絲山秋子のレビュー一覧

  • 袋小路の男
    高校時代から気になっていた異性とのドライ?クール?な付き合いに友達以上の関係性を感じられない主人公は連絡の途絶えた20歳の時に同じ大学の彼氏が出来るが卒業時に別れる、社会人になって東京を離れてもなんとなく恋人でもなかった筈の高校時のドライな彼を思い出す日々。。。

     帰京の際に偶然に彼と出会い、何と...続きを読む
  • エスケイプ/アブセント
    軽妙な文体で読みやすい。この世代の人はこういう時代を生きて、みたいな世代感が全然分からないためになんとなくぼんやりと霧の中を行くように読み進めていたんだけど、何にも信じられないから神様だけは信じられる、毎日謝ってるっていうバンジャマンの話はすごくわかるなあと思ってしまった。
    江崎は大人は生でぬるつい...続きを読む
  • 逃亡くそたわけ
    『資本論』の一節が頭のなかに響くことに悩まされる花ちゃんが、なごやんという青年とともに精神病院を脱出し、彼の運転する車で福岡から南へと九州を駆け抜ける物語です。

    精神病院からの逃走劇ということで、もっとぶっ壊れた内容を想像していたのですが、方言が飛び交う二人の会話と、行き当たりばったりな旅の雰囲気...続きを読む
  • 袋小路の男
    表題作「袋小路の男」は、高校のときに好きになった先輩の小田切孝を見つめつづける大谷日向子の物語です。一方「小田切孝の言い分」は、二人の関係を小田切の視点を中心に、三人称の文体でつづっています。

    ある意味では、著者の文章は小田切と日向子の自意識を容赦なく抉っているともいえるのですが、突き放した視点で...続きを読む
  • イッツ・オンリー・トーク
    表題作の「イッツ・オンリー・トーク」と「第七障害」の二編を収録しています。

    「イッツ・オンリー・トーク」は、橘優子という35歳の女性の物語です。議員候補の本間、鬱病でヤクザの安田、いとこで元ヒモの祥一、そして優子と奇妙な関係をつづける痴漢など、彼女をとりまく男たちとの日常を、タイトルが示すとおり「...続きを読む
  • 海の仙人
    確かにファンタジーのお話。読後にあらすじで考えれば荒唐無稽なんだけど、そこで書かれていることが地に足ついているためにそのことに気が付かないようになっている。
    孤独は心の輪郭で、自分のあり方だっていうのは、わかる。輪郭がなければ触れ合うことができないから。でもこの本の登場人物たちはあんまり触れ合おうと...続きを読む
  • 逃亡くそたわけ
    風変りなロードノベルです。精神病院を脱走した2人組という点ではありそうなのですが、逃亡的なドキドキが無いのは珍しい。
    正直絲山さんは淡い感触の中で引っかかりを作るのが上手いイメージなのですが、これは正直凡作でしょうか。いい作品多いので最初に読むなら他をお勧めしたいかも。
    でもこれ有名だし目を引くから...続きを読む
  • 袋小路の男
    ばかだな、と言われるのが好きだと小田切は知っていて、それで毎回のようにばかだな、と言う。何度言われても日向子は快さを感じた。いつもきっちりしていて虚勢を張っている自分が、ばかだな、という言葉の前で角砂糖が紅茶に溶けるようにほろほろと崩れて、甘い気持ちになる。
  • ばかもの
    な。なんだこれ?という小説だなあ、って印象。読んでいて、ビックリするほどに「そう行くのか!?」という展開。いやあ、驚きでした。中編?というか、短編?というか、極めて短い、あっちゅう間に読んでしまえるのに、ここまで展開変わるかね?という驚き。

    いきなり、主人公と、年上の恋人の女とのエロエロのシーンか...続きを読む
  • 小松とうさちゃん
    (八重樫という未知の存在はいるものの)全体的に優しいお話。

    個人的に身近な土地の話も出てきてなんだか嬉しくなる小説。
  • イッツ・オンリー・トーク
    ストーリーのない話を、つらつらと書き綴ったお話。
    読んでいて面白くないってわけじゃないが、何も記憶に残らん。
    1週間後には内容を全部忘れる自信がある。

    きっと1ヶ月後には、記憶にない本として再読できると思うので
    ある意味お得な一冊。
  • 小松とうさちゃん
    中編「小松とうさちゃん」
    短編「ネクトンについて考えても意味がない」
    掌編「飛車と騾馬」(小松とうさちゃんの前作)

    たいてい読んだ小説に関しては、エバーノートや未公開メモに詳しめのあらすじを書くのだけれど、本作はその必要はなさそう。
    50代冴えない男の、これが最後かもしれない恋を、40代のネトゲに...続きを読む
  • 掌篇歳時記 春夏
    季節の生江を表す二十四節気七十二候のうち春から夏の十二の候を題にして、十二人の作家の掌編集。
    七十二候のとらえかたが様々で、面白い。
  • 薄情

    ストーリーがあるようなないような、どこか現実感のない日常を描きながらも、最後主人公の宇田川は現実に希望を見出して終わる。ぼんやりと読んでしまったが、実は緻密に構成された作品であることがわかった。もう一度読んだらまた味わいが変わるような気がする。
  • 掌篇歳時記 春夏
    村田沙耶香さんがやっぱ面白かった。どうやったらこんな不思議で面白いこと思いつくんだろう。
    私は野生に返るといって家を出た姉と、女3人で暮らし人工授精で子どもを持とうとしている妹の話。ぽうという声。
    村田さんの作品が読めたので大満足です。
  • 掌篇歳時記 春夏
    二十四節気、七十二候テーマの12作。
    日々の変化や季節の移ろいを表す、その言葉の意味の楽しさにはっとする瞬間。
    流されるままの同じ日々だと見誤っているわたしへの気づきになればいいな。
  • 掌篇歳時記 春夏
    12人の作家さんが旧暦の七十二候をテーマに執筆した小説集。春夏編。
    気になる作家さんが書いているので読んでみたかったのです。それに12人! 豪華執筆陣。装丁も綺麗ね。季節を表す言葉、日々の生活で変化を感じたこと、素敵で、自分の生活も日々に流されるだけでなく、自然の声に目を向けたくなりました。それぞれ...続きを読む
  • 薄情
    谷崎潤一郎賞受賞作。
    エンタメ作品というよりも文学性が強い作品。
    兎に角、群馬、群馬、群馬。
    自然、土地勘、生活の息づかいに至るまで群馬。
    群馬県民読むべし。
  • 薄情
    群馬とその周辺の地名が多く出てくる。群馬に少しばかり行っていたことがあるが、聞き馴染みがある地名が出ることによってなんとなくそこの世界に入りやすいような、切ない感覚を覚えるような。宇田川の感情、思考がなんとなくわかるような。
    全部なんとなく、、、そんな感じ。
  • 薄情
    広々とした群馬の土地感と、人間関係の狭く近しいさまが対比していて面白い。人や事を受け止めた上で受け容れない、守り維持するための薄情さがそこにはあった。(守る対象は個人だったり自身だったり、コミュニティもしくは縁そのものだったり)
    距離感、視え方、がテーマなのかな。それは地方でばかりあるものではないの...続きを読む