【感想・ネタバレ】離陸のレビュー

あらすじ

失踪した〈女優〉を追って、平凡な人生が動き出す
時空を超えて足跡を残す〈女優〉とは何者か。
大切な人を喪い、哀しみの果てに辿りつく場所とは。
透徹した目で人生を描く感動長編。

国交省から矢木沢ダムに出向中の佐藤弘のもとへ、ある夜、見知らぬ黒人が訪れる。
「女優の行方を探してほしい」。
昔の恋人はフランスで、一人息子を残して失踪していた。
彼女の足跡を辿る旅は、弘の運命を意外な方向へ導いていく。

〈生きている者は皆、離陸を待っているのだ〉。
静かな祈りで満たされた傑作長編小説。

解説・池澤夏樹

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Posted by ブクログ

喪失にどう接するか、をテーマだと感じた。乃緒を失った複数の人々がどこかで接点を持ち、影響を与えあう。ブツゾウに視点をおいた作品も描いて欲しいと思った。

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2025年10月30日

Posted by ブクログ

水の番人サトーサトー。ブツゾウとアカネを見守って。離陸はまだまだ。
3年ぶりに読み返して、やっぱり凄かった。

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2024年07月07日

Posted by ブクログ

一週目ではまだ分かりきっていない感はあるけどすごくじんわりくる良さだった。
死を飛行機が離陸することで表していて、その表現がスッとはいってきた。

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2021年05月08日

Posted by ブクログ

作品ごとに色を変えてくる絲山作品において、特にこれは、ジャンルとしてミステリの範疇に入れたい一冊。巻末で絲山先生が伊坂幸太郎さんに「女性のスパイものを!」と請われて書いたということを語っていらっしゃるが、まさに堂々のエスピオナージュものである。
また文学として、語り部である主人公の佐藤だけでなく、幾つもの登場人物が、異郷の地にいることや、またときにはその人種や障害などの理由から、人生の舞台に対して、異者である。
他の絲山文学において、異者であることからのサウダージはメインテーマであり、作品の中で特にスコープされると、ぼくは思っている。この作品でも同様であるけど、物語のプロットが移りゆく構成をとっていて、(それゆえにこの作品はミステリであるとぼくはつよく感じているのだけど)観念的に傾きすぎない。観念的とは純文学なる指向だと認識してるのだけど、この作品は、エンターティメントとして絲山先生が意図して取り組んだでいる感じがする。バランスがいいのだ。谷崎潤一郎賞を受賞したが、その筆致の見事さ故に、絲山先生の作品のなかで大衆性も得ることが最も可能な一作であると感じる。高村薫以降の、文学とエンターティメントの見事な合致が見られる優れた作品としてミステリ読みに強く勧めたい。

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2018年01月31日

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へぇ、絲山さんってこういうのも書くんだ、って感じの小説だった。ダム管理の現場から始まるから、らしいなって思ってたんだけど、読んでいくうちにミステリーのような、ファンタジーのような色合いが出てきてびっくりした。時空を超え、かつパリが舞台の一つになっていることから辻仁成の『永遠者』を思い起こさせるようなところもあったり。最後まで描かれなかったような、消化不良感のある終わり方なのは残念。ミステリーとしてなら、顛末まで読みたかった。
でも、この小説の骨頂は「離陸」なのだと思う。ここでいう離陸とは「ぼくらは滑走路に行列をつくって並んでいる。いや、まだ駐機場にいるかもしれない。生きている者は皆、離陸を待っているのだ。」(p.322)ということ。これはかつて読んだ『沖で待つ』と重なるようなところがある。主人公は近しい人との別れ、死をたび重ねるのだけど、それ以上でもそれ以下でもない、人生というもののとらえ方を描いているようだ。
それにしても、死を離陸と表現するのって面白いね。彼岸とかいうように、何となく船で渡るような感覚でいたけど、向こう側へは飛んでも行けるね、たしかに。

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2017年07月29日

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絲山秋子にしては珍しくかなりの長篇。何かを解決する類いの小説ではないので、消化不良を起こす読み手もいるかもしれない‥‥とは思った。ただ自分的には、主人公・サトーサトーの人生を生きているような主観的視点が妙に心地よくてしっくりとハマった。

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2023年02月03日

Posted by ブクログ

2020末に橙書店にて購入。
大人な感じの物語。
タイムスリップなのか、ミステリなのか、全てが曖昧なままだけど、私にしては珍しく、受け止められた。
前半、八木沢、東京、四日市、フランスの場面から
後半は熊本、人吉、八代、唐津、福岡、馴染みのある場所が出てきて、入りやすかったのかもしれない。
人吉の豪雨で流失した球磨川第一橋梁や219号線を思うと残念でならない。
そして3.11の震災も消えることなく事実として残り続けるのだな、と。
離陸した人々を想いまた何年か後にゆっくり読みたい。

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2021年02月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

死を表現するのに、かつては彼岸此岸というように船旅だった。
どこへ流されていくのかわからない水の流れ。
今回は飛行機の旅にアップグレードされた。
あの広大な待機所で、多くの飛行機が離陸を待っている、というイメージもしっくりくるし美しいし、離陸した飛行機がどこへ向かうのかもわかっている。
しかしそこがつまりはどんなところなのかは、ぼくらにはわからない。
結局人間にとって生死の在り方は変わらないのだ。
変わるのは寓意を読み取る人間の側が、何に生死を重ねて理解できるか、だけだ。

解説で池澤夏樹が村上春樹のクエストものみたいと言っていて、同感。
確かに巻き込まれ型の主人公、女性関係で巻き込まれるという状況、主人公が非主体的に全体を把握するようになる次第とか。
謎に満ちた長編を書くとき、ある程度似てくるのか……。
しかし孤独感の在り方が、似ているようで異なっている。
初期ハルキ好き後期ハルキ苦手、絲山秋子は初期後期問わず好きな者としては、絲山秋子に寄って、
おじさん的な若さや幼さに対する手放しの賛意がない、という点に理由を見つけたい。

箱庭的小説、ではない。
この小説の空は高い。現実以上に。
ほんとうに、ほんとう以上に、この世界は在り、この人たちは読者と連続する空の下にいるかのようだ。
(いない人こそが重要、語り手が対面していない人物が「効いてくる」ことの小説的効能。)
再度池澤夏樹の解説に戻るが、読み終えたいま、もうみんな友達になったような気がしているからだ。

謎は謎のまま。
時間は容赦ない。
なぜなら語り手は決して「物語の主人公ではない」からだ。語り手は部外者。観察者。小説はもはや近代のロマンスではありえない。
語り手の生活は徹頭徹尾、散文的。人の生き死にすら劇的ではない。
小説中のあらゆる人物は、物語的に展開しようとする志向、読み手にとってのおもしろさなど気にせずに淡々と過ごそうとする志向、に引き裂かれるのだろうと思うが、
この小説の語り手は、ぼくは淡々といいつつ結構劇的という、このスタンスが春樹に似ているんだろうね。

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2017年09月14日

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不思議な本。
ミステリーでもないし、恋愛小説でも、ファンタジーでもないが最後は、腹落ちのする本でした。

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2017年04月16日

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 この小説は間違いなく「道中」が面白い小説でした。
 人は誰しもいずれは死という結果に行き着くものだし、そこに至るまでの道中に意味を持たせる必要はない。滑走路を走っているうちにいつかふわりと離陸していくものなんだと思った。
 作中で解決されない謎があるが、それはたまに思い起こす昔の消化不良の恋みたいなもので、自然と過ぎ去ってまたいつかふと思い出すことがあるだけ。結局のところ他人は他人で、人間は他人の考えなんか真には分からないんだよな、とそんなことを思う。このほろ苦い実感を噛みしめるのもこの作品の価値なのかもしれない。
 しかし、物語の中に生きていた人物たち全員にいつの間にか愛着を持っていた。だからこそ彼ら彼女らが「離陸」していく事実をなんとなく他人事にはできなくて。読み終わったあとも、思い出すのはその人たちの存在である。私は彼ら彼女らと親しくなったのだ。だから離陸を見送る私は少し寂しいんだ。

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2025年07月07日

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ネタバレ

人のゴールは死しかないもんなと、(悲観では無く)静かに受け入れられる本。
結局、人の「真実」なんて確かめようが無い。
あるのは、誰の目から見ても確かな死だけ。
こう書くと、ものすごく暗くて陰惨な物語のようだけど、読み口は不思議なほど重たく無い。
わりとボリュームのある本だけれど、他の方の感想にもある様に一気読みさせられる。

面白くて面白くて辞められない!と言うより、
淡々と無理のない速さで歩いているから、ついいつもより長く歩いて遠くまで来てしまった、という感じ。

無性に空港に行きたくなったし、飛行機に乗りたくなった。
空港と空の上の空間は、確かにあの世とこの世の中間みたいだなと感じていた。その様に捉えて感じている人は少なくないんじゃないかな。

読後感が静かで穏やかな気持ちになる。
人生で何回か読み返したい、いい本だった。

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2024年09月30日

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村上春樹的な訳のわからなさがある。「死とは離陸すること。みんな駐機していて、いつかは離陸する」っていうのは分かったんだけど。
訳のわからないくせに最後まで一気読みさせるからすごい。

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2022年10月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

絲山さんはこんな静かな物語も描かれるんだ、とちょっと驚いた。

突然佐藤の前に現れた黒人。
「サトーサトー」行方不明の女優を探してほしい、と語り出す。
謎の怪文書を解読しながら、謎の「女優」探しの旅が始まった。

「死」を飛行機の「離陸」に例える佐藤の言葉がとても印象的。
滑走路に向かった飛行機が息を整えるように停止し、ゆっくりと力強く滑走をはじめる。その滑走は悲しみを引きちぎるように加速していき、やがて地上を走ることに耐えられなくなりふっと前輪が浮く…。
まだ生きている私達は滑走路で離陸待ちの状態。
私もいつかみんなに見守られながら無事に離陸できるだろうか。
離陸し飛び立った後、次の行き先へは辿り着けるのだろうか…。
死とは、生とは、人生とは…思いは果てしなく続いていく。
じわりじわりと心に染みる物語だった。

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2017年10月02日

Posted by ブクログ

同性の作家さんは読んでて変に冷めたりして入り込めないので敬遠しがちだが、彼女の名前の字面が好きで手にする事がある。
なんともオチのない結末なのに腑に落ちる。良くも悪くも草食な主役が周囲に振り回された挙句、どう離陸してどこに着地するか…読後にそんな事を考えるのがおもしろい作品。

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2017年08月04日

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