絲山秋子のレビュー一覧

  • ばかもの
    どうしようもないアル中のヒデの物語。

    というのは端折りすぎで、群馬の各地域を、登場人物を通して活き活きと描き出した気持ちのいい作品。ばかもの。
  • 袋小路の男
    以前から読んでみたかった絲山秋子さん!
    初読みです。
    ただ…芥川賞受賞作家は…合う合わないがあるし…という事でたまたま出会った約170頁の薄い短編集のこちらを初読みに選びました。
    #袋小路の男
    #小田切孝の言い分
    #アーリオオーリオ
    3篇収録。
    「袋小路の男」は女性目線の一人称で語られ、「小田切孝の...続きを読む
  • 袋小路の男
    小田切は著者の理想の男性像で、描かれた関係は著者の理想のあり方なのかもしれない。路地、バー。薄暗さと湿り気と、タバコと少しかびたにおい、昭和の終わりを感じながら読んだ。
  • 末裔
    なんと不思議なお話。自分の家の扉の鍵穴が無くなるんだから。向こうの国とこっちの国が交流する。過去と現在が交流する。
  • 逃亡くそたわけ
    精神病院に入院する躁鬱病の「あたし」が同じ患者仲間で
    慶応大学出の東京オタクの「なごやん」を巻き込み
    九州を逃亡する話。
    何がきっかけで、何をもって執着地点を決めたのか
    ここで終わりと決める。
    なんでそこだったんだろう・・・
    最後に逃亡ルートの図があるんだけど、その短さが 寂しかった。 ...続きを読む
  • 絲的サバイバル
    アウトドアは割と好きだ。
    というか、少しハマっている。
    どれぐらいかというと、ひとりでキャンプするぐらいだ。
    川端賞・芥川賞作家である絲山さんのスタイルは、単独行だったり知り合いと一緒だったりする。
    わたしはキャンプをするなら、だだっ広い野原の真ん中あたりにテントを立てて、あとは暇に任せてぐだぐだ時...続きを読む
  • 薄情
    地元、出戻り、余所者。都会への劣等感。
    悪い意味だけではない、気遣いとしての薄情。
    そもそも中心のない性格。
    雄弁でない自問自答。句点省略で独特な文体に。
    打算的な女たち。

    やはりロードムービーで唐突に少年と交流を持つが、彼も忘れがたい。
  • 絲的サバイバル
    一人キャンプをしてきた体験記をエッセイとしてまとめている点は良かった。ただ、群馬在住であること、自家用車を持っていることなどから、読者がすぐに参考にして真似できるかというと難しい。

    独身アラサー女性でも楽しめるキャンプというのは、誰に対してもやさしい設計のキャンプだと思う。静かな夜に一人物思いに耽...続きを読む
  • ばかもの
    ヒデが酒に溺れていく姿は笑えなかった。あんなふうに落ちていくのならオイラもアル中になる可能性があるし、もしかしたらすでになっているのかも。健気な翔子を大切にできなかったヒデはばかものだ。でも、大切な人だってわかっているのに傷つけるようなことをしてしまうのはなんかわかるなぁ。そんなことをしてもお互いに...続きを読む
  • 末裔
    妻を失い、子供達にも構ってもらえない主人公の男性の話が、鬱々と進むのに、最後の展開についていけなかった。
    結局、人間は基本、楽観的ってことかな。
  • 袋小路の男
    切ない恋の話、かと思いきやそうでもなかった。
    互いを分かっているようで分かってなくて、でも一喜一憂したりして、もどかしいようなイライラするような。
  • ばかもの
    この本に出てくる人間たちは、ひとりなのにひとりでない。何か自分を補完するものを必要としていて、寄りかかる”自分”というものが欠落している。そんな、自分という枠の中がスカスカで、何かをその“スキマ”に詰めないと固い”自分”が存在できないような脆い人々の話だ。私たちの心の中の弱い部分をそのまま抜き出した...続きを読む
  • 忘れられたワルツ
    どこかシュールな7話が収められた短編集。

    冒頭いきなり「恋愛とはすなわち雑用である」と言い切った一文で始まる『恋愛雑用論』。
    雑用でしかないけれど決して不要ではない、というのがミソである。
    日下部さんと金子くんの掛け合いのような会話が笑える。
    社長の言う通りお似合いの二人だ(日下部さんは怒るだろう...続きを読む
  • 離陸
    絲山さんはこんな静かな物語も描かれるんだ、とちょっと驚いた。

    突然佐藤の前に現れた黒人。
    「サトーサトー」行方不明の女優を探してほしい、と語り出す。
    謎の怪文書を解読しながら、謎の「女優」探しの旅が始まった。

    「死」を飛行機の「離陸」に例える佐藤の言葉がとても印象的。
    滑走路に向かった飛行機が息...続きを読む
  • ラジ&ピース
    自分を醜いと思い込み、意固地になっていた野枝。現実世界では他人とつながることを拒否し、ラジオ局のスタジオの中でしか息ができない。例えば、気の置けない友人と一緒になって笑いたいが、どういう顔をして笑ったらいいのかわからない。そんな彼女が、群馬という土地で、少しずつ変わる物語。
    併録された「うつくすま ...続きを読む
  • 不愉快な本の続編
    2017年、37冊目です。

    主人公の故郷の町には、何度か行ったことがあるので、物語の最後あたりで急速に親近感を感じました。
  • ラジ&ピース
     あまり印象に残らなかったけど、嫌いではない。たぶん時間をおいてまた読んだら新たな発見があって、その都度好きになり、最終的に気に入りそうな本の予感はしたけど、それくらいの感じ。

     表題作の野枝のサバサバした感じ、世間に期待していない感じがちょっと好きだな~っていうのはある。沢音とは正反対のタイプな...続きを読む
  • 離陸
    同性の作家さんは読んでて変に冷めたりして入り込めないので敬遠しがちだが、彼女の名前の字面が好きで手にする事がある。
    なんともオチのない結末なのに腑に落ちる。良くも悪くも草食な主役が周囲に振り回された挙句、どう離陸してどこに着地するか…読後にそんな事を考えるのがおもしろい作品。
  • 忘れられたワルツ
    恋愛も雑用と一部と考えてしまう事務員と、小利口くん。

    風変わりな離婚した魚住が毎晩見る地震計の揺れ。

    理科の先生の葬式とオーロラを運んでると言った知らない女。

    鉄塔と変だけど気の合った今は亡きいとこと別れた恋人。

    ノーリターンで直帰だった上司と部下が行き着いた先。

    母の浮気調査のために家を...続きを読む
  • 忘れられたワルツ
    良く判らなかったというのが素直な感想。
    「震災後を生きる者たちの不安/不穏を描き出す」といった解説があり、確かに作品中に震災がチラチラ顔をのぞかせるのだけれど、別に震災が有ろうが無かろうがこんな不安/不穏は存在するので。。。
    それぞれの短編は面白いのだけれど、一冊の本としての印象が薄い、そんな本でし...続きを読む