高橋健二のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
小説でも感じたことだが、ヘッセの悩みには自分と通じるところが多い気がする。そのためか詩も全体的に馴染みやすかった。なかでも個人的に特によくて、動揺と感動の渦が沸き起こる感じがしたのは次の5つ。
眠れぬ夜(p80)
陶酔(p150)
ある友の死の知らせを聞いて(p189)
新しい家に入るに際し(p192)
夕暮の家々(p195)
年代によって著者の悩みの種が移り変わっていることが窺えるが、終盤の詩からはついに全ての悩みを乗り越えて一つの境地に到達したという感じがして一段と味わい深い。
"そしてわれらは感じる、危きもの、人間を、
永遠なものは特別な愛をもって愛しているのを。"
(沈思 p20 -
Posted by ブクログ
ネタバレ解説に小説としてのストーリーはないが、散文詩としてのまとまりがある、と記されている。その通りで筋らしいものはない。1部はクヌルプの気障なところが見える。2部は友との哲学的対話。3部がメインだろう。この最期に感じたクヌルプの人生の決着が、この小説の最も重要なシーンだと思われる。普通の人のように、人生に対して建設的に臨めなかったが、周囲に子供っぽい笑顔を振りまくクヌルプらしい人生だった、というわけだ。
「彼は才能があったのに、何故落ちぶれてしまったんだろうか」という問いに対する答えがこの小説にある。
落ちぶれた人クヌルプ…しかし彼は落ちぶれてなどいない。
自由気ままな旅人だ。解説にはエリートより