入ってしまう。
書かれたコトになり、ボクを読むあんたと向き合っている。
筋だけを追えばなんということのない駄目男。
しかし方法に意識的で、知的で、深みのある小説。 -
Posted by ブクログ
昔から人と関わるのが苦手で、今では人に心を開くことをほとんど諦めているアラサー女性の新天地での物語。そこで出会い、されるがままに付き合いを続けるも気を許していなかった沢音に対して野枝が初めて心を開く場面が個人的にとても良かった。カーチェイスって言うの?猛スピードを出して追い越したり追い越されたりしながら車を走らせる。互いに自分の車の中という別の空間にいて当然言葉も視線も直接交わることのない状況でありながら、そのうち感情が高揚し気がついたら心を通わせていたーー。こんな心の交わし方もあるんだって心の底から驚いたし希望も感じた。何がきっかけで友情が芽生えるかって本当に分からないものだし、対人関係でひどく悲観的になることはないのだなと自然に思うことができ、とても気分がいい。
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Posted by ブクログ
ネタバレこれはまたいい小説を読んだ。
優しくて非情でリリカルで奇妙で。
何せファンタジーという名の「神」が当たり前のように現れたり消えたりするのだ。
そしてファンタジーは、筋としてはいてもいなくても変わらないのに、いることで間違いなく小説が芳醇になる。
小説が「∞」という形状をしているとしたら、その結節点にファンタジーが存在していたりしていなかったりするのだ。
内的モノローグはこういう仕掛けを通じて小説的なダイアローグになるという、見本のような小説だ。
★孤独な者と語り合うくらいだ。
・いま、お前さんの運命の女が走ってきたのだ。
・ファンタジーと会うのははじめてだけど、でも前から知ってるような気がしたの。
・セックスレス
・そうですともよ。妬いてますわよ。
・オカヤドカリが前に住んでた貝殻。
★見たよ、恐竜のタマゴ。
・俺に救われるんじゃない、自らが自らを救うのだ。
・近親相姦や、早い話が。
★寝るときは一緒でも眠りに落ちるときは独りだぞ。
★お前さんが生きている限りファンタジーは終わらない。
・ここは家族全員がね、帰ってきたら「かあちゃんただいま」っていう家なの。
・乳がん
★中村は中村の孤独のなかに入っていくのだ。
・でも私はあなたのこと、好きになれてよかった。今だけでも、あなたと、あなたのことを好きな自分がここにいることがとってもありがたいって思う。
★生きている限り人間は進んで行く。死んだ人間は置いて行くしかないのだ。