安西水丸のレビュー一覧
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村上春樹のエッセイ本の中でも多分、トップクラスで文量が少ないエッセイ集だと思う。それでもこの短さの中にも村上春樹のユーモアが炸裂してて、読みやすくておもしろい。
一番印象に残ったのは、ベルリンの映画館で観たという、「クリスチーネ・F」。この映画は、とある商店街で買ったパンフレットのひとつ(それはまだ観たことなかったけど、ジャケットの白人の女の子に目を奪われて購入したもの)がその映画だった。観たいなーと思っていたらこんなところで出会うことになるとは思いもしなかった。(別に観れたわけではないけれども)。
でもこういうことって不思議とよくある。偶然なんだけど、それまでのことが伏線のように感じるぐらいにピッタリと時期が重なる。 -
Posted by ブクログ
とある古本カフェで何気に買った本。解説含めて267ページ、1cmあるかないかの、薄っぺらとまでは行かないにしても充分に「薄い」本である。
しかしその内容たるや凄まじくて素晴らしい!最近はベタベタ付箋を貼るのを控えてはいるのだけれど、気がついたらベタベタ本になっていた。
とにかくその「城」に行くまでのルート、周辺の景色、食事をした店のメニューから地酒ブランド、泊まる温泉、何よりその城の歴史や関わった人々を描いた小説などの参考資料までが網羅されていて、ここは行かねば、これは読まねば、という旅好き本好きの背中をバンバン押しまくってくれる「超」のつく良書!
『ちいさな城下町』というだけあって、名古屋城やら姫路城やら観光客だらけの場所ではない。ともすると「城」自体も無く城址記念公演だけ、だったりする場所もある。
それなのに安西さんは、豊潤な知識と感覚で、そんな中からも数世紀前の人々の暮らしや感情を読みとってみせる。いいなぁ、すごいなぁ、うらやましいなぁ。
改めて安西さんのシンプルでいてなんとも言えない個性と表情のあるイラストレーションを思い出してほんのり優しい気分になった。
本書はもともとオール讀物での連載で、文庫化されたのは安西さんが亡くなられてかららしい。文庫版の解説を書いたのは元NHKの松平定知さん。現役時代は、いかにも「松平家末裔」らしく誂え感プンプンのダブルのスーツがともすれば嫌味に見えるくらいの人だったけれど、この解説で中日ファンだった安西さんに対抗してジャイアンツファンだった少年時代を思い起こし(これホントなら逆よね。安西さんは赤坂育ちの生粋の東京人、松平家は三河の出じゃん?)、日本シリーズで西鉄(‼︎)に負けた時の相手のラインナップをすらすらと書いてみせたのには大いに拍手モンで、一気に嫌味感が吹っ飛びました。
とてもいい読後感でした。
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Posted by ブクログ
ネタバレおもしろい!
初めて村上春樹のエッセイを読んだがこんなに面白いとは思わなかった。普段の小説からは考えられないシュールさやゆるさ、だけど文章はしっかりと村上春樹のものでとても新鮮だった。1つの話が2ページで終わるのも良かった。あっさりしていて、テンポ良く進めていけるのも好きだった。
安西水丸さんの絵がなかなか可愛らしくて、想像が捗った。
つけで本を買う話は、子供がツケ払いをすることが可能な町が存在すること自体が面白かった。今じゃ考えられないことであるからこそ、日本っていいなあと思う。
「千倉における朝食のあり方」を読んで、千倉に興味が湧いた。これを読むまで千倉の存在すら知らなかったが、肉屋がほとんどなくてサザエが大量に食べられる街 なんで面白いんだ。 -
購入済み
コラム集なので、短くて読み易い
紙の本も持っていますが、「老眼」で小さい字を読むのがつらいので、電子書籍を購入しました。執筆当時とは時代も価値観も大きく変わりましたが、読んでいてちょっぴり笑えたり、少し考えさせられたりする点は変わらないなと感じました。でも、日刊アルバイトニュースを覚えている人って、どの位いるんだろう?今はスマホでバイト探しだものね。
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Posted by ブクログ
(抜粋)
安心するのです。胸もとをはだけた三角座布団。ぴんっと突き出た尻尾も、お約束。いつの時代も底値安定価格。冷めたら冷めたで、身がきゅっと締まっておつな味。予想を裏切ることのない、揚げ物界のご隠居さん風情がすてきだ。定食屋でも居酒屋でも、「あじフライ」の五文字を確認すると、品書きに安泰感が漂いますね。ほっとする。
(「あじフライ」を有楽町で)
分かる!分かる!分かるぅ!
あじフライって何で時々食べたくなるんだろう?もっとも私は自分で作るには「めんどくさ」さのほうが優って、スーパーのお惣菜で冷めたあじフライのお世話になっている程度で、母にあまり作ってもらった記憶もなく、定食屋や居酒屋で食べたことも実はあまりない。なのにどうして平松さんの文章を読んだら「家庭的な味」としての私の記憶が甦ったのかと考えてみたら、多分、小学校での学校給食で時々出されたのではなかったかと思う。
そんな「あじフライ」の魅力を痛いほど分かっている店として紹介されているのが、有楽町の東京交通会館の定食屋「キッチン大正軒」。交通会館が出来て以来半世紀、ビル地下にある小さな店で、スコッチエッグもハムカツもある、平松さんも「ツボをぎゅっと押さえつけられている」お店だそうだ。そして例えば、「ミックスA定食(メンチ、あじ、エビ)950円」「ミックスB定食(豚生姜焼き、あじ、エビ)」のようにどの定食でも「あじフライ」が基本になっているのだそうだ。
キャノーラ油で揚げたさくさくの味!堂々とした体躯でふっくら、座布団然として食べごたえ十分、ソースがまだらに浸みこんだ下世話なおいしさ!イヤ〜ン!そんなに誘惑しないで♡
行ったこともない東京有楽町、大正軒の「あじフライ」はきっと私には何故か“運命の人“のように懐かしく味わい深いに違いないと思う。
さらに、平松さんはイケナイ、悪魔的な“あじフライ“の食べ方を書いてくれる。
(抜粋)
全部食べたあと、落下した衣のツブツブが皿のあちこちに散乱している。これをですね、箸でかき集め、ある程度溜まったら残りの千切りキャベツを移動、丁寧に混ぜ合わせる。もちろん、せん切りキャベツはこのためにとっておいた大事なお宝で、すでにうっすらソースにまみれているところがポイントだ。
週刊文春に掲載された食に関する平松さんのエッセイを集めた本書。
そのほか、特に私がそそられた作品を一部紹介。
『砂糖じゃりじゃり』
パインミーと呼ばれるベトナムの“バケット“を炭火で焙ったのに、砂糖をじゃりじゃり押し付けて、食べる。ベトナムコーヒーによく合うらしい。
『八十三歳の意地』
茨城県常陸太田市の83歳の中嶋利さんが全国でただ一人作られる“凍みこんにゃく“。厳寒の二月、田んぼ一面に二万五千枚の薄切りこんにゃくを地面に敷き詰めた藁の上に手で並べ、凍らせ、自然解凍を繰り返して五日目に裏返すという作業を繰り返し、三週間ほどかけて作る。五十年もつといわれる究極の保存食。食べてみたい!
『とうがらしめし!』
ゴールデンウィークの新宿御苑で売り出された“新宿内藤とうがらしめし“。とうがらし汁で炊いた茶飯はほのかな辛みが染みて滋味深く、あとを引く味だそうだ。そこに甘酢漬けの実、葉とうがらし伽羅煮がのせてあるそうだ。そそられる大人の味!
『夏の塩豆腐』
平松さんの自慢の料理“塩豆腐“。絹ごし豆腐に塩をパラパラ振って、優しく表面をなで、布巾で包んでから豆腐パックに戻し、重しをのせ、冷蔵庫で一晩置くだけ。絹ごし豆腐がむっちり、ねっとり、モツァレラチーズのようになるそうだ。
どの作品にも“愛“がある。“美味しい“って高級だとか、ミュシュラン星幾つとかだけで決められないんだな。その食材や料理を作った人の思いとか、その料理を食べたときの思い出とか、そんな“体温“と料理が合わさるとたとえ失敗した料理でもおいしい、おいしい思い出として残るのだろう。平松さんの本を片手に味巡りをして自分なりの地図を作ってみたい。