高橋健二のレビュー一覧

  • クヌルプ

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    「早春」「クヌルプの思い出」「最期」の3編から成る。

     年上の初恋の娘に裏切られた時から、クヌルプの漂泊の人生が始まる。旅人となり放浪する彼は、自然と人生の美しさを見いだす生活の芸術家となり、行く先々で人々の生活に灯りをともす。肺を病んで雪の中で倒れ、人生を後悔する彼に、神は彼らしく生きたと語りかける。

    「早春」「クヌルプの思い出」と読み進めていて、この話の何が名作なんだろうかと、正直疑問に思った。クヌルプは、私には、わがままで厚かましく、自己中心的が過ぎるような気がした。誰もが彼を好いて、きれいな子供が屈託なく生き進んでいるかのように評し、放浪している彼に喜んで手を差し伸べている。それがなぜだか理解できなかった。
     そのもやもやは最後までやはり残るが、「最期」の編を読むと、彼がいかにして絶対的な孤独を好むようになったのか、自然に包まれながらさすらうことを望むようになったのかが描かれていて、私にとってやや愛すべき人に変貌していき、独り死んでいく彼を憐れむ気持ち、慈しむ気持ちが不思議と湧いてきた。

     クヌルプの死の場面は、この上なく美しい。子供の頃、フランダースの犬のネロとパトラッシュが天に召される場面を知った時の、深刻で強烈だった感覚と似ていた。

    ☆神さまとクヌルプは、互いに話し合った。彼の生涯の無意味だったことについて。また、どうしたら彼の生涯が作り変えられ得ただろうか、ということについて。なぜあれやこれやがああなるよりほかなく、なぜ別なようにならなかったかということについて。

    あるがままでいいんだ、何も嘆くことはない…何もかもあるべきとおりなんだ。

    あの時こうしていれば、など、時々立ち止まって深い後悔に打ちひしがれたりは年を重ねれば誰しもあることだけれど、何もかもあるべきとおりなんだ、と大きいものに肯定されたようだった。

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    2022年09月30日
  • グリム兄弟とアンデルセン

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    研究者としてのグリム兄弟、旅人としてのアンデルセン。童話作家としての認知しかなかったけど、こんなに作品の背景が違うのかと驚いた。それぞれの人生も興味深い。

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    2022年08月05日
  • 春の嵐

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    ネタバレ

    障害を負ってしまい、普通の恋愛もできなくなってしまった主人公と、彼を巡る人々の人生が淡々と描かれる。ゲルトルート、ムオト、両親、ブリギッテなど、障害者ではない体をもつ人々も、結局のところいろいろなものを失っていく。この淡々さが良いですね。
    主人公の母親と友人の友情が破綻する、利己的な友人とのエピソードって、極端に書かれてるけど、ああ、こういう母親の友人みたいな人リアルでも存在してそう…。

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    2022年04月23日
  • 知と愛

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    やっぱりヘッセの小説には女性的・母性的なものへの憧れやコンプレックスが満ちている。真面目な人だったんだろうな。

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    2022年04月14日
  • ゲーテ格言集

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    最近ショーペンハウアーの本を読み、ゲーテの引用が多くあることに気がついた。調べてみるとショーペンハウアーはゲーテとの出会いに「生涯で最も幸福だった出来事」の一つとして数えているらしい。
    相当親しい友好関係を築いていたのだろう、数多く引用があったことから考えが似ているのだろうと思い読んでみた。

    この本はゲーテの思想を手軽に知れる本。深く知りたい方には物足りないが初心者にはお勧めだ。
    内容は各テーマごとに短い文や詩が記されており、短い文ながら的を得たものが多くある。中には理解し難いものもあるが、そういったものは気にせず読み飛ばして良いと思う。
    難解なものは後にもう一度読み返した時理解できれば良い。それより重要なのは収録された文で気になるものがあれば、それについて理解するまで深く考えることでは無いだろうか。

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    2022年03月29日
  • 荒野のおおかみ

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    相変わらず難しい。ヘッセの小説はいつも難しい。でも、引き込まれる。どんどん読んでしまう。結局難しくて、読み終わってもボヤッとしたまま。僕にとってはそれがヘッセ。それがヘッセのいいところ。
    反対派は賛成派に寄りかかってる。黒が白に寄りかかるように。夜がなければ朝もない。変り者も時間も何もかもが、そうではないものに寄りかかってる。そういうことなのかも知れない。

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    2022年02月25日
  • ヘッセ詩集

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    ヘッセの全詩集から抜粋された代表作。この詩集には、ヘッセ自身の孤独感、寂寥感といったものが強くまとわりついているように感じる。彼の小説には、家庭の温かみを描いたものが少ない。この詩集でも、そうした絆や人との触れあいのようなものがほぼ感じられない。ヘッセらしいと言えばらしいのだが、今の私ではなかなかシンクロできなかった。それにしても、これだけの叙情的な詩を訳すのは難しかったのではないだろうか。

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    2022年01月09日
  • 知と愛

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    『目標はこうだ。
    自分が一番よく仕えあるところに、
    自分の流儀や特性や天分が
    最上の地盤と最大の活動の分野を
    見出しうるところに、
    常に自分を置くことだ。』
    ここの部分がすき。

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    2022年01月08日
  • ゲーテ格言集

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    「言え、どうしたらスズメを追い払えるかを」と園丁が言った。「それに、毛虫や、さらにカブト虫の族や、モグラや、ノミトビヨロイ虫や、黄バチや、ウジ虫や、これら悪魔の子を?」―― 「そのままにしておけ。そうすれば、たがいに食いつくし合う。」 上手い例えに関心しました。

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    2021年08月06日
  • メルヒェン(新潮文庫)

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    大人向けの創作童話集。8編収録。自然の美しい描写で心が洗われたり、生や死などに関する観念的な語りかけによってその世界にどっぷり浸れたりするような素晴らしい作品たちである。いつの時代でも心に響く内容で、かつ、文体も柔らかいため、子どもから大人まで幅広く楽しめるのではないだうろか。

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    2021年08月02日
  • 荒野のおおかみ

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    ▪️印象に残った言葉やシーン
    荒野のおおかみの論文に書かれていた「ハリーが一つないし二つの魂あるいは人格から成り立っていると思うのは空想に過ぎない。人間はみな、十、百、千の魂から成り立っている」。

    ヘルミーネがハリーに対して言った「あんたは精神的なものが高く発達しているかわりに、いろいろな処世術が酷く遅れている。思想家ハリーは百歳だけど、踊り手ハリーは半日そこらの赤ん坊。同じくらい発育の悪い小さな兄弟たちも含めて、これから私たちが育てていく」。

    ハリーの人格や魂が分裂してできた、老人、青年、女性、強いの、弱いのなどの多数の駒が、将棋盤の上で遊んだり、戦ったり、同盟を組んだり、結婚したりするシーン。内面にある多数の魂が互いに調和したり、押さえつけたりする様子を表しているのだと思う。

    ▪️感想
    自分を振り返ると、日々真面目なことしかしていない。この本を読んでから、身の回りにたくさんある楽しいことに目を向けて、積極的に楽しんだ方が良いと思うようになった。

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    2021年04月18日
  • 青春は美わし

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    翻訳された本だからなのか、登場人物の感情の表現が淡々としている印象だった。物語自体は短いのですぐ読み切れるが、ドラマチックな展開を求める人にはあまりオススメではない。

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    2021年02月03日
  • 荒野のおおかみ

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    多くを学び孤高でありながら、世間の行動や考え方に否定仕切れない。葛藤と分裂、受容。2020.8.29

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    2020年08月29日
  • 春の嵐

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    時代のせいなのか、筆者の育ちの良さのせいなのか、ともかく品が保たれているのは確か。ストーリー的には今でもありそうな感じだが、今だったらもっとギトギトした筆致となりそう。
    この意味でその昔の日本人がこの作家が好きだったというのは良く分かる。そして今は物足りないという指摘が多そうなことも何となく推察できる。
    まぁ当方としてはもう少し暗くっても良いかなと思います。直前に読んでいる作品もそうですが、どうもこの作家、ほんとの底に降りてきていない感じがする、しかも意図的に。

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    2019年06月20日
  • メルヒェン(新潮文庫)

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    個人的にこの手のおとぎ話的なものはあんまり好みでは無いので、少し評価は辛目かも。
    でも最初と最後から二番目の作品は、少なくとも当方にとっては現実感が感じられ、なかなかによろしいかと。まぁ若干道徳臭が強すぎて教科書的かもしれませんが、この作家の特徴なんでしょうかね、何かそんな気がする。
    そしてそれは日本人好みかなと思います。

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    2019年05月26日
  • 青春は美わし

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    品が良いのは原文なのか、はたまた訳なのかどちらかは測りかねますが、日本人好みでいかにも教科書に出てきそう。
    内容は正直うんっ?というのが正直なところ。純と言えばそれまでですが、いくらなんでもナイーブ過ぎませんかね?
    もしかすると時代が変わってしまったということかもしれませんが。

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    2019年05月19日
  • 郷愁

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    『春の嵐』の後に読んだせいか、やや流れが似ているのと、春の嵐の方がすきなためこの評価に。

    体の不自由なボピーとの交流が1番印象に残っていて好きだな。

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    2019年03月18日
  • クヌルプ

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    孤独を愛することは誰かに依存してはいけないんやと、思う。クヌルプはけっこう自分勝手で自分大好き人間やから、孤独とはちょっと違うのかもしれない。人の好意をどう思ってるのかなとはめっちゃ感じたし、そばにいたくないタイプかなーと思ってしまったですよ。

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    2019年02月22日
  • ゲーテ格言集

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    ゲーテの話をファウストしか読んだことがないのもあり、本中の台詞でも背景とか意味がつかみきれないものが多かった。

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    2019年01月15日
  • 幸福論

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    ヘッセの晩年のエッセイとも言える短編集。
    老後に我が人生や人生観を語る内容で、素直な気持ちが打ち明けられている。人生における様々なエピソード、親しい人との死別、時間により熟成された経験と対比など多くの部分で同感できる。自己の人生観と対比させながら読んだ。
    詩人の文章であるからか、すっと受け入れにくい文体が多く、読みにくいのが難点だが、あまり子細に拘らず感じるように読み進めるのが良いと感じた。
    幸福論で語られた、日常生活や時間にとらわれない、むせぶような一瞬の幸福感を探す人生を送りたいと思う。

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    2018年09月02日