絲山秋子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ自分で捨てておいて、
それなのに気づけば焦がれて
奪われていたりする。
我を通すのも、力むのも大変。
とじこもるのは簡単。
でも少しだけひらいてみると、
なんだか気持ち良い。
昨日と同じ景色なのに、晴々していたりする。
「ラジ&ピース」
「うつくすま ふぐすま」
の二編が収められています。
自意識とコンプレックスを盾に、
世界とフィルターを通して向き合う野枝。
ラジオのパーソナリティを田舎でしている野枝。
そこに優しい姉さんみたいな女医の沢音が加わり。
あいつもこいつも厭になる。
触らないで、近寄らないで、悪意や打算しかないから。
そーゆーの面倒だから。
誰でも持っている感情を少し強めに押し出す野枝が、
ラジオをしているのは
やっぱり繋がりたいからなんだろうなあ。
なんか繋がって
届けて、届けてもらって。
日常が少しだけ変化する時間を描いている「ラジ&ピース」
そして、
パンチの効いている「うつくすま ふぐすま」
同姓同名の友情。
女の友情。
ちょっとだけ恋心に近いもの。
狂人と変態ばかりの世界なんだもの。
男に対してバッサリいく感じは、
たぶん女なら少なからず共感すると思います。
だから男性にはおすすめ出来ません。苦笑
男に脳味噌はいらない。なんて、ちょっと憧れちゃいます。笑
装丁は綺麗で可愛いのに、内容はピリっとスパイシーで
読後は良いです。 -
Posted by ブクログ
『沖で待つ』が良くて、それ以来、絲山さんの本を読むようになりました。
今回の末裔は、妻を亡くした中年男性が主人公。
家に帰ろうとすると、何故か鍵穴が見つからず、仕方がなく放浪する羽目になるってお話。
鍵穴が見つからないってところで、どういうこと?と思い、かつその説明がされないので、ずっとモヤモヤします。
あ~久しぶりにハズレの本を引いたかなぁって思ったんですが、ジワジワと読み進められます。
んで、最後には、モロモロ納得できないところを吹っ飛ばして、冴えない中年男性が一歩踏み出す爽快感を味わえます。
自分も何かしよう!って気持ちにさせてくれる内容でした。
いや~良い本!
こういう、ジワジワと感動させてくれる本は珍しい気がします。
自分の内側から鍵を開けるってところが印象的でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ*引用*
オトコに脳味噌はいらない。
百歩譲ろうか。脳味噌だけでもホルマリン漬けにしたくなるような、常軌を逸した賢さならいい。でも、なかなかいないでしょう、そんなひと。凡庸でしょう、あんたもその前もまたその前も。つまり私とつきあう大抵のオトコは。少しお利口なら友達になって一生つきあった方がいいじゃない。オトコなんてあれよ、どうせ飽きるんだから。三年もったら大したもの。何に飽きるか。それは何のためにつき合うかと一緒。つまりセックス。べたべたして好きだの愛してるだのぐじゅぐじゅ言うこと。でもね、セックスとお利口は両立しないの、殆どの場合。オバカにならないとあんな恥ずかしいことはできないの。おわかり?
―― 『うつくすま ふぐすま』 p.148-149 -
Posted by ブクログ
さて困りました。何と書けばよいのか?
こういう時はネットの書評を読んで、同感できる言葉を拾い集めてみる事にしましょう。
◇こんな魅力的な不機嫌は絲山さんの得意技のひとつだ。
◇なんか愛想は悪いがなかなか気の利いたつまみをだしてくれる飲み屋みたいな小説。
◇はっきり言って、野枝は、お近づきになるのは遠慮したくなるほどの『嫌な女』なのだが、これぞ絲山秋子の筆の凄いところで、いつのまにか物語に引き込まれ、野枝に好感を持ち、応援までしている自分がいた
◇日差しの中で少しずつほぐれていくような野枝のほんのわずかな変化が作品に温かみを加えていきます。
自らの殻にこもる孤独(引きこもりとはちょっと違う)みたいなのが絲山さんのテーマなのでしょうかね。それが少しほぐれるのだけど、ほぐれ切れないところが”らしさ”のようです。
◇削りに削ってエッセンスを抽出していくような1冊を愛読者としては次も期待
◇軽やかな文体は選びぬいた言葉だけで構成され、心血を注いだあとがうかがえます。
あまり気にしたことが無かったけど、確かに質の高い文章です。書いたものを後から削って行ったというより、最初から言葉を選び抜いて書いている感じですね。 -
Posted by ブクログ
主人公は左翼運動の元活動家。革命を夢見て、闘争と潜伏に明け暮れること20年の果て、テレビでアメリカの同時多発テロを目の当たりにしたことで挫折を味わい、運動から脱落。40歳になってやっと気づいたことといえば、とりあえずの敵は国家権力とかじゃなくて、ただの退屈だった・・・ってこと。
人生を棒に振ったと気づいたときの虚しさ、寂しさ、空恐ろしさ。絲山作品の主人公はいずれも、世間にうまく馴染めない人。面白そうだけど、お近づきになるのは謹んでご辞退申し上げたい人などが多いようですが、この作品でも脱落者である自称元革命家の目を通して、生きていくことの嘘っぽさ、それでもなお捨てがたい人生の物哀しさを、絲山さんらしい軽妙な語り口で描き出しています。