絲山秋子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
この小説は間違いなく「道中」が面白い小説でした。
人は誰しもいずれは死という結果に行き着くものだし、そこに至るまでの道中に意味を持たせる必要はない。滑走路を走っているうちにいつかふわりと離陸していくものなんだと思った。
作中で解決されない謎があるが、それはたまに思い起こす昔の消化不良の恋みたいなもので、自然と過ぎ去ってまたいつかふと思い出すことがあるだけ。結局のところ他人は他人で、人間は他人の考えなんか真には分からないんだよな、とそんなことを思う。このほろ苦い実感を噛みしめるのもこの作品の価値なのかもしれない。
しかし、物語の中に生きていた人物たち全員にいつの間にか愛着を持っていた。だ -
Posted by ブクログ
ネタバレ最後が少し怖かったぐらいでイマイチよくわからなかった本だった。
物語も浮浪者みたいな主人公が自分の人生を語り口調で淡々と話しているみたいな内容。
内容自体もまぁ太陽が頻繁にでていたり昔関わった女性の話が度々出ていることから、過去の場所や出来事に囚われていないように見えてるが、本当は誰よりも囚われているんじゃないん?と思った。
そう考えると最後の主人公の行動が今までの逃亡者のような人生を、最後に本当に逃げないといけない出来事を起こすのをきっかけに逃亡生活みたいな人生を終わらせるためだったんじゃないかと思い少しだけ主人公の気持ちがわかった気がした。 -
Posted by ブクログ
「神と黒蟹県」がよかったので、同じ作家さんの本を。短編が3本、どれもサクサク読めました。
「勤労感謝の日」働く女の疲労と怒りとカッコよさと情けなさが全開。毒が効き過ぎな女子会、罵倒がキレッキレで笑っちゃう。女性総合職の第一世代。「働きマン」よりひとまわり上な感じかな?
「沖で待つ」会社の同期、という関係を特別なものとして描く。こんなふうにいろんなものを超えた関係になれるもの?
おしごと描写がリアル。あと、男のポエムが地味にリアル。三代目魚武さんとか、「一生一緒にいてくれや」とか、一時やけに流行ったあの空気。ただ「沖で待つ」というワードのかっこよさは頭ひとつ抜けてる。さすが。
第134回芥川 -
Posted by ブクログ
架空の『微妙に』『地味』な県、黒蟹県を舞台にした連作集。
癖の強い市長がいて、地域同士の確執があり、めんどくさい地域もあればこれといった特徴もない地域もある。
移住してくる人、生まれた時から住んでいる人、一度出て行ってまた戻ってきた人、様々な人がいてその中に神が交わる。
架空の場所や物と実在の物が交わるように、人々の人生のリアルな部分と神のとぼけた部分が交わる。
先の話に出てきた名前だけの登場人物の物語が後に出てきたり、脇役で出てきた人が後に主人公となって描かれたり、様々な視点で楽しめるのも連作集の楽しいところ。
黒蟹県の様々な地域の様々な人たちの物語が多視点で楽しめた。
時折出てくる神 -
Posted by ブクログ
「いつか君に出会って欲しい本」で紹介されていたので読んでみる。短編が3作。
2本目がタイトルの「沖で待つ」
新卒で入った住宅関連会社の同期の男女、営業所は離れたり、片方は結婚するものの友情は続きどちらかが死んだら「パソコンのHDDを壊す」約束をする話。
新卒で入った会社で同期とワイワイやっていた事は、私もとても楽しい記憶の1つで、その頃を思い出したりして楽しい。間違いなくそれも青春の欠片だと思う。この約束の話は聞いたことがあり、この本読んだことあったっけかな?とログを見直すも無い、なんだったかな。
さんさくめは、ひらがなばかりでよみずらかったのでななぺーじめで、よむのをやめた。
1作目 -
Posted by ブクログ
ネタバレ人のゴールは死しかないもんなと、(悲観では無く)静かに受け入れられる本。
結局、人の「真実」なんて確かめようが無い。
あるのは、誰の目から見ても確かな死だけ。
こう書くと、ものすごく暗くて陰惨な物語のようだけど、読み口は不思議なほど重たく無い。
わりとボリュームのある本だけれど、他の方の感想にもある様に一気読みさせられる。
面白くて面白くて辞められない!と言うより、
淡々と無理のない速さで歩いているから、ついいつもより長く歩いて遠くまで来てしまった、という感じ。
無性に空港に行きたくなったし、飛行機に乗りたくなった。
空港と空の上の空間は、確かにあの世とこの世の中間みたいだなと感じていた。