【感想・ネタバレ】ラジ&ピースのレビュー

あらすじ

自分は醜いというコンプレックスを抱く野枝(のえ)は、実家を出て群馬県のローカルFM局で人気番組を担当するようになる。誰からも干渉されない自由に閉じ籠もる野枝だが、その心の隙に気さくな方言で話す女医の沢音(さわね)が入り込み……。横浜と会津出身の二人の女性の呼び合う心を描く「うつくすま ふぐすま」を併録。(講談社文庫)

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Posted by ブクログ

初めて読んだ絲山秋子さん作品。自分にコンプレックスを抱えていて他人を警戒して鬱々とした主人公の描写に、最初はリアルで読んでいると重たい気持ちになってしまいました。
しかし中盤以降は、自然に付き合えるリスナーとの交流が始まったり、行きずりでなった友達に対して自分を出すようになったり、少しずつ楽に生きていく道が拓けていくような展開にすごく惹き込まれて良かったです。

絲山秋子さんご自身が、東京出身ながら地方都市を転勤しながら暮らされていたご経験があるとのこと。地方都市ならではのローカルな暮らし、人間関係、町の少し寂れた部分など、リアリティのある世界観も見事でした。
他の作品も異った地方都市が舞台のものがいくつかあるそうなので、ぜひ読んでみたいです。

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2021年06月13日

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「ラジ&ピース」もっとも好きな絲山秋子の小説である。

女同士の友情の話だ。そして場所が移えば壊れてしまうような簡単な。
しかし,女性同士も,男とも,一目で「友人だ」とわかることがある。不思議なその思い込みが,世界を広げることもあるとのこと。

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2013年05月13日

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表題作と「うつくすま ふぐすま」の2編。

自分のコンプレックスの端っこが引っ掛かるし、読み流してると研ぎ澄まされた言葉がストレートにぶつかってきて、痛いし。
なんでこんなに面白いんだろ。

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2011年11月19日

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この本を大阪の本屋で買った。翌日に京都の嵐山へ行く途中の車中で読み始め、帰りの車中で読み終わった。あっというまに読めた。面白い。「水たまりに落ちたレシート」と主人公が自身のことを思っているとある。この表現方法に惹かれた。この主人公が田舎町で人と関わり、積極性を獲得していくはなし。自分に訪れる色々な機会に正面から向き合っていくことで、人生が開けて行くんだと読後の感想(教訓)を得られた。

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2011年11月15日

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絲山秋子のラジ&ピースを読みました。

相馬野枝は25歳から六年間続けた仙台のFM局から群馬のFM局に転職します。
そこでラジ&ピースという番組のパーソナリティーを始めます。
野枝は番組で見せる顔とは違うかたくなな素顔をもてあましています。
そんな野枝は朗らかで無防備な女医の沢音と出会って時々会うことになります。

自由に生きる女性の生き様が淡々と描かれています。

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2017年01月21日

Posted by ブクログ

昔から人と関わるのが苦手で、今では人に心を開くことをほとんど諦めているアラサー女性の新天地での物語。そこで出会い、されるがままに付き合いを続けるも気を許していなかった沢音に対して野枝が初めて心を開く場面が個人的にとても良かった。カーチェイスって言うの?猛スピードを出して追い越したり追い越されたりしながら車を走らせる。互いに自分の車の中という別の空間にいて当然言葉も視線も直接交わることのない状況でありながら、そのうち感情が高揚し気がついたら心を通わせていたーー。こんな心の交わし方もあるんだって心の底から驚いたし希望も感じた。何がきっかけで友情が芽生えるかって本当に分からないものだし、対人関係でひどく悲観的になることはないのだなと自然に思うことができ、とても気分がいい。

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2016年10月08日

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東京で生まれ育ちながら東京嫌いのラジオDJ、野枝。仙台でDJをした後、思い立って群馬のラジオDJに。医者らしくない医者の沢音、リスナーである「恐妻センター前橋」、群馬・高崎でのいくつかの出会いの中で美丈夫(本当の名前は忘れたらしいが)という過去にいた唯一の彼氏の存在も徐々に薄まり、今の自分を受け入れられるようになっていく…。
何かに雁字搦めにされたように精神の殻に閉じこもっていた野枝が、群馬の街(高崎だったり前橋だったり)や群馬の人々の等身大の姿に感化され、次第に凝り固まったものが溶けていく感じ、なんだかスゥーっとする。
絲山作品には妙な男っぽさがある。この小説の主人公は女なんだけど、とことん無愛想。どこか荒っぽい登場人物、だけども読後感がなんとも優しい気持ちになるのは、主人公は所謂"ダメ"な人、そしてその"ダメさ"を全否定しないところかもしれない。

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2013年01月22日

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人と人の距離感がいい感じ。読んでて心地良いのは、作者と登場人物との距離感も同じように保たれているから、かな?

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2013年01月26日

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装丁の爽やかさをあっさりと裏切るエッジの効き具合。
一見冷めている様でいて、どこか温かい独特の雰囲気。
突き抜けた突き放し加減?に思わず噴き出してしまったり。
人との距離感てほんと難しい。

業界の裏話やリスナーとのやりとり、ローカルネタも面白かったです。
読後感よろしいです。

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2012年08月03日

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ネタバレ

自分で捨てておいて、
それなのに気づけば焦がれて
奪われていたりする。

我を通すのも、力むのも大変。

とじこもるのは簡単。
でも少しだけひらいてみると、
なんだか気持ち良い。

昨日と同じ景色なのに、晴々していたりする。

「ラジ&ピース」
「うつくすま ふぐすま」
の二編が収められています。

自意識とコンプレックスを盾に、
世界とフィルターを通して向き合う野枝。
ラジオのパーソナリティを田舎でしている野枝。
そこに優しい姉さんみたいな女医の沢音が加わり。

あいつもこいつも厭になる。
触らないで、近寄らないで、悪意や打算しかないから。
そーゆーの面倒だから。

誰でも持っている感情を少し強めに押し出す野枝が、
ラジオをしているのは
やっぱり繋がりたいからなんだろうなあ。
なんか繋がって
届けて、届けてもらって。

日常が少しだけ変化する時間を描いている「ラジ&ピース」

そして、
パンチの効いている「うつくすま ふぐすま」
同姓同名の友情。
女の友情。
ちょっとだけ恋心に近いもの。
狂人と変態ばかりの世界なんだもの。

男に対してバッサリいく感じは、
たぶん女なら少なからず共感すると思います。
だから男性にはおすすめ出来ません。苦笑

男に脳味噌はいらない。なんて、ちょっと憧れちゃいます。笑

装丁は綺麗で可愛いのに、内容はピリっとスパイシーで
読後は良いです。

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2013年11月25日

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ネタバレ

自分の殻に閉じこもりがちな主人公が、群馬でのラジオDJの仕事を通して、少しづつ、周りに心をひらいていく。DJをしている時とその他の時のテンションの差がちょっと笑えるけど、自分も案外そういう所があるなあと思う面もある。

際立って劇的な場面があるわけではないけど、じんわりと展開していくこういう話は好きだ。

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2012年01月03日

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自由の不自由と自由の孤独が、ラジオ番組の進行と録音ブースの外でのぎこちない生活との対比で浮き彫りにされる。
表題作はこれまで読んだ絲山秋子の作品の中でベスト。

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2012年01月02日

Posted by ブクログ

表題作を読み終えて、何故か、
自分もにっと笑ってました。
併録の短編も潔くて心地よい。
好きな作家さんなので評価は、
ほんの少しだけ贔屓目です。

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2011年11月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

*引用*

オトコに脳味噌はいらない。
 百歩譲ろうか。脳味噌だけでもホルマリン漬けにしたくなるような、常軌を逸した賢さならいい。でも、なかなかいないでしょう、そんなひと。凡庸でしょう、あんたもその前もまたその前も。つまり私とつきあう大抵のオトコは。少しお利口なら友達になって一生つきあった方がいいじゃない。オトコなんてあれよ、どうせ飽きるんだから。三年もったら大したもの。何に飽きるか。それは何のためにつき合うかと一緒。つまりセックス。べたべたして好きだの愛してるだのぐじゅぐじゅ言うこと。でもね、セックスとお利口は両立しないの、殆どの場合。オバカにならないとあんな恥ずかしいことはできないの。おわかり?

―― 『うつくすま ふぐすま』 p.148-149

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2012年01月27日

Posted by ブクログ

さて困りました。何と書けばよいのか?
こういう時はネットの書評を読んで、同感できる言葉を拾い集めてみる事にしましょう。

◇こんな魅力的な不機嫌は絲山さんの得意技のひとつだ。
◇なんか愛想は悪いがなかなか気の利いたつまみをだしてくれる飲み屋みたいな小説。
◇はっきり言って、野枝は、お近づきになるのは遠慮したくなるほどの『嫌な女』なのだが、これぞ絲山秋子の筆の凄いところで、いつのまにか物語に引き込まれ、野枝に好感を持ち、応援までしている自分がいた
◇日差しの中で少しずつほぐれていくような野枝のほんのわずかな変化が作品に温かみを加えていきます。

自らの殻にこもる孤独(引きこもりとはちょっと違う)みたいなのが絲山さんのテーマなのでしょうかね。それが少しほぐれるのだけど、ほぐれ切れないところが”らしさ”のようです。

◇削りに削ってエッセンスを抽出していくような1冊を愛読者としては次も期待
◇軽やかな文体は選びぬいた言葉だけで構成され、心血を注いだあとがうかがえます。

あまり気にしたことが無かったけど、確かに質の高い文章です。書いたものを後から削って行ったというより、最初から言葉を選び抜いて書いている感じですね。

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2016年07月30日

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自分を醜いと思い込み、意固地になっていた野枝。現実世界では他人とつながることを拒否し、ラジオ局のスタジオの中でしか息ができない。例えば、気の置けない友人と一緒になって笑いたいが、どういう顔をして笑ったらいいのかわからない。そんな彼女が、群馬という土地で、少しずつ変わる物語。
併録された「うつくすま ふぐすま」この表題の意味が分からないのは私だけ?

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2017年09月09日

Posted by ブクログ

 あまり印象に残らなかったけど、嫌いではない。たぶん時間をおいてまた読んだら新たな発見があって、その都度好きになり、最終的に気に入りそうな本の予感はしたけど、それくらいの感じ。

 表題作の野枝のサバサバした感じ、世間に期待していない感じがちょっと好きだな~っていうのはある。沢音とは正反対のタイプなのに、気が合ってしまう感じもなんかわかる気がする。わかるけど、よくわかんないや。

 誰もがここにいる。ここに存在するっていう感覚が大切で必要なのかな。

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2017年08月06日

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相馬野枝32歳独身。FMラジオのDJ。
自分の容姿に強烈なコンプレックスを抱き、極端なほど他者との距離を保つ彼女が、唯一自分を解き放てるのが自らパーソナリティを務めるラジオ番組。
仙台から群馬のFM局に転職した彼女が、半ば強引にできた女友達やリスナーとの関わりの中で、ほんの少しずつ自分を肯定していく・・・という標題作は、本当にFMラジオの番組を聞いているかのような孤独な心地よさ。
群馬の小ネタ(高崎人は前橋人が嫌いとか・・・ホント?)も随所にはさまれクスッと笑える。

併録された「うつくすま ふぐすま」は、短いながらスカッと晴れた空を感じさせるキレのいい作品。
生ゴミのようだと感じる男とずるずる切れずにいる中野香奈(下から読んでもナカノカナ)が、もう一人の中野香奈と友達になり、違う世界を知ることできっぱりと別れを告げる。そのシーンがもう最高。
ーー雲がみるみる晴れてきて日が差しこんできて、一斉に蝉が鳴き出したような嬉しさだ。誰にでも屑みたいな過去はある。でも私が忘れてしまえば、そいつは消える。なかったことになる。ーー
なんと爽快!

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2017年04月01日

Posted by ブクログ

他の本より地の文があっさりしていて、主人公の内面もガシガシ消しゴムで削られた跡だけがある。
つまりは測りかねた主人公の変化が、大きいものなのか小さいものなのかわからなかった、それが読みのせいなのか作品の性質なのかもいまひとつ確信できない。

「うつくすま ふぐすま」も、収録。

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2016年10月06日

Posted by ブクログ

絲山女史の作品を
追っかけているわけでないし
すべてを読んだわけでもないけれど
基本的に病んでいるものが多い。

そうじゃない絲山女史を読んでみたい
今回は特にそう思った。

そう思っていたら
オマケの一編『うつくすま ふぐすま』はかなりいい。

『逃亡くそたわけ』に出てくる

"亜麻布二十 エレは上衣一着に値する"

といい、
女史は言葉を切り取るのがとても上手い。

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2014年06月10日

Posted by ブクログ

おのれの弱さが他人の目には強さであるように映ることがある。
なぜかといえばその強さとは、弱さを覆い隠し守るための鎧のようなものだからだと思う。
でも内心、その鎧の重さに辟易していたりする。

『ラジ&ピース』も『うつくすま ふぐすま』もそんな短編で、少し乱暴にまとめると30代の女が武装解除するという話。

あまりにすとんと変化が訪れるので、ちょっと物足りなかった。

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2013年06月24日

Posted by ブクログ

あまりにも読みやす過ぎて、内容が訴えてくることを意識しているのに通過してしまったかのような、そんな読後感さえ。「うつくすま ふぐすま」のような痛快譚の方が、著者の持ち味が現れていて面白かった。

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2013年06月14日

Posted by ブクログ

「世の中には、狂人と変態以外いません」な話。

絲山さんの本を読むとそんな気もしてくる。

東京に近い中途半端な田舎では
ラジオはNHK以外満足に聴けなかった。

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2013年03月17日

Posted by ブクログ

ラジオ好きで、毎日ラジオを聴いている私のようなヤツには、よく響く作品。頷けるところ多し。率直。何ということもなく過ぎていく日常のひとこまを、気まぐれに切り取って、ほいっと目の前に差し出されたような作品。

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2012年11月09日

Posted by ブクログ

なんか心が痛くなる『ラジ&ピース』。それは思い当たるところがあるからなのか、頑なな不器用さに共感出来ないからなのか。
走り屋さんの女医と出会って前向きになっていく姿を友達のように応援。

それとは対極にスカッとした『うつくすま ふぐすま』
こっちは男なぞ待たぬよ。育てそこなった男なんて、寝て起きたらポイです。爽快。

『えび学の人びと』が実在することに笑ってしまった。

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2012年09月01日

Posted by ブクログ

「うつくすま ふぐすま」の「なかのかな」が可愛い。微笑ましく心癒される。他方、もう一人の「なかのかな」は正反対だ。「男と別れるっていい気持ちだ。雲がみるみる晴れてきて日が差し込んできて、一斉に蝉が泣き出したような嬉しさだ。別れたらエネルギーは自分のことだけに使える。全部前向きに使える。」冷徹で容赦がない。別れて「どこまでも爽快」だなんて言われないようにしたい。

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2012年08月03日

Posted by ブクログ

絲山秋子の文体や作品の中に充満している空気感、曇り空からほんの少し覗く太陽の光のような、好転の兆しが本当に好きだ。

大きな波が岩肌にぶつかって割れて散るような激しさはないけれど、密閉容器に煙がどんどん立ち込めていくような、静かな圧迫感が凄い。
本の薄さからも分かる通り、言葉は少ない。
けれども、こちらに投げられる野枝という女の、世界に対する期待感の無さや虚無感は計り知れないものがある。

だからこそラストに訪れる、決して派手な大団円ではない、喉に刺さった小骨が抜けるような小さな解放が沁みる。
これからずっと幸せだろうという予感ではなく、とりあえず明日は大丈夫だろうというくらいの幸福感を描くのが、絲山秋子は天才的に上手いと思う。
そしてそんな幸福が、野枝のような不器用で、人との距離も上手くつかめない人間を一番豊かにしてくれると知っている。

今作でも、ラストに近づくごとに自分がいかに身体に力を入れて生きていたか、思い知らせてもらった。
肩に食い込む煩わしい荷物を下ろせても、それでもやっぱり日々の孤独は変わらない。
けれど、このままでいい、何も無理に分かってもらおうとしなくてもよい、ここにいたらいい、怯えることはない、誰に命を取られるわけでもない、とそんな風に思えるだけで、そこは住みやすくなるし、リラックスできる場所になる。
そうしたらまた明日を迎えてやればいい。

絲山秋子の小説は、負のものでいっぱいに膨れて、少しでも激しく動いたり突き飛ばされたりしたら破裂しそうな私の身体に、いつも細い針で穴を開けてくれる。
悪いガスが抜けていく速度はとてもゆっくりだが、いつか確実に抜けるだろう。
そんな予感を、この本もまた私に与えてくれた。

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2012年04月18日

Posted by ブクログ

表題作は、あんな風にともだちになれるのかなって思った。
うつくすまふぐすまは、うつくしまふくしまってことかな。

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2012年02月05日

Posted by ブクログ

感情は抑える必要もない。音楽のように豊かに溢れ出せばいい。悲しみも、喜びも、ときには怒りだって。たまには踏み外したっていい。(本文より)

群馬のローカルネタ、ラジオの現場の描写が新鮮。
なじめない、なじまないでやってきたローカルFMでパーソナリティを務める30代の主人公、新しい土地で出逢う人たちとのやり取りで、良い感じにこれまでのスタンスが乱れほぐれる。基本的・根本的に改めたり省みたりするようなものではなく、これもいいかもしれんくらいのもの。

そうそう変えられるものでもない自分のやり方や人づきあいの癖ってあって。誰かに意見されることもないし、もういいねんって、思ってたもんが、ちょっとしたきっかけで、ふわっとほぐれて緩まる瞬間って、爽快やし人づきあいの醍醐味って感じがする。

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2012年01月08日

Posted by ブクログ

表題作〝ラジ&ピース〟の主人公は、32歳の独身女性。孤独癖のあるひねくれ者なのですが、読んでいてぜんぜん嫌な気を起こさせないのは、絲山さんの文章のなせる技ですねぇ。むしろ、主人公の気持ちに共感させられてしまいます。孤独というのが、良くないこととして受取られるようになったのは、いったいいつ頃からなのでしょう?孤独に馴染むことも、人として大切なことだと思えますが・・・。
併録されている〝うつくすま ふぐすま〟は、恋人よりも友達が大事という、ちょっぴり高慢で我侭な女性が主人公です。自分の恋人のことをケチョンケチョンに評価するので、読んでいてたまらない気持ちになりますが、どちらも不思議に晴々とした余韻に浸れる作品でした。

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2011年10月31日

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