絲山秋子のレビュー一覧

  • 末裔

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    ある日とつぜん鍵穴が消えて、家に帰れなくなる男の話。安部公房の『赤い繭』を思い出した。

    「鍵穴はどこにもなかった」。そんな調子でしれっとSF風に導入したかと思いきや、物語が進むにつれところどころに日本の近現代史の知識欲をかき立てる世代論を交え、思いがけない風景を見せてくれる。とても味わい深い読書だった。

    この作家は、女流作家の中で随一に男性の一人称がうまいと思う。団塊の世代のいわゆる「日本のオヤジ」の自意識にリアルに寄り添える力量に感心する。


    備忘録:

    「自分たちの世代は、若い頃もっと、社会と密接につながっていたと思う。省三(主人公)が月のように、社会の周りで満ち欠けしているとしたら

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    2012年02月19日
  • 絲的メイソウ

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     共感するところが多い。肯いたり笑ったりしながら読んだ。著者はかなり頭の良い方なので(あたりまえか)、次々と発せられる的確な言葉ですとんと腑に落とされていく。
     小説作品での人物描写の奥行きや風景表現の静謐さなどの源泉は、このような何でもなさそうなことを鋭く彫りあげていく思索する力の豊かさなのだと感心しつつ、読み返してみても何度でも笑える。特に、会社員時代の逸話や禿好きの件など。

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    2011年12月05日
  • ラジ&ピース

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    表題作と「うつくすま ふぐすま」の2編。

    自分のコンプレックスの端っこが引っ掛かるし、読み流してると研ぎ澄まされた言葉がストレートにぶつかってきて、痛いし。
    なんでこんなに面白いんだろ。

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    2011年11月19日
  • ラジ&ピース

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    この本を大阪の本屋で買った。翌日に京都の嵐山へ行く途中の車中で読み始め、帰りの車中で読み終わった。あっというまに読めた。面白い。「水たまりに落ちたレシート」と主人公が自身のことを思っているとある。この表現方法に惹かれた。この主人公が田舎町で人と関わり、積極性を獲得していくはなし。自分に訪れる色々な機会に正面から向き合っていくことで、人生が開けて行くんだと読後の感想(教訓)を得られた。

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    2011年11月15日
  • 絲的メイソウ

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    絲山秋子の絲的メイソウを読みました。絲山秋子の露悪的エッセイでした。瞑想というよりは妄想に近いような、絲山的人生観が綴られていきます。禿礼賛という章では禿に萌える絲山秋子の感じ方が大まじめに語られています。寝言は寝て言えという章では、寝言で、お客様に丁寧に挨拶をした後、「クソオヤジがっ」と言ってしまったというエピソードが語られています。また、絲山の取説という章では、家電の取扱説明書のようなトーンで自分の紹介が書かれています。どれもこれも吹き出しそうになりながら面白く読みました。極めつきが世の中みんな五七調という章で、一回分のエッセイが全て五七調で書かれているのです。私はテンポの良い文章が好きな

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    2011年09月25日
  • 絲的メイソウ

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    ネタバレ

    おまえはおれか状態の絲山先生。
    恋するくだりは、30代女にしかわからない稚拙さ。
    20代のほうがもっと狡猾。
    赤ちゃんがえりしてるね。
    なのに、好きになった人から順に嫌いになっていく、矛盾。
    痛いな、痛すぎるな。
    ホント他人事とは、思えない。

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    2013年03月20日
  • 絲的炊事記 豚キムチにジンクスはあるのか

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    この作者の書く小説が大好きなので、思わず手に取ったのだが、大当たり。文章がいちいち面白い。くすくすっと笑ってしまうような、成る程と唸ってしまうような。
    料理が好きな人、ことばの語感を楽しみたい人、どちらにもおすすめしたい。

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    2011年02月03日
  • エスケイプ/アブセント

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    久々に面白いと思える本でした。主人公視点の文体や、キャラクター設定も新鮮。いい加減なやつらなのに、嫌いになれない登場人物たちで、頑張れよって応援したくなります。最後はキュンとなりました。

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    2010年07月24日
  • 絲的メイソウ

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    絲山さんの作品(小説)を読んでイメージされる「絲山秋子像」がこっぱみじんになった一冊。すげえ、こんな人だったのか。おもしろすぎる。私自身は例の「五七調エッセイ」にはピンとこなかったくちなんですが、いろんなネタ満載。個人的には、この本で絲山さん初体験というのはおすすめしません。

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    2010年05月05日
  • 絲的メイソウ

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    絲山秋子さんはもの静かなお姉さんだと勝手に思い込んでいたので、
    啖呵の切り方などに驚いた。
    なんだか親近感が沸いた。

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    2010年02月25日
  • 絲的メイソウ

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    1/10  傑作。いじいじしていた自分の心を逆向きに挫いてくれたような。エッセイとしてはかなり大好きの部類でした。ばんから、とか、がらっぱち、とかいう言葉がしっくりきそうな。なんだろなー。辛気くさいこともこれくらいネタにできるような人になりたいと思ったよ。

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    2010年01月13日
  • 神と黒蟹県

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    日本であることには間違いないのが残念~黒蟹県は日本のどこにでもある地方。そこに住む人々と半知半能の神のくらし~「末端というのはすなわち先端だ。新しいことはいつだって小さな村や町から始まる。」そうだとも思うし、そうじゃないとも思う。実在と架空が入り交じるが日本人向けの小説なので日本からは離れられない。絲山さんはデビューから20年なんだって。絲山さんって神楽坂の新潮社に行くイメージだったのに、賞を貰ったのは文藝春秋の文學界だったんだ

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    2025年12月21日
  • 御社のチャラ男

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    群像劇であり、登場人物それぞれを捉えきれず、序盤は読むのに時間がかかったが、終わりが近づくにつれ、読むスピードが加速していった。文章表現が巧みで、面白い!

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    2025年12月07日
  • 細長い場所

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    ネタバレ

    本のタイトルとしてはあまりにも平易な印象のタイトル。
    開いて読むるは超感覚の粘膜の中。
    具体的に書かれていても想像が難しく、「これは何を書いている?」とはてなになった。
    理解が足りないといえばそれまでだが、「あまりよくわからない果実」をまるごと飲み込むような気持よさがある。
    超越的な存在・観念の主観で見る世界。退廃したこの世界に僕らという主語はいないのだと知る。
    唐突にこのような小説を手にして、読むことができてとてもうれしい。また開き読んでみれば今回とはまた違う感覚を得られるだろと強く思う。

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    2025年12月04日
  • まっとうな人生

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    死ぬまで生きる。絶対に逃げられない当たり前で恐ろしいルールの中、それでも力の抜く方法を、しっかりやんわり示してくれる噺。

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    2025年10月21日
  • 神と黒蟹県

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    海の仙人が良かったので、続けて同じ作者さん。
    やけにディティールが細かい架空の黒蟹県の人々。
    内容も、架空のものと実在のものが入り混じり、これはどっちた??ってなりながら読むのが楽しい。
    ないようは、本当になんてことはない、黒蟹県の住人たちの世界を覗き見しているような感じ。
    その中に当たり前のようにファンタジーが混ざってるのも面白い。
    いい意味で、毒にもクスリにもならない、でもところどころでくすりとなる、あっさり読後感な一冊。

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    2025年09月22日
  • 神と黒蟹県

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    なんとも気楽で神様らしくない神様の登場は、黒蟹県の人々を俯瞰で見るような視点があって面白い。
    絲山秋子氏の作品としては息抜きできるような軽い作風なので、半日で読み切ってしまうほど読みやすかった。

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    2025年08月30日
  • 沖で待つ

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    『沖で待つ』もよかったけど、『勤労感謝の日』がなんかいまの自分にドンピシャだったのでメモとして久々にレビュー書いておく

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    2025年08月17日
  • 神と黒蟹県

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    黒蟹県という架空の県に住む人たちのオムニバス。

    近隣の市となにかと仲が悪い、というのは高崎と前橋、大宮と浦和(同じさいたま市なのに)なんかのイメージだろうか
    宮城や岩手みたいに県庁所在地が圧倒的存在だと、険悪になりようがないからあんまりピンとこないものがあるが。
    ストーリーよりむしろ表現が面白くて笑った

    下記は頼りにならない男三兄弟に囲まれる十和島所長の章。どれもおかしい

    > 同窓会に行けば若作りでてかてか光っている人もおじいさんみたいにすっかりしぼんでしまった人もいる。決して中身を見てはいけない玉手箱みたいな人、埃を被った貯金箱みたいな人、ガレージの脇に放置されたソファみたいな人

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    2025年07月17日
  • 御社のチャラ男

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    絲山さんの本3冊目。

    会社に対する解像度が高く感じた。
    登場人物も実際にどこかで働いていそう。
    ジョルジュ食品…声に出して言いたくなる社名。

    今どきの話だなと思った。
    迷える人々の話。
    会社内だけで終わる話ではなかった。社会の話。

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    2025年07月08日