絲山秋子のレビュー一覧

  • エスケイプ/アブセント
    ふわふわと、テキトーに、ラクに、諦めながら、なんとなく浮き草みたいに生きてる。
    それは、もう燃やし尽くしちゃったからなのか、もともと燃料が無いだけなのか…。
    でも、どことなく、確実に寂しい。
    捉えようもない寂しさに包まれた二篇。
  • 薄情
    普通の人たちの普通の出来事が面白くてじゅうぶん小説になるってよくわかった。地方に暮らすこと、地方って田舎とは違う意味があると思うので、この小説に書かれているのは地方ということだろう。東京や名古屋などに一度出て帰ってきたひとは地方出身者と言いきれるのかどうか。主人公の宇田川と後輩の蜂須賀がかかわった相...続きを読む
  • 薄情
    なんというか、しみじみとよかった、という感じ。
    文章に淡々としたユーモアがあって、するする読める。
    すごく大きな事件とかはないんだけど、でも読みながらなんとなく、人間関係とか人生とか日々の暮らしとか、いろいろ考えさせられる。ラストには希望のようなものがあってさわやかな感じもして。好きだ。

    主人公は...続きを読む
  • 薄情
    地方に住んでいると、ふと感じる狭さだったり、その心地よさだったり、見下したくなるような、私は違うといいたくなるような気持ちになったりする。
    ないないものねだりは、どこかにあると知っているからだ。外から来た人が持っていると知っているからだ。
    でもないものを引き受ける覚悟もない。

    絲山秋子はいつだって...続きを読む
  • 不愉快な本の続編
    読んでないと思ったら単行本版で読んでいた。

    誰もが持つ不愉快な本に身を委ねることは理想であれども難しい。
  • 海の仙人
    敦賀の海はどんな海なのだろう。
    私の中にあった閑静な港町のテンプレートのようなイメージが、最初のページ、主人公が「オレンジ色のダットサン・ピックアップ」で早朝の浜に乗り入れるところから一気に“敦賀”としての確かな形を見せ始める。なんて気持ちのいい物語のはじまり。聴こえてくるのはピックアップが砂を散ら...続きを読む
  • 袋小路の男
    人を好きになるって理屈じゃない!
    袋小路に住んでいる小田切を好きな日向子。
    小田切は日向子の名前を直ぐに忘れるし逢うといつも説教するし約束も平気ですっぽかすし…なんでこんな男が好きなのか最初は全く理解できなかった。
    でも物語が進み小田切なりの言い分を読むと、他の人には決して入り込めない二人なりのバラ...続きを読む
  • 離陸
    死を表現するのに、かつては彼岸此岸というように船旅だった。
    どこへ流されていくのかわからない水の流れ。
    今回は飛行機の旅にアップグレードされた。
    あの広大な待機所で、多くの飛行機が離陸を待っている、というイメージもしっくりくるし美しいし、離陸した飛行機がどこへ向かうのかもわかっている。
    しかしそこが...続きを読む
  • 海の仙人
    宝クジに当たったというところからしてファンタジー!短い話だがテンポ良く人の繋がり哀しみが綴られていく静かな物語。幸せとは何かをソッと問うてくるような印象が残る。
  • 海の仙人
     おそらく私はこの本を何度も読み返すことになるんだと思う。自分がどのような状況下に置かれていようとも孤独であること。その孤独に浸りたいときに、読み返すと思う。

     河野が持っている独特の他者との距離感や、不意に生活圏に表れてきたファンタジーという出来損ないの神。そこに侵入する片桐。そしてかりん。

    ...続きを読む
  • 逃亡くそたわけ
    好きー(^-^)
    精神病院からの逃亡って暗くて重い話なのかな、と思っていたら、予想外に爽快だった。なごやんと花ちゃん、どっちも突き抜けてて気持ちよか。
    九州縦断、旅したくなった。
    なごやんがところどころキュートで癒された。
  • 離陸
    不思議な本。
    ミステリーでもないし、恋愛小説でも、ファンタジーでもないが最後は、腹落ちのする本でした。
  • ラジ&ピース
    絲山秋子のラジ&ピースを読みました。

    相馬野枝は25歳から六年間続けた仙台のFM局から群馬のFM局に転職します。
    そこでラジ&ピースという番組のパーソナリティーを始めます。
    野枝は番組で見せる顔とは違うかたくなな素顔をもてあましています。
    そんな野枝は朗らかで無防備な女医の沢音と出会って時々会うこ...続きを読む
  • ばかもの
    絲山秋子さんの文章が好きです。
    リズム感があるし、簡潔で、なんだか面白くて。

    書き方は淡々としているのに、内容や描写が切なくてどんどん読み進めてサラリと読めてしまいました。
  • 絲的炊事記 豚キムチにジンクスはあるのか
    数年前に購入して、何度も読んでる本。
    特にレシピを作ってみたりするわけではないのに、気がつくと読み返している。
    絲山さんはたぶん料理がうまい人なんだと思う。だけど、作中において絲山さんが自分のためだけに作る自炊料理にはなんとも言えないリアルなテキトーさがあって、そこが面白い。
    ぶっきらぼうで時に繊細...続きを読む
  • ばかもの
    アルコールに依存して完全に駄目になり孤立した男が、それからまた誰かとともに生きようと再生するお話。主人公は普通より数倍どうしようもない人間だけど、そのどうしようもなさは等身大でありとても共感できる。なぜ等身大であるかというと、主人公の生まれや環境に特別な不幸や不自由がないからだと思う。学生時代の彼女...続きを読む
  • 不愉快な本の続編
    「ニート」収録作「あいなんていらねー」で語り手を翻弄するスカトロ男がいたが、彼のその後。
    不思議な題名が気になるが、表紙にはカミュ「異邦人」(すなわちよそもの)、裏表紙には乱歩「芋虫」が刻印されているらしい。
    そして絲山秋子ならでは、不在の人物こそが登場人物を操っていると、あるタイミングでふと気づか...続きを読む
  • ラジ&ピース
    昔から人と関わるのが苦手で、今では人に心を開くことをほとんど諦めているアラサー女性の新天地での物語。そこで出会い、されるがままに付き合いを続けるも気を許していなかった沢音に対して野枝が初めて心を開く場面が個人的にとても良かった。カーチェイスって言うの?猛スピードを出して追い越したり追い越されたりしな...続きを読む
  • 海の仙人
    これはまたいい小説を読んだ。
    優しくて非情でリリカルで奇妙で。
    何せファンタジーという名の「神」が当たり前のように現れたり消えたりするのだ。
    そしてファンタジーは、筋としてはいてもいなくても変わらないのに、いることで間違いなく小説が芳醇になる。
    小説が「∞」という形状をしているとしたら、その結節点に...続きを読む
  • 逃亡くそたわけ
    語り手花ちゃんと、たまたまの道連れなごやんの、博多弁と標準語の遣り取りが軽妙で面白い。
    花ちゃんが感覚的であればあるほど、なごやんの理屈っぽさが滑稽に見えてくる。それがユーモラスでいとおしい。それも人を傷つけない、優しいユーモアだ。
    極度の躁病および幻覚と、軽い鬱病。
    ロードムービーならぬロードノベ...続きを読む