絲山秋子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
読んだのがたぶん去年なので(どれだけ置いておいたんだ 笑)うっすら忘れかけている部分もあるのだけど…悪い言い方をすればとても地味な雰囲気の小説。だけど妙に心にずっしりと来る。
地方都市の狭さとか(人間関係の密接した感じ、噂がすぐに広まる、等)は似たような街に住む私もよく分かる。時には助けになるけれど、一方でものすごくうんざりするときも多い。都会ではなく、本当の田舎でもない。そういう独特の狭さの街。
この、薄情というタイトルがどういうところを指しているのかは、作者ではないから分からない。主人公はある意味で至って普通の青年だ。つかず離れずの人間関係を形成しながら、必死ではないものの日々食べていけ -
Posted by ブクログ
(以下、ネタバレ気をつけていますが、核心に触れるセリフを引用してしまっています)
「沖で待つ」もそうだったんだが、わたしにとって絲山秋子の小説は、ある程度歳を重ねてきたからこそ共感できる、という部分がある。主人公は若者なのに・・・
年上の女性にドはまりしたあげくに振られ、大学で落ちこぼれていつしかアルコールに溺れる。
自信満々(単に世間知らず)なだけの若いときの自分なら、こんな「ダメ人間」には感情移入できかなったと思う。
「たぶん俺はずっと誰かに甘えたい男なのだ。でもそれはこういう形じゃない。もっと、誰も不幸にならないような甘え―――そんなことは可能なのか」
「俺は、かつて自分をアルコ -
Posted by ブクログ
ネタバレ普通の人たちの普通の出来事が面白くてじゅうぶん小説になるってよくわかった。地方に暮らすこと、地方って田舎とは違う意味があると思うので、この小説に書かれているのは地方ということだろう。東京や名古屋などに一度出て帰ってきたひとは地方出身者と言いきれるのかどうか。主人公の宇田川と後輩の蜂須賀がかかわった相手と場所は東京出身の鹿谷と鹿谷の作った工房で、それは東京という大きな場所とつながっていたいと心のどこかで考えていたからじゃないか、とか思っていた。はっきりと書かれているわけじゃないし、そこはわたしの感想です。あと、恋愛恋愛してないのも良かった。そういうの読みたいわけじゃないから好感度かなり高いです。
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Posted by ブクログ
なんというか、しみじみとよかった、という感じ。
文章に淡々としたユーモアがあって、するする読める。
すごく大きな事件とかはないんだけど、でも読みながらなんとなく、人間関係とか人生とか日々の暮らしとか、いろいろ考えさせられる。ラストには希望のようなものがあってさわやかな感じもして。好きだ。
主人公は、30代男性、将来は神主の職を継ぐことが決まっていて、群馬県の実家で暮らし、ヒマなときは農家の住み込みのアルバイトしたりとか、基本、ふらふらっとしてる感じで。基本、淡々と生きてる感じで。
自分にはなにかが欠落してると思っているけれども、最初からなかったものは、そもそもなにがあったのか、なにがあるべき -
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敦賀の海はどんな海なのだろう。
私の中にあった閑静な港町のテンプレートのようなイメージが、最初のページ、主人公が「オレンジ色のダットサン・ピックアップ」で早朝の浜に乗り入れるところから一気に“敦賀”としての確かな形を見せ始める。なんて気持ちのいい物語のはじまり。聴こえてくるのはピックアップが砂を散らし走る音、風が吹き抜けて朝日にきらめく凪いだ海の静かな波の音。車のオレンジと海の青が鮮やかに目に浮かぶ。「海の仙人」はまるで海のような小説だった。
登場人物たちはそれぞれがつかず離れずの距離で集まっては移動し、また離れてゆく。孤独をわきまえ、孤独に向き合い、そして傍にいてくれるのは海と、あとは“フ -
Posted by ブクログ
ネタバレ死を表現するのに、かつては彼岸此岸というように船旅だった。
どこへ流されていくのかわからない水の流れ。
今回は飛行機の旅にアップグレードされた。
あの広大な待機所で、多くの飛行機が離陸を待っている、というイメージもしっくりくるし美しいし、離陸した飛行機がどこへ向かうのかもわかっている。
しかしそこがつまりはどんなところなのかは、ぼくらにはわからない。
結局人間にとって生死の在り方は変わらないのだ。
変わるのは寓意を読み取る人間の側が、何に生死を重ねて理解できるか、だけだ。
解説で池澤夏樹が村上春樹のクエストものみたいと言っていて、同感。
確かに巻き込まれ型の主人公、女性関係で巻き込まれるとい -
Posted by ブクログ
おそらく私はこの本を何度も読み返すことになるんだと思う。自分がどのような状況下に置かれていようとも孤独であること。その孤独に浸りたいときに、読み返すと思う。
河野が持っている独特の他者との距離感や、不意に生活圏に表れてきたファンタジーという出来損ないの神。そこに侵入する片桐。そしてかりん。
解説にも書かれているけど、男女関係の物語に、ここ最近性描写がセットになっていて、性描写と愛がイコールになっているものが多くて辟易としていたが、この本はもっと違う何かでつながっている。それぞれが孤独であることを意識しながら、うまく距離を測っている。そんな対人関係の微妙な距離感がすごく好き。
私も