絲山秋子のレビュー一覧
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ネタバレ「私はこの店に夜を買いに来るのだ。真っ暗で静かで狭い夜一丁」
絲山秋子一作目
三編あったけど全部好きだった
シニカルでテンポがいい一編目
会社の同期で気のいい太っちゃんの二編目
子供向け?の童話のような三遍目
共通して地の文でユーモアのある感情が含まれていて、伊坂幸太郎作品のように笑ってしまうシーンが多くて読んでいて楽しかった。
二編目では、自分の人生では体験できない営業職のきつさもあるけど、一緒にいて楽しい太っちゃんや頼りになる副島さん、きびきびさばさばしている井口さんたちとの職場環境が楽しさも同じくらい楽しそうだなと思った。 -
Posted by ブクログ
芥川賞作家の絲山秋子さん、本作では直木賞候補にもなっており、守備範囲広く多才です。以前、自費出版ZINE『妄想書評』で笑い、本作もぶっ飛びタイトルに惹かれ手にしました。
躁うつ病の女性「あたし」(博多出身21歳)と、うつ病の男性「なごやん」(名古屋出身24歳)が、精神病院を脱走し、九州を舞台におんぼろ車で逃亡するロードノベルです。
逃亡は「北へ」のイメージですが、本作では博多から指宿まで、目的のない南下する逃避行で、南のイメージも相まって湿っぽい雰囲気がなく、乾いた爽やかさが感じられます。
「あたし」と「なごやん」の関係性が絶妙です。「あたし」のばりばりの博多弁と、東京にこだわり頑なに標準語で話すいじられキャラの「なごやん」の会話が全編を貫き、この2人の対比が際立ちます。
苦しい現実から脱走し、高揚感からか軽犯罪も重ねますが、不安や幻聴の他、当然ながら突発的な困難が頻繁に付いてまわります。それでも、2人のユーモラスな会話、自分の居場所を求める行動は、疲れている読み手の一服の清涼剤となります。
寄り道だらけでも、結局行き詰まって元に戻っても、苦しい今を別物に交換したい想いと行動には価値がある気がします。2人のその後を応援したい気になりました。続編の『まっとうな人生』があるようなので、いつか読みたいと思います。 -
Posted by ブクログ
黒蟹県という架空の県に住む人たちのオムニバス。
近隣の市となにかと仲が悪い、というのは高崎と前橋、大宮と浦和(同じさいたま市なのに)なんかのイメージだろうか
宮城や岩手みたいに県庁所在地が圧倒的存在だと、険悪になりようがないからあんまりピンとこないものがあるが。
ストーリーよりむしろ表現が面白くて笑った
下記は頼りにならない男三兄弟に囲まれる十和島所長の章。どれもおかしい
> 同窓会に行けば若作りでてかてか光っている人もおじいさんみたいにすっかりしぼんでしまった人もいる。決して中身を見てはいけない玉手箱みたいな人、埃を被った貯金箱みたいな人、ガレージの脇に放置されたソファみたいな人、ひび割れた長靴みたいな人、床の間の壺のような人もいる。
>
(恋愛について)
> あれって一体なんだったんですかね?わたくしのところには取説も施工説明書もきてなかったんですよ。工具も何もなしに、よその現場をちらっと見た記憶だけでパワーエートスの設置工事をするようなものです。
>
> 「親しくなる」と「つき合う」の間には何か部品をかまさなければいけなかったんですか。それとも養生さえしておけばそれでよかったんですか。「同衾」は同梱なんですかそれともオプションで別注なんですか。
>
部下の営業が顧客との連絡の行き違いを「最近水星が逆行してますからねえ」と煙に巻くなんていうのもおかしい。それで通用するんか!
「所長から怒られが発生しました」っていう言い回しが「賑わいの創出」と構造が同じ、と言うのもおかしい。
「赤い髪の男」はかつて海外で活躍する建築家だったが、恋愛リアリティ番組で恥をかいたことを気に病んでいる。出身校を「マサ工です」と言う。棚元県の昌森工業のことだと思わせて実はマサチューセッツ工科大学だ、なんていうところも架空と実在の校名が混じっていておかしい。
この小説は全編、この調子で架空の名詞と実在の名詞が混ざっている。県と市はもちろん、植物、方言、食べ物、店名など。よくこんなに「らしい」名前を思いつくなぁ。でも楽しいだろうなぁ。
絲山さんは転勤していたしドライブも好きだから、いろんな地をまわって「らしい」名前のストックがあるのかなぁ。
地図がある小説は好きではないのだが、これは例外。内容と立地はあまり関係ないので。 -
Posted by ブクログ
独立した3編が入った短編集。
『勤労感謝の日』
これ好き!主人公の毒におもわず吹き出しそうになってしまう。
飲み屋でのシーンが特に好きで、
毒はありつつも読み心地が良かった。
『沖で待つ』
同期の男女。
どちらかが先に死んだ時にHDDを壊す約束をするもの。
こちらもなかなか味わい深い。
太っちゃんの秘密、本当にそれだけだったのか
誰にも分からないところも良い。
『みなみのしまのぶんたろう』
ぶんたろうのモデルはやっぱりあの人?
(芥川賞の選評でタイトルが嫌いとか言っていたイメージがある)
ぶんたろうを懲らしめる展開になるのかと思ったら、不思議な展開だった。
全編漢字がなく読みにくい作品でもある。