絲山秋子のレビュー一覧
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アウトドアは割と好きだ。
というか、少しハマっている。
どれぐらいかというと、ひとりでキャンプするぐらいだ。
川端賞・芥川賞作家である絲山さんのスタイルは、単独行だったり知り合いと一緒だったりする。
わたしはキャンプをするなら、だだっ広い野原の真ん中あたりにテントを立てて、あとは暇に任せてぐだぐだ時間を潰したい派だ。日がな一日、読書したり、昼寝したりする。
だから、歩き回ったり、決して釣りなんかに手を出さない。
絲山さんのスタイルはわたしとは大違いだから、同じことをしたいとは決して思わない。
同じところはお酒が好きなところぐらいだろうか?
絲山さんは料理も上手そうだけど、わたしは白飯があれば、 -
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ヒデが酒に溺れていく姿は笑えなかった。あんなふうに落ちていくのならオイラもアル中になる可能性があるし、もしかしたらすでになっているのかも。健気な翔子を大切にできなかったヒデはばかものだ。でも、大切な人だってわかっているのに傷つけるようなことをしてしまうのはなんかわかるなぁ。そんなことをしてもお互いになにもいいことなんかないのに。退院したヒデに額子が会ってくれたのは悲しい離婚を経験したからなのかな。額子は遊びで付き合っていたヒデを愛していたってことなんだよな。だったら、ヒデを木に縛り付けたまま捨てるなんてことをするなって話だけど、女の人の考えることはよくわからない。
そう言えば、ヒデの想像上の人 -
Posted by ブクログ
ネタバレこの本に出てくる人間たちは、ひとりなのにひとりでない。何か自分を補完するものを必要としていて、寄りかかる”自分”というものが欠落している。そんな、自分という枠の中がスカスカで、何かをその“スキマ”に詰めないと固い”自分”が存在できないような脆い人々の話だ。私たちの心の中の弱い部分をそのまま抜き出したような人々だ。そんなどうしようもない弱さを「ばかもの」と一蹴されるような、物語にすると滑稽だろうと嘲笑うかのようなタイトルなのだこれは。
主人公ヒデは額子を失ったことで、次第にアルコールへと依存していく。寄る辺ないネユキは、失恋を機に宗教団体に依存していく。スキマを何かで埋めなければならないから -
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ネタバレどこかシュールな7話が収められた短編集。
冒頭いきなり「恋愛とはすなわち雑用である」と言い切った一文で始まる『恋愛雑用論』。
雑用でしかないけれど決して不要ではない、というのがミソである。
日下部さんと金子くんの掛け合いのような会話が笑える。
社長の言う通りお似合いの二人だ(日下部さんは怒るだろうけれど)。
また「離婚したから遊びに来ませんか」で始まる『強震モニタ走馬燈』も良かった。
新年早々、このたった一行の年賀状を寄越した女友達はとにかくマイペースで、暇さえあれば強震モニタを見ているという変わり者。
けれど悩みだろうが悪口だろうが筋が通っていようがいまいが、何を言っても否定しない。
こ -
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ネタバレ絲山さんはこんな静かな物語も描かれるんだ、とちょっと驚いた。
突然佐藤の前に現れた黒人。
「サトーサトー」行方不明の女優を探してほしい、と語り出す。
謎の怪文書を解読しながら、謎の「女優」探しの旅が始まった。
「死」を飛行機の「離陸」に例える佐藤の言葉がとても印象的。
滑走路に向かった飛行機が息を整えるように停止し、ゆっくりと力強く滑走をはじめる。その滑走は悲しみを引きちぎるように加速していき、やがて地上を走ることに耐えられなくなりふっと前輪が浮く…。
まだ生きている私達は滑走路で離陸待ちの状態。
私もいつかみんなに見守られながら無事に離陸できるだろうか。
離陸し飛び立った後、次の行き先へ