絲山秋子のレビュー一覧

  • 神と黒蟹県
    初めて絲山秋子さんを読みましたが、不思議な読書体験でした。

    読み始めは馴染みのない田舎文化に入り込めず、期待外れかと思っていたのに、読み終わってみれば、なんだか懐かしさまで感じるほど親しんでいた。

    ふとした場面にはっとする言葉が散りばめられていて、油断ならない。
    こういうのが癖になるんだろうなと...続きを読む
  • 神と黒蟹県
    黒蟹県(架空)を舞台にした短編8話。
    独立した話ではなく、登場人物やお店の名前などは共通する。そして異彩を放つのは、所々に現れる神。
    神も神だが、登場する人たちも総じて緩い。
    読んでて楽しいとはこのことかな。
    しかし一方で、教訓的なことや人生訓を想起させるような含蓄のある話もあり、飽きない内容だった...続きを読む
  • 薄情
    田舎者を経験した者であれば、ものすごく引き込まれる小説だと思う。
    漫然とやり過ごす毎日の中にも喜怒哀楽があり、それを穏やかにキープするための田舎ならではの処世術。その肌感覚で知ってるものが言語化される事にハッとなる。

    主人公の宇田川。
    ニヤつく癖が抜けなければ、この先仕事を継いだ後も小さな陰口に息...続きを読む
  • 沖で待つ
    ⚫︎感想「沖で待つ」
    初めての絲山さんの作品は「神と黒蟹県」(2024.4時点で最新作)だったが、15年以上前に書かれた芥川賞受賞作である「沖で待つ」にすでに絲山ワールドが完成されていたのだ…といった感想をもった。男女がベタつかない軽やかさや、全体に広がるユーモアと優しさ、少しの寂しさ、少し現実離れ...続きを読む
  • 海の仙人
    作者が描く風景とメッセージが胸に流れ込んできて、いい読み心地でした。絲山秋子さんの物語はどっしり背中を預けて読めます。
  • 沖で待つ
    3編ともおもしろいが、やはり表題作『沖で待つ』が特に良かった。登場人物、彼らの会話がおもしろく魅力的。会社の中での「同僚」という人間関係。時に共に喜んだり時には互いの失敗をフォローしたり、日々仕事の中で同じ体験を共有しており、飲むと学生時代の友人以上に話がはずんだり…。読んでいると、その人間関係がリ...続きを読む
  • 神と黒蟹県
    絲山秋子さんの新刊は外せない
    「黒蟹県」と同じ微妙な地味県に住んでいるひとりとして「だよなぁ~あるある」だ
    架空の固有名詞がどれもこれも素敵!
    例の「神」もなかなかなはたらきをする
    平凡で普遍な人びとをこんなにも愛おしい描く著者
    カバーデザインが中途半端に地味なのがざんねん
    文庫化に期待
  • 神と黒蟹県
    ⚫︎受け取ったメッセージ
    神視点で「人々」を愛することを教えてくれるお話

    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    「黒蟹とはまた、微妙ですね」
    微妙、などと言われてしまう地味な県は全国にたくさんあって、黒蟹県もそのひとつだ。
    県のシンボルのようにそびえたつのは黒蟹山、その肩に目立つ北斎が描いた波のようにギ...続きを読む
  • まっとうな人生
    何も考えずに借りたら「逃亡くそたわけ」の続編だった!
    富山が舞台。コロナ禍中の家族の話。
    半分自伝のような感じと思われる。流れ的にちょっと心配したのだけど、変に不倫とかの話にならなくてホッとした…。
  • 神と黒蟹県
    読み始めて
    これ書くの楽しかっただろうな〜
    と思った。
    架空の県の架空の街。架空の会社と物。架空だけど異世界ファンタジーじゃなくて現実世界に実際にあるかのような地方都市。
    そこで生きる普通の人々と、人間の姿で生きる神の話。
    取り立てて何か起きるわけでもなく、日常の暮らしや独白。エッセイのような読みや...続きを読む
  • 神と黒蟹県
    とにかく面白かった。
    登場人物の内面を、軽やかに、しかし深層を適切に表現する文章を追う内に、ページを捲る手が止まりませんでした。
  • 御社のチャラ男
    ちやらちやらしてるあきのししん?!!でもおと、とらはあひいぞく、かるかたぞく!いしんしきいる、らあめんごやく!おのざとみとみつくにいつだつかいあはあれ、かいのみことだいだすしいかわれ!?!よこちよう?っていえる?みぎのうきしずむのとうかいかいかいな!あはれとうかいみことまれ!はっぱれぞくあきしのみの...続きを読む
  • 神と黒蟹県
    いかにフィクションといえども、こんなに普通とおかしみの境目が感じられないってすごい。
    自分の身の回りにもこんなフィクションがたくさん転がっているんじゃないか。
    もしそうならなんだかすごく愉快だなと思う。
    神 がいい。
  • 袋小路の男
    こういう、どうしようもない、抗えない、恋かどうかすら分からないけれど離れられないって話、すごく好きです。同時収録の話も大好き。
  • 沖で待つ
    女と男の友情・・・。

    成立するのかしないのか、周りで議論されるのを何度か聞いたことがあるが、もう一つ、20年前に早逝した友人の葬儀で、彼の親友が、「エッチなビデオ一式を生前の約束通り全部処分してやった」と言っていた。

    そんな僕個人の思い出が込み上げる標題作②は秀作。

    ③は全文ひらがなとカタカナ...続きを読む
  • ばかもの
    とっても良かったです。この作家さんは前から読みたいと思っていて、今回、はじめて読みましたがとてもいいなぁ、と思いました。作中でてくる
    『容易じゃねぇなあ』というのがとても私には渋く、ある意味この作品に収斂していく表現かなぁと思ったりしました。この作家の作品を他を読んでみようとおもつています。
  • まっとうな人生
    『逃亡くそたわけ』の単純な続編かと思いきや、富山を舞台にコロナ禍の日常を描く冴えた視線のエッセイとも言うべき作品だった。いくつも振り返りたくなる省察が含まれていて、それでいて「たびのひと」と呼ばれるよそ者の視点から富山のローカルな日常のあれこれが民俗的に描かれていて、物語性のなさがちっとも気にならず...続きを読む
  • まっとうな人生
    精神疾患を抱えながら日々を生きていくってなるほどこんな感じなのかもしれないなぁと、リアルを感じた。
    症状の波をうまく手懐けながら、でも時々大きな波にのまれそうになって慌てたりしつつ暮らす主人公と、その苦労やしんどさを肌感覚でわかろうとしながら共にいる家族。
    そこにはかけがえのない絆があるけれど、だか...続きを読む
  • 沖で待つ
    好みの作品に出会えました。
    どちらの作品も仕事に焦点が当たっていて、さまざまな視点からの仕事観が描かれていてとても楽しかった。
    勤労感謝の日、凄く良い!!
    知性溢れる毒舌と皮肉混じりの後輩との会話が本当に好きすぎました。
  • 逃亡くそたわけ
    プリズンたる病棟からの明日なき逃避行。資本論の等価交換の呪文から逃れようともがく主人公と商品価値の象徴たる東京の呪縛に囚われるなごやん。行き着いた岬のラベンダーの香りが旅の終わりを納得させる。とても印象的な作品でした。