絲山秋子のレビュー一覧
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ヒデが酒に溺れていく姿は笑えなかった。あんなふうに落ちていくのならオイラもアル中になる可能性があるし、もしかしたらすでになっているのかも。健気な翔子を大切にできなかったヒデはばかものだ。でも、大切な人だってわかっているのに傷つけるようなことをしてしまうのはなんかわかるなぁ。そんなことをしてもお互いになにもいいことなんかないのに。退院したヒデに額子が会ってくれたのは悲しい離婚を経験したからなのかな。額子は遊びで付き合っていたヒデを愛していたってことなんだよな。だったら、ヒデを木に縛り付けたまま捨てるなんてことをするなって話だけど、女の人の考えることはよくわからない。
そう言えば、ヒデの想像上の人 -
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ネタバレこの本に出てくる人間たちは、ひとりなのにひとりでない。何か自分を補完するものを必要としていて、寄りかかる”自分”というものが欠落している。そんな、自分という枠の中がスカスカで、何かをその“スキマ”に詰めないと固い”自分”が存在できないような脆い人々の話だ。私たちの心の中の弱い部分をそのまま抜き出したような人々だ。そんなどうしようもない弱さを「ばかもの」と一蹴されるような、物語にすると滑稽だろうと嘲笑うかのようなタイトルなのだこれは。
主人公ヒデは額子を失ったことで、次第にアルコールへと依存していく。寄る辺ないネユキは、失恋を機に宗教団体に依存していく。スキマを何かで埋めなければならないから -
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ネタバレどこかシュールな7話が収められた短編集。
冒頭いきなり「恋愛とはすなわち雑用である」と言い切った一文で始まる『恋愛雑用論』。
雑用でしかないけれど決して不要ではない、というのがミソである。
日下部さんと金子くんの掛け合いのような会話が笑える。
社長の言う通りお似合いの二人だ(日下部さんは怒るだろうけれど)。
また「離婚したから遊びに来ませんか」で始まる『強震モニタ走馬燈』も良かった。
新年早々、このたった一行の年賀状を寄越した女友達はとにかくマイペースで、暇さえあれば強震モニタを見ているという変わり者。
けれど悩みだろうが悪口だろうが筋が通っていようがいまいが、何を言っても否定しない。
こ -
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ネタバレ絲山さんはこんな静かな物語も描かれるんだ、とちょっと驚いた。
突然佐藤の前に現れた黒人。
「サトーサトー」行方不明の女優を探してほしい、と語り出す。
謎の怪文書を解読しながら、謎の「女優」探しの旅が始まった。
「死」を飛行機の「離陸」に例える佐藤の言葉がとても印象的。
滑走路に向かった飛行機が息を整えるように停止し、ゆっくりと力強く滑走をはじめる。その滑走は悲しみを引きちぎるように加速していき、やがて地上を走ることに耐えられなくなりふっと前輪が浮く…。
まだ生きている私達は滑走路で離陸待ちの状態。
私もいつかみんなに見守られながら無事に離陸できるだろうか。
離陸し飛び立った後、次の行き先へ -
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ネタバレ恋愛も雑用と一部と考えてしまう事務員と、小利口くん。
風変わりな離婚した魚住が毎晩見る地震計の揺れ。
理科の先生の葬式とオーロラを運んでると言った知らない女。
鉄塔と変だけど気の合った今は亡きいとこと別れた恋人。
ノーリターンで直帰だった上司と部下が行き着いた先。
母の浮気調査のために家を出て行った姉を案じる妹と変わった家族。
市長になった同級生を支え続け女装することになった男と神。
恋愛雑用が一番面白かったと思うけど
長い病院の待ち時間で読み進めたからか、
頭にうまく入ってこない部分もあり
たぶんこの本の面白さを全身で感じ取れていない。 -
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思わず手にとってしまうタイトルに衝動買いしましたが、短編集『ニート』に収録されている「愛なんていらねー」の著者を主人公にした作品なのだそうです。短編のスピンオフのはずが堂々の1冊になったというところでしょうか。いわば続編ではありますが、本編を知らなくても問題なく読めます。本編は私の苦手なスカトロの描写もあるようなので、むしろ知らずにいてよかったかも。(^^;
この続編から察するに、主人公のボク、「乾ケンジロウ」はイケメンの賢い奴。しかしというのかだからというのか女が放っておかず、ずっとヒモとして暮らすろくでなし。性的倒錯者でもあるが自分のほうから女にのめりこむことはない。そんな彼が初めて恋を -
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相馬野枝32歳独身。FMラジオのDJ。
自分の容姿に強烈なコンプレックスを抱き、極端なほど他者との距離を保つ彼女が、唯一自分を解き放てるのが自らパーソナリティを務めるラジオ番組。
仙台から群馬のFM局に転職した彼女が、半ば強引にできた女友達やリスナーとの関わりの中で、ほんの少しずつ自分を肯定していく・・・という標題作は、本当にFMラジオの番組を聞いているかのような孤独な心地よさ。
群馬の小ネタ(高崎人は前橋人が嫌いとか・・・ホント?)も随所にはさまれクスッと笑える。
併録された「うつくすま ふぐすま」は、短いながらスカッと晴れた空を感じさせるキレのいい作品。
生ゴミのようだと感じる男とずるず -
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絲山さんのデビュー作である表題作と「第七障害」の2作。
【イッツ・オンリ・トーク】
「無駄話さ!」というタイトルどおり、軽いタッチの15のエピソード。主人公の優子は新聞記者をしていたが、精神を病んですべてを失い、今も薬のお世話になりながら、絵を描いて暮らしている。
「セックスなんてトーストを焼くみたいなものよ」という彼女と、EDの議員、うつ病のヤクザ、いとこの居候、痴漢、うつ病仲間との関係がさらっと描かれている。
それぞれのエピソードは面白いとか泣けるとかではないんだけど、すっ~と入ってきて心地よいのは絲山さんの無駄のない文章のおかげなのだろう。
特に私は、痴漢がお気に入り!私もこんな痴漢と付 -
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ネタバレ遅すぎた中年、福岡に向かい、ふと京都に降りる。
そこには現在を把握していない、双子がいたが、今はどうやら。
コスプレ神父バンジャマンと交流。
結局双子に会うことはなかったが、その不在こそが隠れた透明の背骨である。
それは作中に形を変えて言及される。
「不在は、美化される。キリストだってそうだ。」
キリストなんかより歌子婆さんみたいな人が今現在生きているってことを美化したいね、という独白や、
なんで大人ってドライでソリッドではなく、生、なんだろう、といった感覚やに、
大いに共感。ずっとそう思っていた。
ちなみに「アブセント」はその双子の片割れ。 -
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ネタバレ気ままな大学生活を送るヒデは、年上の女性額子との性的な関係に溺れていたが、結婚を決意した彼女に手ひどく振られてしまう。
社会人になったヒデは、いつしかアルコール依存症になり立ち直るきっかけをつかめずにいた。
一方額子も不慮の事故で左腕を失ったうえ離婚し、一人山間の村で生活していた。
全てを失い、絶望した二人が長い年月を経て再会した・・・
絲山さんの文章は読みやすく、気持ちが良い。
ヒデがなぜアル中になったのかよくわからなかったが、実際に酒浸りになるときもそんなものかもしれない。
ずっとヒデが抱いていた「行き場のない思い」って何なのだろう・・・額子もまた行き場なく山奥の村に流れ着いた。
互いに