絲山秋子のレビュー一覧

  • 沖で待つ

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    「私はこの店に夜を買いに来るのだ。真っ暗で静かで狭い夜一丁」

    絲山秋子一作目

    三編あったけど全部好きだった
    シニカルでテンポがいい一編目
    会社の同期で気のいい太っちゃんの二編目
    子供向け?の童話のような三遍目

    共通して地の文でユーモアのある感情が含まれていて、伊坂幸太郎作品のように笑ってしまうシーンが多くて読んでいて楽しかった。

    二編目では、自分の人生では体験できない営業職のきつさもあるけど、一緒にいて楽しい太っちゃんや頼りになる副島さん、きびきびさばさばしている井口さんたちとの職場環境が楽しさも同じくらい楽しそうだなと思った。

    0
    2026年05月08日
  • 離陸

    Posted by ブクログ

    おすすめされて読んで、すごい夢中になって読んでしまった…あまりに不思議だけど説明し切らず、そしてさまざまな場所で、さまざまな時空で、静かだけど複雑な、それでいて単純なストーリーが展開されて、読み終わった後はその世界観から抜けられずにいました。よかった。

    0
    2026年04月13日
  • 忘れられたワルツ

    Posted by ブクログ

    不思議系と言うべきか、いや不思議ではなくて実は普通に起きているのでないか、というじんわりと現実に滲み出てくるような絶妙な違和感や不気味さが面白い。
    でもって個人的には、なんか考えるってのが興味深かったというか。幾つかの登場人物は色んなことを考えては口に出したり黙っててみたり行動してみたり。そういった流れがときに不可解な事象と絡み合って想定外の事象への対処に繋がるんだろうかいやそういう次元のお話じゃないよなとか思いつつ読み進めながら思考するのであった。

    0
    2026年04月13日
  • 逃亡くそたわけ

    Posted by ブクログ

     芥川賞作家の絲山秋子さん、本作では直木賞候補にもなっており、守備範囲広く多才です。以前、自費出版ZINE『妄想書評』で笑い、本作もぶっ飛びタイトルに惹かれ手にしました。

     躁うつ病の女性「あたし」(博多出身21歳)と、うつ病の男性「なごやん」(名古屋出身24歳)が、精神病院を脱走し、九州を舞台におんぼろ車で逃亡するロードノベルです。

     逃亡は「北へ」のイメージですが、本作では博多から指宿まで、目的のない南下する逃避行で、南のイメージも相まって湿っぽい雰囲気がなく、乾いた爽やかさが感じられます。
     「あたし」と「なごやん」の関係性が絶妙です。「あたし」のばりばりの博多弁と、東京にこだわり頑なに標準語で話すいじられキャラの「なごやん」の会話が全編を貫き、この2人の対比が際立ちます。

     苦しい現実から脱走し、高揚感からか軽犯罪も重ねますが、不安や幻聴の他、当然ながら突発的な困難が頻繁に付いてまわります。それでも、2人のユーモラスな会話、自分の居場所を求める行動は、疲れている読み手の一服の清涼剤となります。

     寄り道だらけでも、結局行き詰まって元に戻っても、苦しい今を別物に交換したい想いと行動には価値がある気がします。2人のその後を応援したい気になりました。続編の『まっとうな人生』があるようなので、いつか読みたいと思います。

    0
    2026年04月06日
  • 細長い場所

    Posted by ブクログ

    散文だが、美しい詩のようなリズムがある。
    凡庸過ぎる表現かもしれないが、夢を見ているような読書体験だった。その中でもふと引っかかる記述があると、そこだけ太字になっていて覚醒している感触。
    緻密に構成された絲山さんならではのSF作品と呼べるのだろうが、あまりその言葉を当てはめたくない。

    0
    2026年04月02日
  • 神と黒蟹県

    Posted by ブクログ

    架空の土地をやたらとリアルに描いていて面白い。広島・岡山あたりがモデルかな?
    「赤い髪の男」が良かった。馬鹿にした方はすぐ忘れるけどされた方はずっと傷が残る、それは本当にそう。

    0
    2026年03月09日
  • 細長い場所

    Posted by ブクログ

    普段読まないジャンルなのですが、妻に薦められて読みました。絲山さんも初めてです。
    薄い本で余白も多く、楽に読めます。

    いちおう小説なんでしょうが、寓話的で、なんというか詩に近い。
    文字数の少なさの割に多くのイマジネーションを与えられます。楽に読めましたが、"さらっと読めました" という感じではなく、情景描写が緻密で、心に溜まるものは大きい。

    明解なストーリー展開ではなく、訥々(とつとつ)とした語り口ながら情景を浮かび上がらせ、読み手を惹きつける。作者の筆力に感嘆。

    0
    2026年03月01日
  • 御社のチャラ男

    Posted by ブクログ

    ジョルジュ食品という会社を軸に、何人もの視点で物語が進行していく。チャラ男は物語の軸というよりは、チャラ男をどう捉えるかがその人物の性格表現に繋がるのだろう。それにしても老若男女、立場も育ってきた環境も違う複数の視点で物語を書けることは凄まじい。

    0
    2026年01月22日
  • 細長い場所

    Posted by ブクログ

    好きな作家さんの新刊

    身近な家族を亡くしたばかりの自分、やり場のない気持ちをどこに持っていったら良いかとぐるぐるしていたけれど、この本を読んでたらぴたっと止まったような気がしました。

    0
    2026年01月10日
  • 沖で待つ

    Posted by ブクログ


    ⭐️沖で待つ
     絲山ワールドに魅了された!三短編とも良き!「勤労感謝の日」では、毒舌だが胸がすくような思いを感じた。「沖で待つ」では、同僚愛?ともいうべき関係性を丁寧に描いている。まさに戦友だ。太っちやんが切ない。住宅設備機器メーカーに勤めた経験が生かされているという。納得!「みなみのしまのぶんたろう」は童話風だが、人間のエゴを皮肉っているのか?魚の歌が面白すぎる!

    0
    2026年01月01日
  • 神と黒蟹県

    Posted by ブクログ

    日本であることには間違いないのが残念~黒蟹県は日本のどこにでもある地方。そこに住む人々と半知半能の神のくらし~「末端というのはすなわち先端だ。新しいことはいつだって小さな村や町から始まる。」そうだとも思うし、そうじゃないとも思う。実在と架空が入り交じるが日本人向けの小説なので日本からは離れられない。絲山さんはデビューから20年なんだって。絲山さんって神楽坂の新潮社に行くイメージだったのに、賞を貰ったのは文藝春秋の文學界だったんだ

    0
    2025年12月21日
  • 御社のチャラ男

    Posted by ブクログ

    群像劇であり、登場人物それぞれを捉えきれず、序盤は読むのに時間がかかったが、終わりが近づくにつれ、読むスピードが加速していった。文章表現が巧みで、面白い!

    0
    2025年12月07日
  • 細長い場所

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    本のタイトルとしてはあまりにも平易な印象のタイトル。
    開いて読むるは超感覚の粘膜の中。
    具体的に書かれていても想像が難しく、「これは何を書いている?」とはてなになった。
    理解が足りないといえばそれまでだが、「あまりよくわからない果実」をまるごと飲み込むような気持よさがある。
    超越的な存在・観念の主観で見る世界。退廃したこの世界に僕らという主語はいないのだと知る。
    唐突にこのような小説を手にして、読むことができてとてもうれしい。また開き読んでみれば今回とはまた違う感覚を得られるだろと強く思う。

    0
    2025年12月04日
  • 神と黒蟹県

    Posted by ブクログ

    海の仙人が良かったので、続けて同じ作者さん。
    やけにディティールが細かい架空の黒蟹県の人々。
    内容も、架空のものと実在のものが入り混じり、これはどっちた??ってなりながら読むのが楽しい。
    ないようは、本当になんてことはない、黒蟹県の住人たちの世界を覗き見しているような感じ。
    その中に当たり前のようにファンタジーが混ざってるのも面白い。
    いい意味で、毒にもクスリにもならない、でもところどころでくすりとなる、あっさり読後感な一冊。

    0
    2025年09月22日
  • 神と黒蟹県

    Posted by ブクログ

    なんとも気楽で神様らしくない神様の登場は、黒蟹県の人々を俯瞰で見るような視点があって面白い。
    絲山秋子氏の作品としては息抜きできるような軽い作風なので、半日で読み切ってしまうほど読みやすかった。

    0
    2025年08月30日
  • 沖で待つ

    Posted by ブクログ

    『沖で待つ』もよかったけど、『勤労感謝の日』がなんかいまの自分にドンピシャだったのでメモとして久々にレビュー書いておく

    0
    2025年08月17日
  • 神と黒蟹県

    Posted by ブクログ

    黒蟹県という架空の県に住む人たちのオムニバス。

    近隣の市となにかと仲が悪い、というのは高崎と前橋、大宮と浦和(同じさいたま市なのに)なんかのイメージだろうか
    宮城や岩手みたいに県庁所在地が圧倒的存在だと、険悪になりようがないからあんまりピンとこないものがあるが。
    ストーリーよりむしろ表現が面白くて笑った

    下記は頼りにならない男三兄弟に囲まれる十和島所長の章。どれもおかしい

    > 同窓会に行けば若作りでてかてか光っている人もおじいさんみたいにすっかりしぼんでしまった人もいる。決して中身を見てはいけない玉手箱みたいな人、埃を被った貯金箱みたいな人、ガレージの脇に放置されたソファみたいな人、ひび割れた長靴みたいな人、床の間の壺のような人もいる。
    >

    (恋愛について)
    > あれって一体なんだったんですかね?わたくしのところには取説も施工説明書もきてなかったんですよ。工具も何もなしに、よその現場をちらっと見た記憶だけでパワーエートスの設置工事をするようなものです。
    >

    > 「親しくなる」と「つき合う」の間には何か部品をかまさなければいけなかったんですか。それとも養生さえしておけばそれでよかったんですか。「同衾」は同梱なんですかそれともオプションで別注なんですか。
    >

    部下の営業が顧客との連絡の行き違いを「最近水星が逆行してますからねえ」と煙に巻くなんていうのもおかしい。それで通用するんか!
    「所長から怒られが発生しました」っていう言い回しが「賑わいの創出」と構造が同じ、と言うのもおかしい。

    「赤い髪の男」はかつて海外で活躍する建築家だったが、恋愛リアリティ番組で恥をかいたことを気に病んでいる。出身校を「マサ工です」と言う。棚元県の昌森工業のことだと思わせて実はマサチューセッツ工科大学だ、なんていうところも架空と実在の校名が混じっていておかしい。

    この小説は全編、この調子で架空の名詞と実在の名詞が混ざっている。県と市はもちろん、植物、方言、食べ物、店名など。よくこんなに「らしい」名前を思いつくなぁ。でも楽しいだろうなぁ。

    絲山さんは転勤していたしドライブも好きだから、いろんな地をまわって「らしい」名前のストックがあるのかなぁ。

    地図がある小説は好きではないのだが、これは例外。内容と立地はあまり関係ないので。

    0
    2025年07月17日
  • 御社のチャラ男

    Posted by ブクログ

    絲山さんの本3冊目。

    会社に対する解像度が高く感じた。
    登場人物も実際にどこかで働いていそう。
    ジョルジュ食品…声に出して言いたくなる社名。

    今どきの話だなと思った。
    迷える人々の話。
    会社内だけで終わる話ではなかった。社会の話。

    0
    2025年07月08日
  • 忘れられたワルツ

    Posted by ブクログ

    表題作ほか7編の短編集。2.11から2年後に出版、全話でさりげなく震災について触れています。ウィットに富んだ文章は飽きさせず筆力の確かさを感じ、読解が追いつけない所もありましたが短編ながら濃い作品でした。「恋愛雑用論」「強震モニタ走馬燈」「葬式とオーロラ」「ニイタカヤマノボレ」「NR」「忘れられたワルツ」「神と増田喜十郎」

    0
    2025年05月01日
  • 沖で待つ

    Posted by ブクログ

    独立した3編が入った短編集。

    『勤労感謝の日』
    これ好き!主人公の毒におもわず吹き出しそうになってしまう。
    飲み屋でのシーンが特に好きで、
    毒はありつつも読み心地が良かった。

    『沖で待つ』
    同期の男女。
    どちらかが先に死んだ時にHDDを壊す約束をするもの。
    こちらもなかなか味わい深い。
    太っちゃんの秘密、本当にそれだけだったのか
    誰にも分からないところも良い。

    『みなみのしまのぶんたろう』
    ぶんたろうのモデルはやっぱりあの人?
    (芥川賞の選評でタイトルが嫌いとか言っていたイメージがある)
    ぶんたろうを懲らしめる展開になるのかと思ったら、不思議な展開だった。
    全編漢字がなく読みにくい作品でもある。

    0
    2025年04月21日