絲山秋子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
アウトローな雰囲気を醸し出す主人公は、左翼運動から身を退いた40の男。ぶらりと訪れた京都でコスプレ神父に出会い、・・・という小説。
1966年生まれが生き抜いた時代とか政治セクトとか革命というのは、'80s生まれの自分にはいまひとつ・・・というより、全く想像が及ばない。彼らなりの青春のかたちなのかな、くらいにしか受け止めていないが、間違っているかもしれない。
文体がぶっきらぼうで主人公も何となくぶっきらぼう且つアウトロー。だけど、話が進めば進むほど、かれが 現実世界に絡め取られていくようで安心する反面すこし寂しい気がした。長年探していたレコードを聞き終えるとともに「ひどく蒸し -
Posted by ブクログ
絲山秋子の文体や作品の中に充満している空気感、曇り空からほんの少し覗く太陽の光のような、好転の兆しが本当に好きだ。
大きな波が岩肌にぶつかって割れて散るような激しさはないけれど、密閉容器に煙がどんどん立ち込めていくような、静かな圧迫感が凄い。
本の薄さからも分かる通り、言葉は少ない。
けれども、こちらに投げられる野枝という女の、世界に対する期待感の無さや虚無感は計り知れないものがある。
だからこそラストに訪れる、決して派手な大団円ではない、喉に刺さった小骨が抜けるような小さな解放が沁みる。
これからずっと幸せだろうという予感ではなく、とりあえず明日は大丈夫だろうというくらいの幸福感を描くの -
Posted by ブクログ
感情は抑える必要もない。音楽のように豊かに溢れ出せばいい。悲しみも、喜びも、ときには怒りだって。たまには踏み外したっていい。(本文より)
群馬のローカルネタ、ラジオの現場の描写が新鮮。
なじめない、なじまないでやってきたローカルFMでパーソナリティを務める30代の主人公、新しい土地で出逢う人たちとのやり取りで、良い感じにこれまでのスタンスが乱れほぐれる。基本的・根本的に改めたり省みたりするようなものではなく、これもいいかもしれんくらいのもの。
そうそう変えられるものでもない自分のやり方や人づきあいの癖ってあって。誰かに意見されることもないし、もういいねんって、思ってたもんが、ちょっとしたき