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二十一歳の夏は一度しか来ないのにどうしよう――入院する精神病棟から脱走した「花」と、気まぐれについてきてしまった弱気の「なごやん」。二人は汗まみれになりながら1台の車で九州中を逃げ回る。
「手に手を取って逃亡する男女」と聞けばつい、追手から逃れるうちに高まる愛情…などと想像しがち。しかし、絲山節のきいた本作はそんなベタなメロドラマとはほど遠い。罵り合ったり、置き去りにされたり、幻聴と闘ったり、思い出に苦しんだり…。結局どこまで逃げても自分からは逃げられないのだ。それでも、うんざりしながら南下を続けるうちに、頑固な二人の価値観がそれぞれ少しずつ変わり始める…。逃走願望の行方はいかに!?
ちなみに、方言女子萌えの方にもオススメ。「逃げないと。こげなとこおったら捕まるばい」などなど、花の話す博多弁は痛快でキュート。たまりません。
Posted by ブクログ
⚫︎感想
精神病院から抜け出した男女2人が九州を駆け巡る。方言がとてもいい味を出している。
絲山秋子作品ふ3冊目。男女の友情というか、人間同士の繋がりを気持ちよい読後感をくれるところが絲山作品に通底するところだ。こちらの作品は、九州を必死で駆け巡る2人の珍道中といったところ。ちょっと切なくて、ちょっと笑えて、ちょっといい話。一気読み。
⚫︎本概要より転載
21歳の夏は一度しか来ない。あたしは逃げ出すことにした。
軽い気持ちの自殺未遂がばれて、入院させられた病院から。
逃げるのに思いつきで顔見知りを誘った。24歳の茶髪で気弱な会社員。
すぐに「帰ろう」と主張する彼を脅してすかして車を出させた。東へ。そして南へ。
__おんぼろ車で九州の田舎町を駆け抜けるふたりの前にひろがった暑い夏の物語。
Posted by ブクログ
芥川賞作家の絲山秋子さん、本作では直木賞候補にもなっており、守備範囲広く多才です。以前、自費出版ZINE『妄想書評』で笑い、本作もぶっ飛びタイトルに惹かれ手にしました。
躁うつ病の女性「あたし」(博多出身21歳)と、うつ病の男性「なごやん」(名古屋出身24歳)が、精神病院を脱走し、九州を舞台におんぼろ車で逃亡するロードノベルです。
逃亡は「北へ」のイメージですが、本作では博多から指宿まで、目的のない南下する逃避行で、南のイメージも相まって湿っぽい雰囲気がなく、乾いた爽やかさが感じられます。
「あたし」と「なごやん」の関係性が絶妙です。「あたし」のばりばりの博多弁と、東京にこだわり頑なに標準語で話すいじられキャラの「なごやん」の会話が全編を貫き、この2人の対比が際立ちます。
苦しい現実から脱走し、高揚感からか軽犯罪も重ねますが、不安や幻聴の他、当然ながら突発的な困難が頻繁に付いてまわります。それでも、2人のユーモラスな会話、自分の居場所を求める行動は、疲れている読み手の一服の清涼剤となります。
寄り道だらけでも、結局行き詰まって元に戻っても、苦しい今を別物に交換したい想いと行動には価値がある気がします。2人のその後を応援したい気になりました。続編の『まっとうな人生』があるようなので、いつか読みたいと思います。
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