安西水丸のレビュー一覧
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2部構成のエッセイ。パートⅠは、J・プレスの、パートⅡはパーカー万年筆の雑誌広告のために書かれたもの、ということだ。本書の「あとがき」の日付は、1995年の4月のこととなっているので、今から30年前に最初に発行された本であることが分かる。
J・プレスは、アイビースタイルの洋服屋さん。ブルックス・ブラザーズとともに、アイビーを代表するブランドだった(私はファッションに知見があるわけではないので、私のファッションに関する乏しい知識によれば、という前提)。ファッションにさほど興味のなかった私ですら、J・プレスとブルックス・ブラザーズのスーツやブレザーを(数は少ないけれども)持っていた。
というような -
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安西水丸のイラストは好きだけれども、本書の中で好きな村上春樹の文章は少なかった。好きだったのは、「ジョン・アプダイクを読むための最良の場所」「マイ・ネーム・イズ・アーチャー」の2つくらい。
前者は、村上春樹が(とは限らないけれども)郷里から大学入学のために東京に出て来た際、郷里から東京のアパート宛に送った荷物がまだ届いておらず、何もない部屋で、煙草を吸いながらジョン・アプダイクを読み、それは悪い経験ではなかった、と回想する話。悪い経験ではなかったと感じた理由を説明することは難しいだろうけれども、確かにそれは悪くないよね、と思わせるのは作家としての力量なのかな。
後者は、ミステリー作家のロス・マ -
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34才、まだ熟してゐないエッセー
ビーフ・カツレツの話を読む。
すると、丸谷才一の『食通知つたかぶり』を思ひだしたりする。実際、「旅行先で映画を見ることについて」も、多分に丸谷才一っぽい。
ただ、私は食通ではないので、関心がない。(大江や司馬もさうだったらしい。)
エッセーの文体も、『いかにして鍛えられたか』『村上T』ほど、洗練されてゐない。《である》《である》《である》がつづいて単調だ。
このとき、34才である。いまでは考へられない村上の様子もみえる。
椎名誠の名前も飛びだすし、豆腐(4)でカストリ雑誌的な未亡人とふける妄想もおこなふのである。女性にたいする時代劇拷問でいいね -
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ネタバレ日刊アルバイトニュースに連載されたコラム集。
三十代の若き春樹さんのエッセイ。相変わらず自由でのびのび。安西水丸さんのイラストでさらに脱力感。
お気に入りは、
タクシードライバーがわけわからない民族音楽をかけて、「どこのくにの音楽かわかる?」と質問されるエピソード。スーダンの○○地方の音楽を当てるお客がいたなんて本当かな?
早稲田の映画演劇科卒業だったのか。映画を年間200本以上観ていたことにビックリ!お金がない時は、演劇博物館でシナリオをかたはしから読んだという。自分の頭の中だけの映画を作り出せるから。
知らない土地に行くと映画が観たくなるというのも面白い。
パートナーとの馴れ初めまで書 -
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1984年刊。『日刊アルバイトニュース』に連載された、安西水丸さんが挿絵を手掛けた村上春樹さんのエッセイ。挿絵で1ページ、エッセイで2ページの計3ページが1篇の分量です。
村上春樹さんって、思ってたよりもずっと外向的だなあ、とこのエッセイから感じられました。アウトサイダーってほどじゃないまともな感じがしてる。なんか、とっても健康なんです。
80年代。こういった、くだらなさと嘘と雑学と気楽さとが混ざり合った空気感の創作物で笑ったり楽しんだりする、というのがおそらく生まれでたのが80年代ですよね。僕は77年生まれなので、物心ついてから小学校を卒業するまで80年代の(でも地方の)空気にどっぷりと