絲山秋子のレビュー一覧

  • 神と黒蟹県

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    好きです。
    架空の県に住まう人々の日々。そして神。あるあるのようでいてフィクション。架空と実在の物の名前が混在していて楽しいです。
    ストーリー的に面白いというより、完全に文章を楽しむ本。絲山さんのセンスにハマるか否かでしょうか。
    雉倉さんのおばちゃんとの付き合い方とか、十和島さんの町内会のやりとり、赤髪の男のスタンス、そして所々の神。淡々としているようで、確かにと思う所もあり、ユーモラスな文章が好きです。
    楽しい読書時間だったけれど、時間を経たら内容絶対忘れちゃう〜。刹那的。☆3.5

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    2025年07月21日
  • 離陸

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     この小説は間違いなく「道中」が面白い小説でした。
     人は誰しもいずれは死という結果に行き着くものだし、そこに至るまでの道中に意味を持たせる必要はない。滑走路を走っているうちにいつかふわりと離陸していくものなんだと思った。
     作中で解決されない謎があるが、それはたまに思い起こす昔の消化不良の恋みたいなもので、自然と過ぎ去ってまたいつかふと思い出すことがあるだけ。結局のところ他人は他人で、人間は他人の考えなんか真には分からないんだよな、とそんなことを思う。このほろ苦い実感を噛みしめるのもこの作品の価値なのかもしれない。
     しかし、物語の中に生きていた人物たち全員にいつの間にか愛着を持っていた。だ

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    2025年07月07日
  • 御社のチャラ男

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    大きなストーリーがあるわけではないので、ぐいぐい読み進めるものではなかったが、途中あらゆる視点からの人が心の中で考えていることをみるような感覚になった。会社のことも思い出し、嫌な人まで思い出してしまった。
    人間は奥深いですね。

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    2025年06月26日
  • 御社のチャラ男

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    登場人物が多くて、途中で「今誰が話してるんだっけ?」と混乱してしまった。
    章ごとに語る人物が入れ替わるから、わかりやすい構造のはずなんだけど、なんでだろう…。
    たぶん、全員が独白調で語っているから、みんな同じような文体になっているのが原因な気がする。

    様々な年代や立場の人たちが、三芳部長というチャラ男について、そして会社の組織について、人生について、語っている。
    基本的に恨み節や愚痴であり、途中で飽きてしまいそうになる。
    でも最後には、「ええーー」とびっくり&脱力してしまう結末が待っていて、その驚きを味わえたから、通読して良かった。

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    2025年06月10日
  • 不愉快な本の続編

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    ネタバレ

    最後が少し怖かったぐらいでイマイチよくわからなかった本だった。
    物語も浮浪者みたいな主人公が自分の人生を語り口調で淡々と話しているみたいな内容。
    内容自体もまぁ太陽が頻繁にでていたり昔関わった女性の話が度々出ていることから、過去の場所や出来事に囚われていないように見えてるが、本当は誰よりも囚われているんじゃないん?と思った。
    そう考えると最後の主人公の行動が今までの逃亡者のような人生を、最後に本当に逃げないといけない出来事を起こすのをきっかけに逃亡生活みたいな人生を終わらせるためだったんじゃないかと思い少しだけ主人公の気持ちがわかった気がした。

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    2025年05月17日
  • 御社のチャラ男

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    具体的な話のようで、実は一貫して普遍的な話としてキャラを動かしているのが印象的。各キャラに典型的な立ち振る舞いを与えつつも個性を出す描き方をしているのはすごいと思った。

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    2025年05月06日
  • 沖で待つ

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    「神と黒蟹県」がよかったので、同じ作家さんの本を。短編が3本、どれもサクサク読めました。

    「勤労感謝の日」働く女の疲労と怒りとカッコよさと情けなさが全開。毒が効き過ぎな女子会、罵倒がキレッキレで笑っちゃう。女性総合職の第一世代。「働きマン」よりひとまわり上な感じかな?

    「沖で待つ」会社の同期、という関係を特別なものとして描く。こんなふうにいろんなものを超えた関係になれるもの?
    おしごと描写がリアル。あと、男のポエムが地味にリアル。三代目魚武さんとか、「一生一緒にいてくれや」とか、一時やけに流行ったあの空気。ただ「沖で待つ」というワードのかっこよさは頭ひとつ抜けてる。さすが。
    第134回芥川

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    2025年05月01日
  • ばかもの

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    ネタバレ

    等身大の人が落ちていく様を生々しく書いていてとても怖かった。
    内容しては大学生の主人公と年上のパートの女性の恋愛物語。初めは歪ながらも付き合っていたが、女性の方が結婚して主人公は別れる。その後主人公別の彼女や就職といった普通の人生を進んでいくがふとした瞬間に躓いてしまう。躓いて周りに助けを出すが助からず最後にはパートの女性の親戚に頼りそこからまた彼女との関係が結びついていく物語。
    正直、主人公の方はかなり共感をさせられてしまい読んでいてかなりきつかった。

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    2025年04月29日
  • 御社のチャラ男

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    タイトルに惹かれて購入。とても読みやすい。絲山先生の本をもっと読んでみたいなと思った。ただ、うまくまとまっていることを感じられなかった。また時間をおいて読んでみたい。

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    2025年04月26日
  • 逃亡くそたわけ

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    メロンパンみたいな落石という表現がよかった。
    マルクスとかウィトゲンシュタインとかヘーゲルとか出てきた。解説が渡部直己だったが、美味かった。

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    2025年04月15日
  • 薄情

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    地方都市に住む神主見習い兼アルバイターの宇多川が楽しく過ごせる工房の主鹿谷や女後輩と関わっていくのだがそんなに薄情感はない。それよりも宇多川が付き合っていた女にラブホで行為後に新しく男ができた事め振られた事でアホらしくなり笑いが止まらず、帰りは「車でなくて勝手に帰ってくれ」というのは男女関係が切れた際のお互いの薄情さが出ていたと思う。
    本編には不倫とかはあるものの典型的悪党の様な存在はない。子どもを連れてきた親友に対する想いは独身男性としては頷けるがやはり大人気ないといえよう。その辺も薄情といえば薄情。

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    2025年03月03日
  • 神と黒蟹県

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    架空の『微妙に』『地味』な県、黒蟹県を舞台にした連作集。

    癖の強い市長がいて、地域同士の確執があり、めんどくさい地域もあればこれといった特徴もない地域もある。
    移住してくる人、生まれた時から住んでいる人、一度出て行ってまた戻ってきた人、様々な人がいてその中に神が交わる。

    架空の場所や物と実在の物が交わるように、人々の人生のリアルな部分と神のとぼけた部分が交わる。

    先の話に出てきた名前だけの登場人物の物語が後に出てきたり、脇役で出てきた人が後に主人公となって描かれたり、様々な視点で楽しめるのも連作集の楽しいところ。
    黒蟹県の様々な地域の様々な人たちの物語が多視点で楽しめた。
    時折出てくる神

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    2025年01月25日
  • 御社のチャラ男

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    私も会社員なので最初は分かるこういう人いるよねって共感しながら楽しく読んでたんだけど、読んで行くうちに自分の想像するチャラ男像とはなんか違ってきた。まずそこまでチャラくないのでチャラいってなんだっけ?となり、「世渡り上手い」って書かれてるわりに登場人物殆どから嫌われてるので、全然上手く渡れてなくない?ってなる。三芳部長はヘタレおじさんである種の女性からほっとけないと囲われてる感じがもはや太宰治を連想させ、自分の会社の世渡り上手なチャラ男たちに投影できなくなった…
    ただひとつ、無駄にとんがった靴を履いてるはあるある。

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    2025年04月02日
  • 袋小路の男

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     2004年第30回川端康成文学賞を受賞した表題作含む3編収録の短編集。
     他人が自分のことをどう思っているのか、またあまり大きな声で言えないが、自分が他人のことをどのように捉えているか。このあたりの心理描写が巧みに描かれている。

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    2024年11月30日
  • 沖で待つ

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    「いつか君に出会って欲しい本」で紹介されていたので読んでみる。短編が3作。
    2本目がタイトルの「沖で待つ」

    新卒で入った住宅関連会社の同期の男女、営業所は離れたり、片方は結婚するものの友情は続きどちらかが死んだら「パソコンのHDDを壊す」約束をする話。

    新卒で入った会社で同期とワイワイやっていた事は、私もとても楽しい記憶の1つで、その頃を思い出したりして楽しい。間違いなくそれも青春の欠片だと思う。この約束の話は聞いたことがあり、この本読んだことあったっけかな?とログを見直すも無い、なんだったかな。

    さんさくめは、ひらがなばかりでよみずらかったのでななぺーじめで、よむのをやめた。

    1作目

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    2024年10月06日
  • イッツ・オンリー・トーク

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     2003年第96回文學界新人賞を受賞した表題作に「第七障害」を併録した一冊。
     深すぎるわけでもなく、浅すぎるわけでもなく、自分にとってはちょうど心地のいい距離感にいる人達。初めは点のような存在だったのに、いつの間にか線で結ばれて、それでもその線はそれ以上太くなることはない。そうした関係はなかなか築けるものではないけれど、必要なんだと改めて気付かされる。

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    2024年10月06日
  • 離陸

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    ネタバレ

    人のゴールは死しかないもんなと、(悲観では無く)静かに受け入れられる本。
    結局、人の「真実」なんて確かめようが無い。
    あるのは、誰の目から見ても確かな死だけ。
    こう書くと、ものすごく暗くて陰惨な物語のようだけど、読み口は不思議なほど重たく無い。
    わりとボリュームのある本だけれど、他の方の感想にもある様に一気読みさせられる。

    面白くて面白くて辞められない!と言うより、
    淡々と無理のない速さで歩いているから、ついいつもより長く歩いて遠くまで来てしまった、という感じ。

    無性に空港に行きたくなったし、飛行機に乗りたくなった。
    空港と空の上の空間は、確かにあの世とこの世の中間みたいだなと感じていた。

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    2024年09月30日
  • 御社のチャラ男

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    タイトルからして少し笑えるようなストーリーをイメージしがちだけど、凄く重たい内容の連続だった。
    人が大なり小なり持つダークサイドを巧みな表現力で赤裸々に語る短編?の積み重ね。分からんでもないけど、もう少し楽観的に、楽しいことを考えてみようよ、そんな気持ちで読み進めた。

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    2024年09月21日
  • 御社のチャラ男

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    日常のちょっとしたモヤモヤ感を言葉として明確に描くのは上手だと思う。お話しとしてはモヤモヤしてしまうところがどうだろう?

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    2024年09月01日
  • 沖で待つ

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    忘れていた新人時代を思い出し、自分にとって大切な経験だったのだと思い至る。
    芥川賞受賞作の表題作の前に「勤労感謝の日」が置かれているが、この順番で読んだことで、それぞれの面白さがより味わえたような気がする。

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    2024年08月31日