絲山秋子のレビュー一覧

  • まっとうな人生
    『同じ鍋をつついた後で食べる雑炊はおいしい。けれども同じ相手であっても自分が参加していない「よその家の昨日の鍋の雑炊」は食べられない。』『アジヤオコゼの味がきれいな直線だとしたら、カツオやサバにはかっこいい角がある。ブリには角がひとつもない。』ちょっとした言い方がうまいなあ。
  • 袋小路の男
    最初の2つは同じ登場人物を視点を変えた話で、そんな構成ありかよ!最高。と思いました。絲山さん2冊目にして何となく男の登場人物の傾向が分かった気がする。どっちつかずでダメだけど、セックスや結婚がセットにならない、友達とも恋人とも違うぬるま湯のような関係が心地よい。十円玉の温度で手のあたたかさを知る、す...続きを読む
  • まっとうな人生
    年末ランキングのどこかで目にして、どうやら”逃亡~”の続編らしいってことを知り、それは是非読まないと、ってことで。同作を読んだのが比較的最近だっただけに、登場キャラのことも結構覚えていて、ナイスタイミング!って感じ。コロナによるあれこれが、がっつりリアルタイムで物語化されているんだけど、筆者は日記よ...続きを読む
  • 離陸
    絲山秋子にしては珍しくかなりの長篇。何かを解決する類いの小説ではないので、消化不良を起こす読み手もいるかもしれない‥‥とは思った。ただ自分的には、主人公・サトーサトーの人生を生きているような主観的視点が妙に心地よくてしっくりとハマった。
  • イッツ・オンリー・トーク
    『イッツオンリートーク』はパッとしない何かを抱えた登場人物たちが交わって時間が流れる。なんて事ないような気もするし、鮮烈な人生のような気もする。ただずっと聞いていられるムダ話。感情移入できなくともなんか面白かったです。『第7障害』はちょっと動物大好き系フリーターの僕には辛かったけど、傷付いて、距離を...続きを読む
  • まっとうな人生
    さすが、文学賞作家絲山さん。心に刻みたい珠玉の表現で、コロナの日常を感性豊かに切り取って見せてくれる。舞台は「キトキト夫婦旅」以来の富山。大好きな散居村や棚田の景色が天然色で鮮やかに目に浮かぶ。絲山さんの表現心に刻んで再訪したい。「病気よりもっと薄気味悪い時代の演出としてのピンチに操られ動かされてい...続きを読む
  • ばかもの
    ばかもの 本人?の一人称で書かれた物語は、荒削りで生々しい…。読んでて こちらがギュッと苦しくなる描写を くどくどと書き連ねている波に いつのまにか巻き込まれている様だった。
    ばかもの 後は なんとか ええ感じで生きってって欲しい。
  • 逃亡くそたわけ


    p53
    道端にブドウ畑があった。あたしは思わずブレーキを踏んで、後ろの車にクラクションを鳴らされた。なごやんとあたしは目と目を見合わせて次の瞬間車から出て畑に忍び込んだ。マスカットのつぶつぶを片っ端からちぎり取って口に放り込むと水分と甘味が盗みの喜びをかきたてた。そうなるともう、止まらなかった。...続きを読む
  • 袋小路の男
    2005年(第2回)。4位。
    「袋小路の男」日向子は高校の先輩に恋をした。しかし、大学に入りOLになっても、いわゆる友人以上恋人未満。その中で恋(日向子は浮気という)もしたけど。なんかさ、思い出すよ、若いころ。なんだかうまくいかない恋ってあるよ。
    「小田切孝の言い分」男の側からの日向子との関係。
    ...続きを読む
  • まっとうな人生
    主人公の語り口が淡々としていて、彼女の感じ方や振る舞いに共感することが多かった。
    そうやねぇって思いながら読みました。

    自分も富山に他県(結構離れてる)からやってきてここで結婚し、今はなんとなく日常生活で方言使って生活してるけど、ここで生まれ育った娘のネイティブには敵わなくて…な感じなんで、読み進...続きを読む
  • まっとうな人生
    花ちゃん視点で語る言葉や想いに共感すること多し。花ちゃんもなごやんも各々愛する家族を持ち穏やかに暮らしている。ホッとした。坦々たる平和な日常に、読者としては少々物足りなさを感じた。
  • 袋小路の男
    表題作の『袋小路の男』、『小田切孝の言い分』『アーリオ オーリオ』の3編。 
    前2作は、12年間思い続け手を触れたこともなく「10円玉の温度で暖かさを感じる」。こういう男女の関係を純愛というの?女性が男性に振り回されている感はありますが、一線を超えたらこの今の関係が崩れてしまうのを恐れているのでしょ...続きを読む
  • 袋小路の男
    読書開始日:2022年9月19日
    読書終了日:2022年9月24日
    所感
    【袋小路の男】
    【小田切孝の言い分】
    小田切孝は虚勢を張る。
    つい弱音を吐くと、メッキが剥がれ、人が離れていく。
    わたしは小田切孝がハリボテだと気づいているが、愛しているから離れない。
    小田切孝もそれに気づいているから離れない...続きを読む
  • 沖で待つ
    表題作他2編。
    男女雇用均等法のもと総合職として採用された女性と同期の男性の友情のお話。表題作よりも「勤労感謝の日」が良かったな。でも、どちらも男性社会の中で働くということの葛藤などが描かれ、「あ、分かる分かる」と頷けるところがたくさんありました。
    「みなみのしまのぶんたろう」は平仮名ばかりで読みず...続きを読む
  • まっとうな人生
    「逃亡くそたわけ」を呼んだのが9年前。
    妙に印象的な話だった。
    ちょうど息子の精神疾患がわかった時期だったせいかも。
    2年前に読んだ「絲的ココロエ―――「気の持ちよう」では治せない」
    では、これまで読んできたどの本よりも、鬱の内面が説明されている感じがした。

    まさか「花ちゃん」が「なごやん」に再会...続きを読む
  • まっとうな人生
    前作、7年前に読んでいるみたい。再読せねば、、、
    コロナ渦、子供の小学校卒業、入学。
    今の私とどんぴしゃ。
  • 逃亡くそたわけ
    双極性障害と九州とロードムービー。対極するはずの疾走感と閉塞感が矛盾なく収まっている。作者本人に告発の意図はないのかもしれないが、日本の精神疾患治療の暗部をざっくりと生々しく晒している。
  • 逃亡くそたわけ
    普通でない二人の逃避行なんだけど、本当の所 おかしいのは周りな気もする。
    逃避行しているうちに、少しずつ気持ちも身体も 二人の関係性もほぐれてきているようで、九州の自然と街と言葉に 追体験した気になりました。
    この後の二人が再出発出来ます様に。
  • 逃亡くそたわけ
    久々の絲山秋子さん!
    花ちゃんの博多弁丸出しの会話に伴う疾走感がたまらない。引きずられアッという間に読み終えた。
    主人公・花田こと花ちゃんは「亜麻色二十エレは上衣一着に値する」が幻聴で聴こえ出すと自分ではどうすることもできなくなってくる。『資本論』の一節だそうだが、時折り何度も出てくるこのフレーズは...続きを読む
  • 忘れられたワルツ
    オーロラを運ぶ女と遭遇する「葬式とオーロラ」、見ず知らずの駅に降り立ってしまう「NR」が面白かったです。え、いつの間に非現実に入り込んだのだろうという不思議な世界観でした。一風変わった人たちの人生の一場面を垣間見るストーリー。少し辛い過去を抱える登場人物の不穏な空気の中にも、ふと笑える会話もありで、...続きを読む