絲山秋子のレビュー一覧

  • 掌篇歳時記 春夏

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    12人の作家さんが旧暦の七十二候をテーマに執筆した小説集。春夏編。
    気になる作家さんが書いているので読んでみたかったのです。それに12人! 豪華執筆陣。装丁も綺麗ね。季節を表す言葉、日々の生活で変化を感じたこと、素敵で、自分の生活も日々に流されるだけでなく、自然の声に目を向けたくなりました。それぞれ短いですが、作家さんの色が出ていて楽しめました…際立っていたのは村田沙耶香さん、好み的には前半の方。

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    2019年05月17日
  • 薄情

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    谷崎潤一郎賞受賞作。
    エンタメ作品というよりも文学性が強い作品。
    兎に角、群馬、群馬、群馬。
    自然、土地勘、生活の息づかいに至るまで群馬。
    群馬県民読むべし。

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    2019年04月25日
  • 薄情

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    群馬とその周辺の地名が多く出てくる。群馬に少しばかり行っていたことがあるが、聞き馴染みがある地名が出ることによってなんとなくそこの世界に入りやすいような、切ない感覚を覚えるような。宇田川の感情、思考がなんとなくわかるような。
    全部なんとなく、、、そんな感じ。

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    2019年03月18日
  • 薄情

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    広々とした群馬の土地感と、人間関係の狭く近しいさまが対比していて面白い。人や事を受け止めた上で受け容れない、守り維持するための薄情さがそこにはあった。(守る対象は個人だったり自身だったり、コミュニティもしくは縁そのものだったり)
    距離感、視え方、がテーマなのかな。それは地方でばかりあるものではないのだけれど、舞台をそうしたことで背景の長閑さが読み心地を大らかにしてくれていたように思う。

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    2019年03月15日
  • ばかもの

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    どうしようもないアル中のヒデの物語。

    というのは端折りすぎで、群馬の各地域を、登場人物を通して活き活きと描き出した気持ちのいい作品。ばかもの。

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    2019年01月05日
  • 末裔

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    なんと不思議なお話。自分の家の扉の鍵穴が無くなるんだから。向こうの国とこっちの国が交流する。過去と現在が交流する。

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    2018年10月20日
  • 逃亡くそたわけ

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    精神病院に入院する躁鬱病の「あたし」が同じ患者仲間で
    慶応大学出の東京オタクの「なごやん」を巻き込み
    九州を逃亡する話。
    何がきっかけで、何をもって執着地点を決めたのか
    ここで終わりと決める。
    なんでそこだったんだろう・・・
    最後に逃亡ルートの図があるんだけど、その短さが 寂しかった。
    短いけれど、滑稽で、ちょっと切なくて ハラハラしながら読めました(p^_^q)

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    2018年09月17日
  • 絲的サバイバル

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    アウトドアは割と好きだ。
    というか、少しハマっている。
    どれぐらいかというと、ひとりでキャンプするぐらいだ。
    川端賞・芥川賞作家である絲山さんのスタイルは、単独行だったり知り合いと一緒だったりする。
    わたしはキャンプをするなら、だだっ広い野原の真ん中あたりにテントを立てて、あとは暇に任せてぐだぐだ時間を潰したい派だ。日がな一日、読書したり、昼寝したりする。
    だから、歩き回ったり、決して釣りなんかに手を出さない。
    絲山さんのスタイルはわたしとは大違いだから、同じことをしたいとは決して思わない。
    同じところはお酒が好きなところぐらいだろうか?
    絲山さんは料理も上手そうだけど、わたしは白飯があれば、

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    2018年09月14日
  • 薄情

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    ネタバレ

    地元、出戻り、余所者。都会への劣等感。
    悪い意味だけではない、気遣いとしての薄情。
    そもそも中心のない性格。
    雄弁でない自問自答。句点省略で独特な文体に。
    打算的な女たち。

    やはりロードムービーで唐突に少年と交流を持つが、彼も忘れがたい。

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    2018年09月12日
  • 絲的サバイバル

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    一人キャンプをしてきた体験記をエッセイとしてまとめている点は良かった。ただ、群馬在住であること、自家用車を持っていることなどから、読者がすぐに参考にして真似できるかというと難しい。

    独身アラサー女性でも楽しめるキャンプというのは、誰に対してもやさしい設計のキャンプだと思う。静かな夜に一人物思いに耽るとか、地元のおいしいものを七輪で調理してたらふく食べるとか、読んでいてホッコリした気持ちになる。いつか七輪を買って好きなものを好きなだけ焼いて食べたい。

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    2018年07月22日
  • ばかもの

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    ヒデが酒に溺れていく姿は笑えなかった。あんなふうに落ちていくのならオイラもアル中になる可能性があるし、もしかしたらすでになっているのかも。健気な翔子を大切にできなかったヒデはばかものだ。でも、大切な人だってわかっているのに傷つけるようなことをしてしまうのはなんかわかるなぁ。そんなことをしてもお互いになにもいいことなんかないのに。退院したヒデに額子が会ってくれたのは悲しい離婚を経験したからなのかな。額子は遊びで付き合っていたヒデを愛していたってことなんだよな。だったら、ヒデを木に縛り付けたまま捨てるなんてことをするなって話だけど、女の人の考えることはよくわからない。
    そう言えば、ヒデの想像上の人

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    2018年07月14日
  • 末裔

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    妻を失い、子供達にも構ってもらえない主人公の男性の話が、鬱々と進むのに、最後の展開についていけなかった。
    結局、人間は基本、楽観的ってことかな。

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    2018年03月25日
  • 忘れられたワルツ

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    知人にすすめられた一冊。短編集です。

    恋愛雑用論
    強震モニタ走馬燈
    葬式とオーロラ
    ニイタカヤマノボレ
    NR
    忘れられたワルツ
    神と増田喜十郎

    少しずつ東日本大震災が絡んでいた。
    どの話にもこれといったオチがなく、カットアウトするように終わってしまうのですが、そこがまたこの短編の世界をつくりあげているのかなぁ。
    すでに内容うろ覚えなのですが、葬式とオーロラが良かったかな。恩師の葬儀にむかう途中、高速道路のSAで出会った女性。彼女はトラックでオーロラを運んでいると言った。

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    2018年02月16日
  • ばかもの

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    ネタバレ

    この本に出てくる人間たちは、ひとりなのにひとりでない。何か自分を補完するものを必要としていて、寄りかかる”自分”というものが欠落している。そんな、自分という枠の中がスカスカで、何かをその“スキマ”に詰めないと固い”自分”が存在できないような脆い人々の話だ。私たちの心の中の弱い部分をそのまま抜き出したような人々だ。そんなどうしようもない弱さを「ばかもの」と一蹴されるような、物語にすると滑稽だろうと嘲笑うかのようなタイトルなのだこれは。

    主人公ヒデは額子を失ったことで、次第にアルコールへと依存していく。寄る辺ないネユキは、失恋を機に宗教団体に依存していく。スキマを何かで埋めなければならないから

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    2017年12月08日
  • 忘れられたワルツ

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    ネタバレ

    どこかシュールな7話が収められた短編集。

    冒頭いきなり「恋愛とはすなわち雑用である」と言い切った一文で始まる『恋愛雑用論』。
    雑用でしかないけれど決して不要ではない、というのがミソである。
    日下部さんと金子くんの掛け合いのような会話が笑える。
    社長の言う通りお似合いの二人だ(日下部さんは怒るだろうけれど)。

    また「離婚したから遊びに来ませんか」で始まる『強震モニタ走馬燈』も良かった。
    新年早々、このたった一行の年賀状を寄越した女友達はとにかくマイペースで、暇さえあれば強震モニタを見ているという変わり者。
    けれど悩みだろうが悪口だろうが筋が通っていようがいまいが、何を言っても否定しない。

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    2017年10月07日
  • 離陸

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    ネタバレ

    絲山さんはこんな静かな物語も描かれるんだ、とちょっと驚いた。

    突然佐藤の前に現れた黒人。
    「サトーサトー」行方不明の女優を探してほしい、と語り出す。
    謎の怪文書を解読しながら、謎の「女優」探しの旅が始まった。

    「死」を飛行機の「離陸」に例える佐藤の言葉がとても印象的。
    滑走路に向かった飛行機が息を整えるように停止し、ゆっくりと力強く滑走をはじめる。その滑走は悲しみを引きちぎるように加速していき、やがて地上を走ることに耐えられなくなりふっと前輪が浮く…。
    まだ生きている私達は滑走路で離陸待ちの状態。
    私もいつかみんなに見守られながら無事に離陸できるだろうか。
    離陸し飛び立った後、次の行き先へ

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    2017年10月02日
  • ラジ&ピース

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    自分を醜いと思い込み、意固地になっていた野枝。現実世界では他人とつながることを拒否し、ラジオ局のスタジオの中でしか息ができない。例えば、気の置けない友人と一緒になって笑いたいが、どういう顔をして笑ったらいいのかわからない。そんな彼女が、群馬という土地で、少しずつ変わる物語。
    併録された「うつくすま ふぐすま」この表題の意味が分からないのは私だけ?

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    2017年09月09日
  • 不愉快な本の続編

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    ネタバレ

    2017年、37冊目です。

    主人公の故郷の町には、何度か行ったことがあるので、物語の最後あたりで急速に親近感を感じました。

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    2017年11月06日
  • ラジ&ピース

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     あまり印象に残らなかったけど、嫌いではない。たぶん時間をおいてまた読んだら新たな発見があって、その都度好きになり、最終的に気に入りそうな本の予感はしたけど、それくらいの感じ。

     表題作の野枝のサバサバした感じ、世間に期待していない感じがちょっと好きだな~っていうのはある。沢音とは正反対のタイプなのに、気が合ってしまう感じもなんかわかる気がする。わかるけど、よくわかんないや。

     誰もがここにいる。ここに存在するっていう感覚が大切で必要なのかな。

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    2017年08月06日
  • 離陸

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    同性の作家さんは読んでて変に冷めたりして入り込めないので敬遠しがちだが、彼女の名前の字面が好きで手にする事がある。
    なんともオチのない結末なのに腑に落ちる。良くも悪くも草食な主役が周囲に振り回された挙句、どう離陸してどこに着地するか…読後にそんな事を考えるのがおもしろい作品。

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    2017年08月04日