絲山秋子のレビュー一覧

  • 逃亡くそたわけ

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    語り手花ちゃんと、たまたまの道連れなごやんの、博多弁と標準語の遣り取りが軽妙で面白い。
    花ちゃんが感覚的であればあるほど、なごやんの理屈っぽさが滑稽に見えてくる。それがユーモラスでいとおしい。それも人を傷つけない、優しいユーモアだ。
    極度の躁病および幻覚と、軽い鬱病。
    ロードムービーならぬロードノベル。
    私が仕事を通じて触れた九州の一部を、ことごとく外す形で九州を南下していく。
    旅を通じて、快癒、治癒、自己の回復、故郷との和解、などなど、先の見えない旅にも係らずどこかしらが癒えていく。
    その最終局面が、たわけ=たぁけ=名古屋弁、という、回帰。ほんのりと感動。
    これは恋愛でも友情でもない、人と人

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    2016年08月18日
  • イッツ・オンリー・トーク

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    「沖で待つ」に続いて読んだ作者の作品。現代の市井のなんか冴えない人を書くのがうまい。私も含めこうパッとしない毎日だけど、何とかみんなやってるんだよな。希望と言えるのかもわからないものだけど、そんな小さな光を示してくれる作品だった。

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    2016年05月29日
  • 末裔

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    家に入ろうとしたら、鍵穴が無くなっていた。入れない。 その瞬間から、不思議な場所、人達との出会いが始まる。
    放浪の末に、手に入れるもの、気づくこと。
    深い。

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    2016年02月21日
  • 海の仙人

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    正直、冒頭の唐突さに面食らってしまい、話に入り込めるまでは、いつ本を閉じようかと考えながら読んでいました。慣れてきたら驚くほどにするすると入る言葉と映像の渦に、興奮気味に読み終えた海の仙人。結びにかけての、まるで詩のように研ぎ澄まされた文体は、さすがです。きっと、再読時には初めから入り込めるでしょうね。

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    2016年01月08日
  • 海の仙人

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    ネタバレ

    よかったぁ。しみましたぁ。

    海が見たい‼︎敦賀の浦底行かねば‼︎

    宝くじ当選、ファンタジー登場って
    なに⁉︎この現実からの距離感…⁉︎

    でも、河野の日常と。かりん、片桐とのかかわりって。
    しっかり、じっくり、しっとり伝わる。
    心がじんわりと、あったまったかしら。

    ファンタジー登場の海〜諦めたように〜
    かりんとの海〜青い稲妻〜
    偽善と同情、幸せ、孤独。
    〜心の輪郭なんじゃないか?外との関係じゃなくて自分のあり方だよ。背負っていかなくちゃいけない最低限の荷物だよ。〜

    澤田もよかった。
    そして、ヤドカリ。

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    2015年12月20日
  • 海の仙人

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     登場人物みんながそれぞれに孤独を抱えているし、相手が孤独を抱えていることにも気付いていて、だからこそ適切な距離感をもって相手を尊重してあげられるのだと思う。土足で踏み込むわけでもなく突き放すわけでもない彼らの支え合いは、少しの切なさもあるけど尊く温かだった。孤独を感じてどうしようもなく嫌になることがあるけど、片桐が言うように孤独がそもそもの心の輪郭であり、人が背負っていかなければならない最低限の荷物なのだと考えられれば、引きこもらず、かつ相手を思いやっていけるのかなぁと勇気づけられた気持ち。

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    2015年12月19日
  • ばかもの

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     主人公ヒデの言葉通り、人の人生は「容易じゃねえなあ」というのが一番の感想。儘ならないことばっかりで、人を傷つけ人に傷つき、それでも存在し続けなければならない過酷さ。だけど、そんな日々の中で何かを失った経験をした後のヒデと額子は、きっとお互いを思いやって大事にし合えるのだと思えるラストはとても温かかった。

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    2015年12月15日
  • 妻の超然

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    超然という意味を知らずに、ばかものがおもしろかったので読みました。
    それぞれの超然とする様はみっとも無いような、意地っ張りのような居心地の悪さがとても読みやすかったです。

    伝わるとすればせいぜいそれは愛想だろう。

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    2015年11月17日
  • イッツ・オンリー・トーク

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    とりあえず寝る女の、男の選択基準の話。短編2編収載で、あといっこは乗馬の話。あまり感じるものはなかったです。

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    2015年10月20日
  • 忘れられたワルツ

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    久しぶりの絲山作品。

    なんだか不思議な後味の短編ばかり。
    でも、はっとするフレーズがどれにもあって、
    色んな名前のない気持ちを起こさせる。
    とても好みの短編集だった。

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    2015年01月28日
  • 忘れられたワルツ

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    どれもよかったけど、
    最後のやつ、特によかったなぁ。
    どれもこれも絲山秋子らしさがよく出ていて、
    静かでも激しく人間らしさで満たされているような作品ばかりだった。

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    2015年01月17日
  • ばかもの

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    酒に溺れる駄目男と
    自由奔放な年上の女

    であって別れて、再び出あって

    最後はちょっと希望が見えて。

    この人の文章は好きだなぁ

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    2014年12月31日
  • 忘れられたワルツ

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    絲山さんにしてはファンタジー色が強かった気がした。現代をうまく取り入れて話がかかれてるから、絲山さんの文は読みやすいー。私は絲山作品は短編より長編好みだな、と思った。

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    2014年10月13日
  • 絲的炊事記 豚キムチにジンクスはあるのか

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    【本の内容】
    真冬に冷やし中華に挑戦して惨敗し、締切と格闘しながら、満腹になれる丼を五連発で作る。

    さらにはあまり食べないエスニック料理の食材を集めて悪戦苦闘、そしてオリジナルの豚キムチに舌鼓を打つ。

    群馬県高崎市在住、一人暮らしの著者による試作に試作を重ねた毎日。

    時に切なく時に笑える傑作料理エッセイ。

    [ 目次 ]
    力パスタ
    冬の冷やし中華
    大根一本勝負
    すき焼き実況中継
    GoGoお買い物
    丼五連発
    蕎麦屋で飲む酒
    デパ地下チャーハン
    豚キムチにジンクスはあるのか
    春の日記〔ほか〕

    [ POP ]
    気に入ったものを食べ続ける、インスタント食品にひと手間かける、オリジナルメニューに

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    2014年09月11日
  • イッツ・オンリー・トーク

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    【本の内容】
    引っ越しの朝、男に振られた。

    やってきた蒲田の街で名前を呼ばれた。

    EDの議員、鬱病のヤクザ、痴漢、いとこの居候―遠い点と点とが形づくる星座のような関係。

    ひと夏の出会いと別れを、キング・クリムゾンに乗せて「ムダ話さ」と歌いとばすデビュー作。

    高崎での乗馬仲間との再会を描く「第七障害」併録。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    人と人との関わり方を、あくまでも正直にまっすぐ描いた作品。

    パンをトーストするのと同じくらい単純に、理由もなく何も残らないセックスをすると主人公は述べる、その表現がリアルだ。

    飾りをすべて剥ぎ取ってしまえば、あとに残るのは無味無臭の、無駄話にも

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    2014年08月28日
  • 忘れられたワルツ

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    やばいやつ。帯で伊坂さんが、天才のふりじゃなくて本物って言ってたのに、おーっと思ったけど、それ以上に1頁めをひらいて惹かれた。
    透明なひとだと思った。棒読みじゃないけど、淡々としている。恋愛で話が始まるのに、最後は地震や災害の話だった。他のも最後は地震。あのあとに書いたからだとは思う。
    すごかった。ふつうに見えるからうっかりするけど、これはたぶんやばいやつ。いつのまにか染み込んでとれない痣みたいな。けっこうすきだけどね。笑

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    2014年07月11日
  • 妻の超然

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    小説のような、絲山氏の主張を込めたエッセイのような、とにかく言いたい放題の作品でした。
    絲山氏らしくて良いです。

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    2014年07月02日
  • 妻の超然

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    超然、とは。超然とはなにかなんて、普段は全く思い至りもしないのだけれど。あえて超然を選び、超然であるということについてとことん追求するということ。その前衛性の素敵さにくらくらとする。3つの超然がててくるが、表題の妻の超然は実験的な手法もあり、はっとさせられるような鋭さがあり、これこそがわたしの愛する小説であり。作家の超然における、突き放した二人称がとても楽しい。作家であるおまえは、と突き放すひとそれ自身が作家であるという構造のおかしみとストーリーの痛切さ。とにかく素敵な。

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    2014年06月11日
  • ばかもの

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    長らく積んだ。想ったより数倍ロマンチックな恋愛小説。文章にリズムがあるからかするすると読めるのだけど、今回は少しずつ。読み終わるのが惜しくて、とかではないけれど。
    ヒデが駄目な奴かどうかはともかく、こういう男(便宜上ダメ男)を書かせたら作者は人後に落ちない。
    最初から既に、道を踏み外し転落しそうなオーラに満ちた男と、いかにもな危うさを持った女。何かしらの意味で「壊れてしまった」人たち。
    酒におぼれたり友人が宗教にはまったり。嘘やん、と思うくらい坂道を転がるような展開は、いかにも社会の不条理を表しているようで一種の寂寥感を覚えはするけれど、語り口がユーモラスだから服無きまま木に括り付けられた主人

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    2014年03月04日
  • 絲的メイソウ

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    またまた、完全に女を捨てて
    サービス精神満点!

    一つ一つについて語りたいくらいだわ。
    この人、どんな小説書くんだろう。
    意外にくっらーいヤツじゃないかな?
    電車で読むのはやめた方がいい。
    不意に笑い出す変な人になっちゃうから。

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    2014年01月08日