高橋健二のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
小説でも感じたことだが、ヘッセの悩みには自分と通じるところが多い気がする。そのためか詩も全体的に馴染みやすかった。なかでも個人的に特によくて、動揺と感動の渦が沸き起こる感じがしたのは次の5つ。
眠れぬ夜(p80)
陶酔(p150)
ある友の死の知らせを聞いて(p189)
新しい家に入るに際し(p192)
夕暮の家々(p195)
年代によって著者の悩みの種が移り変わっていることが窺えるが、終盤の詩からはついに全ての悩みを乗り越えて一つの境地に到達したという感じがして一段と味わい深い。
"そしてわれらは感じる、危きもの、人間を、
永遠なものは特別な愛をもって愛しているのを。"
(沈思 p204)
私も早くこの境地に到達したい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ解説に小説としてのストーリーはないが、散文詩としてのまとまりがある、と記されている。その通りで筋らしいものはない。1部はクヌルプの気障なところが見える。2部は友との哲学的対話。3部がメインだろう。この最期に感じたクヌルプの人生の決着が、この小説の最も重要なシーンだと思われる。普通の人のように、人生に対して建設的に臨めなかったが、周囲に子供っぽい笑顔を振りまくクヌルプらしい人生だった、というわけだ。
「彼は才能があったのに、何故落ちぶれてしまったんだろうか」という問いに対する答えがこの小説にある。
落ちぶれた人クヌルプ…しかし彼は落ちぶれてなどいない。
自由気ままな旅人だ。解説にはエリートより共感しやすいとあるが、共感の対象になるにはあまりにクヌルプは人好きのする性格だ。太宰治の人間失格を読んだ時のような気分だ。持つものが、道を踏み外して落ちぶれていくのに、共感は来さない。持たざるものが道を踏み外した悲しみより、幾分救いがあるからだ。 -
Posted by ブクログ
見どころがありそうなだけに惜しい作品。1クール目だけはおもしろいアニメみたいなかんじ。もっと跳躍できそうなのに、やはりいつものヘッセである。
クヌルプの漂白の人生。彼は美青年で気ままで不思議なところがあり、かならず娘っこたちの目にとまる。彼のときおり口ずさむ詩や、生活をいとなむうえではいくらも役にたたない手先の器用さは「人々の息苦しい生活に一脈の明るさとくつろぎをもたらす。」
作者のいうことを鵜呑みにすれば、そうなのだろう。けれどもぼくにはこのクヌルプという人物が真から人を和ませることのできる人物とはとても思えない。なぜなら彼の性格はやはりヘッセ的気難しさであって、それがクヌルプの柔和な性格といまいち融和しきれない感じをおぼえる。
なにより生活を営む人たちに対するクヌルプの軽蔑がかなり徹底してることに驚く。彼の生活は社会の外にあって、アウトサイダーそのものであり、そのうえ「軽蔑」まで加われば、これはもう生活の内にある人々・インサイダーにとってみれば「破壊者」そのものであろうし。
クヌルプが「聖」の属性をになっているのはわかるのだけれども、「俗」への軽蔑をみせる場面ではたしょう説教師的「聖」のありかたが垣間見える。まあ救世軍に入りたいとも言ってるし。けれどもクヌルプはけっきょく最後まで彼の「繊細さや敏感さ」を捨て去ることはなかった。ただぼくにとっては、年上の女にふられて漂白という、クヌルプのなまっちろさがいかにもうさんくさいのだ。
彼は「繊細さや敏感さ」の世界に留まることを選び、俗と汚辱にまみれた生活とは縁を切っていたけれど、神がこのクヌルプを選ぶということは、はっきりと誤まりだったとぼくは思うのだ。とヘッセに言いたい。
もはやヘッセとの対話という感じではあるが、二章の「クヌルプの思い出」は好き。 -
Posted by ブクログ
メルヒェン/ヘルマン・ヘッセ 読んだ。
解説にもあるとおり、母から授かった無償の愛と死生に対する考察が混じりあって、価値観の放擲がなんどとなくくり返される。憧憬と回帰に関する一貫したテーマのなかで、短編集ながら連作を思わす生活くささが妙に生々しい。
メルヘンとはなにか、読みすすめるうちに何度となくこう自問したくなる。この一冊の中に読み取るべきものは『アヤメ』のなかで、他作品とくらべてスローダウンした筆致で書かれてあるのでページを戻りながら読むとわかりやすいが、読み終わってそこに答え(救いのようなもの)をもとめるなら「ノー」と言わざるを得ない。
たち返ることが必要で純粋なものに同調し、なじむこと、をヘッセはよく最上のもののように書くふしはあるけれど、ヘッセに限らずこの種の道徳をもった恋人は病に倒れるか何かして、早死にする場合がほとんどであるから、主人公が死を目前にして『そこ』へたち返ると確信したとしても、それこそメルヘンということもできるだろうし、だからこそ母を思うのだろうし、答えはいつもノーとなるわけ。