【感想・ネタバレ】薄情のレビュー

あらすじ

他人への深入りを避けて日々を過ごしてきた宇田川に、後輩の女性蜂須賀や木工職人の鹿谷さんとの交流の先に訪れた、ある出来事…。土地が持つ優しさと厳しさに寄り添う傑作長篇。谷崎賞受賞作。

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Posted by ブクログ

ザラっとした気持ちをかかえながら、もどかしい日常を歩く人間たちに「べつにいい」と寄り添いながら必要な酸素を送りこむポンプみたいな小説。暗くもなく明るくもなく、数値を明らかにされない周波数の光に照らされた「薄情」という言葉を胸に、私たちはそれぞれの未来へ歩き続けるのだと思いました。

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2025年07月24日

Posted by ブクログ

田舎者を経験した者であれば、ものすごく引き込まれる小説だと思う。
漫然とやり過ごす毎日の中にも喜怒哀楽があり、それを穏やかにキープするための田舎ならではの処世術。その肌感覚で知ってるものが言語化される事にハッとなる。

主人公の宇田川。
ニヤつく癖が抜けなければ、この先仕事を継いだ後も小さな陰口に息が詰まる思いを抱えて行くのだろう。その弱さと強さが容易に想像できる程に人物描写が絶妙で良かった。
読み終えて表題が改めて沁みる。
薄情。
あぁ、そうだな。ほんとうに。

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2024年04月15日

Posted by ブクログ

感情を抑えた描き方ではあるけれど、現代の人の思い、考えていること、日常の移り変わりがよく描けていて、私の世代では「ようわからんな。。。」って思いがちな部分が、「なるほどなー」と浮き彫りになったりして、それも読み応えがあってよかったです。

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2019年10月15日

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絲山秋子の谷崎賞受賞作品の文庫化ってことで入手。しばらく文庫化に気付かなくて、このタイミングになっちった。『ばかもの』が随分好きだったけど、やっぱり根っこには、当たり前だけど同じ雰囲気を感じた。タイトルからして、薄情な登場人物が活躍するもんだと軽薄にも思っていたんだけど、主人公にしろ周りの人にしろ、あまり薄情とは違うよな、って思いながら読み進み。殆ど終わりの頃になって、一度だけ”薄情”って言葉が登場するんだけど、なるほどそういうことかって感じ。薄情に見えるけど実は情け深いというか、そんな微妙なニュアンスが作品をもって綴られていた訳ですね。本作も、流石のクオリティでした。

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2018年12月21日

Posted by ブクログ

群馬に住む中年男性のモヤモヤと日常。
「田舎」と「都会」。都市(町)の境界。
ヨソモノと地元の人の対比。良かった。

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2024年02月01日

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タイトルにひかれ手に取りました。
淡々と地味な内容ではありながらも、文章がすっと入ってきました。
主人公 宇田川の人との距離感、つきあい方、考え方に共感できたり、似てると思えるところもあり。
薄情なのかもしれないが、温かい部分ー感じる作品でした。

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2024年01月18日

Posted by ブクログ

読書開始日:2022年3月19日
読書終了日:2022年3月22日
所感
北関東、東京へ行こうと思えば行けるくらいの立ち位置。
この立ち位置も、宇田川のうだつのあがらなさを助長させていたのだろう。
行動すればなにかが変わることも、
行動できない理由なんか一つもないことも、
心のどこかで自覚しながら、日々を怠惰に過ごす。
自分と対極の鹿谷の自由生活に触れ、その人生の疑似体験を行うも、
どこかで鹿谷の失敗を望んでいた。
自分のしがみついた安定が間違っていないことを、実感したかった。
みずから実感を掴みに行くのではなく、その実感が来るのを待っていた。
ここにも、宇田川の弱さが出る。
鹿谷がいざ失敗をすることで、気づけば自分は毒に侵されていると知る。
自覚があったからこそ、横須賀の見舞いできっかけを得、ヒッチハイカーを拾ってあての無い遠出をするという行動に出れた。
なにに対しても無気力で、自分の生活、凝り固まった思考にしがみついた、薄情な宇田川が色づいた。
過去が過去になっていくのを感じる。これはいい文だなと思った。
瑞穂に対して「勝手な投影」と言い非難した宇田川がすぐさま自分もみずほに対して「勝手な投影」をしていたことにに気付いたシーンは、
かなりきつかった。
こうなると折り合いをつけるしかなくなる。
欠落してるからこそわからぬ俺の欠落。
W田中の鏡の話が思い起こされる。


さくい
ヘルパーツバメ
〇〇ではどこに日が沈む、どこから日が登る
ミレイちゃんのお父さんお母さんに会いに来たわけではなかった。俺は粟井という人間に会いに来た
あまりものを言わずに暮らしていると客観性を失う。自分の都合で考える癖がつく。
鏡、見えないものを大事にしていれば大丈夫。
子供と大人は見えているものが違う。興味ベース
怜悧
似合う、そういうのが夫婦だ
お相伴
宇田川=密度
欅は八年くるい続ける???
自己憐憫で腫れ上がった彼女の目
投影=宇田川も=鏡
欠落してるからこそわからぬ俺の欠落
ショックで寝込むなんて全部終わってからにしろよ
いつからおれは裁いてんだ
俺を選べばこんな間違いはおきなかった。でもそういうのはえらべない
ルームミラーに移した自分の顔は笑っていた
鹿谷さんのアトリエに通うものはみな、弱い毒が蓄積していた。それは自分自身を認められないことによる、狭く濁った視野からくる毒。鹿谷さんと過ごす時間によって、自分が広い視野を持つ擬似体験をするが、結局は擬似。どこかで弱い毒が、仕方に失敗しろ、地元にしがみつく安心こそが正義と叫ぶ。
安定は求めるものでしがみつくものではない。弱い毒が蓄積する。
過去が、たしかに過去になっていくのを感じた

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2022年03月23日

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もっさりヘラヘラした主人公だけど、「あーあるある、こういう感情!」という場面が多々描かれてるから嫌な主人公という印象にならなかった。もっさりしてるけど。

「当たり前」のように毎日同じ生活してて、ふと全然違う行動したくなる衝動とか、夜の田舎道を運転する何とも言えない孤独感?ワクワク感、スリルみたいなものを思い出す。ここではないどこかに行きたい気持ち。

歳をとると薄情が当たり前になってたけど、人間同士の感情の複雑さを嫌な部分も含めて明るみにしてくれた感。

あとは、田舎道ドライブしたくなる。さすが絲山秋子。BGMはくるりのハイウェイとかいいな。

映画化したらどうなるんだろう、と妄想したけどどうにも主人公が私の中でもっさりイメージなので華がないかもなぁ。でもきっと景色は綺麗そう。

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2020年02月26日

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なんか、ずっとざわざわしてたの。

景色や光の描写もストンと入ってこなくて何度も戻った。

「宇田川、おまえ大変だな。」
って、彼の状況ではなく思考に対して感じていたせいか。


そしてそして、堀江敏幸さんの解説を読んで、何度も、
「はっ!」
ってなる。

ダメだなーオレは。


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2020年02月02日

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題名と内容をつなげる癖があって、この題名をつけたのなら作者の言いたい核ってなんなのかといつも考える。主人公の性格なのか、主人公の性格を形成した土地なのか。究極、人間ってみんな薄情なのかな?とか。話の内容は田舎で起きる些細な出来事の連鎖なのだけど、思考ってそういうところから広がっていく。

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2019年08月05日

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読んだのがたぶん去年なので(どれだけ置いておいたんだ 笑)うっすら忘れかけている部分もあるのだけど…悪い言い方をすればとても地味な雰囲気の小説。だけど妙に心にずっしりと来る。
地方都市の狭さとか(人間関係の密接した感じ、噂がすぐに広まる、等)は似たような街に住む私もよく分かる。時には助けになるけれど、一方でものすごくうんざりするときも多い。都会ではなく、本当の田舎でもない。そういう独特の狭さの街。

この、薄情というタイトルがどういうところを指しているのかは、作者ではないから分からない。主人公はある意味で至って普通の青年だ。つかず離れずの人間関係を形成しながら、必死ではないものの日々食べていける程度に働いて、彼女が出来たり、そして別れたりする。
そんなどこにでもいる青年。それこそが、薄情、を体現しているのかも、とは思った。全体的に希薄な感じが。
書きながら思った。身近にもこういう人がいる、って。

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2019年04月15日

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句点を置かずに時折現れる宇田川の「どこへとも向かない気持ち」が心地よいリズムで語られるのが、この作品の印象をグッと深くする。

群馬の自然がほんのりと味わい深く、そしてマイノリティであろうとする宇田川の繊細とも形容ならない感じがバランスよく、程よく感情移入できた。

終わりにかけて『薄情』というタイトルの真意がつかめてくる。

バランス良い小説でした。

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2019年03月05日

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田舎の空気がとても的確に描かれている気がする。そして群馬県民的には、群馬あるあるが多くてとても楽しい。

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2019年02月17日

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ネタバレ

普通の人たちの普通の出来事が面白くてじゅうぶん小説になるってよくわかった。地方に暮らすこと、地方って田舎とは違う意味があると思うので、この小説に書かれているのは地方ということだろう。東京や名古屋などに一度出て帰ってきたひとは地方出身者と言いきれるのかどうか。主人公の宇田川と後輩の蜂須賀がかかわった相手と場所は東京出身の鹿谷と鹿谷の作った工房で、それは東京という大きな場所とつながっていたいと心のどこかで考えていたからじゃないか、とか思っていた。はっきりと書かれているわけじゃないし、そこはわたしの感想です。あと、恋愛恋愛してないのも良かった。そういうの読みたいわけじゃないから好感度かなり高いです。宇田川のちょっとした恋愛話はスパイスというほどではなくでも相手の女の子が面白すぎる。人間関係が興味深くてこんな風に全部じゃなくても書けるし良いと思いました。

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2018年10月02日

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なんというか、しみじみとよかった、という感じ。
文章に淡々としたユーモアがあって、するする読める。
すごく大きな事件とかはないんだけど、でも読みながらなんとなく、人間関係とか人生とか日々の暮らしとか、いろいろ考えさせられる。ラストには希望のようなものがあってさわやかな感じもして。好きだ。

主人公は、30代男性、将来は神主の職を継ぐことが決まっていて、群馬県の実家で暮らし、ヒマなときは農家の住み込みのアルバイトしたりとか、基本、ふらふらっとしてる感じで。基本、淡々と生きてる感じで。
自分にはなにかが欠落してると思っているけれども、最初からなかったものは、そもそもなにがあったのか、なにがあるべきなのか、わからない、とかいってるのには、なんかわかる、と思ったり。

地方で生まれて育って暮らすっていうのはこういう感じなんだなあとも。
舞台になっている高崎とか群馬の温泉とか、行ってみたくなる。日本の地方のどこかが舞台の小説っていいな、と思った。

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2018年08月16日

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地方に住んでいると、ふと感じる狭さだったり、その心地よさだったり、見下したくなるような、私は違うといいたくなるような気持ちになったりする。
ないないものねだりは、どこかにあると知っているからだ。外から来た人が持っていると知っているからだ。
でもないものを引き受ける覚悟もない。

絲山秋子はいつだって残酷だ。私たちが、「いやそんなつもりなかったんだ」といってへラリと笑ってみせることを指さしてくる。
でも見ないふりも、澱が積もるようで身体が重い。
だからまた、彼女の本を手に取るのだ。

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2018年07月29日

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地方都市に住む神主見習い兼アルバイターの宇多川が楽しく過ごせる工房の主鹿谷や女後輩と関わっていくのだがそんなに薄情感はない。それよりも宇多川が付き合っていた女にラブホで行為後に新しく男ができた事め振られた事でアホらしくなり笑いが止まらず、帰りは「車でなくて勝手に帰ってくれ」というのは男女関係が切れた際のお互いの薄情さが出ていたと思う。
本編には不倫とかはあるものの典型的悪党の様な存在はない。子どもを連れてきた親友に対する想いは独身男性としては頷けるがやはり大人気ないといえよう。その辺も薄情といえば薄情。

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2025年03月03日

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関東に暮らしていたことがあるので、この北関東方面の雰囲気がよく伝わる。
都会とは違う郊外都市の在りがちな話をうまく膨らませているな〜、と感心する。

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2024年02月04日

Posted by ブクログ

言葉の選び方がさすが秀逸で、言葉に言い表しにくい機微や地方の描写が手に取るように思い浮かんで飽きることなく読めた。主人公に引きづられて気持ちが落ち込みそうになったが、最後の最後で雲間から弱い光がさすように希望が持てた。理解が難しい文面もあり、また読み返して理解を深めたい。

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2024年01月08日

Posted by ブクログ


ストーリーがあるようなないような、どこか現実感のない日常を描きながらも、最後主人公の宇田川は現実に希望を見出して終わる。ぼんやりと読んでしまったが、実は緻密に構成された作品であることがわかった。もう一度読んだらまた味わいが変わるような気がする。

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2019年06月23日

Posted by ブクログ

谷崎潤一郎賞受賞作。
エンタメ作品というよりも文学性が強い作品。
兎に角、群馬、群馬、群馬。
自然、土地勘、生活の息づかいに至るまで群馬。
群馬県民読むべし。

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2019年04月25日

Posted by ブクログ

群馬とその周辺の地名が多く出てくる。群馬に少しばかり行っていたことがあるが、聞き馴染みがある地名が出ることによってなんとなくそこの世界に入りやすいような、切ない感覚を覚えるような。宇田川の感情、思考がなんとなくわかるような。
全部なんとなく、、、そんな感じ。

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2019年03月18日

Posted by ブクログ

広々とした群馬の土地感と、人間関係の狭く近しいさまが対比していて面白い。人や事を受け止めた上で受け容れない、守り維持するための薄情さがそこにはあった。(守る対象は個人だったり自身だったり、コミュニティもしくは縁そのものだったり)
距離感、視え方、がテーマなのかな。それは地方でばかりあるものではないのだけれど、舞台をそうしたことで背景の長閑さが読み心地を大らかにしてくれていたように思う。

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2019年03月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

地元、出戻り、余所者。都会への劣等感。
悪い意味だけではない、気遣いとしての薄情。
そもそも中心のない性格。
雄弁でない自問自答。句点省略で独特な文体に。
打算的な女たち。

やはりロードムービーで唐突に少年と交流を持つが、彼も忘れがたい。

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2018年09月12日

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