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Posted by ブクログ
ある日とつぜん鍵穴が消えて、家に帰れなくなる男の話。安部公房の『赤い繭』を思い出した。
「鍵穴はどこにもなかった」。そんな調子でしれっとSF風に導入したかと思いきや、物語が進むにつれところどころに日本の近現代史の知識欲をかき立てる世代論を交え、思いがけない風景を見せてくれる。とても味わい深い読書だった。
この作家は、女流作家の中で随一に男性の一人称がうまいと思う。団塊の世代のいわゆる「日本のオヤジ」の自意識にリアルに寄り添える力量に感心する。
備忘録:
「自分たちの世代は、若い頃もっと、社会と密接につながっていたと思う。省三(主人公)が月のように、社会の周りで満ち欠けしているとしたら、朔矢(息子)や梢枝(娘)は彗星のようにとんでもない速さで社会から遠ざかり、また還ってくる軌道を持っているようなのだった」
「不思議なもんだ。同じとき、同じ山に降った雨が太平洋と日本海に分かれちまうんだから。山というのは、境界というのはそういうものだ。矢印の根本のことなんだ。そして人間も雨水と同じように拡散し、混じり合い、ついにはどこの由来だかわからなくなってしまう」
Posted by ブクログ
『沖で待つ』が良くて、それ以来、絲山さんの本を読むようになりました。
今回の末裔は、妻を亡くした中年男性が主人公。
家に帰ろうとすると、何故か鍵穴が見つからず、仕方がなく放浪する羽目になるってお話。
鍵穴が見つからないってところで、どういうこと?と思い、かつその説明がされないので、ずっとモヤモヤします。
あ~久しぶりにハズレの本を引いたかなぁって思ったんですが、ジワジワと読み進められます。
んで、最後には、モロモロ納得できないところを吹っ飛ばして、冴えない中年男性が一歩踏み出す爽快感を味わえます。
自分も何かしよう!って気持ちにさせてくれる内容でした。
いや~良い本!
こういう、ジワジワと感動させてくれる本は珍しい気がします。
自分の内側から鍵を開けるってところが印象的でした。
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