あらすじ
恋愛とは雑用である。不要でなく雑用である。忙しいときに限ってオトコというものが現れる(「恋愛雑用論」)。ピアノを弾く姉、テレビに出る母、未知の言語を学ぶ父。何もないのは私だけ。あの発作が起きるまでは(「忘れられたワルツ」)。想像力の突端から、震災後を生きる者たちの不安/不穏を描き出す、絲山文学の極北七篇。
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タイトルはリストの「忘れられたワルツ」から。短編集。
なんというか絲山さんの作品はどれもそうだといえばそうだけど、一見普通で、でもこんな小説は読んだことないっていうのばかり。特に「NR」と「ニイタカヤマノボレ」は凄味があった。
どちらもあらすじだけだと都市伝説的な要素が強いんだけど、都市伝説ってそもそも人々の不安や不満が形になったものという説もあるから、全体に充満する、今の時代の言葉にしにくい不安がこういう物語の形を作るのかなと思ったり。
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表題作ほか7編の短編集。2.11から2年後に出版、全話でさりげなく震災について触れています。ウィットに富んだ文章は飽きさせず筆力の確かさを感じ、読解が追いつけない所もありましたが短編ながら濃い作品でした。「恋愛雑用論」「強震モニタ走馬燈」「葬式とオーロラ」「ニイタカヤマノボレ」「NR」「忘れられたワルツ」「神と増田喜十郎」
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オーロラを運ぶ女と遭遇する「葬式とオーロラ」、見ず知らずの駅に降り立ってしまう「NR」が面白かったです。え、いつの間に非現実に入り込んだのだろうという不思議な世界観でした。一風変わった人たちの人生の一場面を垣間見るストーリー。少し辛い過去を抱える登場人物の不穏な空気の中にも、ふと笑える会話もありで、そうか、そうだったと、所々共感してしまう。ヤンキーとチャラ男の違い、ブリーフとトランクス論。
ほんのり震災の要素が絡まっている。過去と今とは違う、もうふつうなんてなくなった。5年後のふつうなんて想像できない。そうだな・・。
直接的ではないのに、後でふわりと響く独特な雰囲気でした。今日の地元紙、日曜の本の紹介の頁に著者の紹介が載っていた。なんという偶然。
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意味がわからなければ、わからないままに、読めばなぜか懐かしを覚える絲山秋子さんの作品です。独立した7話が収録されています。「忘れられたワルツ」、2013.4発行。どれも味わい深いです。絲山さんですから、車、煙草、病の話はしっかりテーマになっていますw。私は、第3話「葬式とオーロラ」、第7話「神と増田喜十郎」が気に入りました!
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絲山秋子の本は何冊か読んだ。いずれも少し不思議な感じがある世界なのだが、本書はかなり幻想的な特色を持つ。
意味のわからない話やメタファーもあるが、意味を探りたくなる深みがある。
東日本大震災の後に書かれた短編集と知り、なるほどと意味を了解した部分もある。
不穏さ、もの悲しさに浸るような作品も、どこかユーモラスでそれがシュールに思えるのがこの作者の持ち味だろう。
描写は極端に省略され、それでも情景が浮かぶ。上手い。
読書会の課題だったのだが
・忘れられたワルツ
・ニイタカヤマノボレ
・神と増田喜十郎
この三編がとても気に入った。
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短編集。
震災が共通項となっているが、正面からそれを描いているわけではない。
どの物語にもどこかにあの3.11の影が現れる。
しかし、タイトルの「忘れられたワルツ」は、よくわからなかった。妹は精神的におかしくなってしまっているのだろうか。姉と母はもういないのだろうか。
そうだとするととても悲しい話だったが、一番印象に残った。
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久しぶりの絲山作品。
なんだか不思議な後味の短編ばかり。
でも、はっとするフレーズがどれにもあって、
色んな名前のない気持ちを起こさせる。
とても好みの短編集だった。
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どれもよかったけど、
最後のやつ、特によかったなぁ。
どれもこれも絲山秋子らしさがよく出ていて、
静かでも激しく人間らしさで満たされているような作品ばかりだった。
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絲山さんにしてはファンタジー色が強かった気がした。現代をうまく取り入れて話がかかれてるから、絲山さんの文は読みやすいー。私は絲山作品は短編より長編好みだな、と思った。
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やばいやつ。帯で伊坂さんが、天才のふりじゃなくて本物って言ってたのに、おーっと思ったけど、それ以上に1頁めをひらいて惹かれた。
透明なひとだと思った。棒読みじゃないけど、淡々としている。恋愛で話が始まるのに、最後は地震や災害の話だった。他のも最後は地震。あのあとに書いたからだとは思う。
すごかった。ふつうに見えるからうっかりするけど、これはたぶんやばいやつ。いつのまにか染み込んでとれない痣みたいな。けっこうすきだけどね。笑
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どの一瞬も決定的であることに間違いはないけれども、やはりそれでもその前後とでは決定的に地球がずれてしまうようなできごとが存在する。その出来事のあとには人々は今までの地球とは別の場所で生きていかなければならない。その違和感、喪失感を静かにすくい取って描いた作品。すばらしい。
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恋愛は雑用だと言い切るアラフォー女性 金子の「恋愛雑用論」、強震モニタばかり眺めている魚住と井出(美人)…女2人のパジャマパーティー的な「強震モニタ走馬灯」、恩師の葬式へ向かう巽とオーロラを運ぶ女性の一瞬の交流を描く「葬式とオーロラ」、理屈っぽい彼氏にアスペルガーと指摘される女性の「ニイタカヤマノボレ」、見たことも聞いたこともない駅から帰れない(ノーリターン)になってしまう中年サラリーマン2人の「NR」、ストレス性の痒みの発作に襲われる風花の「忘れられたワルツ」、齢七十を超えて女装の鍛錬を積んだ増田と退屈しきった神の「神と増田喜十郎」。
相変わらず、よく分からない世界観です。共通テーマは震災かな。
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短篇が7つ.どれも登場人物はわずかだが、それぞれ特異な個性を持っている.小利口くん、魚住、巽と出会う女性、峰夫、津田、風花、増田喜十郎.読んだ後、何故か内田百閒の”冥途”を思い出した.少しぞっとするのが似ているからかな.
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淡々と進んでいく文章の中に、ドキッとするほど深いものがある。震災以降、また大きな「何か」がやってくると仮定しての話もあって、少し背すじが寒くなった。しかし文中の人物は、そのことを神の仕業として静かに受け止めている。
表題作「忘れられたワルツ」は、ちょっとよく理解できなかった。「ニイタカヤマノボレ」と「NR」が好き。
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よいです(*^_^*)
短編集なので、サクッと読めます。
それにしても、ムダがないというか
作品の描き方がとっても上手いです。
他の作品も読みたくなりました。
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これは良かった。どれも不思議で不穏な味付けで、でもそういう場合に得てしてありがちなようにどれも似通っているというわけでもない。NRや忘れられたワルツの怖さ、神と増田喜十郎のペーソス。
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久々に読んだ、絲山秋子。
たぶん私は、この人の意地悪さ加減が、好きなのだな。
前半は割とコミカルな展開の話が多く、後半は、ちょっと変わった人が出てくる話が多いようだ。
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2011年から2012年頃に書かれたようで、作者の震災後の複雑な気持ちの変化が感じられた。
絲山さんの感性か高尚すぎて
私には
理解や共感が追いつかず。
伝えたいメッセージが
わからないまま。
Posted by ブクログ
知人にすすめられた一冊。短編集です。
恋愛雑用論
強震モニタ走馬燈
葬式とオーロラ
ニイタカヤマノボレ
NR
忘れられたワルツ
神と増田喜十郎
少しずつ東日本大震災が絡んでいた。
どの話にもこれといったオチがなく、カットアウトするように終わってしまうのですが、そこがまたこの短編の世界をつくりあげているのかなぁ。
すでに内容うろ覚えなのですが、葬式とオーロラが良かったかな。恩師の葬儀にむかう途中、高速道路のSAで出会った女性。彼女はトラックでオーロラを運んでいると言った。
Posted by ブクログ
どこかシュールな7話が収められた短編集。
冒頭いきなり「恋愛とはすなわち雑用である」と言い切った一文で始まる『恋愛雑用論』。
雑用でしかないけれど決して不要ではない、というのがミソである。
日下部さんと金子くんの掛け合いのような会話が笑える。
社長の言う通りお似合いの二人だ(日下部さんは怒るだろうけれど)。
また「離婚したから遊びに来ませんか」で始まる『強震モニタ走馬燈』も良かった。
新年早々、このたった一行の年賀状を寄越した女友達はとにかくマイペースで、暇さえあれば強震モニタを見ているという変わり者。
けれど悩みだろうが悪口だろうが筋が通っていようがいまいが、何を言っても否定しない。
こんな友達いいな。
今日も一人でモニタ監視をしているであろう彼女に、是非とも凹んだ時に逢ってみたいものだ。
東日本大震災の後に書かれた短編達。震災について直球で書かれず、読んでいる内にあの震災のことだと分かる感じ。
特に表題作は、初めは気付かなかった震災の影響に心がざわざわした。
痒いのが早く治るといいね…。
Posted by ブクログ
恋愛も雑用と一部と考えてしまう事務員と、小利口くん。
風変わりな離婚した魚住が毎晩見る地震計の揺れ。
理科の先生の葬式とオーロラを運んでると言った知らない女。
鉄塔と変だけど気の合った今は亡きいとこと別れた恋人。
ノーリターンで直帰だった上司と部下が行き着いた先。
母の浮気調査のために家を出て行った姉を案じる妹と変わった家族。
市長になった同級生を支え続け女装することになった男と神。
恋愛雑用が一番面白かったと思うけど
長い病院の待ち時間で読み進めたからか、
頭にうまく入ってこない部分もあり
たぶんこの本の面白さを全身で感じ取れていない。
Posted by ブクログ
良く判らなかったというのが素直な感想。
「震災後を生きる者たちの不安/不穏を描き出す」といった解説があり、確かに作品中に震災がチラチラ顔をのぞかせるのだけれど、別に震災が有ろうが無かろうがこんな不安/不穏は存在するので。。。
それぞれの短編は面白いのだけれど、一冊の本としての印象が薄い、そんな本でした。
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ひとが感情的になっているとき、わたしは真っ白になった脳みそを抱えて戸惑う。ひとの感情がわからないから、共感しろと言われるのが一番困る。冗談がわからないし、嘘かもしれないと思ったら相槌を打つこともできない。
(P.92)
Posted by ブクログ
絲山さんの作品に出てくる女性の恋愛観はすごく共感できるなぁと思いました。
地震にまつわるあれこれは、やはり読むと複雑な気分になってしまう。いろんな想いが入り混じって。
だから、読後の気持ちも複雑。
Posted by ブクログ
震災にまつわるような、きっかけにしつつも遠巻きにしているような、そんな短編集。当たり前にありそうで、少し不思議な要素が混じっている。でもその「当たり前」と「不思議」の境界線なんて、もともと曖昧なものだよねと、そう思わされるような一冊。最初の方の短編は、絲山さんのイメージとちょっと違うかなと思っていたのだけれど、途中から最後にかけては、やっぱり絲山さんだなと思うような感じで、あの、なんというか少し病んでいるような、危うい方に片足だけどっぷりと浸かっているような、そんな感覚。それはそれで、「ここでしか読めない」ものではあるのだけれど、この前半の部分こそが私としては面白くて、今後の絲山さんにも期待だわと、生意気にも思ったのでした。
Posted by ブクログ
結婚しない、できない女の人の話を書かせたらこの人の右に出る人はいないのではないか。女装に目覚める人やアスペルガーだと気づく女の人の話なんて、奇想天外な話。決して半沢直樹見て元気を出すことのなさそうな男の人や絶対美ST読まなさそうな女の人、そんな地方に住む普通の人々の話ににひととき現実逃避できた。
Posted by ブクログ
収録されている7編の読み切り短編はいずれも「小説新潮」(2012年3月号~2013年3月号に掲載されたもの。
彼女の小説は、その乾いたユーモアが独特なテイストを生むのだけれど、今回は震災後の世界を取り上げながら、「一人語り」の実験的な試みにチャレンジしていて、その感性が研ぎ澄まされた感が強い。
たとえば、『神と増田喜十郎』なんてすごい。なにしろ「神様」が俗人のごとく登場し独り言を呟くのだから、、、